はじめに : Kubernetesの発音が難しい
私事ですが、普段の業務でKubernetesを使っています。
Kubernetesの魅力を短い言葉で表現するのは非常に難しいのですが、例えばKubernetesを使うとインフラ上のサービスの構成や設定を全てコード(マニフェスト)で管理して、柔軟かつ自動的にリソース(サービスやジョブ等)をデプロイできるようになります。Kubernetesが提供しているこのような仕組みが、インフラとアプリを構築運用していく上で本当に便利で素晴らしいのです!その魅力をひとたび体感すると、Kubernetesという単語が目に入ってきただけで、ある種の「神々しさ」すら感じてしまいます。
そんな神なKubernetesなんですが、冷静に考えて「Kubernetesって何と読むのかが難しい」のです。
初めてKubernetesという言葉を聞いた方はおそらく最初の "Kube" あたりは忘れないと思いますが、その後が「Kube○△※□...」のようにごちゃごちゃしてしまうのではないでしょうか。また少しKubernetesに馴染んできた場合でも、Kubernetesについて音声で会話する機会が少なかったりすると、発音についてよくわからないまま「あれ、Kubernetesって何て読むんだっけな?」となってしまいがちだと思います。
みんな一体、このKubernetesという神様をどんな風に読んでいるのだろうか...
今回はその疑問を解明すべく、Kubernetesがどう発音されているのかを結構本格的に調べてまとめてみました。皆さまがKubernetesを発音する場面に出くわした時に、本記事が参考になれば甚だ幸いです。
本記事の投稿後に、Kubernetesの読み方について多くの方から大変有益なコメントをいただいております。そちらも是非見ていただければと思います!
身近な人にKubernetesの発音をヒアリング
まずは社内を含めて自分が直接関わったことのあるコミュニティで、Kubernetesがどんな風に発音されている(発音されてきた)のかを調査してみました。
早速ですが、Kubernetesの発音について社内アンケートを取った結果を見てみましょう!(この試みをやるのは弊社がおそらく初めて!?)
半数以上の方が「クバネティス」と発音していることがわかります。それ以外では「クバーネイティス」や「クーバネティス」と言っている人が15%程度、ごく少数ですが「クーベネティス」「クバネテス」と発音している人もいるようです。
※ 「キューバーニーツ」という回答はネタなのかも? と思ったらDeepLだとKubernetesを「キューバーニーツ」と発音する、という情報を本記事へのコメントでいただきました。
アンケートとは別で、今まで私が聞いてきたことのある発音を思い返すと、「クーバネット」、「クーバネッツ」のように語尾が少しくだけた感じになるのは聞き覚えがあります。また前職で、そもそもKubernetes自体が業務の日常になっていない職場で時折Kubernetesが話題になった場合だと、「クベルネ」とか「クバツネツ」とか多種多様の読み方を聞いてきました。"Kubernetes"という単語を初見でスムーズに発音するのは結構難しく、「Kube○△※□...」な状態になってしまうのがわかりますね。
Kubernetes単体ではなくて、弊社内でKubernetesチームのことを呼ぶ場合だと「k8sチーム(ケイハチエスチーム)」や「クバチーム」と言ったりしています。私はKubernetesチームに所属していますが、初めて「クバチーム」と呼ばれるのを聞いた時は、すごくシンプルでいい呼び方だなあ!と思ったものです。
クバチームの呼び方のシンプルさの観点で言うと、「Kubernetesをシンプルに『クベ』と呼んでいた職場もあった」という人もいました。これはだいぶ大胆な省略ですね。「クベ」まで略せたら、同じ時間内でKubernetesの事をより多く語れるようになりそう。
WebでKubernetesの発音について調べてみる
続いてはKubernetesが世の中一般的にどのように発音されているのか、Webで調査してみました。
ChatGPTに訊くと、発音記号も書いてかなり丁寧に答えてくれます。
「Kubernetes」の英語での発音は「クーバネティーズ」(/ˌk(j)uːbərˈnɛtiːz/)です。以下に発音の詳細を示します:
