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DevRelAdvent Calendar 2018

Day 24

現在のエバンジェリストに求められるもの

Last updated at Posted at 2018-12-25

皆さん、こんにちは!
FIXER でGeneral Manager(広報PR & 教育事業統括)兼 Evangelist をしている鈴木章太郎です。
こちらは DevRel Advent Calendar 2018 の24日目の記事です。
これまでに、DevRel MeetUpは2回、登壇したことがあります。英語の会を含めこの集まりは好きなので、またどんどん参加したいと思っています。弊社の若手にも参加を促しているところです。

#私自身のバックグラウンド
もともと、SIerにいて、その後、2003年から Microsoft に13年勤めました。そのうち最初の3年間は、公共営業部門のPre-SalesチームのArchitect、その後10年間は、Technical Evangelist として、.NET、Visual Studio、Microsoft Azure、等様々な技術やプロダクトの技術啓発活動を続けてきました。
その後、別の外資ITベンダーで同じく Evangelist として技術訴求や製品訴求等をした後、ヘッドハンティングで某外資コンサルティング会社にテクノロジーのコンサルティングをするシニアマネージャーとして転職しました。その後、縁あって、Microsoft のダイアモンドパートナーである現在の会社で仕事をしています。

#エバンジェリストの役割の変化について
これに関連して、23日の DevRel Advent Calendar 2018 の記事を読みました。その結果、大幅に原稿を変更したため、公開が遅くなり申し訳ありません。この記事、エバンジェリストは職業ではなく生き様です を書いた @ayatokura とは5年間同じ部署で活動していました。
彼女と同じことを書こうと思っていた内容は、全てこの記事に譲ります。ほぼ100%同意です。

現在エバンジェリストに求められるものを浮かび上がらせるため、過去の Microsoft での私の活動と、そこから推測される内容を、差し支えない範囲で紹介していきたいと思います。Microsoft での例になっていますが、他のベンダーもおそらく同じでしょう。そしてこのように変われなかったら、もしかしたらこの時代には淘汰されてしまうかもしれません。

##公共営業部門アーキテクト時代のエバンジェリズム
私のエバンジェリスト活動は、まだ異動前の、2003年から既に始まっていました。私は当時、Industry Technology Strategist, Technical Architect というロールで、本部長直属のプリセールスアーキテクトとして入社しました。
しかし、製品担当ではなく、主に .NET で開発するパートナーを担当していました。
当時、エンタープライズ SI で支配的だった Java の牙城を切り崩すには、特に官公庁などは、日本のメジャーな SIer が圧倒的に支持をしていたため、この中で調達仕様にしっかり .NET を記載していかなければならなかったということです。経済産業省や総務省(地方自治体)での各省 CIO 補佐官を交えた調達標準作成の会合は大規模かつ長期にわたり大変でしたが、しっかり技術参照モデルの成果物を作ることができました。既に .NET で大手 SIer もシステム構築を始めており重要な事業になっていたこと、また当時 C# および .NET CLR は ECMA 標準を経てJIS規格となっていたこと、等も追い風となりました。
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ここに当時のインタビューが残っています。
国のIT基盤を設計するITアーキテクト
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##XML Web Services と interoperability の訴求
この活動の中で大きな位置を占めたのが、XML Web Services でした。これがなければ、Java との相互運用性を調達仕様書の中で謳うことはできなかったかもしれません。私も2005年当時、これをテーマに、初めての共著の著書を出版しています。総務省の後援の元、ベンダーと大学関係者などで構成された団体において中心的な役割を果たしていた人達で書かれた書籍です。
次世代 XML Web サービスとシチズン・セントリックの考え方
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この頃、Microsoft 本社でも、Interoperability が叫ばれ、私は日本法人におけるその活動のメンバーの一人となっていました。
この一環で、私は、数社の日本の有力ベンダーや大学関係者と一緒に、当時の Sun Microsystems 社(現在の Facebook のキャンパス)を訪問しています。Sun はとても友好的な態度で我々一行を迎え入れてくれ、大変充実した議論ができたと思います。
この時代、とにかく敵対的であったMicrosoft の中で、私は政府の仕事をしていた関係もあり、比較的中立的かつ融和的なかかわりをすることができました。
もっとも本社の担当者には、やはり当時の対Linux、対OSS施策から、競合他社に対して、敵対的な態度を崩さない人もいて、そういう人がかなり重要な役職についていることが多く、社内的な理解には温度差がありました。
全体的に、この時代、Microsoft エバンジェリストは、まさに .NET のエバンジェリストであり、市場においてドミナントまたはコンペティティブなレベルまで、.NET を引き上げることこそが重要なミッションでした。
その中で、政府機関を担当し、調達基準や、実証実験などで、多数の競合ベンダーと協業していた私は、ある意味、現在のように OSS ベースでクラウドプラットフォームの継続的な利用に誘導するのに近い活動をしていた異色のエバに近い存在だったのかもしれません。
そして、この頃から大学での非常勤講師を多くの先生方からご依頼いただき、その後、早稲田大学で10年、中央大学で6年をはじめ、多くの大学で、学生への技術紹介や訴求などを行いました。

