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コンサルティング、マーケティング、Dev Rel の複雑な関係について

Last updated at Posted at 2018-12-16

皆さん、こんにちは!
FIXER でGeneral Manager(広報PR & 教育事業統括)兼 Evangelist をしている鈴木章太郎です。
こちらは DevRel Advent Calendar 2018 の16日目の記事です。
※ 次の記事は24日を予定しています!
これまでに、DevRel MeetUpは2回、登壇したことがあります。英語の会を含めこの集まりは好きなので、またどんどん参加したいと思っています。

私自身のバックグラウンドについて

もともと、SIerにいて、その後、Microsoft に13年勤めました。そのうち最初の3年間は、公共営業部門のPre-SalesチームのArchitect、その後10年間は、Technical Evangelist として、.NET、Visual Studio、Microsoft Azure、等様々な技術やプロダクトの技術啓発活動を続けてきました。
その後、別の外資ITベンダーで同じく Evangelist として技術訴求や製品訴求等をした後、ヘッドハンティングで某外資コンサルティング会社にテクノロジーのコンサルティングをするシニアマネージャーとして転職しました。その後、縁あってMicrosoft のダイアモンドパートナーである今の会社で仕事をしています。

コンサルティング会社における DevRel 活動について

最初にお断りしておくと、私は、決してコンサルティング会社を dis るつもりはないです。
彼らの活動を尊敬していますし、とても私には同じようには活動できないと思います。
顧客に対するヴァリュー提供を徹底的に考える姿勢は、いつも心にとどめて意識するようにしています。

その上で、コンサルティング会社における、DevRel活動の限界というか、難しさを書きたいと思います。

テクノロジーに対するパッション

私は金融のコンサル部隊にいたのですが、実際に仕事をすると、ほとんど部署は関係なくなります。そこで、私は、Mixed Reality が好きだったので、その関係の案件創出と営業活動を行うV-Teamに所属しつつ、SME(Subject Matter Expert)として様々な案件の技術支援(主に Container, Docker, Kubernetes, microservices, DevOps, クラウドでは GCP, AWS, Azure 等々)をすることになりました。
これは、私のロールとしては、正解でした。コンサルティング会社での経験が無い人間を採るというのは、かなり会社にとってチャレンジングなはずなので、それを承知で、ぜひ SME として仕事をしてくれ、と言われたので、それを意気に感じて、異なる業界の異なるアカウントのお仕事を毎日やらせて戴いていました。凄く刺激があり楽しかったですね。
また、そのような中で、実際に、テクノロジーに対するパッションがあったのか、というと、これは変わりません。
私の中で、常に最新技術への関心と情熱はブレないもので、常に訴求したいものだったりします。
また、たまたま V-team 等で知り合ったテクノロジーのデリバリー部隊の人達は、同じく最新技術にも大変なパッションをもって実際に色々試してお客様の需要を探っている人たちでした。その点では、ほとんど変わりません。

しかしながら、コンサルティングは現実のお客様課題を解決するのがメインであり、どうしても御用聞き的になってしまうのは、仕方ないところだと思います。
技術マーケティングは、将来の需要獲得のために、今、市場にまだ出ていないあるいは出たばかりの技術や製品を、市場でドミナントなものに、あるいはコンペティティブなものに、していく活動で、現在の活動であると同時に種まきの活動、将来の活動だと言えます。これに対して、コンサルティングは、いま市場にある技術や製品を前提にして、お客様の個別の課題に対応するという常に現在の活動であるという違いがあります。
すなわち、具体的な案件がなければ、なかなかプリセールス的な活動も、ましてや、技術マーケティング=エバンジェリズム的活動も、できないのが現実なわけです。
上司の上級マネージングディレクターから、「コンサル会社はいろいろ役職があるけど、究極的には、営業とデリバリーしかない」と言われたときは、改めて納得したものです。プリセールス、エバンジェリズムは存在しえなかったのですね。
マーケティング活動がなくて大丈夫なのか?と思いますが、実際には、コンサルティング会社は、多くの大口顧客にそれぞれが担当の役員が付いていて営業活動を行っており、あとはデリバリー部隊がそこから生まれる案件をこなしていけば、売り上げが立っていくわけです。またFortune 500の上位顧客等がほとんどの場合ターゲットですので、拡販、という概念がどうしても希薄です。ソリューションを考えたりして横展開を前提にしても、実際には個別対応しかありえないことになります。
ただ、これはこれで凄い強みで、また会社のブランディングも凄いので、受注を前提にいろいろ動くことができ、提案活動で疲弊することはあまりないのは素晴らしいです。
そういう意味では、市場でドミナントなあるいはコンペティティブなポジションを取り、幅広く多くの技術者や顧客に訴求し、当該技術や製品のデファクトスタンダードを取りに行くという必要がありません。その中で、エバンジェリズム活動を行うというのは、なかなか難しいといっていいでしょう。これは誰かが悪いわけでは無く、構造的なものなので仕方ないです。
そもそも、コンサルティング会社自身は技術や製品を持たないのが当たり前なので、そんなことは当たり前だということになります。ただ、そうはいっても、それなりにソリューションを作ってやっていけたらまた違う展開になったかもしれませんが、それは普通に営業活動へのデリバリチームからの支援に相当するものをコンサルティングチーム内でやっているだけであり、技術マーケティングではないでしょう。

