QGIS で作成したデータ("プロジェクト")を Web ページで表示する方法について、ノウハウを共有します。
前回までに QGIS Server を設置し、QWC2 (QGIS Client 2) によって QGIS プロジェクトを表示する Web 地図アプリを作成しました。
今回は Web 地図アプリのパフォーマンスを改善するために、QGIS Server と QWC2 の仲介をして、QWC2 による地図画像の表示を高速化する MapCache という地図キャッシュ・サーバを導入します。
1. 地図キャッシュ・サーバ
地図キャッシュ・サーバは一種の WMS サーバであり、WMS クライアント(e.g. QWC2)にとっては、WMS サーバ(e.g. QGIS Server)の代理(Proxy)として働きます。
1-1. 基本的な動作
地図キャッシュ・サーバは、基本的には次のような動作をします。
- WMS クライアントからリクエストを受ける
- リクエストに適応するキャッシュ・データの有無を調べる
- 無い場合のみ
- WMS サーバにリクエストを回送する
- WMS サーバが地図画像を作成して返す
- WMS サーバからデータを受け取る
- データをキャッシュに保存する
- WMS サーバにリクエストを回送する
- 無い場合のみ
- 適応するキャッシュ・データを返す
取得済みのデータが無い場合は、普通に WMS サーバにリクエストするのと大して変らないか、キャッシュ管理の処理がある分だけ余計に時間がかかります。しかし、取得済みのデータが増えていくにつれて、負荷の高い地図画像作成の過程をスキップできるようになるため、全体として、高速化と WMS サーバの負担軽減をはかる事が出来ます。
さらに、たいていの地図キャッシュ・サーバは、必要になる可能性のあるデータをあらかじめ全部取得しておく "seeding" すなわち「種蒔き」という機能を持っているため、初回データ取得時の問題も回避することが出来ます。
1-2. 製品例
オープン・ソースの地図キャッシュ・サーバとして私の目に付いたのは次の三つです。
- MapCache ... MapServer > MapServer Suite Products > MapCache
- MapProxy ... https://www.mapproxy.org/
- TileCache ... http://tilecache.org/
今回使用する MapCache は、MapServer という WMS サーバのスイートに属する地図キャッシュ・サーバですが、単体で使用できます。MapProxy に比べて造りが少し古いかも知れませんが、定評のある製品です。C 言語で書かれています。
MapProxy は Python で書かれたもので、stackvverflow の記事 - How to cache QGIS Server WMS? によると、簡単にセットアップ出来て、QGIS Server との連携も問題ないとのことです。
TileCache については良く知りません。
2. MapCache
マニュアルとして、以下の公式ドキュメントを参照します。
2-1. インストール
マニュアルでは、ソースを取得してコンパイルする方法が説明されていますが、AlmaLinux ではパッケージが提供されていますので、dnf でインストールすることが出来ます。
sudo dnf install libmapcache libmapcache-tools mod_mapcache
これによって、以下の三つのパッケージがインストールされます。
-
libmapcache... MapCache 本体 -
libmapcache-tools...mapcache_seedなどのツール -
mod_mapcache...httpd用モジュール
これらの依存物として、mapserver と httpd (Apache) も一緒にインストールされます。今回は mapserver は使用しませんが、httpd は使用します。
2-2. httpd (Apache) の設定
MapCache が想定している http サーバは、nginx ではなく、httpd (Apache) です。
マニュアルによれば、「nginx で動かすのはまだいくらか実験的な意味合いである」とのことですし、さらに nginx で動かすとしても httpd との併用を推奨していますので、ここは素直に httpd だけを使用する MapCache の既定方針に従います。
2-2-1. /etc/httpd/conf/httpd.conf
/etc/httpd/conf/httpd.conf を2箇所書き換えます。
2-2-1-1. Listen するポート番号を変更
#Listen 12.34.56.79:80
- Listen 80
+ Listen 8080
ポート 80 番は nginx が既に QWC2 のために使っていますので、ポート 8080 番を代りに使います。