##.NET から Web 標準のエバンジェリズムへ
この時一緒に活動した当時のエバンジェリストチームのマネージャーからの誘いで、2006年にデベロッパー&プラットフォーム統括本部 D&PE(のちにデベロッパーエバンジェリズム統括本部、DX)に異動しました。
ここは当時、本当にバラバラにデベロッパー向けマーケティングをしている部署でした。同じ統括本部内に、
・ISVパートナー向けのエバンジェリストチームが数名、
・IT Pro向けのエバンジェリストチームが数名、
・ブロード(すなわち幅広いオーディエンス担当)エバンジェリストチームが数名
・アーキテクト向けのエバンジェリストチームが数名、
・エンタープライズ向けのエバンジェリストチームが数名、等々、

なぜあれほどバラバラだったのかは、当時はよく分かりませんでした。
ただ、私は、この部署に異動する前から、彼らはそれぞれのフィールドでしっかり .NET のエバンジェリズムを真摯に行っていたことを知っていました。特に、XML Web Services の訴求や、VB→VB.NET のマイグレーション案件等も、積極的にやっていました。私が尊敬していたエンタープライズのエバンジェリスト兼プレイングマネージャー的な方がいつも言っていたのは、「エバンジェリストはフィールドに出てこそ価値がある」ということでした。
これは現在のアドボケート的な立場に近いもの
となります。すなわちパートナーやエンドユーザーの中に入って、実際にその中でプロジェクトの技術支援をしていくという活動です。ただ、この頃は、.NETのデファクトスタンダード化を狙ってやっていたため、OSS を活用しつつ顧客のクラウドプラットフォーム利用促進とカスタマーサクセスを追及するという現在の活動とは厳密には異なるでしょう。
いま思うのは、20数人のエバンジェリストがいたので、壇上からブロードにオーディエンスに訴求する人たちもいれば、ディープにお客様とエンゲージするエバンジェリストもいたのです。エバンジェリストにもいろいろなタイプが必要なことを最初から想定しはじめたのが当時の本社が決めたロール構成だったのだと今は思います。
その中で、私は、世界的な Web 2.0 のムーブメントの中で、初めて結成された Web Platform のエバンジェリストして活動し始めました。IE, IIS, をはじめ、Windows Live、そして当時最新の .NET プラットフォームであった3.0(WPF、WCF、WF等)以降の訴求に勤めていました。ここでもやはり、初めての"Web界隈"とのお付き合いが始まりました。当時、最も Microsoft から遠いオーディエンスだったところに、リーチしていかないといけない訳です。当時の武器は、Flash 対抗ブラウザープラグインの Silverlightでした。WPF の派生ともいえるこのプラグインこそ、Mac、Linux でも稼働し、Microsoft の Web の取り組みの世界への関心を強く引き付けるための大きな要素であり、その訴求を多くの事例構築やパートナー発掘と育成の中で実施しました。著書も Silverlight 関連は一番多くて、2-3挙げると下記のような感じです。

