Storytelling with Data: A Data Visualization Guide for Business Professionals という本を読んだので、個人的な解釈をしつつ知見をまとめてみます。
まえおき
- 記事内ではごく一部の知見しか触れません。書籍も読みやすく他にも多くのことが書かれているので書籍の方も是非ご確認ください。
- 書籍だと例として色々なグラフ画像が記載されていますが、本記事では用意しようとするとかなり時間がかかってしまうので省きます。
私の英語力が残念な感じなので、間違って解釈している点などを詳しい方に優しくマサカリを投げていただけることを期待しております。
Storytellingってなに?どんな本なの?
まずはStorytellingに関しては引用致しますので、必要に応じてそちらの記事をご確認ください。
googleで”why is storytelling important?”等と検索すると、さまざま関連記事がヒットし、プレゼンにおける効果的なノウハウとしてストリーテリングが出てきます。
アメリカでは人々に次のアクションを起こさせるプレゼンには”Storytellingは必要な要素”であるとされています。
よく言われている”Storytelling”ってどういうものなのだろうか
今回の本でいうと、with Dataとタイトルにある通り、プレゼン以外にもデータビジュアライゼーションも絡んだ内容になっています。
分析結果などを事業部の方に共有する際に、どういった内容だとすぐに理解できて、伝えたいところをうまく伝えられて、見やすいデータビジュアライゼーションになるのか、ということが書かれています。
また、「円グラフ(もしくはドーナツグラフ)は使うべきではない」「棒グラフなどのY軸の基準は可能であれば0にする」といった暗黙的に避けるべきとされる基本的な点に関しても、「なぜ避けるべきなのか」「どのように修正すべきなのか」「修正するとどんな感じになるのか」といったことであったりも書籍で触れられています。
そのほか、ノンデザイナーズ・デザインブックに書かれているものに近い内容も。
グラフを作る前に、色々考えべき。
- 昔と比べるとエクセルだったりでとても手軽にグラフが作れるようになっています。
- 便利である一方で、なにも考えないでグラフが作れてしまうので、分かりづらい / 直観的ではないグラフが作られがちです。
- 昔の人は手作業で手間暇かけてグラフを書いていたので、書く前に色々考えてから作っていたのですが、現在は手軽に作れてしまう分、考えなしにグラフを作ってしまいがち(=理解しづらいグラフ)なので注意が必要です。
伝えたいメッセージにフォーカスする。
- ビジュアルをこだわるのが目的ではありません。
- 美しいグラフを作るのが目的ではなく、明確な(分かりやすい)ストーリーを伝えるのが目的です。
- いくらグラフが美しくできたとしても、目的のストーリー(メッセージ)が使わらなければ意味がありません。
ツールを使うだけでは伝わらない。
- (日々忙しく業務に追われている都合、)エクセルにデータを置いて、グラフを作ってデータビジュアライゼーションの作業が終わってしまいがちです。
- これでは、重要なストーリーが埋もれてしまったり、理解が厳しくなってしまいます。
- ちゃんとストーリーが伝わるように、もっとデータビジュアライゼーションの工夫に時間を割くべきです。
データビジュアライゼーションの作業をする前に自問する。
- データを使ったプレゼンなどを聞くのは誰?
- あなたは彼らに何を(どこを)知ってほしい?どこが重要?
