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EUとドイツの大規模AI Foundation モデルへの取り組み、LEAMイニシアチブについて

Last updated at Posted at 2023-02-15

2023/2/15時点の情報であり、各国のAI情勢調査にあたっての個人の備忘録となります。

はじめに

欧州連合(EU)は、人工知能(AI)の開発に関して影響力のある地域の一つです。
EUは、人間中心で、持続可能で安全で、包括的で、信頼できるAI開発を重視していることで知られており、この目標を支援することを目的とした数多くのイニシアチブとプログラムを確立しています。
しかし、ChatGPTを始めAIを取り巻く環境が進化を続ける中、米国や中国など国家間との競争も激化しています。
本稿ではEUのAIに対するアプローチと、ドイツのAI Foundation モデルに対するアプローチとしてのLEAMイニシアティブ概要です。

EUのAIに対するアプローチの概要

EUのAIに対するアプローチは、倫理的かつ社会的責任のある開発へのコミットメントによって推進されています。これは、プライバシーやデータ保護といった基本的権利を尊重し、欧州の価値観や原則に沿った方法でAIが開発・利用されることを目指してます。この目標を支援するためにEUが定めた各イニシアティブはAIの開発と展開に関するEUのビジョンが示されており、欧州の価値観に沿ったAIの開発を支援することを目的とした多くの施策が盛り込まれています。

■Coodinated Plan on Artificial Intellience

■ Ethics guidelines for trustworthy AI
欧州委員会は、個人データ保護や透明性などの基本原則を考慮したAI倫理指針を策定するため、産学官の「AIに関するハイレベル専門家グループ」による検討を進め、 2019年4月8日、AIの開発と利用に関する 「人間中心で信頼できるAI」の倫理指針を発表した。

LEAM(Large European AI Models)とは?

LEAMは、ドイツAI協会(KI Bundesverband)と産業界・研究界の主要な代表者による、大規模なAIモデルの開発を促進するためのイニシアチブです。2022年10月にドイツ連邦経済・気候保護省(BMWK:Bundesministerium für Wirtschaft und Klimaschutz)からドイツAI協会に委託され、LEAM実現可能性調査を委託され開始されました。

ヨーロッパで作られた大規模なAIモデルを実現するため以下の9つの国のAI機関とのエコシステムを構築しています。また欧州の主要な企業もサポーターとして参画しております。

なぜLEAMを始めたのか?

  • 最近の米国や中国企業による大規模なAIモデルの開発の進展は、AI市場を一変させる可能性を秘めており、これらの大規模モデルは、他のAIソリューションを凌駕し、徐々に置き換わっていく可能性が高い。
  • AI分野におけるデジタル主権は深刻な脅威にさらされており、ドイツ経済全体の競争力が脅かされています。
  • ヨーロッパのプレーヤーが取り残され、革新的なヨーロッパのAIエコシステムがアメリカや中国のソリューションに依存するようになることを懸念。
  • 英語以外の言語サポートが複雑になることが予想され、アメリカや中国のAIソリューションがユーザーのプライバシーを適切に保護しないことを懸念。
  • 欧州が競争力を維持するためには、大規模なAIモデルの開発と、それを訓練するためのAIスーパーコンピューターへの投資が早急に必要。さもなければ高速なAIイノベーションのサイクルに取り残される危険性が高い

LEAMで実現したいこととは?

  • LEAMではEUでのAI開発において競争力のあるヨーロッパのAIエコシステムを構築。
  • データ保護、透明性、偏りなど、ヨーロッパの価値観や高い品質基準を反映したAIモデルを作り、AIモデルの育成をより持続可能なものにする。
  • 強力なAIエコシステムを元に欧州のデジタル主権を確保する。
  • ドイツではAIエキスパート人材が米国に移住することが問題になっている。 LEAMは、最先端のプロジェクトを通じて才能ある人材をドイツに留め、新しい専門家を訓練する機会を提供する。