2-2-1-2. mapcache モジュールを登録する
Include conf.modules.d/*.conf
+ LoadModule mapcache_module modules/mod_mapcache.so
2-2-2. /etc/httpd/conf.d/mapcache.conf
以下の内容で /etc/httpd/conf.d/mapcache.conf を作成します。
<IfModule mapcache_module>
<Directory "/mapcache">
Require all granted
</Directory>
MapCacheAlias /mapcache "/etc/mapcache.xml"
</IfModule>
2-2-3. httpd の自動起動を設定する
httpd がシステム起動時に自動起動するように設定しておきます。
sudo systemctl enable httpd
通常はこのとき一緒に httpd も起動するのですが、それはまだ出来ません。
初期状態の設定に問題があって、今はまだ MapCache が起動できず、従って、MapCache モジュールをロード出来ないために、httpd 自体が起動に失敗します。
2-3. MapCache の設定
MapCache の設定ファイルは /etc/mapcache.xml です。
MapCache のインストールによって /etc/mapcache.xml は自動的に作成されているのですが、設定内容に問題がある訳です。
2-3-1. 最低限の設定
MapCache が動くように、初期状態の設定に最低限の修正を加えます。
2-3-1-1. キャッシュ用ディレクトリ
キャッシュ用のディスク領域やロック・ファイルのディレクトリとして "/tmp" が指定されている所がいくつかあります。しかし、永続性が保証されない "/tmp" を使用するのは適切ではありませんので、"/tmp" という記述をすべて "/var/cache/mapcache" に変更します。
<mapcache>
<cache name="disk" type="disk">
- <base>/tmp</base>
+ <base>/var/cache/mapcache</base>
<symlink_blank/>
</cache>
<cache name="sqlite" type="sqlite3">
- <dbfile>/tmp/{tileset}-{z}-{grid}.db</dbfile>
+ <dbfile>/var/cache/mapcache/{tileset}-{z}-{grid}.db</dbfile>
<detect_blank/>
</cache>
...
<locker type="disk">
- <directory>/tmp</directory>
+ <directory>/var/cache/mapcache</directory>
<timeout>300</timeout>
</locker>
<log_level>debug</log_level>
</mapcache>
ディレクトリ /var/cache/mapcache は、libmapcache がインストールされた時に自動作成されています。所有者が root なので、Apache が起動した MapCache から読み書きが出来るように、所有者とグループを apache に変更しておきます。
sudo chown apache:apache /var/cache/mapcache
2-3-1-2. タイルセット t2 を削除
タイルセットが t1 と t2 の二つ登録されていますが、サンプルとしては一つで十分なので、t2 はごっそり削除します。
2-3-1-3. ノード dimensions を削除
タイルセット t1 に dimensions というノードがありますが、その中に 'type="postgresql"' というエラー原因となる記述が含まれています。
当面、dimensions は無くても差し支えがありませんので、ノードごと削除します。
2-3-1-4. sqlite キャッシュを削除
キャッシュのタイプとしては、当面、disk が有れば十分ですので、sqllite キャッシュの定義を削除し、参照個所を disk に変更します。
- <cache name="sqlite" type="sqlite3">
- <dbfile>/var/cache/mapcache/{tileset}-{z}-{grid}.db</dbfile>
- <detect_blank/>
- </cache>
...
<tileset name="t1">
<source>vmap0</source>
- <cache>sqlite</cache>
+ <cache>disk</cache>
...