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個人のブランディングと会社のブランディング

私は、エバンジェリスト・アドボケートは、スペシャリティとセルフブランディングを常に必要とすると思っています。私も、.NETや、Azureその他のパブリッククラウド、等を専門にしつつ、セルフブランディングでレザーパンツを履きまわしたりしています(笑)。技術啓発活動をしていくうえで、キャラが立った方が良いわけで、あの人ならこんな感じ、ということで次第にその人のカラーができていくわけです。まあレザーパンツはバンドをやっているのもあって元々大好きですw

これを、コンサルティング会社で行おうとすると、ある程度できなくはないのですが、かなり厳しいかなと思います。というのも、基本的には、コンサルティング会社は、会社自身のブランディングの方が重要なことが多く、個人をブランディングさせようという仕組みはあまりありません。建前上はそういうものもあるかもしれませんが、あくまで社内向けの話で、外部でそういうことを許容するような文化はないと思います。コンサルティング会社のリクルーティングページを見て戴くと、当該部門に所属している男女の自己紹介があったりします。顔写真があり、部門も会社も明らかなのに、イニシャルでしか紹介されないものが多いのはかなりの違和感ですよね。
とはいえ、ある程度(というか相当)偉くなれれば、外部で必然的にタグ付けされたりするので、また別かもしれませんが、普通は難しいです。このことは、コンサルティング会社出身で著名な人がそれほど多くないことからも容易にわかると思います。少なくとも技術系では皆無に等しいのでは?と思いますが、当然の結果かもしれません。
ただ、やはり、技術マーケッターとしてのエバンジェリスト・アドボケートは、個人のタグ付けやセルフブランディングが大事であり、この点でも、コンサルティング会社の人として外部で活動することは難しいかもしれないと思います。

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DevRel 活動について

本来の活動範囲

DevRel 活動の幅は本来広く、私もMicrosoftのエバンジェリスト時代は、大学から、学会、各種政府系有識者会議、協議会・検討会、をはじめ、技術イベント、開発者コミュニティ登壇、エグゼクティブ向け勉強会登壇、ラウンドテーブル登壇、Webinar収録、Blog執筆、Web記事執筆、ひいては社内向け啓蒙活動等々、多くのフィールドに自分から出て行って、フットワーク軽くやらないといけないです。そのためのマーケティング予算も相当なものが必要となってきます。

外部イベント登壇

しかしながら、コンサルティング会社では、そんな必要もなく、偉い人が良いリレーションシップを築いておけばまず間違いありません。技術的なイニシアティブを握ろうとはしていない以上当然のことです。
ただ、コンサルティング会社社内でも私と同じような活動をやっている方は数名いました。そのほとんどがデリバリー部隊所属のエンジニアですが、外での登壇の機会や執筆の機会もそれなりにあったはずです。
今でもTECH PLAYなどを見かけると多くの元同僚の方(とはいっても決まった方が多いですが)が登壇されるのを見かけます。しかしながら、ご自身の裁量範囲はかなり狭いのではないかと思います。そもそも技術マーケッターとして市場を作りたい、等と思っているのは私等だけで、そこに出る人たちは仕事と割り切ってやっておられる方も多いのかもしれません。ただ、技術に対するパッションはとても高いのは良く知っています。
それでも外部向けイベントで登壇する人というのはコンサルティング会社ではかなり少数派でしょう。ただ、多くが採用イベントとしても機能するように設計されていますので、効率は良いかもしれないです。

