はじめに
こんにちは。グリー/ExPlay(グリー子会社)の品質管理を統括しております、しゅうまい姫です。
私たちの組織はグリーグループで品質管理(審査/QA/CS)をしており、毎年各領域の取り組みの内容をアドベントカレンダーにまとめています。
2023年の締めくくりの記事は、組織全体の取り組みを総括する形でお送りします!
なお、今回は
2020年に書いた記事、グリーQA 2020年の振り返りを踏まえて
・それらが現状どうなっているか、2023年までのUpdate
・その他新しい取り組み
の二つの内容で記載しております。
お時間に余裕がある方は2020年の記事も読んでいただけるとわかりやすいかと思いますので
併せてご覧ください!
グリー品管組織 2020年⇒2023年のUpdate
最初に、2020年の取り組みからUpdateしたものをいくつか紹介いたします。
現状より一歩進んだ品質向上/効率化
QA KPIの統一と可視化
2020年は、社内のQA組織を集約し、また品質管理に関する各種定義やKPI、それらを運用するフローの統一を進めていました(障害の定義、障害影響度ランク、障害発生要因など)。
これにより、各事業の品質コンディションが把握しやすくなり、AプロダクトはBプロダクトに対してなぜ障害が多いのか?など感覚ではなく定量的な気付きを得ることにより、比較・改善業務が進んだように感じます。
さらにそれを加速するために、視認性向上および集計工数の軽減を目的として、2022年からLookerStudioを用いています。
こちらはイメージ図ではありますが、縦軸に障害件数、横軸にサービス(プロダクト)を並べ当月発生している重要度別の障害件数を表示させています。
また、二つ目のグラフは縦軸横軸は先のグラフと同じですが、発生要因別に積み上げることで、QA側のコンディションが悪いのか、プロダクト側に課題がありそうなのか、両者の連携に課題があるのかを見ることができ潜在的な課題を洗い出すことが可能です。
上記は一部抜粋ではありますが、これらのデータにより、より一層関係者の認識を併せやすくなったことがポジティブだと感じています。
業務品質を一段引き上げるための体制強化
組織のシナジー創出
2020年は組織が統合した時期だったため、複数あるQAチーム間の連携強化を進めていました。連携MTGの設置、共通のゴール設定、チームを跨いだ横断PRJの実施、チーム間異動などにより、連携は自然になってきたように感じます。
2023年はもう一段踏み込んで、広義の意味での品質向上を目指し、異業種での連携を強化しました。私たちの組織には、QA以外にもカスタマーサポート、審査(法律・ガイドラインのチェックがメイン)、パトロール等があるのですが、同じサービスに向き合っていても、関与するフェーズや必要な知識が違うことにより、なかなか連携が難しいという実態があります。雑な例えをすると、プランナー/エンジニア/アートで、同じサービスに関わっていても専門知識やスキルが違う、といった感じです。
品質向上のため、より洗練された開発プロセスを目指し、今回は特定サービスのCS-QA業務を一人の担当で、また別のサービスではQA-審査業務を一人の担当で最低一年は対応してみるというトライをしました。私たちの組織ではこれをハイブリッド、と呼んでいます。これだけでもアドベントカレンダーで一記事かける量になるので詳細は割愛しますが、簡単にまとめると現時点での所感は以下となります。
■ポジティブ要素
・互いの業務理解が格段に進む
・重複している業務への気付き
・(特にCS)リリース前工程の詳細把握による、問い合わせ抑制活動に関するヒント取得
■課題
・各業務とも専門性が高いため、キャッチアップだけでも相当な負担
・ハイブリッドを経験した人は気付きが多いものの、その知見や気付きの横展開が簡単ではない
メリットもありつつ、まだまだ課題もあるため、より良い方法を模索中です。
新しい風を取り入れる社外連携
2020年の記事では、「社外勉強会、研究会の実施」「CEDEC登壇」「JSTQB認定パートナー取得への取り組み」について記載しました。
