1.初めに
ネットワーク通信を学ぶ中で、ARP(Address Resolution Protocol)やルータの役割を理解することは非常に重要です。この記事では、ARPの役割や、異なるネットワーク間でのデータ転送の流れを、実際の機器とシミュレーションツール(例:Packet Tracer)を使いながら学んだ内容をまとめます。
2.ARPとは?
ARP(Address Resolution Protocol)は、IPアドレスからMACアドレスを解決するためのプロトコルです。特に同じネットワーク内で通信する際、PC間でデータを送受信するためには、送信先のMACアドレスが必要になります。これを得るためにARPを使用します。
ARPリクエストとリプライ
1.ARPリクエスト
送信元のPCが宛先のIPアドレスに対応するMACアドレスを知らない場合、ARPリクエストをブロードキャストでネットワークに送信します。
2.ARPリプライ
宛先のPCがARPリクエストを受け取ると、自分のMACアドレスを含んだARPリプライを送信元PCに返します。この時、送信元PCは宛先PCのMACアドレスを取得します。
3.ルータの役割と異なるネットワークへのデータ送信
同じネットワーク内であれば、PC間での通信は直接行われますが、異なるネットワーク間で通信する場合はルータが必要です。ルータは、異なるサブネット間の通信を仲介し、データを適切なネットワークに転送します。
1.PCが異なるネットワーク宛てにデータを送信
送信元PCが宛先PCのIPアドレスが同じネットワークに属していないことを認識すると、ルータに対してデータを転送します。これを「デフォルトゲートウェイ」と呼びます。
2.ルータの処理
ルータは受け取ったパケットの宛先IPアドレスを確認し、宛先が異なるネットワークに属する場合、次に転送すべきインタフェースにデータを転送します。この際、ルータはARPを使用して転送先のMACアドレスを解決し、新たにイーサネットフレームを作成します。
4. 実際のネットワーク通信の流れ(具体例)
以下は、PC1からPC2へデータを送る際の流れを説明します。
1.PC1が送信先IPを認識
PC1が宛先IP(例えば192.168.2.100)を認識し、同じネットワーク内であればそのまま送信します。異なるネットワークの場合は、デフォルトゲートウェイ(ルータ)に送信されます。
2.ARPリクエスト(同じネットワーク内の場合)
送信先のMACアドレスが不明な場合、PC1はARPリクエストをブロードキャストで送信します。宛先PCがそのリクエストを受け取り、ARPリプライを返します。
そして必要なMACアドレスを取得した後、PC1が送信するデータ(イーサネットフレーム)を作成し、宛先MACアドレスを指定して送信します。
※同じサブネット内であれば、ルータは使用せず、直接PC2にデータが送られます。
3.ルータを使用する場合(異なるネットワーク間)
PC1が異なるネットワークに向けてデータを送信する際、ルータが間に入ります。PC1はルータに向けてデータを送り、ルータはそのパケットの宛先IPアドレスに基づき適切なインタフェースを選び、転送先のネットワークに向けて新しいパケットを送信します。
5.まとめ
・スイッチとルータの違い
スイッチはMACアドレスをもとに、ネットワーク内でデータの転送を行いますが、ルータはIPアドレスをもとに、異なるネットワーク間の通信を中継します。
ネットワーク通信の流れを理解することは、ネットワーク設計やトラブルシューティングにおいて非常に重要です。ARPやルータの役割を理解し、実際の通信がどのように行われるのかを把握することで、より効率的にネットワークを構築できます。
6.参考資料・ツール
・Packet Tracer: シミュレーションツールとして活用しました。ネットワーク設計やトラブルシューティングの練習に役立ちます。
・Wireshark: 実際のパケットをキャプチャして解析することで、ネットワーク通信の詳細を確認できます。