ADPISA-M(中級レベル:ITSS 2-3 相当)
ADPISA-M(Aoyama Development Program for Information Systems Architect: アドピサ-エム) は、IT 系の職種に就いている社会人を対象とし、DX 時代に必要な情報システムの基礎を身につけ現状の自分の業務に活用できる人材を育成する目的で、青山学院大学社会情報学部が実施する履修証明プログラムです。文部科学省のDX推進事業に採択されており、2022 年度は 5 万円で全ての科目が受講できます。
ADPISA-M には、次のような特徴があります。
● システム開発における上流工程を中心に学習できる(下流工程のプログラミングなどの授業はない)
● 6か月間弱(2022年10月~2023年3月)、土曜日に受講することにより、青山学院大学が発行する履修証明を取得可能
● 対面およびリモート講義を組み合わせ。対面講義は、都内からの通学に便利な青山学院大学青山キャンパスをメインに実施
● 様々な専門領域で活躍する第一人者の講義を受講できる
● 2022 年度の ADPISA-M は文部科学省のDX推進事業*1に採択されている
*1 DX等成長分野を中心とした就職・転職支援のためのリカレント教育推進事業
ITSS とは、「ITスキル標準」とも呼ばれる経済産業省が策定したIT人材に対するスキル体系を指します。国家資格だと、ITSS レベル 2 が「基本情報技術者」相当、ITSS レベル 3 が「応用情報技術者」相当となります。実務経験 1 ~ 5 年くらいの IT 技術者を対象としていることがわかります。
授業の対象者がある程度、IT業界を経験して、これから上流工程を学びたいという方を対象としています。そのため、IT業界の経験がない方や、プログラミングを学びたいなどのニーズの方は、ADPISA-E(エントリレベル)の受講を検討されるとよいかと思います。また、ほぼ全ての授業でグループワーク、ディスカッションがあるため、コミュニケーションが苦手というい方は苦労するかもしれません。その弱点を克服するという目的で参加してもよいかもしれませんが。
参考までに私のスペックは以下のようになります。
私のスペック
● 30代後半
● 情報系の学部と大学院を修了
● IT業界に10年ほど、非IT業界(教育関連)で6年ほどの経験者
● ITコンサル寄りの仕事をしている
● 所有資格:応用情報技術者他、ベンダー系資格多数
説明会・願書提出
ADPISA-M の説明会が ZOOM で開催されていましたので参加しました。希望者が 20 名弱ほど参加されていました。説明会後に Web で応募書類(今までの職務経歴・志望理由)を作成して提出しました。9/17 締切ですぐに合格通知がきました。説明会は Youtube から視聴することが可能です。
日経新聞の記事によると 2021年度 の ADPISA-F(初級クラス)募集では 30 人の定員に 142 人が応募したとあるので倍率 4.7 倍であったことがわかり社会からの注目度も高いと考えられます。前年度の ADPISA は 2.6 倍でした。
オリエンテーション(オンライン)
キックオフの前にオリエンテーションがありました。オンラインで実施しますが、内容は自己紹介、連絡事項、質問対応となっていました。事前に Slack のグループに参加しました。様々なバックグランドを持たれている方が集まっておりました。30代~40代の方が多い印象です。
キックオフ・科目履修ガイダンス(通学)
1時間半ほどの通学になりますが、青山キャンパスでキックオフ・科目履修ガイダンスを受けました。講師と受講生の自己紹介、各科目の紹介。履修証明プログラム受講証の発行。学内ディレクトリへのアクセスなどしました。
● 各科目紹介
● 受講生の自己紹介(1人1分 × 30人)
