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数学Advent Calendar 2015

Day 8

Ribetによるフェルマーの最終定理の証明の流れ

Last updated at Posted at 2015-09-10

#はじめに
フェルマーの最終定理の証明をRibetの論文にある「レベルの引き下げ定理」を参考に説明する。ただし,谷山=志村予想は仮定する。この記事で理解したいことは
・「レベルの引き下げ定理」とはなにか?
・どのように定理を使うのか?
である。
流れをつかむことを目的としているので,僕が理解できない定義や条件は省いている。また,前の記事:「谷山=志村予想⇒フェルマーの最終定理」の流れ(未完成)を読んでいると読みやすい。

動画での解説
ニコニコ
YouTube
#言葉の説明
##楕円曲線

$y^2=x^3+ax^2+bx+c$ と表される曲線で,(右辺)=0が重根を持たない。

##楕円曲線のガロア表現

楕円曲線から得られるガロア群からベクトル空間への写像

ガロア表現が写像ってことがわかればok。また $l$ 進ガロア表現とか書くけど,特殊なガロア表現って思えばok。

##モジュラー形式

ある性質を満たした関数

谷山=志村予想から楕円曲線とモジュラー形式は対応をもつ。そこで,以下の言葉も定義する。
##レベルNのmodularであるガロア表現

対応するモジュラー形式のレベルがNのガロア表現

##ガロア表現ρが素数pでfinite

(意味がわからないのでRibetの論文から引用)
if there is a finite flat $\bf{F}$-vector space scheme $H$ over $\bf{Z_p}$ for which the action of Gal($ \bf\overline{Q_p}$/${\bf Q_p}$) on the $\bf{F}$-vector space $H({\bf\overline{Q_p}})$ gives $\rho_p$.

特殊なガロア表現の性質ってことがわかればok
#定理や系
##定理(レベルの引き下げ定理)

レベル $N$ のmodularである $l$ 進ガロア表現を $\rho$ とする。このとき $N,l,p$ が以下の条件を満たせば $\rho$ はレベル $N/p$ のmodularとなる。
(1) 表現 $\rho$ は $N$ を割り切る素数 $p$ でfinite
かつ
(2) $N$ と $l$ は互いに素 または $p\not\equiv 1\quad (mod\ l)$

##系

$\bf{Q}$ 上の全ての楕円曲線がモジュラー形式と対応すると仮定する(谷山=志村予想)。このとき,フェルマーの最終定理は正しい。

#系の証明
##証明の流れ
・フェルマーの最終定理が成り立たないと仮定してフライ曲線をつくる
・系の仮定からモジュラー形式を作り,それに対応するガロア表現をつくる
定理を使ってガロア表現のレベルを下げ,レベルが2となることを示す(←理解したいこと)
・レベル2のモジュラー形式は0以外存在しないので矛盾する
##ファルマーからフライ曲線
フェルマーの最終定理が成り立たないと仮定する。つまり
ある素数 $l≥5$ に対して

a^l+b^l+c^l=0 かつ abc\neq 0

を満たす互いに素な整数 ($a,b,c$) があるとする。このとき,$b$ は偶数と仮定してよい。ここで,$\bf{Q}$ 上の曲線

E:y^2=x(x-a^l)(x+b^l)

を考えると,$E$ は半安定な楕円曲線である。また $N$ を $E$ の導手(conductor)とすると

N=\prod_{\quad p|abc}p=(abcを割り切る素数の積)

となる(未確認)。このとき,$b$ が偶数より $N$ も偶数となる。
##系の仮定からガロア表現ρ
系の仮定「$\bf{Q}$ 上の全ての楕円曲線はモジュラー形式と対応する」より,重さ $2$,レベル $N$ のモジュラー形式 $f$ が存在する(ここは天下り)。このとき, $f$ に対応する $l$ 進表現 $\rho$ を考えると,$\rho$ は $N$ を割り切る $2$ でない素数 $p$ について finiteとなる(らしい)。
##表現ρのレベルNを2まで下げる
###レベルNからl(エル)を取り除く
$N$ が $l$ で割り切れると仮定する。このとき,$l≥5$ より,$\rho$ は $l$ でfiniteとなる。また $l\not\equiv 1\ (mod\ l)$ より素数 $l$ は定理の条件(1)(2)を満たすので表現 $\rho$ はレベル $\frac{N}{l}$ のmodularとなる。よって

N_0=\left\{
\begin{array}{ll}
\frac{N}{l}\quad\quad Nがlで割り切れる\\
N\quad\quad Nがlで割り切れない
\end{array}
\right.

とおくと,$\rho$ はレベル $N_0$ のmodularとなる。このとき,$N_0$ は $N$ を割り切り $l$ と互いに素となる。

###レベルN_0から全ての奇素数を取り除く

$N_0$ を割り切る $2$ でない素数を $p_1,p_2,...p_m$ と表すと

N_0=2p_1p_2\cdot\cdot\cdot p_m

となる。このとき,表現 $\rho$ は素数 $p_k$ について finiteとなる(らしい)。ここで
素数 $p_1$ について 表現$\rho$ はfiniteであり,$N_0$ は $l$ と互いに素である。よって定理の条件(1)(2)を満たすので $\rho$ のレベルは $\frac{N_0}{p_1}$ となる。
素数 $p_2$ について 表現$\rho$ はfiniteであり,$\frac{N_0}{p_1}$ は $l$ と互いに素である。よって定理より $\rho$ のレベルは $\frac{N_0}{p_1 p_2}$ となる。
   ・
   ・
   ・
$\rho$ のレベルは $\frac{N_0}{p_1p_2\cdot\cdot\cdot p_m}(=2)$ となる。

##矛盾
したがって,レベル $2$ のモジュラー形式が存在することになるが,レベル $2$ のモジュラー形式は $0$ 以外存在しないので矛盾する。したがってフェルマーの最終定理は正しい。
#まとめ
・「レベルの引き下げ定理」とはなにか?
ガロア表現のレベルを下げる定理であり,モジュラー形式のレベルを下げる定理でもある。
・どのように定理を使うのか?
$l$ について定理の条件(2) $l\not\equiv 1\ (mod\ l)$ は常に成り立つので,$l$ と互いに素なレベル $N_0$ を作れる。そのあとレベルと $l$ は常に互いに素なので条件(2)を満たす。よって定理を繰り返し使えばレベル2まで下げれる。
#参考資料
Ribetの論文:On modular representations of Gal(Q/Q) arising from modular forms, Invent. Math. 100 (1990), 431–476.
落合理のpdf:FERMAT 予想などを通した整数論の基本概念の紹介
前の記事:「谷山=志村予想⇒フェルマーの最終定理」の流れ(未完成)

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