こんにちは、@snuffkinです。
量子コンピュータ・プログラマをやっています。
量子コンピュータに興味を持つ人は増えていて、関連書籍も多く出版されるようになりました。
ただ、どんな本があるのか、自分はどの本から読めばいいのか、よくわからない方も多いかと思います。
そういう方のガイドになればと思い、2020年に発売された量子コンピュータ関連書籍をレベル別の一覧にまとめました。
前提
- この記事の対象は和書だけですが、翻訳本は対象に含めます。
- 量子コンピュータに限らず、量子情報技術も対象に含めます。ただし、「量子力学」を目的とした本は対象に含めません。
- 「量子コンピュータと量子通信」のように、絶版になっていたものが復活したケースは、対象に含めません。
- 同人誌や個人出版や雑誌は対象に含めません。これらにもオススメ本はありますが、この記事としては対象外です。(これらを含めると、この記事は数倍の長さになると思います)
- 量子コンピュータを題材にした小説などは含めません。量子コンピュータ関連技術の解説をメインにしている書籍が対象です。
- 私が知る限り、すべての本を対象にしています。他意はないので、漏れていたら教えて頂けると助かります。
- ただし、春先に発売された量子コンピュータの衝撃的な本は、量子コンピュータに関する記述があまりにデタラメなため取り上げませんでした。この1冊だけは例外です。
- 私のバイアスがかかっている可能性はありますので、購入の際には他の評価も参考にするのが良いと思います。
レベル
ご自身に合った本を選びやすいよう、書籍を読むための知識レべルにより、レベル分けをしています。
あくまでも「書籍を読むための知識レべル」であり、「書籍自体の良し悪し」とは無関係です。
レベル | 目安 |
---|---|
一般向け | 極力数式は使わず、概念や歴史的な流れを中心に解説しています。 |
入門書 | 行列や確率、線形代数の初歩くらいの数式を使って解説しています。理系の大学生やエンジニア向きかと思います。 |
中級書 | 入門書と専門書の間くらい。入門書を読んだ人が次に読むと良さそうです。 |
専門書 | 特定分野の専門知識を前提としています。大学の高学年~院生くらいが対象だと思います。 |
同一レベル内では、発売日順に紹介します。
発売日が同じ場合は、書名のあいうえお順に紹介します。
一般向け
「量子コンピュータが本当にわかる!」
量子コンピュータ・ハードウェアの研究者が、現場の雰囲気を伝えつつ、一般向けに量子コンピュータを解説した書籍。
誇大宣伝がなく誠実に書かれた一般向け解説なので、オススメです。
武田俊太郎 (著)
技術評論社
https://www.amazon.co.jp/dp/4297111357
「図解入門 よくわかる最新量子技術の基本と仕組み」
ごめんなさい。読んでないので詳細は分からないのですが、Amazonに行くと画像があって本の雰囲気が分かります。
若狭 直道 (著)
秀和システム
https://www.amazon.co.jp/dp/479806159X
入門書
「みんなの量子コンピュータ」
数式を使ってちゃんと理解したいけれど、いきなり専門書を読むのはほとんどの人にとって敷居が高いです。
この本は、行列や確率の初歩くらいの知識で読めるので、入門書にオススメです。
理工系の大学生やエンジニアの方が入門するのに良いと思います。
Chris Bernhardt (著)
湊雄一郎, 中田真秀 (監修・翻訳)
翔泳社
https://www.amazon.co.jp/dp/4798163570
「動かして学ぶ量子コンピュータプログラミング」
ごめんなさい。読んでないので詳細は分からないのですが、雰囲気的に入門書くらいかと思います。
また、プログラミング寄りの書籍だと思います。
Eric R. Johnston, Nic Harrigan, Mercedes Gimeno-Segovia (著)
丸山 耕司 (監修), 北野 章 (翻訳)
オライリージャパン
https://www.amazon.co.jp/dp/4873119197
中級書
「米国科学・工学・医学アカデミーによる量子コンピュータの進歩と展望」
量子コンピュータの状況を米国科学・工学・医学アカデミーがまとめたレポートを翻訳したもの。
状況がまとまっており、データ等は出典が明記されているので、客観的な状況を把握するのによいと思います。
Emily Grumbling, Mark Horowitz (編集)
西森 秀稔 (翻訳)
共立出版
