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割と雑な PC 用ブラウザの歴史

Last updated at Posted at 2021-12-17

はじめに

本記事は、 Microsoft Azure Tech | Advent Calendar 2021 17 日目の記事です。

人に歴史あり。インターネットにも歴史あり。
では当然、インターネットを閲覧するためのソフトウェアであるブラウザにも歴史があるわけでございます。

技術的な内容は他の方々にお任せし1、本記事ではそんなブラウザの歴史を雑に追いかけてみようと思います。
なお、Microsoft / Mozilla 系 / Chromium 系 以外についてはいろんな都合上スルー。
Webkit?PC用のブラウザですってば(目を逸らしながら)。

その前に

2点 だけ言葉の定義をしておこうと思います。

WWW (World Wide Web)

ほぼインターネットと同義です。直訳は「世界をまたぐ蜘蛛の巣」。
世界中に張り巡らされたネットワークを蜘蛛の巣に見立てた言葉です。以降、WWW で統一します。

ブラウザ

英語の動詞で browse という単語があります。
001.png
(出典 : https://translate.weblio.jp/)
er をつけて、blowse するもの、ですね。
「WWW を閲覧するためのもの」なので、正式名称は Web Browser らしくありますが、以降もブラウザで統一します。

というわけで歴史

虚無の時代

1966年、アメリカ合衆国防総省の高等研究計画局、通称 ARPA は人類史初のコンピューター ネットワークを作る計画を開始しました。
ARPANET と命名されたそのネットワークシステムは、パケット交換方式などの現在の WWW を構成するアイデアを採用して構築されており、いわば直接のご先祖様とでもいうべき存在です。

計画発足から 3年あまりの 1969年10月29日、ARPANET はアメリカ国内 4か所をネットワークで接続し、
通信を行うというテストを実施しました。
成功すれば "LOGIN" という 5文字の単語の送受信がなされたこのテストの結果は途中でシステム クラッシュ、
結果受信できたのは前二文字の LO のみだったという、すごいんだかすごくないんだかよくわからない2結果を残しています。

最初は 4か所だった中継地点は 1973年には 40台、人工衛星との通信リンクも行われ、同時に国を超えたネットワークとなっていきました。
しかし、あくまで研究用のネットワークであり一般人が扱えるものではなく、
通信端末もコマンドライン制御でブラウザという概念はこの時点では存在しませんでした。

パソコン通信用クライアント ソフトウェア

ARPANET は専用回線を利用していたため、完全に独立したネットワークでした。
つまり、個人で同様のネットワークを構築するというのは事実上不可能でした。
しかし実は専用でないながらも、個人で利用できかつ広範囲に広がった通信回線が 1970~80年代に既に存在していたのです。電話回線です。

パソコン通信は個人用端末である PC とプロバイダーと呼ばれる通信事業者が提供するホストを、
電話回線を通じて接続するネットワークサービスです。
BBSと呼ばれる掲示板での意見交換やリアル タイム チャットなどが盛んだったとのことですが、
ホストを介さず直接個人同士で接続することもできたようです(P2P みたいな感じ)。

この時代でもまだブラウザという名称はなく、パソコン通信に参加するには
ESterm2 3 や CCT4 シリーズ、まいと~く5 と言ったパソコン通信用のクライアントソフトウェアが必要な状態でした。

なお、電話回線を用いたため、接続のためにモデムを利用するわけですが、接続の度下記動画の音声6 が世界各地で響き渡っておりました。
https://www.youtube.com/watch?v=WflkFUY9pHI

WorldWideWeb (Nexus)

WorldWideWeb_FSF_GNU.png

1989 年に、欧州原子核研究機構、通称CERN 7 にて、World Wide Webが発表されました。
そしてその情報を閲覧するために1991 年の冬に作られた、歴史上最初のブラウザが WorldWideWebです。

…何故同じ名前にしたんだ。
と、だれもが思うようなことを CERN もやっぱり思ったらしく、割とあっさり Nexus に改名されています。

WorldWideWeb (Nexus) は WWW 公開後も、しばらくはその情報にアクセスできる唯一のソフトウェアでしたが、
すでにこの時点で html を利用したスタイル シートの描画機能を備えていました。

NCSA Mosaic

NCSA_Mosaic_Browser_Screenshot.png

CERN は 1993 年に WWW の利用を解放します。その結果として、いくつかのブラウザが独自に作成されることになります。
その中で、アメリカ国立スーパーコンピュータ応用研究所 (NCSA) の研究者らが作り出した NCSA Mosaic
は画期的なブラウザとしてその名を轟かせます。
画像とテキストを同一ウインドウ内で表示させることができたこのブラウザは、ネット サーフィンするのことを
「Mosaic する」と言ったという逸話すら残しています。
この系譜は Netscape Navigator 、そして今日でも利用されている Mozilla FireFox に受け継がれることとなります。

Netscape Navigater (Mosaic Navigator および Ver.4 まで8 )