直近のLEANが目指すもの

  • LEAMプロジェクト開発会社の即時設立
  • LEAMでは先ず大規模モデルのためのAIインフラストラクチャーの構築。
  • 予算規模としては3 億 5000 万から 4 億ユーロを想定。公共および民間会社からの投資。
  • Startup, 企業、大学、研究機関、公的機関のAIエコシステムの形成

LEAM カンファレンスでの欧州委員会 KILIAAN GROSS氏の発言

2023 年 1 月 24 日にベルリンで開催された LEAM カンファレンスによる欧州委員会 KILIAAN GROSS氏の発言を一部意訳しました。
欧州のデジタル主権への指針や現状への危機感が理解出来ます。該当の発言は下記動画の33:54から確認できます。

  • 会議参加者の皆様、技術問題における欧州の主権という重要な問題について幾つかの考えを述べることをお許しください。
  • 欧州の技術主権は、EU の優先事項として宣言されているものです。欧州の技術主権は、現欧州委員会が就任以来掲げてきた目標であり、その後の出来事はこのアプローチの重要性を示しています。まず、COVID-19は、デジタル分野だけでなく、特に国際バリューチェーンを大きく破壊し、ロシアのウクライナ侵攻はエネルギー供給をも大きく阻害しました。
  • したがって、技術分野でのレジリエンスを向上させる必要があり、そのためには、技術的な取り組みが必要です。
  • 技術分野では、特にデジタル主権に取り組むことを意味します。デジタル主権とは、ヨーロッパが今後数年、数十年にわたってデータ集約型の社会を支配するデジタル技術を習得しなければならないということです。
  • もちろん、人工知能はその筆頭ですが、ここで強調したいのは、これは広義のAIであり、アルゴリズムだけでなく、AIバリューチェーン全体を意味するということです。半導体に関する限り、我々は、半導体からアルゴリズム、必要なデータ、アプリケーションに至るまで、AIバリューチェーン全体を対象として、欧州半導体法(European Chips Act:*1)という新しい産業政策を切り開きました。
  • この法律は包括的なアプローチをとっており、半導体技術分野におけるEUの強靭性を強化するための枠組みを構築することを目的としています。また、EUの半導体サプライチェーンの能力をさらに強化し、投資を刺激することを目的としています。最後に、加盟国と欧州委員会との協力を、特に危機の際に強化することを目指している。
  • 欧州半導体法は、欧州委員会が、規制的アプローチを放棄することなく、世界の他の地域の政治的発展に対応するものである。 その目的は明確で、欧州は最先端のマイクロエレクトロニクスと量子チップの最先端にいなければならず、そのためには、欧州で十分な生産量を確保することが明示的に必要です。
  • 同じ理由で、我々はAI規制(*2)について、基本的権利と市民の安全を優先させ、同時に産業界に発展の機会を与えるというアプローチを選択しました。
  • 欧州がAI分野で主権を獲得するには、競争力のある産業が必要であり、そのためには十分な量と質の高いデータが必要です。
  • データ規制とデータガバナンスについてこの2年間で学んだことは、開放性は良い、グローバル化は良い、しかし一方的な依存は悪い、ということです。

*1: European Chips Act

*2: REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL
LAYING DOWN HARMONISED RULES ON ARTIFICIAL INTELLIGENCE (ARTIFICIAL INTELLIGENCE ACT) AND AMENDING CERTAIN UNION LEGISLATIVE ACTS

まとめ

  • OpenAI の GPT-3 (ChatGPT の背後にあるモデル) などの AI Foundation モデルの開発において、ドイツとヨーロッパが米国と中国に取り残されないように本格的に取り組みを進めている。AI分野におけるデジタル主権は脅威にさらされていると捉えているようです。
  • ドイツAI協会(KI Bundesverband)のLEAM (Large European AI Models) イニシアチブは、ヨーロッパの倫理基準に従って信頼できるオープンソース モデルを開発するために必要なスーパーコンピューティング インフラストラクチャと関連サービスを提供するための取組を欧州関連機関とスタートさせた。
  • これらのドイツ、欧州の一連の取組はブリュッセル効果とし今後国際社会に影響を与えていく可能性があります。
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