https://www.amazon.co.jp/dp/4320124553
「量子コンピューティング: 基本アルゴリズムから量子機械学習まで」
入門書と専門書のレベル差は、かなりあります。
この本はその間を埋める書籍として執筆されました。
量子コンピュータは進展が著しいため、古い専門書だとここ数年の話題が載っていなかったりします。
この本は、ここ数年の話題を含め、幅広い量子コンピュータの話題を扱っています。
入門書を読んだ方が次に読むのにオススメです。
Chris Bernhardt 著
情報処理学会出版委員会 監修, 嶋田義皓 著
オーム社
https://www.amazon.co.jp/dp/4274226212
専門書
「14日で作る量子コンピュータ―」
「14日で作る」というタイトルで、中を開くとかわいいイラスト。ですが、実は硬派な本です。
量子力学をある程度知っていることを前提とし、シュレディンガー方程式を使い、量子コンピュータをシミュレーションします。ラビ振動とか、自分で書きます。
この本を理解して自分で実装すれば、かなり量子コンピュータの物理について深まりそうな気がします。
(私は立ち読みレベルです)
遠藤 理平 (著)
カットシステム
https://www.amazon.co.jp/dp/4877834710
「耐量子計算機暗号」
計算量や暗号の基礎を説明した後、耐量子計算機暗号についてガッチリ解説した本です。
(本屋でパラパラ見た程度なので、詳しく紹介できません。。。)
縫田光司 (著)
森北出版
https://www.amazon.co.jp/dp/4627872119
「量子コンピュータによる機械学習」
ここ数年、活発に研究されている量子機械学習に関する書籍です。
機械学習、量子コンピュータの基礎を解説したあと、符号化などの量子機械学習に必要な基礎技術を解説しています。
が、機械学習や量子コンピュータの基礎を知らずに読むと、跳ね返される可能性が高いと思います。
しっかりと基本技術を学んだあと、終わりの方に量子機械学習が登場します。
豊富な参考文献があるため、細かなアルゴリズムが省かれている箇所は原論文を読みましょう。
量子機械学習に関する話がまとまっているので、この分野を学びたい方は必読だと思います。
Maria Schuld, Francesco Petruccione (著)
大関 真之, 荒井 俊太, 篠島 匠人, 高橋 茶子, 御手洗 光祐, 山城 悠 (翻訳)
共立出版
https://www.amazon.co.jp/dp/4320124626
「デモクリトスと量子計算」
変わった表紙の本で、中身も口語で軽快な雰囲気ですが、大学の授業をベースにしたバリバリの専門書です。
「定義→定理→証明」みたいにカッチリとは書かれていませんし、すぐに話が脱線するので、授業の雰囲気をそのまんま書籍化したんだと思います😄
難しいことは抜きで、ひとまず読み物と思って読むのもアリなんじゃないかと。(私はその方向で読んでいる途中です)
スコット・アーロンソン (著)
森 弘之 (翻訳)
森北出版
https://www.amazon.co.jp/dp/4627872011
「量子エンタングルメントから創発する宇宙」
ごめんなさい。読んでないので詳細は分からないのですが、量子エンタングルメントを超弦理論などに応用する話のようです。
須藤 彰三 岡 真 (監修)
高柳 匡 (著)
共立出版
https://www.amazon.co.jp/dp/4320035437
「共振器量子電磁力学: 量子コンピュータのハードウェア理論」
ごめんなさい。読んでないので詳細は分からないのですが、量子コンピュータのハードウェアについて書かれた和書はほとんどないと思うので、ハードウェアに興味がある方によいのではないかと思います。
越野 和樹 (著)
サイエンス社
https://www.amazon.co.jp/dp/478191487X
「量子コンピュータによる量子化学計算入門」
量子コンピュータによる量子化学計算について解説した唯一の和書。
この分野を学びたい方は必読だと思います。(といっても、私も読み始めたばかりですが😅)
杉﨑 研司 (著)
講談社
https://www.amazon.co.jp/dp/4065218276
おわりに
という訳で、全13冊の一覧でした。
2020年は、もっとも量子コンピュータ関連書籍が出版された年になったのではないでしょうか。
2021年も多くの量子コンピュータ本が出版されると思うので、楽しみですね😄
それでは、また来年末にお会いしましょう!
(本当にまたやるか、わかりませんが)