Blog

そして技術あるはビジネスのブログも存在しています。多くは社員の互選等で選ばれた有識者の有志によるものとなっています。これはこれで、ベンダー中立的に、今までとは違う観点から書けるブログとして面白く書かせて戴きました。
しかしながら、ブログは、書き上げてもすぐにパブリッシュできません。複数の部門からの承認フローを貰う必要があったりします。これは、顧客情報や未公開情報などのセンシティブな情報が含まれていないかどうかを確認するために必要なのだとは理解できますが、多くの場合、タイムリーさに欠ける部分があります。一度、某社の技術イベント前にその技術についてのブログを書いておこうと思ったのですが、ギリギリの公開になってしまい、焦った記憶があります。それでも何とか前日には公開してもらいましたが、これはその承認をする部門の方々が、市場における新技術や新製品発表のインパクト、バズの上がり方、等をご存じないためだと思いますので、致し方ないことでしょう。もし公開が遅れたら、そちらのイベントから発信される情報で、各種Webメディアや、SNSのタイムラインが埋め尽くされることになり、自分のブログはタイムラインに流れてしまいます。そのあたりを意識して、タイムリーにブログ更新しようと思うと、個人のコントロールによる他はないでしょう。それはコンサルティング会社としては、なかなか許容できない点です。

大学での非常勤講師業務

Microsoft 時代に、早稲田大学大学院、中央大学総合政策学部、等数校の非常勤講師を、延べ12-13年やっていました。これは殆どMicrosoft在籍中の期間全部にわたります。教え子の中には、IT業界に興味をもって就職した人も多いですし、中には、私のエバンジェリストという仕事自体に興味を持ち、Microsoftに入社したという人もいました。これ、個人的にはMicrosoft時代で嬉しかった出来事の一つです(笑)
コンサルティング会社にいる間に某大学の教授から、非常勤講師業務を委託したいので、教歴や執筆書籍等の入ったレジュメを送ってくれと依頼がありました。早速上司等の関係者の承認を取ることになるのですが、最終的には、コンサルティング会社では副業が禁止されているため、業務時間内ではできないというレギュレーションとぶつかることになりました。これはこれで仕方がないことではありますが、無償であっても業務時間内では無理ということは、その度に短い有給を取る必要があり、現実的ではないのでこれも断念しました。

内部向けDevRel 活動

このように多くの外部向けDevRel 活動には制約が多くなりがちだと思います。
その一方で、社内向けDevRel 活動の方は、それなりに活発で、多くの技術者がパッションをもってソリューション開発や、最新技術の研究に、自発的に取り組んでいる状況を何度も目にしました。クラウドベンダー資格の勉強なども、周りがやるので自然に勉強しますし、とても勉強意欲が高いです。社内でのMixed Reality や AI , Cloud 等の各種勉強会も盛んに開催されていました。またデリバリー部隊による技術イベントも社内では頻繁に開催されて、知見の共有を図る試みがなされていました。このような取り組みは日本だけでなくワールドワイドで行われ、海外の同僚との幅広い連携が可能です。
内部に多くの開発者などを抱える大手外資コンサルティング会社では、内部コミュニティの方が大きく、このやり方がたぶん一番社内技術者への訴求には効率が良いと思います。外部のエバンジェリスト・アドボケートとしては、誰かキーマンとなるインフルエンサーを見つけてその人を中心に訴求すれば良いので、(それが誰かがわかれば)これまた外部から見ても効率が良いです。
ただ、私のように、同時に外部への露出も図りたい、外部への訴求もしたい、という人間にとってはなかなか動きづらいですよね。

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まとめ

いろいろ書いてきましたが、これはあくまでも私の個人的な意見ですので、違うという方もおられると思います。
しかし、上記に書いた通り、コンサルティング会社の良い面も頼りにできる面もよく知っているつもりですので、今後とも良いお付き合いをしていきたいと思っています。
私自身の今後の予定としては、技術イベント登壇の他、Webメディア発信、月1回の技術イベント主催、Azure Experts Councilでの活動強化、Microsoft との共同のマーケティング活動等を行っていきます。
どうぞよろしくお願いします!

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