この記事はeeic Advent Calendar 2015の11日目の記事です。
はじめに
今日は「文系→eeicマンの生き残りメソッド」と題しまして、文系科類からeeic(東京大学 電気電子工学科/電子情報工学科)に進学した僕が自分の経験から、理転して苦労したことや、授業や学生実験についていくコツを記そうと思います。理転を検討している文系の1-2年生や、理転したばかりの3年生の参考になれば幸いです。僕はeeicの中でも電子情報工学科だったので、少し情報よりの話になってしまう点はご容赦ください。
進学振り分け編
東大生は学部2年の夏に希望する学部/学科を選択します。東大の文系科類に入学した学生が理転する最初にして最大のチャンスはこのタイミングですが、希望すればどの学部/学科にでも入れるわけではない、という点に注意が必要です。たとえば、コンピュータの勉強や研究がしたいと思った場合にeeicと並んでよく候補に挙がる理学部の情報科学科は、文科生の進学希望者に以下の要求科目(進学振り分け前に履修しておかなければならない)を設けています。[情報科学科のWebページより引用]
- 「基礎物理学実験、基礎化学実験」または「基礎物理学・化学実験、基礎生命科学実験」(計4単位)
- 「数学I、数学II、数学I演習、数学II演習」(計12単位)
- 「力学、電磁気学、熱力学または化学熱力学、構造化学、物性化学」(計10単位)
- 「生命科学、生命科学I、生命科学II」から1科目(2単位)
これら莫大な要求科目が意味するところは、**「学部1~2年で理系の学生と同じカリキュラムをこなしてきたら入ってきてもいいよ」**ということです。これは全くの正論ですし、学科が受け入れる人材の水準を担保する上ではかなり有効なやり方だと思います。しかし、必修科目や実験の時間上、留年せずに文科で必要な単位と情報科学科の要求科目を全て取り切るのは、実質不可能と言われています。
一方で、eeicを含む工学部の多くの学科には、要求科目はありません。要望科目(履修しておくことが望ましい科目)はありますが、履修は強制ではありません。つまり、**「文系からうちの学科に入ってくると大変だと思うけど、入れてあげるからしっかり頑張れよ。」**というスタンスです。こうしたスタンスの違いに、東大の理学部と工学部の大きな思想の違いが表れている、と僕は感じています。僕はeeicが文系からの進学を認めてくれたことを心から感謝していますし、某先生が数年前に「文系からの受け入れを決めたのだから、1人も落第生を出す訳にはいかない」と仰って、eeicに文科生のための補習授業を設けられたことを尊敬しています。
...というわけで、東大でコンピュータの勉強がしたい文系学生には、eeicは結構おすすめです。
2年: 授業編
文系の学生は高3〜大2までの数学や物理を学んでない可能性が高いです。僕も数学ⅢC(今のカリキュラムでは数学Ⅲ)と高校物理は勉強していなかったので、特に最初の半年は多くの授業で随分苦労しました。「いくら勉強しても、わけがわからなくて辛い」という状況になったのは、人生ではじめての経験でした。そんな中で一番効率よく勉強できたのは、月並みですが友達か先生に質問することです。当然先生はその道のプロですし、同級生たちは理系の受験数学を全国トップレベルで突破した人たちなので、数学や物理はめちゃめちゃ得意です。僕は微積も線形代数も電磁気も回路もプログラミングも、随分友達のお世話になりました。親切にも勉強を教えてくれた同期のみんなには、一生頭が上がらないです。
それから、学科指定の教科書だけでは難しかったので、簡単めな入門書や問題集も結構使いました。
以下では僕が実際に勉強に使った書籍を紹介します。
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基礎的な数学
チャート式
単位が取れる微積ノート -
微分方程式
単位が取れる微分方程式ノート
常微分方程式キャンパス・ゼミ -
線形代数
単位が取れる線形代数ノート
線形代数学 -
プログラミング
ロベールのC++入門講座
Emacs実践入門 ~思考を直感的にコード化し、開発を加速する
Vimテクニックバイブル~作業効率をカイゼンする150の技
3年: 実験編
3年前期には、学生実験が始まります。4人〜5人程度のチームに分かれて、いかつい装置を弄ったり難しい回路を組んだりします。電気回路や実験装置に慣れていない人は、ぼーっとしていると何も出来ずに終わることになります。そこで、僕はデータ集計マンになって自分の仕事を確保することに決めました。回路を組んだりオシロスコープを弄ったりするのが得意なチームメンバーがいたので、僕は実験中に計測データを入れるとすぐにグラフが完成するように、毎週実験が始まる前にはデータを埋めるための表とグラフをExcelで作っておいていました。
3年後半になると、OpenCV/OpenGLによる映像処理実験でゲームを作ったり、電子情報機器学という講義でハードウェアを作ったりしました。この時期になると、eeicでも専門に分かれてきて、数学や物理が苦手な文系出身者にとっても楽しい講義が多いです。eeicの優秀な同期と一緒に物を作れる貴重な機会なので、全力でものづくりを楽しめばいいと思います。
4年: 卒論研究/院試編
4年になると、研究室に配属されて卒論のための研究に取り組むことになります。3年の頃は多くの講義や実験がチームワークでしたが、卒論研究は先生や先輩と1:1でミーティングや進捗報告をすることが多くなります。こうなると、特に大事なのは指導教官とのコミュニケーションだと思いました。研究は自分が世界で初めて取り組むものなので、わからないことやできないことがあるのは当然です。「なにがわからなくて、なにができていないのか」を先生に伝えることは、「なにができたか」を伝えるよりも遥かに重要なので、先生や先輩と密に連絡を取るようにしたほうが絶対にいいと思います。
4年の夏頃には院試がありますが、特に文系出身者は準備が大変だと思うので、2ヶ月前くらいから徐々に過去問を解いていくのがいいと思います。僕は研究室の同期で分担して解答の作成をしていました。この時も、研究室の同期には随分勉強を教えてもらいました。
大学院編
**大学院に入る頃には、もう「文系だから」という言い訳は全く通用しません。**院生になると学会で発表する機会も増えますが、学会で出会う別の大学の学生や研究者にとっては、僕が文系だったかどうかなんて知ったこっちゃないからです。大学院で重要なのは、十分に論文を読んで勉強して、新たに良いものを作って、それを世の中に発表することだと思います。
僕の感想としては、研究は苦しいことと楽しいことの割合が9:1くらいです。ですが、その1割は他の活動ではなかなか得られない喜びを与えてくれます。未知の問題に取り組んだり、それについて世界中の研究者と話し合うのは、結構刺激的な仕事だと思います。個人的には、研究が1割でも楽しければ、博士課程への進学を検討するのもアリだと感じています。
おわりに
以上、文系からeeicに進学した僕がこれまでの学生生活で感じたことでした。
簡単にまとめると、
- 苦手分野は、周囲の友人に素直に教えを請うこと
- チームで働く時は、自分にできることを率先してやること
- 全力でものづくりを楽しむこと
- 指導教官とのコミュニケーションを密に取ること
- 院試勉強は2ヶ月前から始めること
- 研究が1割でも楽しければ、博士課程への進学を検討すること
もし文系からeeicへの進学を迷っている人がいれば、連絡くださればなんでも相談に乗ります。