ku: 「クー」のように発音します。
ber: 「バ」の部分は弱く発音します(日本語の「ば」と同様)。
net: 「ネ」の部分も弱く発音します。
es: 最後の「ティーズ」は「ティ」と「ズ」が連続するように発音します。
この発音を日本語表記に近づけると「クーバネティーズ」となりますが、日本では「クバネティス」や「クーベルネティス」と発音されることもあります。各国の発音には多少の差異がありますが、英語圏での一般的な発音は上記の通りです。
発音記号の最初の k(j)uː の部分ですが、これは「クー(kuː)」と「キュー(kjuː)」の両方のケースがあるという意味のようです。例えばnewの発音記号に関して、Weblioでは「n(j)úː(米国英語)」と表記されていますが、この場合だと米国では「ヌー(nuː)」と「ニュー(njuː)」のどっちもOKということになります。学生の頃にnewを「ヌー」と言っている英語の先生がいましたが、今納得しましたw
最後の発音が「ティーズ(tiːz)」になっているのも個人的には意外です。ここは「ティス(tɪs)」と言うのではと私は思っていたのですが、実は違っていたのでしょうか?
どうしても気になってしまったので、Weblioにどう書いてあるかも改めて調べてみました。以下がそのリンクです。
IPA(国際音声記号)による発音表記として、以下の3通りが載っています。
/k(j)uːbəˈnɛtɪs/, /k(j)uːbəˈneɪtɪs/, /k(j)uːbəˈneɪtiːz/
ChatGPTは、上記の3番目の発音 /k(j)uːbəˈneɪtiːz/ (≒ クーバネティーズ)を提示していたのですね。最初の発音 /k(j)uːbəˈnɛtɪs/ をカタカナにすると「クーバネティス」なので、最後は「ティス(tɪs)」でもOKということがわかりました。ちなみに2番目の /k(j)uːbəˈneɪtɪs/ はカタカナにすると「クーバネイティス」です。
発音記号はだいたいわかってきたので、実際に海外の人がどんな風に発音しているかも聴いてみましょう。YouGlishというサービスで、特定の英単語やフレーズを指定すると、その発音をしているYoutubeの動画を集めてくれて沢山の人の発音を聴けるという便利なサービスがあります。これを使って「Kubernetes 発音集」を作ってみたのが以下です。
色んな文脈の中で、Kubernetesという発音がかっこよく出てきます!これを見ていると、私が子供の頃にテレビで「プロ野球の好プレー集」を見ていて「かっこいいなぁ!」と思った記憶がなぜか蘇りました。
予想通り「クーバネティス」と言っている人が多いですが、2割くらいは「クーバネティーズ」とも言っている感じがします。「クー(kuː)」を「キュー(kjuː)」と発音している動画も見つけたくて50本ぐらい見てみましたが、残念ながら見つかりませんでした。
まとめると、世の中で使われているKubernetesの一般的な発音はカタカナにすると「クーバネティス」「クーバネイティス」「クーバネティーズ」の3つだと思ってよさそうです。
Kubernetes周辺でよく使う用語の発音は?
Kubernetesを使う仕事に携わっていると、よく使われる用語がいくつかあります。それらについてもどんな発音をしているのか、社内でアンケートを取ってみました。
k8s
Kubernetesの略称です。Kとsの間にある単語(ubernete)の文字数が8なので、k8sと略します。
k8sをどう読んでいるかのアンケート結果が以下です。
約7割の方が「ケイハチエス」「ケーハチエス」のように8をハチと読んでいることがわかりました。
こちらもKubernetesの発音と同様にYouGlishで聴いてみると「ケーエイツ」「ケイツ」と言っているのが多かったようです。
kubectlのkube
kubectlは、Kubernetesのクラスターを操作するためのコマンドラインツールです。この先頭の4文字の"kube"は、kubectl以外でも例えばMinikubeやkube-apiserver のように、 Kubernetesに関するツール名の一部によく使われます。普段チーム内でやり取りされる会話を聞いていると、Kubernetesよりもkubeの方が登場頻度が多い印象も受けます。
では、この"kube"は社内でどう発音されているのでしょうか?