Netscape_9.0.0.6.png

Mozaic を作成したエンジニアたちはその後独立し、ネットスケープコミュニケーションズという会社を立ち上げます。
そのネットスケープコミュニケーションズが 1994 年に公開したブラウザがNetscape Navigaterです。
Netscape Navigater は、画面を分割する frame 、ローカルに情報を格納する Cookie、動的に画面を操作する LiveScript9 など、
現在のブラウザの基礎部分を備えたものでした。
最盛期には ブラウザシェア 6割を超える勢いでしたが、 Windows 95 とそれにバンドル10 された Internet Explorer との
ブラウザ戦争11 に敗れ、オープンソースのソフトウェアとして舵を変更することになります。

ちなみに Netscape Navigator という名称は分岐をしており、バージョン5は欠番、バージョン6以降はMozillaベースとなっています。
6 以降の系譜 FireFox に引き継がれることになりますが、ネットスケープコミュニケーションズ由来の 4系 については、
2002年にリリースされた ver 4.8を最後に消息は途絶えてしまっています…

Internet Exploler(Microsoft Internet Explorer / Windows Internet Explorer)

Internet_Explorer_10_screenshot.png

Windows95 と共に、WWW を一般市民により近づけた存在にして、そしてもはや役割を終え 来年 2022年6月15日に役割を終えるブラウザ、
それが Internet Exploler (以降 IE)です。
Windows PC に触れたことがあるならば見たことがない方はいらっしゃらないのではないでしょうか。
とはいっても実は、初代の IE はこれまた Mozaic をもとに開発されたもので、
1~2年ごとにメジャーバージョンが上がるそこそこハイペースな速度で更新がなされたブラウザ12です。

Windows95 ~ 98にバンドルされた IE は、ユーザが他のブラウザを利用する機会を奪い、
結果として 1998年の終わりには全ブラウザの半分、2003年には 95%13 に届こうかという驚異的なシェアを誇りました。
これは 1997年に締結された、Apple14 との間で交わされた業務提携により、
Macintosh のデフォルトブラウザとなっていたことも大きく影響しています。

Mozilla FireFox (Phonex -> FireBird -> FireFox)

Firefox_89_screenshot.png

の前に

FireFox を語る前に、"Mozilla" という単語についての説明をさせて頂く必要があります。
この "Mozilla" という単語は今日ではあまりの多くを持つため、うまく意味をつかめてない方も多いのではないのでしょうか。

Mosaic と Killer の略称である Moz と Killa の組み合わせに由来したこの名称は、
打倒 Mosaic を目指していたネットスケープコミュニケーションズが生み出したものです。
時を経てこの名前は現在、ネットスケープの流れを組むオープンソースのプロジェクト "Mozilla プロジェクト"か、
この "Mozillaプロジェクト" を支援するために設立された "Mozilla Foundation" のどちらかを指すことが多いです。
Mozilla という、ブラウザ開発を含むいくつかのプロジェクト、または Mozilla という組織のどちらかを指すと覚えておけば、
差し当たって問題ありません。

以上を踏まえ

Google_Chrome_75_screenshot.png

Mozilla Firefoxは、Mozilla Foundationにて公開されたオープンソースのブラウザです。
1998 年にネットスケープコミュニケーションズは、Netscape Communicator 5.0のソースコードをオープンソース化しました。
そしてそのソースをもとに、スタンドアロンのブラウザをMozillaが作り出したブラウザが Phoenix 、となるはずでした15
なるはずだった、というのは商標権の問題でその名前を使うことが許されなかったのです。
そんなわけで、開発コードネーム Phoenix、正式名称 FireFox が 2013 年に世に出ることになったのです。

初版は 2004年にリリース、それまでIE の独壇場だったブラウザ界隈に一石を投じた存在です。
IE と比較し軽量、タブの先行採用など、ユーザビリティに長じた FireFox は盤石だった IE のシェアを 2008年までじりじりと奪う、
ブラウザ戦争での覇権を争う存在…

であったはずでした。

Google Chrome

2008 年 9月に公開された、クロスプラットフォームのウェブブラウザです。
そして 2021年現在もシェア No.1 を誇るブラウザ16でもあります。

Chromium というブラウザ コンポーネントを基盤として開発されたこのブラウザは、発表後瞬く間に他のブラウザのシェアを奪い始めます。
具体的には、2012年春には 25% 程度のシェアだったFireFox を超え 2位に、秋にはIE を蹴落としブラウザシェア首位に躍り出ます。

その理由は既存ブラウザと一線を画した17 軽快さと、UIの扱いやすさでしょう。
また、描画エンジンの規約準拠など製品としての信頼性もさながら、ポリシーによる細かいの動作の制御やバックグラウンドによる自動更新といった、
個人利用の観点でも自由度が高いプロダクトとなっています。
Chrome の中枢である Chromium は多くの派生を生み出すこととなります。

Microsoft Edge (Spartan と Chromium base)

Using_Microsoft_Edge_based_on_Chromium_source_code_to_browse_Wikipedia_Main_page_en.png

