こんにちは。スキルアップAI編集部です。
近年、エッジAIの必要性が増してきており、それに伴って、AIを動作させるためのエッジデバイスの多様化が進んでいます。インターネットで検索するだけでもわかるように、非常に多種多様な製品が販売されていますが、どういう用途のために、どういうデバイスを使えばいいのか、パッと最適なものが思いつく方は少ないのではないでしょうか?
そこで本記事では、エッジデバイスの流行りと簡単なメリット・デメリット・適した用途を紹介したいと思います。エッジデバイスとして広く利用されているものとして、シングルボードコンピュータとマイコンボードがあり、それぞれに得手不得手があります。この記事を読み、使用用途に最適なエッジデバイスを判断する際の参考になさって下さい。

<目次>
1.シングルボードコンピュータ
2.マイコンボード
3.おわりに
4.もっと詳しく学びたい方へ
1. シングルボードコンピュータ
本節で紹介するのは、主にLinuxやUbuntuなどのOSを活用することを主眼においたエッジデバイスです。単純なデータ処理のみではなく、AIによる推論を行う場合や、これ一つである程度全てを済ませたいというニーズがある場合に利用すると良いでしょう。
Raspberry Pi 4
メリット
- 入出力が豊富(HDMIやUSBポート,GPIOピンなど)
- ユーザが多いことから国内外問わず資料が豊富で、分からないことを調べやすい
- カメラモジュールやGPSモジュールなど、拡張モジュールが大量に販売
- 外付け計算ボードが販売されており、ある程度の性能拡張が可能
- BLEやWi-Fiなどを完備しており,PCとして利用が可能
デメリット
- 周辺機器まで揃えるとやや高価
- デバイス性能や処理速度が十分でない場合がある
適した用途
- 画面表示を伴う処理や、PC代わりに任意のLinux用ソフトウェアを利用したい場合
- 何をするかは厳密に決まっていないが、とりあえず開発を始めてみたい場合
Raspberry Pi zero W
メリット
- UbuntuなどのOSが動作するデバイスとしては非常に小型(大きさはフリスクケース程度)
- 入出力以外は、Raspberry Pi 4などとほぼ同等の機能を持つ
デメリット
- 処理速度が遅い
- AIモデルを使うにはメモリが不十分
適した用途
- Raspberry Pi 4を利用したいが、サイズの制約から利用が不可能な場合
Beagle Boneシリーズ
メリット
- 処理速度(CPU性能、メモリ性能)が同価格帯のRaspberry Piよりも高い
デメリット
- 画面出力解像度が固定であり、映像のエンコーディング能力に乏しい
- Raspberry Piよりも普及していない(解説資料が少ない)
適した用途
- 画面出力を伴わない、もしくは画像処理に対する制約が少ない場合のRaspberry Piの代替
Beagle Boneシリーズは、Raspberry Piを意識して開発された製品です。Raspberry Piをリスペクトした製品としてはこの他に、「Banana Pi」や「Orange Pi」などの製品が各社から販売されています。
ただ、いずれの商品も海外ECサイトでの販売のみに限られている場合や、技適(技術基準適合証明)マークを取得していないことから無線通信ができない場合があり、あまり実務向けではありません。
一方で、これらのリスペクト製品は、Raspberry Pi の欠点(主に処理速度)を改善しているものが多く、非常に限られた状況では選択肢の1つになります。
いずれにしても、電波法に抵触しないように、技適マークを取得しているものを用いた開発が必要です。
NVIDIA Jetson シリーズ
メリット
- GPUが搭載されており,画像処理が非常に早い
- GPU開発メーカであるNVIDIAが販売しており,深層学習向けのフレームワークが非常に充実している
- ユーザ数が多い
- 大型のJetson Xavierに加えて、小型・安価のJetson Nanoなどが販売
デメリット
- 比較的高価
適した用途
- サイズや価格の制約が少ない場合
- 高度な画像処理を必要とする場合
- 高度な深層学習を実施する必要がある場合
Ticker Board
メリット
- Raspberry Piと同サイズのボードにGPUを標準搭載しており、画像処理に強い
- 動作が安定している(回路保護機能が充実)
デメリット
- Raspberry Pi よりは高価
- 入手がやや難しい(個人よりも法人向け)
適した用途
- 熱暴走や瞬電が起こりやすい環境下で、動作に安定性が求められる場合
- PoCやプロトタイピングで開発したRaspberry Pi 向けプロジェクトの製品化
シングルボードコンピュータのまとめ
LinuxをベースとしたOS上で動作するアプリケーションを用いたシステム開発という条件だけであれば、とりあえずRaspberry Piシリーズを利用するのが良いでしょう。Raspberry Pi は特にプロトタイピング用途に向いています。
