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実例で学ぶ正規表現の「否定先読み」「肯定先読み」「否定後読み」「肯定後読み」

Last updated at Posted at 2022-11-13

便利だけど分かりにくい「否定先読み」「肯定先読み」「否定後読み」「肯定後読み」について文字の頭や後ろに指定した文字があるかないか、というざっくりした覚え方をしていないでしょうか。

先読みと後読みの基本

書式

書き方 名前 意味
(?=pattern) 肯定先読み 直後にpatternがある
(?!pattern) 否定先読み 直後にpatternが無い
(?<=pattern) 肯定後読み 直前にpatternがある
(?<!pattern) 否定後読み 直前にpatternが無い

意味 結果
for(?=each) 直後に each がある for(forの直後にマッチ) foreach の頭の for にはマッチし、for にはマッチしない
for(?!each) 直後に each がない for(forの直後にマッチ) foreach はマッチされず、for にはマッチする
(?<=for)each 直前に for がある each(eachの直前にマッチ) foreach のお尻の each にはマッチし、each にはマッチしない
(?<!for)each 直前に for がない each(eachの直前にマッチ) foreach はマッチされず、each にはマッチする

ここまで説明しているサイトはよくありますが、これだけだと説明不足です。

先読みと後読みは位置にマッチする

行頭(^)や行末($)は正規表現でよく使うメタ文字ですが、このような位置にマッチするものをアンカーといいます。
先読みと後読みも実はアンカーの一種で、位置にマッチしています。

位置にマッチしているので以下の例で (?=each) は for と each の間にマッチし、each は含まれません。
よって for も each もキャプチャされ、$matches に格納されます。

php
preg_match('/(for)(?=each)(each)/', 'foreach', $matches);
var_dump($matches);
/*
array(3) {
  [0]=>
  string(7) "foreach"
  [1]=>
  string(3) "for"
  [2]=>
  string(4) "each"
}
*/

内部的には一旦forの「(文字を読む)先」にeachパターンがあるかを偵察し、eachパターンがあれば戻ってきてその位置情報を返します。

「直後」「直前」と解釈するから混乱する

これをforの「直後にeachパターンがあるか」と解釈してしまうと「直後なのに先読み??」となり、混乱の元になってしまいます。
軸となるキーワード(ここではfor)の右を「読む先」と解釈し、左を「読む後」と解釈することで混乱を防げます。

改めて表を書き直すと以下のようになります。

書き方 名前 意味
(?=pattern) 肯定先読み 読む先にpatternがある
(?!pattern) 否定先読み 読む先にpatternが無い
(?<=pattern) 肯定後読み 読む後にpatternがある
(?<!pattern) 否定後読み 読む後にpatternが無い
意味 結果
for(?=each) for の読む先に each がある(forの右にマッチ) foreach の頭の for にはマッチし、for にはマッチしない
for(?!each) for の読む先に each がない(forの右にマッチ) foreach はマッチされず、for にはマッチする
(?<=for)each each を読む後に for がある (eachの左にマッチ) foreach のお尻の each にはマッチし、each にはマッチしない
(?<!for)each each を読む後に for がない(eachの左にマッチ) foreach はマッチされず、each にはマッチする

事例でみる先読みと後読み

先読みと後読みをより理解するために事例を交えて説明します。

特定タグで囲まれた文字のみ抽出

html
<div>
  <p>あいうえお</p>
  <a href="#">かきくけこ</a>
  <p class="p">さしすせそ</p>
  たちつてと
</div>
<script>
$(function()
{
  const body_html = $("div").html();
  console.log( body_html.replace(/(?<=<p[^>]*>)([^<>]+)(?=<\/p>)/gm, '<span>$1</span>') );  // 1. pタグの内側にspanタグ
  console.log( body_html.replace(/<p[^>]*>([^<>]+)<\/p>/gm, '<span>$1</span>') );           // 2. pタグをspanタグに差し替え
  console.log( body_html.replace(/(?![^<>]+<\/[^>]+>)(?!<)(?![^<>]+>)([^<>\s]+)/gm, '<p>$1</p>') );  // 3. タグで囲まれていない文字をpタグで囲う
});
</script>

1と2について
肯定後読みで開くタグ、肯定先読みで閉じタグのパターンを指定すると
そのタグパターンは含まれず位置だけマッチするので、
タグの内側を別のタグで囲うことができます。

3について
先読みでパターンチェックすると位置は先読み前の位置に戻ります。
これを利用すると条件のAND判定が可能になります。
この場合は否定条件をANDでつなぎ、前後にタグがない文字列を抽出しています。

英数混じりのパスワードになっているかチェック

javascript
$(function()
{
  $('#pass').on('change', function(){
    if( !$(this).val().match(/^(?=.*[0-9])(?=.*[a-zA-Z])[a-zA-Z0-9]{8,}$/) ){
      alert("パスワードは半角の英字と数字を混ぜ、8文字以上を入力ください")
    }
  })
});

上記の3と同様に先読みでAND判定しています。
こちらの場合は肯定条件のAND判定でパスワードの条件を評価しています。
[a-zA-Z][a-z][A-Z] に分ければ大文字小文字混じりの判定もできます。

数字を3桁ずつカンマ(,)で区切る

javascript
let nums = [1234567, -123456.78901, 123];
for(let num of nums)
{
  console.log( num.toString().replace(/(?<!\.\d*)(\d)(?=(\d{3})+[^\d])/g, '$1,') );
}

否定後読みで小数点が手前にない数字を抽出し、
肯定先読みで数字が3つ続く位置を抽出し、カンマを挿入します。

参考

https://www.javadrive.jp/regex-basic/writing/index2.html
https://www-creators.com/archives/5332
https://zenn.dev/usamik26/articles/regex-lookahead
https://gihyo.jp/dev/serial/01/perl-hackers-hub/005803

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