「クベ派」と「キューブ派」に大きく分かれて、クベ派が優勢という結果になりました。余談ですが、kubeの発音が「クベ」なのか「キューブ」なのかは私も実はずっと気になっていて、弊社クラフトマンソフトウェアの採用面接を受けた時も「kubeって皆さんどう読んでいますか?」と質問してしまったくらいです。今回アンケートを取ってみると「クベ派」と「キューブ派」にきれいに分かれて、「どう発音するかは決めの問題で、クベ派かキューブ派かで気に入った方の派閥に入ればいい」というのがわかり、少しはスッキリしました。
kubectlの発音についてもYouGlishで調べてみると、kubeは「キューブ」と「クーブ」の2パターンに分かれるようです。先ほどKubernetesの発音を調べた時に先頭の発音記号が /k(j)uːb/ であることがわかりましたが、「キューブ(kjuːb)」と「クーブ(kuːb)」でまさにこの発音記号通りに言われているのがわかります。
ちなみにkubectlの後半のctlはざっと調べたところ、「シーティーエル」と「コントロール」の2パターンで発音しているのが見つかりました。
kubeadmのadm
kubeadmは、Kubernetesクラスターを作るためのツールです。EKSやGKE等のマネージドなKubernetesサービスを使ったり、MinikubeやKind等でローカルKubernetes環境を作ったりする場合はこのkubeadmを必要としないですが、Linuxマシンに直接自らの手でKubernetesクラスターを構築したい場合にお世話になるツールです。
kubeadmのadmは社内でどう読まれているのでしょうか?
「アダム」が一番多く、「エーディーエム」と言っている人もいる結果になりました。
kubeadmをYouGlishで検索すると、現時点で1例しか見つからず「キューブエーディーエム」と発音していました。そこでYouGlishに頼らずに、YouTubeからkubeadmを発音している動画を手動で検索して数件を確認してみても、同様にどれも「キューブエーディーエム」と発音している結果となりました。
ちなみにChatGPTにkubeadmの発音を訊くと、次のように教えてくれます。
"kubeadm"の "adm" は "administrator" の略です。したがって、"adm" は "admin" と同じように発音されます。つまり、「アドミン」と発音します。完全な単語 "kubeadm" は、「キュービーアドミン」と発音されます。
admは「アドミン」と発音するとのこと、なるほど。しかし実際にkubeadmのadmを「アドミン」と発音している事例が見つからない...
そこでやり方を変えて、末尾にadmが付く別のツールでの発音を調べてみることにしました。真っ先に思いついたのが、ストレージにソフトウェアRAIDを構築してくれるmdadm。ただYouGlishで検索しても一件もヒットしないので、YouTubeで地道に手動検索することに。
すると、以下の 5:52で「エムディーアドミン」と発音しているのを見つけました!
ということで、世界的にはkubeadmのadmは「エーディーエム」または「アドミン」と言われている可能性が高い、と結論づけてよさそうです。
おわりに
Kubernetesの読み方について調査してまとめることが出来てだいぶスッキリしました。
いきなり話が飛びますが、例えばUbuntuだと、日本ではほとんどの人が迷わず「ウブンツ」と発音すると思います。しかしが海外では「ウブンツ」ではなく、実は「ウブントゥ」と言っていて微妙に発音が異なります。それでも日本人が迷わずに「ウブンツ」と言えるのは、Ubuntu自体が既に国内で浸透して和製英語化されて「ウブンツ」と皆が言うようになったためと思われます。
Kubernetesも日本で多くの人が当たり前のように使うようになれば、Ubuntuと同様に発音が和製英語化されるのでは?と個人的には思っています。その時に、このKubernetesという神様はどんな風に呼ばれているのかが楽しみです。