</tileset>
2-3-1-5. <service type="wms"> の修正
<service type="wms"> は以下のように修正します。
<service type="wms" enabled="true">
- <full_wms>assemble</full_wms>
+ <full_wms>error</full_wms>
<resample_mode>bilinear</resample_mode>
- <format>JPEG</format>
+ <format allow_client_override="true">PNG</format>
</service>
-
<full_wms>... デフォルト値に復帰させます -
<format>... JPEG から PNG に変更します- これを
JPEGのままにしておくと、クライアントが受け取る画像が透過情報を持たないjpegになってしまいます
- これを
2-3-1-6. 最低限の mapcache.xml
結局、MapCache が最低限動作するための mapcache.xml は以下のようになります。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<mapcache>
<cache name="disk" type="disk">
<base>/var/cache/mapcache</base>
<symlink_blank/>
</cache>
<source name="vmap0" type="wms">
<getmap>
<params>
<FORMAT>image/png</FORMAT>
<LAYERS>basic</LAYERS>
</params>
</getmap>
<http>
<url>http://vmap0.tiles.osgeo.org/wms/vmap0</url>
</http>
</source>
<tileset name="t1">
<source>vmap0</source>
<cache>disk</cache>
<grid>WGS84</grid>
<grid>GoogleMapsCompatible</grid>
<format>PNG</format>
<metatile>5 5</metatile>
<metabuffer>10</metabuffer>
<expires>3600</expires>
</tileset>
<default_format>JPEG</default_format>
<service type="wms" enabled="true">
<full_wms>error</full_wms>
<resample_mode>bilinear</resample_mode>
<format allow_client_override="true">PNG</format>
<maxsize>4096</maxsize>
</service>
<service type="wmts" enabled="true"/>
<service type="tms" enabled="true"/>
<service type="kml" enabled="true"/>
<service type="gmaps" enabled="true"/>
<service type="ve" enabled="true"/>
<service type="mapguide" enabled="true"/>
<service type="demo" enabled="true"/>
<errors>report</errors>
<locker type="disk">
<directory>/var/cache/mapcache</directory>
<timeout>300</timeout>
</locker>
<log_level>debug</log_level>
</mapcache>
2-3-1-7. 動作確認
httpd を起動します。
sudo systemctl start httpd
http://webgis.mydomain:8080/mapcache/demo にアクセスして、動作を確認します。
上のような素っ気ない画面が表示されればオーケーです。
さらに、wms のリンクをクリックすると、下のような画面が表示されるはずです。
一応タイルセットは表示されるのですが、サンプルの WMS サーバから地図画像を取得することに失敗しているらしく、ピンクのタイルしか表示されません。私たちのせいではありませんので、これ以上どうしようもありません。気にしなくて良いでしょう。(本当か?)
2-3-2. QGIS Server からデータを取得する
それでは、QGIS Server から WMS 経由で地図画像データを取得してキャッシュに保存してみます。
具体的には、QGIS Server から "isg" プロジェクトの "cs" レイヤ(CS 立体図)の地図画像を取得して、"cs" というタイルセットにキャッシュ・データを保存します。
2-3-2-1. cache
キャッシュ媒体は "disk" をそのまま使用します。
<cache name="disk" type="disk">
<base>/var/cache/mapcache</base>
<symlink_blank/>
</cache>
-
<cache>-
name... キャッシュの識別名 -
type... 種別("disk", "sqlite3", "postgresql" など) -
<base>... ベース・ディレクトリ-
/var/cache/mapcacheまたはそのサブ・ディレクトリを推奨 - ユーザ
apacheが読み書きできるように、所有者またはパーミッションを変更すること
-
-
<symlink_blank/>... 空白タイルはシンボリック・リンクにする
-
2-3-2-2. grid
キャッシュ管理のキモとなるグリッドを定義します。
下記を mapcache.xml に追加します。cache の直後が良いでしょう。
<grid name="ISG">
<metadata>
<title>Grid for isg project</title>
</metadata>
<srs>EPSG:3857</srs> <!-- WGS 84 / Pseudo-Mercator -->
<units>m</units>
<extent>15013800 4180200 15016600 4183700</extent>
<resolutions>
611.4962262814100
305.7481131407048
152.8740565703525
76.43702828517624
38.21851414258813
19.10925707129406