● 履修証明プログラム受講生証の発行(学生証に相当し、図書館も利用可能)
● 情報処理関連選択科目群の履修方法(Udemy)
● 学内ディレクトリにアクセス(AGWLAN)
せっかく登校したので、青山学院購買会で青山学院グッズを購入しました。オリジナル文具からTシャツやパーカーなどのアパレル品まで様々取り扱っています。

大学図書館や礼拝堂など様々な施設があるので学内を散歩するのもよいです。

さて、授業のスケジュールは次のようになっています。毎週土曜日が丸1日授業ですが、それ以外の日も予習・復習そして、情報処理関連選択科目群(Udemy)を受講する必要があり忙しいです。
情報システム(中級編)(通学)

通学日がちょうど、青山祭(学園祭)の日でしたが、この日も通常授業です。事前に astah* professional のインストールをしてきます。このツールはモデリングツールとしては有名ですよね。授業の担当講師は、宮川裕之先生です。学部時代に会計の授業でお世話になってました。
授業では、学校の授業のテーマにした DFD を拡張する形でグループでプロセスやデータストアを検討しました。さらに、ISアーキテクトとしてどのようなスキルが必要か学ぶことができました。朝 9:20 〜 夜 18:10 まで授業で流石に疲れましたが、学びが多い1日になりました。
【担当講師】
宮川裕之先生
【シラバス】
情報技術の進歩も他の産業の興隆と同様にモノの開発からマーケット指向を経て価値創造の段階へと変化していることについて振り返ります。併せて、それぞれの段階における情報人材の能力について触れます。DXの本質である価値創造につながる情報の仕組みを構想し実現していくために求められる専門性について考察するとともに受講者一人ひとりのキャリアアップに必要な学びのプランが立てられることを目標としています。
【使用ツール】
● astah* professional(青山学院大学のライセンス)
お昼休みにチームメンバーとランチに行きました。こういった繋がりができるのも通学制の良いとこです。青山周辺はおしゃれなお店が多く、行列ができているお店もありました。サンドウィッチで腹ごしらえして午後の授業もグループワークです。

DX 時代の情報技術者のライフデザイン(オンライン)
キャリアデザインについて将来像が具体的に考えられる授業でとてもよかったです。現在の 15 年後の未来の自分がどのようになっているか考える機会ができ、とても参考になりました。授業では「パケットリスト」を作成する演習がありました。パケットリストとは、死ぬまでにしたい 100 のことを書き留めるノートのことで、「自分のやりたいことが明確になる」「可視化することで、達成へのモチベーションが上がる」「日々の行動が変わる」といったメリットがあります。時間内に 100 個書くことはできませんでしたが、これからの自分の人生を考えていく上で完成させてみたいと思います。
【シラバス】
受講者が情報システムアーキテクトとして今後の生き方・働き方を自分でデザインできるようになることを目標とする。前半では、デジタルトランスフォーメーション(DX)時代における情報技術者の位置づけや、今後の技術革新や時代の変化について学ぶ。後半では長い生涯における多様なライフイベントを前提として、キャリアと学びをどのように継続していくべきかを考える。
【1回目】
● わたしもあなたも生きやすい・働きやすい社会・職場とは(1)
● わたしもあなたも生きやすい・働きやすい社会・職場とは(2)
● 仕事と育児・介護との両立
● キャリア・ライフプラン作成準備(1) ありたい自分とは?
● キャリア・ライフプラン作成準備(2) 学びを継続する
● キャリア・ライフプラン作成準備(3) バケットリスト
● キャリア・ライフプラン発表
【2回目】
● DX時代でのISアーキテクト
● 目標とするISアーキテクトとは?