- すぐにグラフを作る作業をする前に、こういったことを自問することで、どのようにデータビジュアライゼーションをするべきなのかが固まってきます。
なるべくシンプルに、整然とさせる。
- スライドやグラフの内容が散らかっていると、プレゼンなどを聴いている方が困惑してしまいます。
- どこを見るべきなのかを明確にしておいて、聴いている方の視線がそこに集中するようにグラフやデザインなどをしておくべきです。
デザイナーのように考えてデータビジュアライゼーションを行う。
- ノンデザイナーズ・デザインブックに出てくるような、近接や整列・反復・コントラストといった知見はデータビジュアライゼーションの領域でも役立ちます。
- ※参考になるリンクを貼っておきます : ノン・デザイナーズ・デザインブックを読み解く
- そのほかにも、色彩的な面や視線の動きなど、知っておくと役立つ知見が色々あります。
データビジュアライゼーションは、サイエンスとアートの両方の側面を持つ。
- 知っておくべきデザインの知見も敬遠せず、学んでおくべきです。
- それらを知って、うまく活用することで、プレゼンなどを聴いている方の理解を促進することができます。
誰が聴くのか?を明確にしておく。
- オーディエンスが大雑把な定義だと、どのように資料を作るべきなのかが明確になってきませんし、伝わりやすい資料になりません。
- 場合によっては対象とするオーディエンスを狭める必要が出てきます。
- 大勢の人に向けて発表をせざるを得ない場合には、決定権を持つ方に合わせて、その方にきっちり伝わるように資料を作るべきかもしれません。
- また、属性が異なる大勢の方が聴く場合、可能であればプレゼンを分けて、それぞれに合わせて理解しやすいように資料を作るのもいいかもしれません。
オーディエンスとあなたの信頼関係は?
- 既にオーディエンスと信頼関係が築けているのか?それとも初対面の方なのか?といった点も、データをどのように、いつ見せるのかなどに影響してきます。
良いプレゼンのためには、何度も事前に練習すべき。
- プレゼン内容をよく理解していないと、当たり前ですが良いプレゼンにはなりません。
- そのためには何度も練習すべきですし、なるべく要素を少なくシンプルにするために、内容の伝わりやすさにプラスに働く要素以外を削ったりも大切です。
- 伝えるべき重要な点だけを記載したシンプルなプレゼン用のメモをスライドごとに用意しておいて、それらを使って実際に声を出して練習してみるのも、理解を促進するのに役立ちます。
オーディエンスについても事前によく知っておく。
- オーディエンスによっては、バイアスがかかっていてデータを使う上で障壁になるかもしれません。
- オーディエンスに合わせてどんなデータや資料があると、プレゼンを強化できるのかを考えてみましょう。
- オーディエンスに何が伝わればOKなのか。一言で表すとしたら何になるのか、考えてみましょう。(もしくは、3分で伝えるとしたらなども)
ツールから始めない。
- いきなりエクセルなどを触り始めると、伝わりにくく、余分なところの多い資料になりがちです。
- ツールを触り始める前に、前提的なところをよく整理したり、紙に手書きで書いたりしてどんなグラフにするのかなどを考えてみましょう。
一つか二つ程度の数字であれば、そもそもグラフは要らないことも多い。
- 単純に二つ程度の数字の比較であれば、棒グラフなどを出さずに数字のテキストだけの方がよく伝わります。
- また、伝えたい点が「数字の比較」だけであれば、例えば「〇〇が13%の低下」といったようなテキストを大きく資料に乗せた方が、グラフなどよりも早く伝わります。
伝えたい個所が、一番目立っているかを確認する。
- 何秒か目を閉じてみて、目を開いた瞬間に目についた内容は、あなたが一番伝えたい内容になっていますか?