9.554628535647032
4.777314267823516
2.388657133911758
1.194328566955879
0.5971642834779395
0.2985821417389697
0.1492910708694849
0.0746455354347424
</resolutions>
<size>256 256</size>
<read-only>false</read-only>
</grid>
-
<grid>-
name... グリッドの識別名 -
<metadata>-
<title>... グリッドのタイトル
-
-
<srs>... 座標参照系-
EPSG:3857 (WGS 84 / Pseudo-Mercator)を推奨 -
isgプロジェクトのCRSであるEPSG:6673 (JCG2011 Japan Plane Rectangular CS V)では、うまく動作しません - 対象となるプロジェクトの
CRSがEPSG:3857に変換可能であり、QGIS Server がEPSG:3857で地図画像を取得できる必要があります
-
-
<units>... 座標参照系の単位-
EPSG:3857ではm (meter)です
-
-
<extent>... データの範囲-
<srs>で指定した座標参照系における範囲をxmin(西端) ymin(南端) xmax(東端) ymax(北端)の順で指定します
-
-
<resolutions>... サポートする解像度(≒縮尺)- 最小縮尺 (Zoom Level 0) から、最大縮尺へ、順に指定します
- 数値は、画素一つあたりの
<units>数(この場合は m 数)を示します
-
<size>... タイルのサイズ-
256 256が一般的です
-
-
<read-only>... 書き込み禁止- 通常は
falseにします-
false... キャッシュに無いデータを要求されたときは、WMSサーバからデータを取得してキャッシュを更新します -
true... キャッシュに無いデータは「無い」と応答します。mapcache_seedによるseedingのみでキャッシュを更新する運用のための設定です
-
- 通常は
-
2-3-2-3. source
以下の source 定義を mapchace.xml に追加します。
<source name="cs" type="wms">
<getmap>
<params>
<VERSION>1.3.0</VERSION>
<FORMAT>image/png</FORMAT>
<LAYERS>cs</LAYERS>
<TRANSPARENT>true</TRANSPARENT>
</params>
</getmap>
<http>
<url>http://webgis.mydomain:8082/isg</url>
</http>
</source>
-
<source>-
name... ソースの識別名 -
type... ソースのタイプ(通常は "wms") -
<getmap>-
<params>... GetMap リクエストに使用する引数-
<VERSION>... 使用するWMSのバージョン-
1.1.1または1.3.0 - デフォルトは
1.1.1
-
-
<FORMAT>... 取得する画像タイプ-
image/pngまたはimage/jpeg
-
-
<LAYERS>... 取得するレイヤの識別名- 通常はレイヤを一つだけ指定します
- 複数のレイヤをカンマ区切りで指定すると、全部のレイヤが合成された画像を取得します
-
<TRANSPARENT>... 透過部分を持つレイヤかどうか
-
-
-
<http>-
<url>...WMSサービスのURL
-
-
2-3-2-4. tileset
最後にタイルセットを定義します。これは、通常、上記の source と一対一で対応します。
<tileset name="cs">
<source>cs</source>
<cache>disk</cache>
<grid>ISG</grid>
<format>PNG</format>
<metatile>5 5</metatile>
<metabuffer>10</metabuffer>
</tileset>
-
<tileset>-
name... タイルセットの識別名 -
<source>... ソースの識別名 -
<cache>... キャッシュの識別名 -
<grid>... グリッドの識別名 -
<format>... クライアントに返すデータ形式- 通常は
PNGまたはJPEG
- 通常は
-
<metatile>... 同時に作成するタイルの範囲-
"3 3","5 5","7 7"など - ある位置のタイルを要求されたとき、キャッシュに無ければ、
WMSに要求を出してタイルを作成しますが、そのとき、当該タイルを中心とした一定範囲のデータをまとめて取得して、複数のタイルを同時に作成します。例えば"5 5"の場合、当該タイルを中心とした25個のタイルを同時に作成します - 隣接するタイルを作っておくことで、スムーズなスクロールを実現します
-
WMSに対する要求をまとめることで高速化と負荷軽減を図る意図もあります
-
-
<metabuffer>... タイル作成時のバッファ- ここで指定したピクセル数だけ上下左右に広いデータを
WMSサーバから取得して、タイルを切り出します - タイルの継ぎ目で図形が切れるのを防ぐ効果があります
- ラベルを使用しているレイヤでは、文字列が切れないように、大きな数値を指定する必要があります
- ここで指定したピクセル数だけ上下左右に広いデータを
-
2-3-2-5. デモ・データを削除
デモ・データが残っていると、デモ画面で動作確認がまったく出来ないということではありませんが、isg プロジェクトの表示領域から大きくはずれた範囲が初期表示されるため、動作確認に非常に手間取ります。定義の順序を変えても、デモ・データが最初に表示され、その表示領域がデフォルト扱いされるのです。
鬱陶しいので、mapcache.xml から "vmap0" ソースと "t1" タイルセットの定義をごっそりと削除します。
2-3-2-6. デモ画面で動作確認
httpd を再起動して、http://webgis.mydomain:8082/mapcache/demo にアクセスして、下のスクリーン・ショットのような画面が表示されたら成功です。
ズームイン・ズームアウトやスクロールをして、表示済みの縮尺と範囲でキャッシュが効いていることを確かめてください。
2-3-2-7. キャッシュのディスク領域を確認
/var/cache/mapcache 以下にキャッシュ・データが作成されていることを確認してください。
cd /var/cache/mapcache
find
下記のようなリストが出力されるはずです。
.