Silverlightで開発するデータ駆動アプリケーション
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Silverlight大全
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.NET開発テクノロジー入門 VISUAL STUDIO 2010対応版 (MSDNプログラミングシリーズ)
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ただ、初期は、やはり相手(Web界隈のオーディエンス)がわからず、手探りで色々なところを紹介して貰ったのが実態でした。その時、最初に手掛けたのが、米国ラスベガスで当時開催されていたMIXというイベントの日本版ReMIX2006です。
このイベントは2007-2009まで、イベントオーナーやコンテンツオーナーとして関わりました。既にがっちりとオーディエンスタイプを把握して推進されていたTech・Ed Yokohama とは全く異なるイベントでしたので、当初はWebデザイナー、Webデベロッパー、コンテンツプロバイダー、等に喜ばれるコンテンツなどを検討しつつ提供していったつもりです。その後2010年頃からは、Azure の初期のプラットフォーム訴求も加えて、IE の HTML5/CSS3 対応や Visual Studio のJavaScript 対応などにも本腰を入れ始めます。
ここでもやはり、共通語は、.NET ではなくて、相互運用性 Interoperability や OSSとの親和性等でした。特にSilverlightでは、本来の.NETの趣旨であるマルチ言語開発マルチOS実行が普通で、これを利用して多くの関係者を巻き込んでいきました。2007年のReMIX2007では、Rubyのまつもとゆきひろ氏をはじめ、Python、JavaScript、等のオーソリティ招聘して、ブレイクアウトセッションで展開しました。
このように Silverlight は、Microsoft Azure が登場する前の最も Interoperability に富んだプラットフォームだったといえるでしょう。ただし、この時はまだ、Web での覇権も Microsoft としては視野に入れていたのであって、~ Loves OSS の現在とは程遠かったと思います。エバンジェリストの役割もその意味では、Interoperability を切り口に、自社プラットフォームを訴求し浸透させることがメインだったと思います。この傾向はサティア・ナデラ体制になるまで続いて行きましたが、2010年の Azure 登場時以降は、少しづつ変化が訪れます。
[【レポート】次世代ウェブ体験を体現したデモが目白押し――REMIX07 TOKYOキーノート]
(http://ascii.jp/elem/000/000/069/69296/)
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##OSS 活用、顧客のクラウドプラットフォーム利用促進、カスタマーサクセスの追及
上記のMIX・ReMIX イベントが2011年に終了する頃から、Azure の訴求に向けた活動が始まりました。この辺りからは皆様もよくご存知のユーザーグループなどが出てきて、まさにコミュニティマーケティング、エバンジェリズムの形が少しずつできてきた時期となるでしょう。
各社クラウド特に A 社関連のコミュニティの動きが目まぐるしかったこともあり、多くの顧客やパートナーでクラウド化の検討が始まりました。
Web 界隈はもともと OSS ツールへの傾倒が多く、某ベンダーデータベースへの依存をなくそうとしていたSI等も含め急速にクラウドへのシフトを検討し始めた時期です。
エバンジェリストとしては、通常の .NET アプリケーション開発の訴求のみならず、OSS や他プラットフォームでの開発への技術的ケイパビリティなども訴求を求められるようになってきました。
私の場合、主にSilverlight で Azure 側と連携したクロスプラットフォーム開発から、iOS や Android でのフロントエンド + Azure 連携というアクティビティに変わっていきました。こんな内容がその時の記録にあります。
Windows Azure を使った iOS 連携アプリケーション開発
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2012年から、私は、Microsoft 品川本社の30Fにある、エンタープライズのエグゼクティブ向けのエンゲージメント機関である Microsoft Technology Center (MTC) のアーキテクトとの兼務の辞令を貰います。ここで、澤さん(プレゼン本や働き方改革本で有名な澤円氏)への(外資系で時々ある)dotted report(本来のラインマネージャー以外に兼務している別のポジションのマネージャーにもレポートすること)として活動することになり、顧客対応以外に様々なアクティビティをさせて戴きました。
その中ではクラウドの活用に関する関心をダイレクトにお聞きすることができましたし、ブロード向けに訴求する以外のエバンジェリスト的なロールではなく、まさにプリセールスの中のトップダウンシナリオの中のロールですので、これも幅広い経験の一つだったと思います。
このような人事は、日本だけではなく、Worldwide で実施されていました。要するにクラウドシフトの一つです。コンサルティング、エバンジェリズム、プリセールス、セールス、等のリソースを MTC に集めることで、顧客の要望を救い上げようということです。
クラウドの場合には、皆さんご存知の通り、Subscription の購入だけではなく、その継続が重要です。どのようにして、顧客に長くそのプラットフォームを使ってもらうか、様々なお客様の声を聴いて、それを各フィールドのプランに反映させるかという試みの一つだったのではないかと思います。すなわち、カスタマーサクセスなしでは、このビジネスは成り立たず、どこのクラウドベンダーでもこの点は喫給の課題です。これがきっかけでエバンジェリストの役割はかなり変化することになったと私は思います。
とはいえ、相変わらずこの頃は多くのプラットフォームの同時訴求がエバンジェリストに求められていて、私も、Windows 8/8.1 のアプリをAzureと連携して作るために、このようなムック本の執筆に参加したりしていました(特集2です)。
Windows 8[業務アプリ]開発読本
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またこのようなセッションを行い、複数のプラットフォームの同時訴求にも努めていました。
Windows Azure Mobile Services - iOS, Android, Windows 8.1…すべてのデバイスに MBaaS を! -
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##エバンジェリスト組織改変とエバンジェリストの役割の変化
2015年以降は、いよいよCEOがサティア・ナデラに変わった効果が多くの部門に波及してきました。D&PEはDXへと組織が変更となり、やがてSales & Marketing 部門の一部となりました。エバンジェリスト組織は、Windows プラットフォーム、Office プラットフォーム、Azure の全てを技術訴求する組織として位置づけられると同時に、ブロードに壇上からオーディエンスに訴求する業務は縮小し、お客様(DXの場合にはISV)とのハッカソンや具体的な技術支援、一緒にプロダクトを開発し、その後は各お客様の製品マーケティングへの支援が大きな目的となります。
この後の事例などは極めて多く、ここでは紹介しませんが、多くの技術支援を行うと同時に、エバンジェリストに求められることが大幅に変更になってきたことを実感しました。
Microsoft の場合には、多くのプロダクトを抱える企業ですので、このような暫定的な体制が必要なことは理解できます。
本社が組織変更すれば、すぐにサブは変わります。その後約1年で、すっかりMicrosoftからDX 部門がなくなったり、エバンジェリストという名前こそ残っていますが、セールスロールの人や純粋なマーケッターの人だけになってしまいました。
他のクラウドプラットフォームベンダーでも、通常業務としてブロードに技術を壇上から訴求する、エバンジェリスト業務が、大幅に変更になったのではないでしょうか?
もちろん、小規模製品・サービスベンダーや、弊社のような、会社それ自体やクラウド上のマネージドサービスの技術訴求をしたいという明確な目的があれば、これまで通りのロールは存在しえます。
私も、自分の役割はマーケティング的なブロードなエバンジェリストロールだと今は思っています。弊社の製品がどんどん出てくればそれを訴求する義務も意義もあります。
しかしながら、大手クラウドプラットフォームベンダーにとっては、独自技術を訴求することよりも、より多くの顧客やパートナーに、継続的な成功をもたらすために、クラウドプラットフォームを使ってもらう、ということ、そのためにエバンジェリストよりはアドボケート的な立場を求めるのではないでしょうか?
そして、アドボケートチームは多くの場合、多くの人員を必要としません。グローバルチームとして各国連携していけば良いので、少ないリソースで足りるのです。ただし、真の意味でのスペシャリスト中のスペシャリストでないといけません。国内のお客様対応であれば、国内のリソースをアタッチすれば良い、すなわち営業職であるクラウドソリューションアーキテクトと、プリセールス職であるテクノロジーソリューションプロフェッショナルがいれば問題ないからです。