● 転職という選択肢(三輪先生の講演)
● 現状の自己評価
● 自律的なキャリアデザイン
● 変化のきっかけ
アジャイル開発入門(オンライン)
アジャイル開発におけるフレームワーク「スクラム」をグループワークを通じて学べました。スクラムは、野中郁次郎先生の「The New New Product Development Game」という論文で紹介され、世界的に広まったソフトウェア開発の方法論です。日本人が発案したフレームワークが世界に広がっていることはとても嬉しいです。
【シラバス】
アジャイル型のソフトウェア開発プロジェクトにおける計画、見積り、追跡、コントロールについての知識と実務的なスキルを習得できます。アジャイルフレームワークの一つであるスクラムの基礎を学びます。
担当:ラーニング・ツリー・インターナショナル株式会社
日数:2日間
形態:オンライン
PDU:14PDU (Ways of Working: 12PDU, Power Skills: 0PDU, Business Acumen: 2PDU)
● アジャイルプロジェクトマネジメントの紹介
● 不確実性とリスクに対応するためのスクラムの基本
● アジャイルプロジェクトの計画
● 開発チームの自己管理能力の育成
● 変更管理
● 変化のきっかけ
情報×経営による価値創造デザイン(通学)
経営学的視点で「中堅大学のDX化」をテーマにグループワークを実施しました。経営学の観点から情報システムを考えたことはなかったので、ゲーム理論的な分析方法など学べてよかったです。
前半は座学中心に情報システム(中級)の授業の振り返りと、今回のグループワークのテーマについての解説がありました。そして、皆木先生から経営学的な観点で、ゲーム理論や統計学についての授業を受けました。後半は各グループに分かれて、課題を解決するための提案書を作成して発表を行いました。
お昼ご飯はグループで学食(17号館食堂)に行きましたが、私はイチナナカレーを注文しました。300 円という安さも驚きですが、味も抜群でした。
【1回目】
・オリエンテーション
・広義の情報システムデザインの復習
・経営学的視点からの問題解決事例の解説
【2回目】
・ゲーム論的視点からの分析
・グループワーク&ヒアリング
【3回目】
・グループワーク&ヒアリング(続き)
・プレゼンテーション&レビュー
・まとめ、気づきシート記入
【シラバス】
「情報システム(中級編)」での学びをもとにした情報システム学的視点に加え、以下の経営学的視点からの学びを踏まえ、ケーススタディをとおして、新たな価値創造につながるDX提案の模擬的な実習を行います。経営学的視点の1つ目は、営利企業と非営利企業について扱います。企業と病院を事例に,それぞれが抱えていた問題をいかに解決したのかについて経営学を用いて解説します。また、ゲーム論的視点から利害関係について考えます。そこでは、中小企業と大企業を題材に、市場シェアを得る方法について説明します。以上の観点をもとに、ケーススタディを進めます。ケースの説明の後、グループワーク形式での実習を進めます。このケーススタディではステークホルダーへのヒアリングをとおして、各グループの提案検討に必要な情報を獲得していく方式を取ります。
セキュリティ技術(オンライン)
サステナブルとセキュリティが始めは結びつきませんでしたが、企業が事業継続する上で、サステナブルとセキュリティを組み合わせて考えなければならないことを理解しました。セキュリティの技術というよりは、情報セキュリティの概念や攻撃された場合にどのような脆弱性があるのかなどを考えました。
担当:ラーニング・ツリー・インターナショナル株式会社
日数:1日間
形態:オンライン
【シラバス】
本科目では、サステナブルな組織が求めるサイバーセキュリティの要件を明らかにすると共に、それらに適応したセキュリティ・アーキテクチャの導入の戦略について理解する。
● サステナブルな組織における企業ITの課題
● 近年のサイバー攻撃に適応したセキュリティ・テクノロジー
● ゼロトラストセキュリティとクラウドセキュリティのアーキテクチャ
● DevSecOpsモデル
● ケーススタディ (セイバーセキュリティの運用事例と演習)
まとめ
今回、前半の3か月(10月後半~1月前半)について、私の経験をもとに記事を書かせていただきました。ADPISA-M は、ある程度のIT業界の経験がある方にとっては非常に有益な知識・技能を身に着けスキルアップが図れると思いました。残り半分となりましたが、全授業をしっかり受講して修了を目指したいと思います。
学んだこと(前半)
1.情報システムの概念とモデリング手法
2.キャリアデザインを通した具体的なキャリア・ライフプランの作成
3.アジャイル開発(スクラム)の基礎
4.ゲーム理論や統計的な考え方などの経営的な考え方を情報システムに適用する方法
5.サステナブルな組織におけるセキュリティ対策方法
参考サイト
次年度以降の募集については、以下のサイトで確認してください。
私の仕事がなくなる前に 事務からIT、学び直し急ぐ(日本経済新聞)2021年12月10日
青山学院大学 DX社会を牽引する情報システムアーキテクトの育成
紹介動画
ADPISA-E(エントリレベル:ITSS 1 相当)
ADPISA-H(上級レベル:ITSS 4-5 相当)
おわり。