./cs
./cs/ISG
./cs/ISG/06
./cs/ISG/06/000
./cs/ISG/06/000/000
./cs/ISG/06/000/000/000
./cs/ISG/06/000/000/000/000
./cs/ISG/06/000/000/000/000/000
./cs/ISG/06/000/000/000/000/000/000.png
./cs/ISG/06/000/000/000/000/000/001.png
./cs/ISG/06/000/000/001
./cs/ISG/06/000/000/001/000
./cs/ISG/06/000/000/001/000/000
./cs/ISG/06/000/000/001/000/000/000.png
./cs/ISG/06/000/000/001/000/000/001.png
./cs/ISG/blanks
./cs/ISG/blanks/00000000.png
(以下略)
キャッシュ・データのディレクトリとファイルは、次の方式で組織化されています。
base
tileset
grid
zoom-level
y-high
y-middle
y-low
x-high
x-middle
x-low.png (or x-log.jpeg)
従って、./cs/ISG/06/000/000/001/000/000/001.png は
- タイルセット =
cs - グリッド =
ISG - ズーム・レベル = 6
- Y = 1
- X = 1
の画像データです。
なお、./cs/ISG/blanks/00000000.png は、シンボリック・リンクで共有される空白タイルです。
2-3-3. 定義済みグリッド
MapCache は、使用頻度の高いグリッドを定義済みグリッドとして三つ持っています。
WSG84GoogleMapsCompatibleg
これらについては、わざわざ定義しなくても、識別名を指定するだけで使用することが出来ます。
/usr/share/mapcache/mapcache.xml.sample によると、それぞれの内容は以下の通りです。
2-3-3-1. 定義済みグリッド WGS80
<grid name="WGS84">
<metadata>
<title>GoogleCRS84Quad</title>
<WellKnownScaleSet>urn:ogc:def:wkss:OGC:1.0:GoogleCRS84Quad</WellKnownScaleSet>
</metadata>
<extent>-180 -90 180 90</extent>
<srs>EPSG:4326</srs>
<units>dd</units>
<size>256 256</size>
<resolutions>
1.40625000000000
0.703125000000000
0.351562500000000
0.175781250000000
8.78906250000000e-2
4.39453125000000e-2
2.19726562500000e-2
1.09863281250000e-2
5.49316406250000e-3
2.74658203125000e-3
1.37329101562500e-3
6.86645507812500e-4
3.43322753906250e-4
1.71661376953125e-4
8.58306884765625e-5
4.29153442382812e-5
2.14576721191406e-5
1.07288360595703e-5
5.36441802978516e-6
</resolutions>
</grid>
-
<srs>...EPSG:4326 (WGS 84) -
<units>...dd= 度 -
<extent>... 西端=-180度, 南端=-90度, 東端=180度, 北端=90度
2-3-3-2. 定義済みグリッド GoogleMapsCompatible
<grid name="GoogleMapsCompatible">
<metadata>
<title>GoogleMapsCompatible</title>
<WellKnownScaleSet>urn:ogc:def:wkss:OGC:1.0:GoogleMapsCompatible</WellKnownScaleSet>
</metadata>
