はじめに
データ基盤の整備やガバナンスの推進に携わっていると、こんな課題にぶつかることがあると思います。
- データマネジメントはやっているけど、「戦略」としてどう整理すべきか分からない
- DMBOKを参照しても、データ戦略そのものの描き方はあまり書かれていない
- 結局、ビジネス戦略とのつながりが弱くなり、形骸化しがち
私自身も同じ悩みを抱えていたのですが、そのヒントを得たのが『データ戦略の策定』(Marilu Lopez 著)という書籍でした。今回は本書から得た要点と、読んでみての気づきを簡単にまとめます。
本書からの要点
本書の大きなポイントは次の3つです。
- データ戦略は単数ではなく「戦略群」
→ 1つの戦略で完結するのではなく、複数のレイヤー・視点をもつ戦略セットとして整理する - PACメソッド
→ Pragmatic(実践的)、Agile(アジャイル)、Communicable(共有可能)という3つの特性をもつべき - 3つのコンポーネント
- フレームワーク:データ戦略群を可視化し、他の戦略との関係を整理する構造
- キャンバス:1枚で戦略を伝え、ステークホルダーを巻き込むためのツール
- サイクル:少なくとも年1回見直し、戦略を継続的に更新していくプロセス
個人的な気づき
読んでいて特に腑に落ちた点をいくつか挙げます。
-
「戦略群」という考え方
→ いろいろな視点を持った複数の戦略を構造的に整理し、整合性をもたせるアプローチとなっており、一歩一歩着実に戦略策定を進めていけそうだと感じました。 -
最初に「ビジネス戦略と整合させる」ことから始める
→ データ基盤やガバナンスの議論に飛びつく前に、ビジネス戦略のゴール(売上増、顧客体験向上、規制対応など)に紐づけるのが本質だと再認識。 -
フレームワークを使うと、自社のデータ領域が見えやすい
→ 検討対象について逐次、言語化・可視化していくことで、優先度の高いドメインが自然に浮かび上がる印象でした。
今後やってみたいこと
- 実際に「キャンバス」を使って社内課題を整理してみる
- データマネジメント成熟度モデルと組み合わせてアセスメントしてみる
- PACメソッドをベースにしたワークショップ形式を試してみる
まとめ
『データ戦略の策定』は、抽象的に語られがちな「データ戦略」を具体的に整理するための枠組みを与えてくれる一冊でした。
- データ戦略の策定にあたって、何から始めればよいかわからず困っている人
- DMBOKを学んだことがあり、戦略部分について深く知りたい人
- データ基盤・ガバナンスを推進しているが戦略との接続に悩んでいる人
こうした方に特におすすめです。興味を持たれた方はぜひ書籍を手に取ってみてください。