- 伝えたい点を目立たせるために、色やラベルなどを効果的に使いましょう。
- 例えば、折れ線グラフで目立たせたい線だけ青く、他を背景色に近い灰色にするなど。
- また、場合によっては背面のグリッドなども邪魔になる場合があります。背景に近い薄い色にしたり、思い切って非表示にしてしまうなどを検討しましょう。
- 色の選択で色弱の方を考慮すべきです。色弱の方からすると、伝えたい個所が一番目立つ形になっていない可能性があります。国によって、少なくない方が色弱という点を忘れるべきではありません。
先天性色覚異常を持つ人は、日本においては男性で約5%、女性で約0.2%の割合であるが、フランスや北欧では男性で約10%、女性で約0.5%であり、アフリカ系の人では2~4%程度である。
色覚異常 - Wikipedia
X軸のラベルの間隔は統一すべき。
- たとえば、X軸のラベルが、2000年, 2001年, 2002年, ...となっているのに、途中から2005年, 2010年, 2015年, ... と間隔を変えるべきではありません。
- オーディエンスがよく見れば気づくとは思いますが、見た瞬間に誤解を招く要因は避けるべきです。
シンプルなグラフを敬遠しない。
- 例えばシンプルに棒グラフで伝えられる内容なのに、凝って複雑なグラフを敬遠すべきではありません。
- 簡単な内容を難しく語っているような状況になります。頭がよく見えるかもしれませんが、避けるべきです。
- 高度で複雑な、オーディエンスにとって馴染みの浅いグラフになればなるほど、理解されるまでに時間がかかってしまいます。
棒グラフのY軸の基準値は極力0にする。
- 値がすべて正の値であれば、棒グラフのY軸の基準の開始値は0にしましょう。
- これを0にしないと、グラフによっては誤解を招く要因になります。
- 例 : 大した差異ではないのに、大きな差があるように見えてしまうなど。
- 止むを得ず0が設定できない場合には、オーディエンスに明確にそれを説明すべきです。
3Dや円グラフの使用は避ける。
- 大小関係が、ぱっと見では分かりづらくなります。
- 3Dも、遠近の都合で正確なデータが分かりづらくなります。(ただ、個人的にはweb画面などでインタラクティブに動かせる3Dのグラフはまだセーフかな、と感じています。)
- 円グラフの代わりに、棒グラフなどを使うことで、大小関係の比較目的であれば代替できます。
左右の2つのY軸の使用は避けるべき。
- これも、一時的にオーディエンスを混乱させます。
- 基本的にはY軸は左のみにするべきで、2つのY軸を使いたい際には縦にグラフを並べるなどしてグラフを分けるべきです。(X軸は共通のままにするなど)
X軸のラベルを回転させると読みづらくなる。
- 一つ一つが長いラベルで、X軸の要素が多い場合などに45度や90度のラベルの回転などは使いがちですが、これはラベルを読むスピードを著しく遅くします。
- ラベルの件数を絞ったり、ラベルをグループ化して2段にして、一つ一つのラベルを短くするなどの工夫を検討するべきです。
例 : 日付であれば以下のように2段にするなど。
- 2018年8月
- 1日
- 2日
- 3日
- ...
- 2018年9月
- 1日
- 2日
- 3日
- ...
空きスペースに余分なものを載せるのは好ましくない。
- スライド資料などで、空いているスペースがあると埋めたくなりがちですが、これは好ましくありません。
- 本当に必要なデータのみ載せるようにし、聴いている人を混乱させないようにするべきです。
- ぎっしり詰まった資料は聴いている人を疲弊させます。
- いっそのこと、本当に重要なことであれば1ページに1センテンス、もしくは1つの数字だけ載せることも効果的です。
Y軸のラベルには、単位があった方が分かりやすい。
- 30
- 20
- 10
といったような数字だけよりも、
- $30
- $20
- $10
といったように単位が付いている方が、見ている人が瞬時に把握できて分かりやすいケースがあります。(タイトルなどを見たり、聴いたりしないと数字がなにを表しているのか分からないのは好ましくありません)
また、大きな数字の際にはコンマを入れたりなどの工夫も検討すべきです。
Y軸の不要な小数部などは非表示にする。
仮に、少数部分がすべて0のような、例えば
- 300.000
- 200.000
- 100.000
といったY軸のラベルがあれば、少数部分は削除しておきましょう。
