はじめに
カナダへの海外留学を終えて3ヶ月経ち、新しい職場での仕事が始まろうとしています。
というわけで、海外留学して自分にどういった変化があったのか、どういうメリットやデメリットがあるのか、などなど自分なりに整理してみました。
この記事を読んで「おれも / わたしも海外留学してみてるのも悪くないんじゃないか・・」と思っていただけたら嬉しいです。
この記事の対象読者
- 国内のエンジニアである
- 海外留学に少しでも興味がある
- エンジニアとしてのスキルに自信がない / 少し不安がある
- なんとなく現状に満足していない
- このままでいいのかなと漠然と考えているが、どうすればいいかはわからない
- なんか一歩踏み出せない自分がいる
- 仕事に疲れている
自己紹介
おおまかなスペックは以下です。
- 31歳(渡航時30歳)
- 東京在住(渡航前)
- TOEIC 230点(渡航半年前)
- コーダー(フロントエンド)
- WEB制作会社での実務経験2年弱
- 残業一日平均3h
海外留学の内容
出来事だけ見ていくと目も当てられないほど散々な内容ですが、だいたいはいいものに昇華してくれました。
- フィリピン【3ヶ月】
- 語学学校ではスパルタ教育で、週末以外は朝から夜までみっちり授業
- 狂犬病に怯える週末を過ごす
- 閉じた環境で精神的に参って鬱気味に
- 原因不明の体調不良(3週間ぐらい)
- フェイスブックの友だちがやたら増える(主に韓国人)
- 英語力はほとんど伸びることなく帰国
- カナダ(バンクーバー)【6ヶ月】
- ワーホリビザで滞在
- 語学学校を4週間で辞める
- パートタイムの皿洗いを1週間で辞める
- 友だちと呼べる人はできていない
- 基本的に図書館で勉強したり読書したり映画を観たり
- 西海岸に沿ってサンフランシスコまでひとりでアメリカ旅行
- シリコンバレーに行って Google 社などを見学
なぜ海外留学したのか
当時の建前としては、「英語の勉強」や「キャリアアップにつながる」などという理由が強かったのですが、本音のところ、「人生経験として」や「骨休め」が案外大きかったのかもしれないと後になって思いました。英語の勉強は、本気なら日本でもできますから。
ただ、置かれた状況と気の持ちようは思っている以上に強く作用します。30分のタイマーを設定して読書した場合と、そうでない場合では読書スピードは全然違いますし。
参考URL
英語の勉強
建前においても本音においても一番の理由だったと思います。当時、英語をやる理由として思い当たったものは以下です。
技術力と知識の伸びしろがアップする
調べものとエンジニアのスキルは切っても切り離せないものだと思っています。短いキャリアの中でも、この調べものにおいて英語がわからないことによるデメリットは日々実感してきたところではあります。
また、技術系に限らず英語のニュースだったり記事を理解できるようになるメリットはかなり大きいのではないかと思っていました。インターネット上にあるWebページで使われている言語は英語が文句なしに1位なのですから。(日本語の9倍くらい)
参考記事
帰国後のキャリアアップにつながるかも
あまりよく考えていませんでした。TOEIC とかで高得点を持っていると多少有利になるのかな〜ぐらいに思っていました。
あわよくばそのまま海外就職できるかも
初めの頃は、あわ〜い期待と根拠のない自信を抱いていました。下記の本を読んで、「あ、いまのスキルと英語力じゃ無駄ァじゃないか・・?」と、根拠のない自信はどこかにすっ飛びました。
とはいえ、あわい期待は持っていたので国外用にポートフォリオとレジュメも作り、申し訳程度に就職活動はしました。
コミュ力アップするかも
英語で話す時だけ性格が変わるようなケースがあると聞いたため。
北米の空気を肌で感じるため
国内と国外ではエンジニアの給与水準に大分差があると噂に聞いていました。調べてみたところ、アメリカのエンジニアの平均給与は日本のそれの実に倍ぐらいの差があるようです。
また、日本とアメリカではエンジニアの地位も違います。日本におけるエンジニアは、少し古い言い方かもしれませんが「IT土方」的に捉えられているように感じます。一方、アメリカではエンジニアはステータスであり憧れの職業であるようです。有名な起業家たちがみな一様にもともとプログラマだったということもこれを後押ししているのかもしれません。
そんなわけで、海の向こうのエンジニアたちからエンジニアの価値を再確認させてもらおうと・・いや、そんなかしこまった理由ではないのですが・・。日本のそんな空気になんとなく退屈していて、新しい刺激をもらいたかったのかもしれません。
参考URL
- 海外で働くエンジニアの平均年収・現状とは|必要なスキル・英語力