これらについては継続実施中となります。この手の活動は、すぐにわかりやすい成果がでるものではないと思っていますが、数年続けていると少しずつ変化を感じます。
直近2-3年は、これらの活動に賛同して転職してきてくれる人が現れだしました。最初から理解とやる気があるので大変ありがたいです。みなさん、石の上にも3年ってやつです。実際には5年ぐらいかかっています。めげずに頑張りましょう。
次に、これらの社外連携や社外発信をやることが当たり前の風土になってきました。今年はCEDECに誰が出る?とか5年前では考えられない状況です(その当時は、自分が出ようと考える人がごくわずかでした)。
そしてCEDECだけでなく、JaSST登壇や本の出版など、まだまだ未熟な部分もありますが挑戦する風土が育ってきたように感じます。
新しく挑戦していること
ここからは、新しく挑戦していることについて簡単ですがまとめていきます。
今までの取り組みを向上させつつ、より強い組織、より個々のメンバーのレベルアップを目指して取り組んでいます。
自動化の推進
2023年は世間的にもOpenAIが話題になりましたが、品質管理業務においても自動化や生成AIの活用は非常に重要な検討ポイントだと考えています。
また、ゲームが年々リッチになる中で、品質担保の工数も上がっています。テスト等の時間が増え、リリースまでの時間が延びることは事業的に望ましくないので、そういう観点でも最適で最短の品質管理が私たちとしても永遠のテーマの一つです。
なかなか一足飛びにはいきませんが、この数年で取り組んでいることの一例となります。
・クライアントテスト自動化
・リグレッションテスト自動化
・ビルドチェック及びインストール自動化、その後のチュートリアル突破
・マスターデータのチェック半自動化
今年のアドベントカレンダーでもいくつか記事がありますので、詳細はそちらをご覧ください!
テスト自動化の実行環境について考えてみた
スキル系の説明文検証補助ツールを作った話
Windows環境で自動テストしてみて
ご認識の方も多いですが、モバイルゲームは変更要素が多いため、開発コスト>削減コストとなることが多く、どの領域を自動化するかの判断を慎重にする必要があります。
逆に、どうしてもコンディションに一定左右される目視チェックではなく自動で判別することで品質担保につながることもあるため、両者のバランスをとりながら自動化を進めています。
マスターデータの半自動化はこの数年でだいぶ導入が進み、導入前と比べて全体のテスト工数が約3割減となっているため、モバイルゲームとの親和性は高そうだと考えています。
2年前の記事ですが、詳細はこちらをご覧ください!
データチェック自動化のススメ
品質保証領域の拡大
先に記載した通り、組織としてQAだけでなく、審査やCS、パトロール領域が一体となって、広義の意味での品質保証を目指しています。
また、昨今モバイルゲームの海外リリースも増えているため、LinguisticQA領域も試行錯誤しながら進めています。
翻訳QAを1年間実施して感じた事
加えて、今まで検証実業務はパートナー会社にお願いすることが多かったのですが、内部で実施する比率をあげることで、より細かいテスト業務やテスト現場の効率化にも挑戦しています。
最後に
記事をまとめていて自分自身感じたことはシンプルに「継続は力なり」ということです。
その時考えられる未来を予想して、その時できることを全力でやっていけば、全てがうまくいかなかったとしてもきちんと前に進む。たまに後ろを振り返ってみると、それとなく道となっているものですね。日々頑張っているチームの皆さんに改めて感謝しました!
今年も色々な勉強会に参加させていただきましたが、一番印象深かったのは、『AIが進み、色々な業務がAIにとって変わられるなか、人としての価値を発揮するのはなんだろう。最後まで立ち続けるのは自分たちであろう!』なんて話でした。
実際にどうなるかは置いといて、立ち続けるため、生き残るために頭をつかって、歩みを止めずに頑張りましょう。
最後はガウディの言葉で締めくくります。
「諸君、明日はもっと良いものをつくろう!」
それではみなさま、メリークリスマス!