#まとめ
このように、時代に応じて、規模に応じて、目的に応じて、エバンジェリストの立ち位置は変わってきます。そして、現在は、クラウドプラットフォームベンダーは、まさに開発者の確保のために、プラットフォームの継続的な利用のために、カスタマーサクセスのために、アドボケート的なロールを求めているといって良いでしょう。
これに対して、小規模ベンダー/ISV、あるいはマネージドサービスを提供するサービスベンダー等では、まずは壇上から多くの人に向けて自社技術をアピールしブロードなメッセージを訴求する必要があります。技術マーケティング=エバンジェリズムと定義すれば、まさにこの定石どおりにふるまう必要があると思っています。続いてコミュニティづくりをするにも、あまりにも知名度が低くても厳しいです。つまりは両方やらなければならないのですが、広がりを狙うには、まずはブロードに訴求する必要があります。

弊社も、今後はCloud.Config のようなマネージドクラウドサービスや、Cloud.Config Portalのようなプロダクトの訴求を相変わらずしていく予定です。
私はB2B/B2C教育事業・トレーニングプログラムの開発も含めて、後進の指導も行って、若いエバンジェリストを育てていきたいと思っています。

私自身の今後の予定としては、技術イベント登壇の他、Webメディア発信、月1回の技術イベント主催、Azure Experts Council での活動強化、Microsoft との共同のマーケティング活動等を行っていきます。
どうぞよろしくお願いします!

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