機械学習やAIのプロジェクトを始めたり進めたりするのに,いわゆる "PoC祭り" になってしまうことがありますが,何とか回避できないかといろんな人たちが分析・コミュニケーション手法を作っていますので少し調べてみました.たぶん網羅はしていないのでその点はご容赦ください.
海外の手法
###The Machine Learning Canvas
公開の日付が見つけられませんでしたが,たぶん老舗です.書籍なども出ているようです.
ぱっと見でどこに何を書くのか分かりにくいですが,要素は充実しています.明らかに技術者寄りの作りになっています.
後で出てくる「機械学習キャンバス」もそうですが,初期の手法は非MLとの比較が含まれているのが面白いです.
出典: Machine Learning Canvas — Louis Dorard
###AI Project Canvas
要素数や配置を含め,ほとんどビジネスモデルキャンバスそのままですね.
技術を書き込む部分がほぼなく,PMが使うイメージが近い気がします.
出典: Towards Data Science
国内の手法
###機械学習キャンバス
これも結構前から公開されています.リーンキャンバスをベースとしているよう.
従来手法(手動/非機械学習)との差異の説明に重点を置いており,"Why machine learning?" という点に納得感を持たせられる作り.みんなで問題を整理するというより,専門家でない人に説明するのに向いていると思います.
出典: SlideShare
###AI Lean Canvas
これもリーンキャンバスがベース.他の記事を見てても日本はリーンキャンバス好きですよね.
明らかにサービス提供者寄りで,課題設定や価値提供の部分が手厚いのが特徴です.
出典: AINOW
###機械学習プロジェクトキャンバス
これは私たちが制作・公開したもので,ビジネスモデルキャンバスがベースになっています.
ユーザ企業が公開したという特徴を受けて,運用時を含むなどユーザ寄りの内容になっています.
出典: mitsubishi-chemical-hd-dx.github.io
##まとめ
イントロでは "PoC祭り" と書きましたが,たぶんいくつかの観点でこういうものが作られていると感じました.
- 必要な要素をきちんと挙げないと機械学習・AIのプロジェクトが始められない/続けられない
- ビジネス現場に価値を届けられるかを事前に知りたい
- 従来の技術でなく機械学習・AIを使う理由を理解/説明したい
- 技術者とビジネス現場,サービス提供者とユーザのコミュニケーションを円滑にしたい
AI関係の講演やコラムでも,いわゆる翻訳人材が足りないという声を良く聞きますが,人材教育だけでなく,こういった分析手法も翻訳問題を解決できるのではと思います.こういう自助的なアプローチはもっと発展してほしいですね.