- 海外のエンジニアの平均年収|アメリカと日本では300万円もの差が存在
- アメリカと比較してわかる、日本でITエンジニアの地位が上がらない理由
人生経験として
海外に行く機会などこれまでの人生でほぼありませんでしたし、ましてひとりで海外へ行ってある程度の期間生活してくるなんて経験は今しかできないんじゃないか?ワーホリビザを使わないとできないんじゃないか?とか思っていました。無知でした。
あと、なんというか海外に飛び出すことで、自分の人生が劇的に変化することを期待していたフシがありますね。
骨休め
仕事に疲れていたんでしょう。
エンジニアが会社を辞めて海外留学することの効用(本題)
言っておきますが、主観です。なるべく一般化はしていますが、もともとの性格や育ってきた環境はおおいに個人差があるため、経験する内容も違えば思うことも違うでしょう。
あくまで(僕の場合は)です。
懸念される点
- 履歴書のブランク
- 技術レベルの低下
- 軍資金
- 手続きや諸々の手間
- 人間関係の整理
- なんか不安
- なんかこわい
わかります。それでも、何かを得る(ための機会を得る)にはそのための対価は支払わねばなりません。
いい効用
学ぶことを学ぶ
カナダでは英語の学び方から学び、最終的にはある程度英語そのものをモノにできました。
フィリピンではやみくもに学習し続け、手も足も出ず死ぬ思いを味わいました。
英語は発音にしろボキャブラリにしろ何らかのスキルが欠けているとうまく英語力が伸びていきません。
そこでカナダでは、初めに学習ロードマップのようなものを頭に入れました。さらに、きちんと自分の英語力を分析し足を引っ張っている部分を見極め、バランス良くすべてのパラメータを上げていくような方法で英語学習に取り組みました。自分の英語力を常に把握し続けることを心がけ、「自分のわからない部分をわかっている」状態を維持しました。
社会人になってから何かをイチから体系的に学ぶことは多くありません。ですが、大人がイチから何かを学ぶことには大きな効用があるのではないかと思います。大人は子供より学ぶのが遅いですが、その分学んだことを応用できる知恵があるのです。
学習に使用した書籍
- Basic Grammar in Use Student's Book with Answers
- [Grammar in Use Intermediate Student's Book with answers] (https://www.amazon.co.jp/Grammar-Intermediate-Students-Book-answers/dp/0521734762)
世界の最新技術動向がわかる
カナダでは Meetup が盛んに開催されています。Tech 系のミートアップも多いですし、基本的に無料なので毎週のように参加しまくれます。(だいたいピザとワイン、ビールが飲み放題)日本の Doorkeeper とかの勉強会と同じような感じなのかなと。
向こうのエンジニアはやたらガタイが良かったり、女性も多かったり、なによりフレンドリーなので少し勇気を出せば会話を始めることができます。
そして、技術動向について肌感でこれが熱いあれば熱いというのがわかります。ともすると世界の最先端にいる感を味わえて自信もつきます。
英語ドキュメントやエラーメッセージが理解できる / 速く読める
英語学習の効用ですね。欧米では一日に英語に触れる量が爆発的に増えるので、読むスピードもぐんぐんに伸びてゆきます。
とはいえ、日本にいても日々意識して英語に触れるようにこころがけないと徐々に衰えていくことでしょう。
変数名や関数名が直観的に理解できる
英語学習の効用でしょう。但し、良い命名ができるかどうかは別問題でしょう。
「当たり前」の基準が変わる
というか、劇的に増えるといいますか、今まで当たり前と思っていたことなんてのは日本での当たり前、おれ / わたしにとっての当たり前に過ぎないってことが肌感で理解できます。英語ではコモンセンスと言ったりします。
たとえば、海の向こうでは$9.66の買い物に対して$10.16を出すなんてことをしたら笑われちゃうワケですよ。
トイレのドアは、誰も入っていないことがわかるように、開けっ放しが普通なワケです。
心が少し広くなります。あまりイライラもしなくなります。
自分の意見を持つ癖がつく
海の向こうでは自分の意見を持ち、「わかりやすく」伝えることがとんでもなく重要です。日本では自分の意見すら持たない迎合主義な人がかなり多い気がしてます。
またあちらでは、発言をしないということは存在していないと同義だといいます。
YES / NO がはっきり言えるようになる