IE のシェアが落ちる中、Microsoft も新しいブラウザを作成します。
コードネーム「Spaltan」であった Microsoft Edge は、IE で採用されていた Trident MSHTML というレンダリングエンジンの後継、
Edge MSHTML 18を引っ提げて、Windows 10 にバンドルされて世に出ること になります。

…その後紆余曲折を経て19、エンジンに Chromium を採用した現行の Edge が採用されます。
これは現在も更新が続けられ、現在 96 までバージョンが更新されています。
Chromium Edge は Chromium 準拠の軽快な動作とポリシーによる細かい制御に加え、IE モードによるレガシーなサイトのサポートなど、
汎用的かつユーザビリティで非常に優れたブラウザ20 として提供されています。

そして現在

現在のブラウザのシェアとしては、
 Chromeがおおよそ半数
 Safariが30%
 Microsoft Edge(Chromium) が10%
 FireFox が 5%
といった感じのようです。

2012年に発表されていた Chrome が 10年近く 半数のシェアを担っているというのは驚くべきことなのかもしれません。
とはいっても実はChromeは 2020年 11月には 7割超えのシェアでした。1年で2割近くシェアが変動した理由を考察すると面白いかもしれませんね。

オチ

忘れてるかもしれませんがこの記事は Microsoft の Advent Calender の記事だったりします。
そして筆者はEdgeのサポートをメインでやってたりします。
そんなわけでよろしければ Chromium で生まれ変わった Microsoft Edge、とても使いやすいブラウザですので是非使って頂ければ幸いです21

さらなるオチ

なお、当初予定の Hololens2 は遊び倒して返却した後に、画像を何も残していなかったため没となりました。
知人にとってもらっためっちゃ楽しんでる私の写真が数枚残っております。Hololens2 はいいぞ…(いいぞ…

では、ここまでご拝読頂きましてありがとうございました。よい年末を。


  1. 技術で戦えないための苦肉の策。このカレンダーのストイックな技術記事の群れ怖い。 

  2. 実際すごい。あと同じ日に5文字全部を送るところまで成功している。が、昨今のデジタルネイティブにこの話をしてもビミョーな顔をされる。かなしい。 

  3. アスキー社製のクライアントソフト。処理速度が比較的速く、バイナリ転送プロトコルが充実していた、らしい。(wiki調べ 

  4. 技術評論社製の有料ソフトウェア。強力なマクロ機能を特徴としていた、らしい。(wiki調べ 

  5. インターコム社製の有料ソフトウェア。「MS-DOSも知らんと言う人でも、手軽にパソコン通信を楽しめる」というコンセプトのソフトウェア、だったらしい。(wiki調べ) 実際使いやすかったと思う(あれ? 

  6. この音が 20世紀は世界各地で聞かれていたと考えると感慨深い…なお、電話がかかってくると回線が切れるとか11時以降のテレホーダイというサービスとか話すことは山のようにある。 

  7. 最近ではらーじはどろんこらいだーでブラックホール作ったりしてる研究機関。世界を陰から牛耳ってたりタイムマシン作ったりはたぶんしてない。たぶん。 

  8. Ver4 が ネットスケープコミュニケーションズの管理下だった模様。Ver 5 は欠番。Ver 6 以降は Mozilla 系に割り当てられている。 

  9. サンマイクロがひきとってJavaScriptに改名したやつ。型無し言語。きらい。 

  10. Microsoft 創始者のビルゲイツの「WWWの普及はまだ先」との判断から、Windows 95 の初期バージョンには未搭載だった。この方針はWindows 95 発売後にすぐに転換され、OSR2 以降は関連機能が標準搭載されるようになった。 

  11. 正確には第一次ブラウザ戦争。IE vs NN の戦い。第2次は Microsoft / Apple / Google での争いを指すことが多いらしい…あれ、Mozillaは…? 

  12. とはいっても初期は評判が悪く、初代 IE である IE 1.0 は テーブルタグの表示すらできなかったとか。 

  13. 出典 : https://www.youtube.com/watch?v=es9DNe0l0Qo&t=99s みてておかしい。 

  14. 当時は Apple Computer という社名で、しかも破産寸前だった。その状態の Apple にブラウザを乗せる代わりに資金提供を申し出たのが Microsoft 。それが今や会社資本の世界 No1 & 2 なんだから世の中わからない。 

  15. ちなみに Firebird にしようとしたものの、同じ名前の RDB があってこっちも頓挫した。ちゃんと調べなよ… 

  16. 2021年12月、半分を割るかどうかの瀬戸際。 

  17. ここからさらに必要な機能のみまでそぎ落とした Iron というブラウザがとにかく軽量でよかった。たまに User-agent がらみで変な挙動をするのもご愛嬌。 

  18. IE が現在で不評なのは、レンダリングエンジンがHTMLの規約に準拠していなかったから。そしてそれをフォークした後継ということは… 

  19. なにも きかないでほしい。 

  20. なんか作為的な表現を感じてもそれは錯覚だ。いいね? 

  21. ダイレクトマーケティングというオチ。 

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