##はじめに
2018年のAdvent Calendarも本日で最後ですね。
今回の企画はゲームを作っている会社2社の品質管理担当合同でお送りしました。
最後は、来年への課題提起をして締めくくりとさせていただきます!
##テストは労働集約産業?
今も残る、安かろう悪かろう状態
リリース前に200時間テストしたから大丈夫です!100人日かけたから大丈夫です!なんて話がたまに聞かれます。
ねぇ、それって何を担保しているの?
『工数をかけたから』と言っている間は、中の質には着目されず、業務の難易度も伝わらず、結果として安く買いたたかれ、最低賃金とさして変わらない金額で雇われているテスターが
日夜一生懸命テストしているのです。
これは今も続いている現実です。
そんな業界に未来はあるのか
私はゲームをつくる側の会社にいます。テストは内部でやりつつも検証の専門会社にも委託します。QA業界全体のレベルアップには検証専門会社の向上も避けては通れません。なぜなら業界の人口割合でみると、そういった会社に属している人が一番多いからです。
■悲しく思ったこと
検証専門会社から単価アップの相談が来ることがあります。
ではここで問題です。どういった時に相談がくるでしょうか。
『御社に従事している担当Aですが、XXの案件ではテスト設計力の向上に伴い、○○の成果をあげました。次の案件でも同様の効果を期待できますので、単価のアップをお願いします』
こんな相談がくることはほとんどありません。
大半が
『最低賃金があがったので、関わっているメンバーを一律で時給をいくらあげてください』
これです。
もはや個人の能力ではないのです。
セット販売ですね。
でもね、たくさんの人を管理するにはこのやり方が楽なのもわかります。
良いとは思わないけど。
これを続けているとどうなると思いますか?
私が見てきた現実としては「大変なわりに報われない」「食っていけない」「先が見えない」といって転職していく人たちがかなりいる、ということでした。
ゲームのQA業界に残る人は本当に一握りしかいないのです。
(ちなみに組み込み系のQAのほうが給料が良いことが多いので、もう少し残留率が高いです。なんとなくですが)
所属会社は違えど、同じゲームの品質向上に寄与してきたメンバー。
やってられません。(ゲームの仕様に慣れていて、環境にも慣れている人を手放すのはビジネス上、普通につらいですし)
■やってみたこと①
スキルアップし、成果をあげているベンダーさん個人に対しては、こちらから給料アップを営業に打診する。ご本人にも幾分の還元をお願いする
結果:△
対応してくれる会社さんと、対応してくれない会社さんがあります。
会社としてもご本人としてもWinWinじゃん?と思いますよね? 私も思いました。
ただし、その検証会社にも自社の給与レンジがあるのです。そこが崩れてしまうと仮に出向先が変わったときにその人の給料を維持できなくなるようです。まぁ、言いたいことはわからなくもない。
やってみたこと②
①のようにその場の話にはせず、計画的に握っていこうとやってみました。
その会社と自社との間でスキルと単価を表形式でまとめ、検証会社の意向も踏まえたレンジアップを狙おうと考えました。
結果:△
対応してくれる会社さんと、対応してくれない会社さんがあります。
対応してくれた会社さんは割と順調にメンバーのスキルアップ(とそれに伴う給与アップ)につながっています。
対応してくれない会社さんは、提案なく終わりました。現場に出向しているメンバーはいるにも関わらず。
要因としては、作成工数がない(もしくはその労力は見合わない)、クライアントにそこまでやるだけの魅力がない、というところかなと思います。後者については日々肝に銘じるのみです
一つ行きついた事実は
→検証会社にとって圧倒的なクライアント(かなりの発注量を出す)でないと状況はなかなか変わらない
→相応の発注量を出すには売れるアプリを作らないと、テスト費用が確保できない
→売れるためにはよい品質も必須(それだけでもないけどね)
!あれ!無限ループ!!