初めは、どうしても日本人の血か何かが抵抗して、曖昧に答えようとしてしまって、「Um..., Ah..., yeah...」みたいになってしまい、「What?」って返されてしまっていたが、あるときからはっきりと意志表示できるようになりました。きっと適応したんでしょう。
とはいえ個人差が大きいところですね。
ちなみに英語もあるときを境に一気に理解できるようになりました。謎ですね。
これらは正直かなり不思議現象です。刷り込みによるリミッター的なものが解除されるような感じです。気持ちいいですよ。
謙虚になる
日本では日本人はエラいですね。少なくとも僕はそう思っていたフシがあります。でも、海外では日本人はただの異国の人間です。異国の者として滞在している国の文化に順応していかねばなりません。
ともすれば人は自然にそういったふるまいを覚えていきます。日本に帰ってからも持続します。
自信がつく
なんでもできる気がしてきます。ひとりで海外に行ってそこそこ長く生活してきた、それだけでものすごいことです。
世界が急に身近に感じるようにもなります。
世界各国どこにだってひとりで行ける自信がつきます。とんでもないことです。
外国人がこわくなくなる
海外では、世界レベルの優しさを知ることになります。人類みな兄弟的な感覚を体験するでしょう。
人の目があまり気にならなくなる
自分なんてアリみたいにちっさいと気づきます。きっと世界が広がるからでしょう。
世界の政治、経済、歴史、地理などに興味を持つようになった
これはフィリピンの語学学校で痛感したんです。恥ずかしかったです。これらがわからないと込み入った話もできなかったし、それで劣等感を感じてしまいました。
帰国後も興味は持続しています。むしろ知りたいという欲求が強まっています。
クリエイティブになる
間違いなく創造性が刺激されます。なんでかはわかりませんが。
僕は散歩などしていて思いついたことをその場でアウトライナー(Workflowy)のスマホアプリに書き出すようにしているのですが、カナダにいたときは思いつく量が今と比べて倍以上でした。
日本語を丁寧に使うようになる
特に書き言葉に顕著にあらわれている気がします。これは英語学習の一貫として英語の日本語訳をしていたことがこの要因の一つなのかなと思います。英語学習の効用の一つと言えるでしょう。
MOOCs や動画学習サービスなどの英語の素材を使えるようになる
MOOCs (Massive Open Online Course)というのはインターネット上で誰でも無料で有名大学の講義などが受講できるサービスです。かなり前からあったようですが、すごく流行っているというわけではないようです。ただ海外ではこういった学習サービスが日本よりも多いです。ナチュラルな英語が聴けるようになってくるとこういったサービスを活用して学習を加速させることができるでしょう。
Tech 系の動画学習サービスも多いです。質も良いと思っていいでしょう。(たぶん)ちなみに Lynda はバンクーバーの図書館カードを持っていると無料で利用できます。
ちなみに僕は英語学習も兼ねて Code School と codecademy と FreeCodeCamp あたりを回していました。
参考URL
- MOOCs
- 動画学習サービス
- その他
英語ポッドキャストで情報収集ができる
耳も肥えてくるので一石二鳥です。帰国後の英語学習継続には一番おすすめかもしれません。
バイリンガルニュース は半分日本語ですが毎日のように聴いています。ジャンルは少し偏っていますが好きな人は好きだと思います。時事ネタにも強くなれます。
Tech 系は以下。
FRONT END HAPPY HOUR は 主にNetflix のデベロッパーがお酒飲みながら5、6人くらいでガヤガヤ話します。
SHOP TALK A live podcast with Chris Coyier and Dave Rupert about front end web design, development, and UX.
Rebuild.fm 日本のものですがw Hakuro Matsuda さんが好きすぎます。
わるい効用
- 日本人の良いところも悪いところも目につきやすくなるかも
- カタカナ英語に変な嫌悪感を抱くようになるかも
おわりに
以上です。
しんどいことはだいたいはいいものに昇華します。見える世界が広がると、小さいことは気にならなくなります。
この記事を書いていて、海外留学をしたことで得た一番価値のある財産がわかりました。それは、頭で考えることや知っているだけの知識と、実際に行動してみることやそれをしたことがあるという「経験知」の差が、感覚としてわかるようになったことです。
そういう意味でいうと、海外留学のコスパは最高です。「やってみなきゃわかんねェ、そうだろ?」と、Going Steady は童貞ソー・ヤングで歌っています。
初期コストはかかりますがね。