しかし、開発途中で性能が物足りなくなったり、製品化を目指すようになった場合には、他のボードを試してみるのがおすすめです。
特に、近年重要視されつつある深層学習モデルを用いた開発では、Raspberry Pi を産業目的に使用することは効率的ではないことが多いです。
そのため、Raspberry Pi 上で動作確認をしてから、最新のJestonシリーズを利用してプロダクトにするということも視野に入れると良いでしょう。
2. マイコンボード
本節で紹介するのは、より低レベルの処理を行うための、OSを持たないエッジデバイスです。「低レベルなら選ぶ必要がないのでは?」と思うかもしれませんが、ここでいうレベルとは、処理のレイヤーのことを指します。低レベルな処理を得意とするマイコンボードは、非常に高速に、決められた処理をこなし、接続されたセンサの値を読み取ることができます。例えば、工場内のセンサデータを集めるだけの用途であれば、マイコンボードでも十分です。
マイコンボードは、単体ではなく、PCや上述したOSを伴うシングルボードコンピュータに接続して利用することが一般的です。
Arduino シリーズ
メリット
- 教育用としても利用されており、参考資料が非常に多い
- 関連製品が多く、より高速なArduino Mega、Dueやより小型のArduino Micro、服などに取り付けることを目的としたLilyPad Arduinoが存在する
- プログラム開発用パッケージが豊富
- GPSやマイクをはじめとした拡張モジュールが豊富
デメリット
- 性能が比較的低く、性能が高いシリーズはやや大型
適した用途
- 高い性能が求められていない場合
- プロトタイピング
mbed シリーズ
メリット
- Arduinoシリーズよりも小型
- クロック(処理速度)やメモリ容量で優れている
デメリット
- ブラウザで開発することから、インターネット環境がないと開発できない(利用はオフラインでも可能)
適した用途
- Arduinoよりも複雑な処理が必要な場合
- 小型かつ高機能なマイコンボードが必要な場合
ESPシリーズ(ESP32を搭載したマイコンボード群)
メリット
- 最初からWi-FiやBluetooth接続が可能
- Arduinoと同じ開発環境を利用できるため、プロジェクトの流用が可能
デメリット
- やや消費電力が大きい
- 比較的新しい製品が多く、情報が少ない場合がある
適した用途
- Wi-FiやBluetoothなどの通信を利用したい場合
- Arduinoと同じ開発環境をが利用できるため、既存のArduinoプロダクトを流用したい場合
M5Stackシリーズ
メリット
- マイコンボードでは異色の大型ディスプレイを標準搭載
- ボタンやマイク,IMU(加速度センサなど)などの特殊な入力機器を利用可能
- ESP32を備えており、Arduinoと同じ環境で開発可能
- 拡張モジュールが豊富で繋げやすく、初心者に優しい
デメリット
- マイコンボードとしては大型
適した用途
- ボタンやマイクなど、ユーザが入力した情報を用いた処理が必要な場合
- プログラミング学習用
M5Stick V
メリット
- 小型ディスプレイを搭載
- 深層学習用の処理ユニット(KPU)を内蔵
- 比較的小型
デメリット
- 付属のコネクタ以外でのセンサ追加などの拡張が難しい
適した用途
- 安価かつ小型のデバイスで画像処理が必要な場合
マイコンボードのまとめ
数年前までは、マイコンボードといえばArduinoかmbedの2択でした。
しかし、ESP32というプロセッサを搭載したマイコンボードが販売され始め、更には、より初心者向けに、センサとマイコンボードがオールインワンとなったM5StackやM5Stickシリーズが発売されました。初心者向けといっても、その扱いやすさとできることの多さから、非常にファンが多い製品です。特に、M5Stick Vとその派生製品は、エッジデバイスで画像処理を行う場合のスタンダートなマイコンボードとなりつつあります。
3. おわりに
皆様の用途に合いそうなエッジデバイスは見つかりましたか?
本記事で紹介した製品の中で、エッジAIの構築におすすめなのは、「Raspberry Pi」、「Jetson」、「M5 Stick V」とそれらの派生製品です。
エッジデバイスでは各種センサデータを集めるのみで、AIの推論は別のPCで行う場合ですと、「Arduino」、「mbed」とそれらの派生製品が向いています。
ただし、処理速度や消費電力・発熱などは実際に動作してみないと分からない事が多いため、本記事で紹介したものを実際に購入して色々と試してみてください。
4. もっと詳しく学びたい方へ
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