SC(非公式) Advent Calendar 2018 8日目です。
せっかくなので、プログラミングやSIとかとは違う視点として、ロジカル・シンキングを扱いたいと思います。
1.はじめに
なぜロジカル・シンキングは必要なのか
- 考えや意見をわかりやくに相手に伝え納得してもらい、自分の思い通りに動いてもらう。これはいかなるビジネスマンにとっても必須のスキルではないだろうか。
- その考えや意見を論理的に構成する技術が、ロジカル・シンキングである。
「ロジカル・シンキングっていかにもコンサルっぽい。さっそくかぶれちゃって。」
というお言葉を頂戴しそうですが、はたしてそうなのでしょうか?
リード文にある「考えや意見をわかりやくに相手に伝え納得してもらい、自分の思い通りに動いてもらう。」は、コンサルティング業界に限らず、広く一般的に求められる技術と考えます。
例えば、SIerですと以下のような場面があるのではないでしょうか。
- バグの影響調査結果、お客さんにどのように説明したら納得してくれるかな・・
- 工期延長の打診、お客さんにどのように説明したら納得してくれるかな・・
- ぶっちゃけ瑕疵なんだけど、お客さんにどのように説明したら仕様って納得してくれるかな・・
これらを実際に説明する際、「○○である。したがって△△です。」と論理を組み立て説明しますよね。
ロジカル・シンキングはその論理の組み立て方を体系的にまとめたものです。
以下ではその方法論を例を交えつつ説明します。本記事が、みなさんが論理を組み立てる際の参考になれば幸いです。
ちなみに上の3点は全て私の実経験です。最後のはビジネス上の駆け引きってことにしましょう。
ゴール
- ロジカル・シンキングの概要を把握し、また実践できるようになることを目指す。
- 架空の事例を用いて、ロジカル・シンキングを説明していく。
以下の事例を基に、ロジカル・シンキングの概要を説明していきます。
(最近、ポケベルサービスが終了するというニュースにインスパイアされた事例です。)
また先にも述べましたが、みなさんが論理を組み立てる際の思考法として活用できるようになることをゴールとしています。
[事例]
時は1998年度の冬、
A社のポケベル事業部に勤めるあなたは、事業部長から呼び出され以下の課題を突きつけられた。
「来年度以降、ポケベル事業が拡大していくのか否か、君の意見を聞かせて欲しい。」
その課題に答えるべく、あなたは2点の情報をまずは収集した。
さて、ここからどのような結論をどういった論理で組み立てようか・・
(出典:総務省 情報通信統計データベース)
(2)当社ポケベル事業の売上高推移
(出典:A社の有価証券報告書)
自己紹介
本題に入る前に、簡単な自己紹介をします。
- 〜2018/6 SIer
非公式ながらもこのAdventカレンダーを企画している組織で、Webアプリケーションの要件定義・設計・開発と一通り経験させていただきました。なので、OB枠?として図々しくも投稿させていただきます・・
御社に在籍していた時は、横断プロジェクトとして研修の運営やら採用やらを手伝わせてもらっていました。なので、採用関連のHPに未だに写真が・・消してほしい・・
- 2018/7〜 コンサルティング・ファーム
コンサル!?と思うかもしれませんが、今やITが関係するコンサルティング業務がほとんどです。私はIT関連のコンサルティングを行う部署に配属され、今は官公庁での基幹システム刷新支援として要件定義とベンダ調達の仕事をしています。
ロジカル・シンキングについては研修で学び、また日々の業務でも必須のスキルとなっています。例えばRFIで募った意見の分析資料を作る時など、何度やり直しをさせられたか・・したがって私もロジカル・シンキングを学習中の身です。
余談ですが、コンサルティング業界が激務っていうのはどうやら本当のようです。
私の上司など、深夜5時(もはや朝)まで仕事という日々が数ヶ月続いたとか・・
ちなみに私は、36協定をスレスレで守っている範囲なのでまだ余裕です。
- その他
最近、ホットヨガを本格的に始めようか検討しています。
レッスンを終えると、体が軽くなりまし非常にさっぱりします。おすすめです!
あと、ロードバイクが欲しいです。
2.ロジカル・シンキングで論理を構成する
どのような方法で論理を構成するか?
- ロジカル・シンキングは、以下のStep1、2を通じて論理を構成する技術である。
- Step1、2を通じて以下図の構造を作成する。
まずは全体像を俯瞰したいと思います。
結論からいうと、Step1、2を通じて以下の構成図を作成していきます。
「課題」に対して「結論」があり、その「結論」を支える「根拠」がWhy So?/So What?、MESEな関係を作っていきます。(詳細は後述)
以下では、事例を基にStep1、2を説明します。
Step1:課題を確認する
- 論理を構築する前に、自分が相手に答えるべき課題は何なのかを確認することが肝要である。
論理を構成する前に、必ず「課題」を確認し定義します。
様々な調査や検討を行い、いざ説明するとなった時に、自分のそれまでの「努力」を説明してしまうことありませんか?