<extent>-20037508.3427892480 -20037508.3427892480 20037508.3427892480 20037508.3427892480</extent>
<srs>EPSG:3857</srs>
<srsalias>EPSG:900913</srsalias>
<units>m</units>
<size>256 256</size>
<resolutions>
156543.0339280410
78271.51696402048
39135.75848201023
19567.87924100512
9783.939620502561
4891.969810251280
2445.984905125640
1222.992452562820
611.4962262814100
305.7481131407048
152.8740565703525
76.43702828517624
38.21851414258813
19.10925707129406
9.554628535647032
4.777314267823516
2.388657133911758
1.194328566955879
0.5971642834779395
0.2985821417389697
0.1492910708694849
0.0746455354347424
</resolutions>
</grid>
-
<srs>...EPSG:3857 (WGS 84 Pseudo-Mercator)-
<srcalias>...ESPG:900913
-
-
<units>...m= メートル -
<extent>... 範囲
実のところ、先ほど定義した ISG グリッドは、これをコピーして <extent> と <resolutions> とに限定を加えたものです。
2-3-3-3. 定義済みグリッド g
<grid name="g">
<metadata>
<title>GoogleMapsCompatible</title>
<WellKnownScaleSet>urn:ogc:def:wkss:OGC:1.0:GoogleMapsCompatible</WellKnownScaleSet>
</metadata>
<extent>-20037508.3427892480,-20037508.3427892480,20037508.3427892480,20037508.3427892480</extent>
<srs>EPSG:900913</srs>
<srsalias>EPSG:3857</srsalias>
<size>256 256</size>
<resolutions>
156543.0339280410
78271.51696402048
39135.75848201023
19567.87924100512
9783.939620502561
4891.969810251280
2445.984905125640
1222.992452562820
611.4962262814100
305.7481131407048
152.8740565703525
76.43702828517624
38.21851414258813
19.10925707129406
9.554628535647032
4.777314267823516
2.388657133911758
1.194328566955879
0.5971642834779395
0.2985821417389697
0.1492910708694849
0.0746455354347424
</resolutions>
</grid>
-
<srs>...ESPG:900913-
<srcalias>...EPSG:3857 (WGS 84 Pseudo-Mercator)
-
-
<units>...m= メートル -
<extent>... 範囲
<srs> と <srsalias> が入れ替わっているだけですので、実質的には一つ前の GoogleMapsCompatible と同一のグリッドです。
2-3-3-4. 定義済みグリッドのカスタマイズ
タイルセットの定義において、次の書式を使うと定義済みグリッドをカスタマイズすることが出来ます。
<tileset name="foo">
...
<grid restricted_extent="{xmin} {ymin} {xmax} {ymax}"
tolerance="{tiles}"
minzoom="{min}" maxzoom="{max}">{grid}</grid>
...
