物体検出AIの概要とYOLOの特徴
物体検出AIは画像やビデオの中で特定の物体を見つけ出し、その位置を特定する技術として監視カメラや自動運転車、医療画像解析などの分野で活用されています。物体検出AIにはいくつかの手法がありますが、その中でもYOLO(You Only Look Once)は特にリアルタイムに近い物体検出を可能としています。この記事では従来の手法と比較しながらYOLOの特徴に関して説明します。
【YOLOを用いた検出例】
画像中の「人(person)」、「スマホ(cell phone)」、「車(car)」が検出されている
1. 従来の物体検出手法
YOLO以前に使用されていた主な物体検出手法には、スライディングウィンドウ法と領域提案法があります。
スライディングウィンドウ法
- 手法: 画像の左上から右下へと徐々に検出ウィンドウを移動させていき物体を検出します。その過程で物体と思われるものを発見した際はそれが何かを識別し、その後検出対象かを判断します。
領域提案法
- 手法: まず画像内で物体が存在する可能性のある領域をセレクティブサーチ(画像内の特徴が似ているピクセルをまとめ領域を探す手法)で提案します。その後別のモデルでこれらの領域を分析し物体を識別します。代表的な例としてR-CNN、Fast R-CNNといった従来の手法が該当します。
2. YOLOのアプローチ
YOLOは上記の手法とは異なるアプローチを採用することでリアルタイムに近い速度で検出しています。
単一モデルと複数モデルの違い
YOLOは入力画像の物体の位置とクラスを同時に予測します。これに対して従来の手法は画像の多数の領域を個別に調べる作業、それぞれの領域で物体が存在するかどうかを判断する作業で別々のモデルを使用します。このような手法は段階ごとに処理が必要なため処理時間が長くなる傾向にあります。一方、YOLOは単一のモデルでこれらの処理を行うことができるため大幅な効率化を実現しています。
並列処理と逐次処理の違い
YOLOではまず最初に入力画像を一定のサイズで分割します。分割された各部分をグリッドセルと呼びます。このグリッドセルごとに処理が行われるため、GPUを利用して高速に並列処理を行うことができます。これに対し、従来の手法はスライディングウィンドウや領域提案手法を用いて候補領域を個別に逐次処理します。この処理効率の差によりYOLOはリアルタイムに近い検出を可能にしています。
4. 結論
YOLOが入力画像を高速に処理できるのは単一のモデルで一度に並列処理するアプローチを採用しているためです。これにより高速な物体検出を可能とし、リアルタイム性が求められる多くのアプリケーションに応用されています。
物体検出に興味がある、特にリアルタイムに近い速度での物体検出に興味がある方にとってYOLOは非常に有用なツールです。YOLOはオープンソースとして公開されており、誰でも試すことができるため一度触れてみてはいかがでしょうか。