行き詰まったので、検証会社のことは一旦置いておき、
地道にできることを考えます。(ここまで書いておいて今更ですがふりだしに戻る。
…
…
…
超悩んだ結果、普通の結論を普通に書くことになりました。
##結局どうするゲームQA
やっぱり草の根活動は大事。まずは自社から取り組み、賛同者を募っていくしかありません。
QAとしてこの状況をなんとかするんだ!!という覚悟が重要だと思います。
『オレ、将来は違うことするからまぁほどほどに~』なんて言っている人は
なんにおいても中途半端になるでしょう。今QAに関わっているのならば、真剣に考えろ、みんな!
なんでもいいからサービスを作っているメンバーとしての開発からの信頼を得る
→自分が担当しているサービスのプロとなり、意見を聞いてもらう土壌をつくる
(入口。これだけだと、ただのやりこんでいる人で終わるからだめ
この苦労話は、
https://qiita.com/tani_inat
が書いてくれているのでそちらを読んでいただけますと。
QAとしての技術を高める
→勉強会などに参加して専門の知識を増やす、業界の動向を知る、刺激を受ける。時に直接関係ない勉強会にも参加して少し離れた業界のナレッジを転用する。
最近ゲームQA業界も活発になってきたから、探せば何かしらあります。
→ゲームQAの技術本とか参考書がろくにないのは悩みです。もう、書いちゃいましょう。
→OJTという魔法の言葉と距離を置く
On-the-Job Training こちら、とても大切です。
ですが、体系だった育成方法がないゆえに、都合よく使われている言葉でもあります。
人を育てることを体系立てて真剣に考えるとき、実は一番成長するのは自分だったりします。
発信をする
→例えばこういったAdvent Calendarとか
→CEDECとか
アウトプットは考えや過去の経験を整理するよい機会だし、それで賛同を得ても批判をいただいても、損をすることは特にないと思います。
これらをしたうえで目指すべきは
開発工程からしっかり食い込んでいくことだと考えています。
###できたもののテストをしていても、いつまでも『下流工程』から抜け出せない
なぜそれが問題なのでしょうか?
最終フェーズで不具合を指摘していてもまず、圧倒的に効率が悪いです。
AIも活用したテストが昨今業界の関心を生んでいるけどそれこそ開発初期から入っていないと全然意味ないものです(というか全然効率がよくなくて対応可能な範囲が著しく落ちるのみ)。
QAとして生きている人は、確かにQualityをAssuranceするけれども、
それはただ単によい品質にすることが重要なのではなく
トータルで考えたときに、『良い製品をつくること』に寄与することが重要だと思っています。
良い製品をつくるためには、『修正コストがなるべくかからず』『検証の時間は可能な範囲でコンパクトで』『仕様や開発者たちの癖も踏まえて網羅的なテストを』『適度な費用で』品質を作ることがエンジニアの負担を考えても、事業責任者の想いをくみ取っても重要かと私は考えています。
これを実現するためには、開発初期からしっかり関わっていないと
成り立たないと思います。
そして、品質保証とは、ばばばっとテストするなんて簡単なものではなく
限りなく総合力が求められる仕事ではないかと思っています。
###もっと評価されるべき職種へ!
たまに、バグが多発する製品を目の前にすると
すご腕のテスターがなんとかしてくれないかな、と思うことがあります。
そして、きっとそういう人は相当のお金がもらえるでしょう。
それだけよいアプリを出すためには致命的な不具合を出したくないのです。
同様に、混沌としている開発現場を見事整理してQA部隊をコントロールして
良い品質につなげる人も、業界からしてみたら高額を支払ってでも喉から手が出るほどほしいのではないでしょうか。
今も実際にはちらほらいるものの、あくまで内輪で活躍しているだけの気がします。
そこを業界でもきちんと体系立て当たり前に高値になっていくと、もう少し他業種からの見る目が変わってくる気がしています。
業界内でヒエラルキーが生まれることはネガティブな側面もありつつ、現状はポジティブだと思っています。
今だって実際には存在しているものの、明確になっていないからこそ
仕事をはじめたばかりの人は上を目指す気にならないのではないかと。
今回の25本の投稿は、QA歴半年~10年ぐらいの若手(?)で書きました。
来年は自分たちの内容を『まだまだだな!!』と思えるようになっているはず…!
なんだかんだ書きましたがQAってけっこう楽しいよ!!
それではみなさま、メリークリスマス!!