</tileset>
-
restricted_extent... この範囲に限定 -
tolerance... 限定された範囲の上下左右に追加されるタイルの数- 省略時は
5
- 省略時は
-
minzoom... 最小ズームレベル -
maxzoom... 最大ズームレベル
正確に言えば、グリッドそのものを修正するのではなく、範囲とズームレベルを限定して使用するわけです。
従って、GoogleMapsCompatible を真似して作成した ISG グリッドを使っている cs タイルセットの定義は、次のように書くことも出来ます。
<tileset name="cs">
<source>cs</source>
<cache>disk</cache>
- <grid>ISG</grid>
+ <grid restricted_extent="15013800 4180200 15016600 4183700"
+ tolerance="0" minzoom="8">GoogleMapsCompatible</grid>
<format>PNG</format>
<metatile>5 5</metatile>
<metabuffer>10</metabuffer>
</tileset>
ただし、デモ画面で確認するときは、初期位置が 0 0 0 0 の原点になるため、随分とスクロールしないと地図画像が見えてきません。画面右下に経度緯度で座標値が表示されるので、それを見ながら、135 35 あたりまで辛抱強くスクロールしてください。
実用上は問題なく動作します。
2-3-4. spots と tanada を追加する
"isg" プロジェクトのレイヤ "spots" と "tanada" を追加します。
2-3-4-1. spots のためのソースとタイルセットを追加する
<source name="spots" type="wms">
<getmap>
<params>
<VERSION>1.3.0</VERSION>
<FORMAT>image/png</FORMAT>
<LAYERS>spots</LAYERS>
<TRANSPARENT>true</TRANSPARENT>
</params>
</getmap>
<http>
<url>http://gis-svr.vmware:8082/isg</url>
</http>
</source>
<tileset name="spots">
<source>spots</source>
<cache>disk</cache>
<grid minzoom="6">ISG</grid>
<format>PNG</format>
<metatile>5 5</metatile>
<metabuffer>100</metabuffer>
</tileset>
-
ISGグリッドのズームレベルを限定して使用します- そんなにケチケチ最適化しなくても良いのに
- ラベルがタイル境界で切れないように
<metabuffer>に大きめの数値を設定しています
2-3-4-2. tanada のためのソースとタイルセットを追加する
<source name="tanada" type="wms">
<getmap>
<params>
<VERSION>1.3.0</VERSION>
<FORMAT>image/png</FORMAT>
<LAYERS>tanada</LAYERS>
<TRANSPARENT>true</TRANSPARENT>
</params>
</getmap>
<http>
<url>http://gis-svr.vmware:8082/isg</url>
</http>
</source>
<tileset name="tanada">
<source>tanada</source>
<cache>disk</cache>
<grid restricted_extent="15015200 4180400 15016100 4182100"
tolerance="0" minzoom="5">ISG</grid>
<format>PNG</format>
<metatile>5 5</metatile>
<metabuffer>10</metabuffer>
</tileset>
-
ISGグリッドの範囲とズームレベルを限定して使用します- そんなにケチケチ最適化しなくても良いのに
3. QWC2 の設定
MapCache の準備が出来たので、QWC2 で利用してみます。
前回で説明した外部レイヤの仕組みを利用して、"spots", "tanada", "cs" のレイヤを MapCache によるレイヤ(=タイルセット)に置換します。
3-1. 外部レイヤとして定義する
まず、"themes" ノードの下の外部レイヤの定義に MapCache によるレイヤを追加します。
"externalLayers": [
{
"name": "spots",
"type": "wms",
"url": "http://webgis.mydomain:8080/mapcache",
"params": {
"SERVICE": "WMS",
"VERSION": "1.3.0",
"TRANSPARENT": true,
"FORMAT": "image/png",
"LAYERS": "spots",
"tiled": true
},
"featureInfoUrl": "http://webgis.mydomain:8082/isg",
"legendUrl": "http://webgis.mydomain:8082/isg",
"queryLayers": ["spots"],
"infoFormats": ["text/xml"]
},
{
"name": "tanada",
"type": "wms",
"url": "http://webgis.mydomain:8080/mapcache",
"params": {
"SERVICE": "WMS",
"VERSION": "1.3.0",
"TRANSPARENT": true,
"FORMAT": "image/png",
"LAYERS": "tanada",
"tiled": true
},
"featureInfoUrl": "http://webgis.mydomain:8082/isg",
"legendUrl": "http://webgis.mydomain:8082/isg",
"queryLayers": ["tanada"],
"infoFormats": ["text/xml"]
},
{
"name": "cs",
"type": "wms",
"url": "http://webgis.mydomain:8080/mapcache",
"params": {
"SERVICE": "WMS",
"VERSION": "1.3.0",
"TRANSPARENT": true,
"FORMAT": "image/png",
"LAYERS": "cs",
"tiled": true
},
"featureInfoUrl": "http://webgis.mydomain:8082/isg",
"legendUrl": "http://webgis.mydomain:8082/isg",
"queryLayers": ["cs"],
"infoFormats": ["text/xml"]
},
...