もしくは、少数部分が重要ではない(伝えたい情報を伝えるのに役に立たない)場合は、ラベルは整数などにしておきましょう。
余分な情報が減りますし、コンマなどとも見間違えたりもしなくなります。
凡例の位置を工夫する。
- 折れ線グラフなどで、凡例の位置と折れ線の位置は離れがちですが、たとえば各折れ線の最後の位置に、文字色なども合わせて凡例のラベルを置いておくと、視線を色々動かしたりする必要がなくなり、見ている人に優しくなります。
色の選択も、なんとなくで決めずに、理由を持って選択すること。
- たとえば、折れ線グラフなどで、重要な部分に青を用い、他の要素は背景色に近い薄いグレーを選択し、「どれが伝えたい個所なのか」「どこに注目させたいのか」などを明確にするための色を選択したり、「弱視の人でも重要なところが分かるか」などを検討すべきです。
- ヒートマップなどで、(虹色などの)多くの色を使うとどこが重要なのか分からなくなります。色相の統一などを検討すべきです。
- しばらく目を閉じて、その後に資料を見た瞬間に、想定したところに視線が流れたかどうかテストするなどして、色の選択が好ましいかチェックするのも有益です。
- 赤と緑などは、通常は補色で目立ちますが、色弱の方には区別が付かない場合があります。
文字を目立たせるには、イタリック体よりも太字などを使う。
- イタリック体の文字はそこまで強く目立たず、且つ少し読みづらくなります。
- 可能であれは、太字や下線などを検討しましょう。
これ以上取り除けるものが無くなっているかどうか。
- 「これ以上追加するものが無い」状態ではなく、「これ以上取り除けるものが無い」状態になったかどうかで、資料の完成度を考えましょう。
- 詳細が不要であれば要約なども検討しましょう。
オーディエンスが長い時間をかけて理解してくれるとは思わないこと。
- 分かりづらいグラフは、理解に時間がかかります。
- そういったグラフは、見ている人が理解を諦めてしまうかもしれません。なるべくシンプルに、一瞬で理解できるように配慮しましょう。
- 読みづらいテキストなども同様です。可読性の高いフォントを選択するなど、工夫しましょう。
グラフ上の特筆すべき点に、テキストを載せるのは有益。
- たとえば変化点やイベントなどを、テキストでグラフ上に乗せておくのは、なぜこういったグラフになっているのかを伝えるのに有益です。ラインなどを組み合わせ使ってうまくグラフの位置を示すのに役立ちます。
未来の予測値部分などがぱっと見で見えるようにしておく。
- 既存の値と、未来の値の推論値などを折れ線グラフでプロットする場合、推論値側を点線にするなどして、どこからどこまでが既存の値なのか、推論値なのかがぱっと見で分かるようにしておきましょう。
積み上げ棒グラフで、大事な要素は一番下に持ってくる。
- 伝えたい要素が1つの場合に、それを積み上げ棒グラフの一番下に配置してあることで、ベースが0になるので、複数の積み上げ棒グラフ間で値の比較などをしやすくなります。
伝えたいところが明確になっていないと、人によっては判断がばらついてしまう。
- あなたは何を伝えたいのか、聴いている人にどのような意思決定をしてほしいのかが明確な資料になっていないと、同じデータを見せた場合でも人によって解釈や意思決定がばらついてしまい、望んだ結果にならない場合があるので資料作りには注意します。
視線を誘導させるためにアニメーションが有益なことがある。
- たとえば、時系列の要素が多めのグラフの場合に、最初にすべて表示すると、見ている人によってどこを見るべきなのかが不明確で視線がばらついてしまいます。
- そこで、アニメーションを使って段階的に要素を表示していくことで、発表者がグラフのどこに注視してほしいのかを伝えることができます。
入り組んだグラフは避ける。
- 折れ線グラフなどで、複数の要素が入り組んでいたりすると、線の流れを追っていくのはハードルが高くなってしまいます。(スパゲッティグラフなどと表現されていました)
- そういった場合にはX軸を共有したまま、要素を分割して複数のプロットにしたり、もしくは見てほしい線が1つの場合には他の要素を目立たない色にする、といったことを検討すべきです。
- 分割する場合にはY軸の最小値と最大値と同一の値にしておきましょう。
正解は1つじゃない。
- どうすればうまく伝わる資料になるのかの正解は1つではありません。
- 優れたグラフを見て真似してみたり、自分で色々考えたり、何度も実践したり、プレゼンでフィードバックをもらったり、といったことは、常日頃から継続していくといいでしょう。