はじめに
当記事は、Windows+Git Bash (pyenv-win編) です。
当記事はgemini-2.5-pro (2025年1月時点データを使用)に書かせたものです。
各情報について一応の精査は行いましたが、何かしらの問題が潜んでいる可能性もあります。
十分気をつけて使用してください。
この記事は、WindowsユーザーがGit Bashをメインのターミナルとして使い、モダンなPython開発環境を構築するための手順をまとめたものです。
「プログラミング学習を始めたいけど、Windowsのコマンドプロンプトは使いにくい…」
「Web上のチュートリアルがMacやLinux前提で、コマンドが違って困る…」
「複数のPythonバージョンをプロジェクトごとに使い分けたい!」
そんな悩みを抱えるあなたのためのガイドです。
この記事でやること
- Git for Windows (Git Bash) のインストール
- Pythonのバージョン管理ツール
pyenv-win
の導入と設定 - Git Bashと
pyenv-win
を連携させ、快適に使えるようにする - プロジェクトごとに独立した環境を作る
venv
の使い方
この記事でやらないこと
- Git自体の詳しい使い方 (
git clone
,git commit
など) - Pythonの文法やライブラリの使い方
最終的に、LinuxやMacとほぼ同じ感覚で操作できる、ストレスフリーなPython開発環境をWindows上に構築することを目指します。
Step 1: Git Bash
まずは、この環境の土台となる「Git Bash」をインストールします。Git Bashは、Git for Windowsに同梱されているツールで、Windows上でLinuxライクなコマンド (ls
, cd
, pwd
, grep
など) を使えるようにしてくれます。
1. インストーラーのダウンロード
Git for Windowsの公式サイトにアクセスし、インストーラーをダウンロードします。
2. インストール
ダウンロードしたインストーラーを実行します。基本的には「Next」を連打していけばOKですが、いくつか確認しておきたいポイントがあります。
-
エディタの選択 (Select Components)
お好みのエディタ(VSCodeなど)を選択できます。よくわからなければ、デフォルトのVimのままで問題ありません。 -
PATH環境変数の設定 (Adjusting your PATH environment)
ここが重要です。 真ん中の「Git from the command line and also from 3rd-party software」を選択してください。これにより、コマンドプロンプトやPowerShell、そして後で使うpyenv-win
など、他のツールからもGitのコマンドが使えるようになります。
あとはデフォルト設定のまま「Next」をクリックしてインストールを完了させます。
3. 動作確認
インストール後、スタートメニューから「Git Bash」を起動します。黒い画面が表示されたら成功です。
以下のコマンドを打って、バージョン情報が表示されるか確認しましょう。
$ git --version
git version 2.37.1.windows.1
Step 2: Pyenv-win
次に、Python本体をインストールしますが、公式サイトのインストーラーを直接使うのではなく、pyenv-win
というバージョン管理ツールを使います。
なぜ pyenv-win
を使うのか?
- 複数バージョンの共存: 「プロジェクトAではPython 3.8、プロジェクトBではPython 3.10」といった使い分けが簡単にできます。
- 環境を汚さない: システム全体に影響を与えずにPythonをインストール・アンインストールできます。
- 再現性の確保: プロジェクトごとにPythonバージョンを固定できるため、他の人と同じ環境を簡単に再現できます。
pyenv-win
はPythonに標準で入っているツールではなく、別途インストールが必要な外部ツールです。これを使うことで、Python本体のバージョン管理が劇的に楽になります。
1. pyenv-win
のインストール
pyenv-win
はPowerShellを使ってインストールするのが簡単です。
Git Bashではなく、Windowsの「PowerShell」を起動してください。 (スタートメニューで powershell
と検索)
PowerShellで以下のコマンドをコピー&ペーストして実行します。
Invoke-WebRequest -UseBasicParsing -Uri "https://raw.githubusercontent.com/pyenv-win/pyenv-win/master/pyenv-win/install-pyenv-win.ps1" -OutFile "./install-pyenv-win.ps1"; &"./install-pyenv-win.ps1"
実行後、PCの再起動を促される場合があります。その場合は指示に従って再起動してください。
これにより、pyenv-win
がインストールされ、必要な環境変数が自動で設定されます。
Note: 環境変数とは、OSがプログラムの場所などを覚えておくための設定値です。pyenv-win
はPATH
という環境変数を書き換えることで、Pythonのコマンドを乗っ取ってバージョンを切り替える仕組みを実現しています。
Step 3: Git Bash と pyenv-win
を連携させる
pyenv-win
はインストールできましたが、このままではGit Bash上でうまく動作しません。Git Bashがpyenv-win
を認識できるように、設定ファイルに数行の魔法の呪文を書き加える必要があります。
1. 設定ファイルの編集
Git Bashを起動し、以下のコマンドでホームディレクトリに移動します。
$ cd ~
次に、~/.bash_profile
という設定ファイルを開きます。VimやVSCodeなど、好きなエディタで開いてください。
(ファイルがなければ新規作成されます)
# VSCodeで開く場合
$ code .bash_profile
# Vimで開く場合
$ vim .bash_profile
開いたファイルに、以下の3行を追記して保存します。
export PYENV_ROOT="$HOME/.pyenv/pyenv-win"
export PATH="$PYENV_ROOT/bin:$PATH"
export PATH="$PYENV_ROOT/shims:$PATH"
解説
-
export PYENV_ROOT=...