}
-
"name"... 外部レイヤの識別名 -
"type"... 固定値"wms" -
"url"...MapCacheのURL -
"params"...GetMapリクエストのパラメータ-
"SERVICE"... 固定値"WMS" -
"VERSION"... 通常は"1.3.0" -
"TRANSPARENT"... 通常はtrue -
"FORMAT"... 通常は"image/png" -
"LAYERS"... レイヤ識別名(タイルセット識別名) -
"tiled"... 固定値true
-
-
"featureInfoUrl"... 地物情報を取得するためのURL
QGIS ServerのURLを指定する -
"legendUrl"... 凡例情報を取得するためのURL
QGIS ServerのURLを指定する -
"queryLayers"...QGIS Serverでのレイヤ識別名 -
"infoFormats"... 固定値"text/xml"
地物情報と凡例情報のデータは MapCache には存在しません。そのため、GetFeatureInfo リクエストと GetLegend リクエストは直接 QGIS Server に対して送ります。そのための設定が最後の4項目です。
3-2. 外部レイヤを使用する
次に、テーマごとの "items" ノードの下の外部レイヤの定義に、内部レイヤと外部レイヤの関連付けを追加します。
"items": [
{
...
"externalLayers": [
{
"name": "spots",
"internalLayer": "spots"
},
{
"name": "tanada",
"internalLayer": "tanada"
},
{
"name": "cs",
"internalLayer": "cs"
},
...
],
...
}
],
...
-
"name"... 外部レイヤ識別名 -
"internalLayer"... 内部レイヤ識別名
4. Seeding (種蒔き)
mapcache_seed コマンドを使うと、キャッシュ・データをあらかじめ全部タイルにセットしておくことが出来ます。
sudo -u apache mapcache_seed -c /etc/mapcache.xml -t spots
sudo -u apache mapcache_seed -c /etc/mapcache.xml -t tanada
sudo -u apache mapcache_seed -c /etc/mapcache.xml -t cs
-
sudo -u apache...apacheにスイッチして実行 -
-c /etc/mapcache.xml... 設定ファイルを指定 -
-t... タイルセットを指定
mapcache_seed コマンドの詳細については、mapcache_seed -h で確認してください。
重要だと思われるオプションのみを解説します
-
-c|--config [value]: 設定ファイルの指定(必須) -
-t|--tileset [value]: タイルセットの指定(必須) -
-e|--extent [value]: 範囲の指定 format:minx,miny,maxx,maxy -
-f|--force: 強制的に再作成 -
-g|--grid [value]: グリッドの指定 -
-h|--help: ヘルプを表示 -
-m|--mode [value]: 動作モード :seed(デフォルト),deleteortransfer -
-M|--metasize [value]: seeding 中のmetatileサイズを上書き指定、例えば8,8 -
-n|--nthreads [value]: 使用する並行スレッド数を指定(-pと非互換) -
-o|--older [value]: 指定した日時より古いタイルを再作成 (format:year/month/day hour:minute, eg:2011/01/31 20:45) -
-p|--nprocesses [value]: 使用する並行プロセス数を指定(-nと非互換) -
-P|--percent [value]: 最近 1000 回でエラーがこの数値を超えたら中止。デフォルトは1%。0を指定するとエラー発生と同時に中止 -
-q|--quiet: 進捗情報を非表示 -
-v|--verbose: デバッグ・ログ・メッセージを表示 -
-b|--non-interactive: 進捗情報を新しい行に表示 -
-x|--transfer [value]: 転送するタイルセット -
-z|--zoom [value]: 作成するズームレベルの最小と最大、例えば0,6
And so, what's next?
これで QGIS Server + QWC2 + MapCache の連携が完了しました。
まだ、いくつか MapCache に対応していないレイヤが残っていますが、これまでに説明した手順で作業をすれば、すべて対応させることが出来ます。
次は、QWC2 に戻って、ユーザ・インタフェースや機能のカスタマイズを行います。おそらく、一回では完了しないと思います。