例えばバグの影響調査に対する回答として、
「○○について、こういった検証を行い・・、さらに△△の情報を参照するとこうなり・・、加えてこの場合は・・」
こういう報告を受けたことがあるのではないでしょうか。
この場合は、「わかった。で、バグの影響はあるのか?ないのか?」と聞きたくなります。
説明している人は「課題」を見失ってしまったようですね。
これは、ロジカル・シンキングに限らず重要なことです。
例えば、メールや会議などです。(参考書籍)
今回の事例における課題は、「来年度以降、ポケベル事業が拡大するのか否か、意見を述べよ。」です。
我々は見失わないでいきましょう。
Step2:ロジックツリーで論理を構成する
- はじめにStep1で確認した課題に対する「結論」を構成する。
- つぎに「結論」を支える「根拠」を挙げ、「Why So?/So What?」で論理の飛躍や矛盾がないかを確認する。
- 最後に「根拠」に漏れやダブリがないか、すなわちMECEとなっているか、で妥当性を確認する。
本筋からずれてしまうので割愛しますが、いきなり「結論」を構成します。
いわゆる仮設思考という考え方・仕事の進め方です。(参考書籍)
結論を構成した上で、それを支える根拠を検討していきます。
結論を確認する
- 「課題」に対する「回答」になっているのかを確認する。
先のバグの影響調査ではないですが、与えられた課題に対して適切な回答になっているのか確認します。
今回の事例では「拡大するか否か」を聞かれていますので、回答としては以下の2パターンのみです。
- 「〇〇である。したがってポケベル事業は拡大すると考える。」
- 「〇〇である。したがってポケベル事業は縮小すると考える。」
間違っても、先に示したグラフなどの情報を細かく説明するのは適切な回答ではありません。
今回はYes or Noで聞かれていますので、いずれかで答えます。
業界の契約件数が減少に転じ、当社の売上高もそれに比例する形で減少していることから、
以下の通り結論を出します。
Why So?/So What?で論理の飛躍や矛盾を確認する
- 「なぜ、そう言えるのか?(Why So?)」を確認する。
- 「すなわち、○○と言えるのか?(So What?)」を確認する。
次に結論を支える「根拠」を構成します。
その際に留意すべきは、論理の飛躍や矛盾が生じていないかです。
それを「Why So?/So What?」という合言葉で確かめます。
上での結論を支える根拠を「1.はじめに」で提示した資料を基に2つ追加しました。(本節の下部に追加)
「Why So?」
上位にある結論に対して「なぜそのように言えるのか?」とした自問した際に、「根拠」が「なぜなら○○だからだ」と言えるかを確認します。
すなわち、根拠の妥当性を検証します。
結論の「来年度は縮小する」という意見はなぜ言えるのかというと、
「ポケベルと携帯電話の契約件数推移」から市場の縮小が予見され、
市場の縮小に連動する形で売上高も減少しているからからだ、という論理となる。
細かいツッコミはさておき、大筋でなんとなく根拠として飛躍はないと思われます。
例えば、「ポケベルと携帯電話の契約件数推移」の根拠だけでは、
業界全体は沈むかもしれないが、当社のシェアが拡大しそれが事業拡大へと繋がる可能性が指摘されます。
「So What?」
下位にあたる根拠から上位の結論が導けるのかを確認します。
「○○である。すなわち△△と言える」と根拠から結論を抽出できるかということです。
こちらも、市場の全体の縮小とそれに伴う売上高減少から、
A社のポケベル事業は縮小していくという結論が抽出できるのではないでしょうか。
MECEで根拠の漏れ・ダブリがないかを確認する
- 根拠に漏れ・ダブリがないかを確認し、論理を強化する。
- MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)=相互に重なりなく、漏れがない状態
最後に、根拠に漏れやダブリがないか確認します。
この漏れやダブリもない状態をMECEといいます。
根拠に漏れやダブリがある場合、その論理の信憑性が疑われます。
例えばバグの影響調査で、全100機能のうち99で影響がないことが確認できたので問題ありません!
と言われてもその論理は信用できないですよね?
ちなみにSWOT分析やらマーケティングの4P、3Cといった所謂「フレームワーク」というものは、
概ねその要素について検討すればMECEになるというものです。
例えばマーケティング戦略を検討する際に、4P(Promotion/Price/Product/Place)に基づいて検討すれば大きなヌケモレのない戦略ができあがりますよーって感じです。
そして今回の事例では、すでにお気づきかもしれませんが漏れがあります。
市場・顧客、当社については分析していますが、競合の視点が漏れています。(マーケティングの3Cというフレームワーク)
例えば、競合他社はポケベルの将来を悲観的に考えず積極投資を行うというFactがあった場合に、これまでの論理では結論を支えきれません。
事業部長から「競合他社が投資しているということは、ポケベル事業の拡大を予想してのことではないのかね?」と突っ込まれてしまいます。
そこで競合の視点も加えて、論理を補強しました。
(競合に係る資料は、新たに追加したものです。非常に都合の良い資料であることはご愛嬌。)
細かいツッコミはさておき、よりそれっぽい意見となったのではないでしょうか。
3.おわりに
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
特にMECEの話など、だいぶ省略した説明となっていることをお詫び申し上げます。
本記事の目的は概要の理解と実践なので、論理を構成する際のヒントとして活用いただければと思います。
ポイントは以下4点です。是非意識してみてください。
- 課題を確認する。
- 課題に適した結論をだす。
- 論理の飛躍や矛盾をWhy So?/So What?でチェックする。
- 根拠の漏れやダブリをMECEでチェックする。
また詳しく知りたい方は、Appendixに参考書籍を載せているのでご確認ください。
それでは、良いロジシンライフを!
Appendix
参考書籍