:pyenv-win
がどこにインストールされているかをGit Bashに教えます。 -
export PATH=.../bin...
:pyenv
コマンド自体を使えるようにします。 -
export PATH=.../shims...
: これが最重要!python
やpip
といったコマンドを実行した際に、pyenv-win
が割り込んで適切なバージョンのPythonを呼び出してくれるようにします。このshims
という仕組みのおかげで、バージョンの自動切り替えが可能になります。
2. 設定の反映と確認
設定を反映させるために、Git Bashを一度閉じて、再度起動してください。
新しいGit Bashの画面で、以下のコマンドを実行します。
# pyenv-winのバージョン確認
$ pyenv --version
pyenv 2.64.11
# whichコマンドでpythonの場所を確認
$ which python
/c/Users/YourUser/.pyenv/pyenv-win/shims/python
which python
の実行結果が、上記のように /c/
から始まるスラッシュ区切りのパスで、かつ shims
を含んでいれば連携は成功です!
Step 4: Pythonをインストール
いよいよPythonをインストールします。pyenv
を使えばとても簡単です。
1. インストール可能なバージョンの一覧表示
$ pyenv install --list
インストールできるPythonのバージョンがずらっと表示されます。
2. 特定のバージョンをインストール
ここでは例として、3.10.6
をインストールしてみましょう。
$ pyenv install 3.10.6
インストールには数分かかる場合があります。コーヒーでも飲みながら待ちましょう。
3. 使用するPythonのバージョンを設定
インストールしただけでは、まだそのバージョンは使われていません。pyenv
で使うバージョンを指定します。
-
global
: PC全体でデフォルトとして使うバージョンを指定 -
local
: 現在いるフォルダ(プロジェクト)内だけで使うバージョンを指定
まずはglobal
で設定してみましょう。
# インストール済みのバージョンを確認
$ pyenv versions
* system (set by C:\Users\YourUser\.pyenv\pyenv-win\version)
# globalでバージョンを指定
$ pyenv global 3.10.6
# 再度、バージョンを確認
$ pyenv versions
system
* 3.10.6 (set by C:\Users\YourUser\.pyenv\pyenv-win\version)
*
が 3.10.6
に移動しました。これで、PCのどこでもpython
と打てば 3.10.6
が使われるようになります。
4. 動作確認
本当にバージョンが切り替わったか、確認してみましょう。
$ python --version
Python 3.10.6
$ pip --version
pip 22.0.4 from c:\users\youruser\.pyenv\pyenv-win\versions\3.10.6\lib\site-packages\pip (python 3.10)
指定したバージョンが表示されれば成功です!
Step 5: プロジェクトごとに環境を分ける (venv)
ここまでの手順で、pyenv
を使ってPCにインストールするPythonのバージョンそのものを管理できるようになりました。
最後の仕上げとして、今度はプロジェクトごとに使用するライブラリを分離するための「仮想環境」という仕組みを使います。この仮想環境を作るために使うのが、Pythonに標準で搭載されている venv
です。
1. プロジェクトフォルダの作成と移動
$ mkdir my-project
$ cd my-project
2. 仮想環境の作成
以下のコマンドで、my-project
フォルダの中に.venv
という名前の仮想環境(ライブラリを入れておく小部屋)を作成します。
$ python -m venv .venv
3. 仮想環境の有効化 (activate)
作成した仮想環境を有効化(アクティベート)します。このコマンドは、パスの区切り文字が /
であるGit Bash特有の書き方です。
$ source .venv/Scripts/activate
実行すると、コマンドプロンプトの行頭に (.venv)
という表示が追加されます。これが仮想環境に入っている印です。
(.venv)
$
4. 仮想環境内での作業
この状態でpip install
したライブラリは、.venv
フォルダの中にだけインストールされ、PC全体や他のプロジェクトには影響を与えません。
# 仮想環境内でrequestsをインストール
(.venv)
$ pip install requests
# インストールされたライブラリを確認
(.venv)
$ pip list
Package Version
---------- -------
certifi 2022.9.24
charset-normalizer 2.1.1
idna 3.4
pip 22.0.4
requests 2.28.1
setuptools 62.2.0
urllib3 1.26.12
5. 仮想環境の無効化 (deactivate)
仮想環境から抜けるには、deactivate
コマンドを実行します。
(.venv)
$ deactivate
$
行頭の (.venv)
が消え、元の環境に戻りました。
おわりに
お疲れ様でした! これであなたのWindowsマシンには、
- Linuxライクなコマンドが使える
Git Bash
- Pythonのバージョンを自在に切り替えられる
pyenv-win
- プロジェクトごとに環境を分離できる
venv
という、モダンで実践的なPython開発環境が整いました。
この環境をベースにすれば、Web上の多くのチュートリアルをスムーズに進めることができるはずです。
次はぜひ、VSCodeとターミナルを連携させたり、Gitを使ったバージョン管理に挑戦してみてください。
Happy Hacking!