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気体の反応拡散系を工学的に解くには(1)

Last updated at Posted at 2019-07-13

はじめに

反応拡散系といえば、魚や動物の縞模様を表現することがきる系として話題になることも多く(?)、Qiitaでもいくつかの記事が投稿されています
もちろん、化学製品の製造工程などでは日常的に考えることになり、工学的にも重要な問題です。
先日、FEMのプログラムについて知人と話していた際に、反応を含む現象ってどう取り扱うのか、といった話になったので、本稿では、特に気体の反応拡散系を工学的に解く方法(FEMやFVMによる数値解析を想定)について、その考えを整理していきます。まじめに取り組もうとすると意外と難しいぞ、ということをお伝えできればと。
著者は元々大学で化学工学を専攻していましたが、率直なところ本問題に対して十分に理解できていない部分も多いので、内容に間違いなどもあるかと思いますが、ご容赦ください(誤りご指摘ください)。

反応拡散系について詳しく知るために

本稿を始める前に、以下のページをご紹介します。エクセルを使って勉強できて、非常によい教材です。
Excelで解く化学工学10大モデル

反応拡散系を数式化する

反応拡散系は、ごくごく簡単に言うと拡散方程式に反応に関するモデルを追加することで表現できます。

\frac{\partial c}{\partial t}=\frac{\partial}{\partial x_j}(D\frac{\partial c}{\partial x_j})+\dot{S}

cはガスの濃度でDは拡散係数、右辺第一項がは所謂Fickの法則です。右辺第二項はガスの生成項となり、ガスの生成(もしくは消費)速度になります。この方程式を離散化してFE解析することは、特に難しくない、、、といいたいところですが、拡散係数Dと反応速度S次第では非常に解きづらくなったりしてきます。が、そこの問題は後ほど取り上げることにして先に進みます。

多成分系の拡散方程式

先の拡散反応方程式は、ある着目する成分に関してFickの法則が成り立つことを(当然ながら)前提としています。しかし、工業的に重要な問題では必ずしも上式が単純に適用できない場合も多く、その一例が多成分系の拡散方程式です。あるガス成分mに着目した、多成分系の拡散方程式は下式になります。なお、一旦反応の話は無視します。

\frac{\partial(\rho Y_m)}{\partial t}=\frac{\partial}{\partial x_j}(D_m\frac{\partial(\rho  Y_m)}{\partial x_j})

ここで、ρは混合ガスの密度[kg/m3]、Ymは成分mのガス分率[-](0-1の値をとる)であり、ρYmは成分mの濃度になります。多成分系なので、ガスの成分それぞれに方程式が立つので、それらをそれぞれ解くことになります。むろん、この方程式も容易にFE解析できるので、めでたしめでたし、、、とは残念ながらなりません。

多成分系の拡散方程式を解くことの何が難しいか?

結論から言うと、方程式の数と未知数との数のつり合いが取れなくなります。
前記、方程式中ではYmが未知数であるのは明白です。ガスの成分mの数だけ方程式と未知数Ymが必要なので、ここでは方程式の数=未知数の数です。ρおよびDmは温度・圧力ならびにYmから計算されます。温度、圧力は既知の値として設定することが多く、この仮定の下ではρおよびDmの関係式を考えた場合にも、方程式の数=未知数の数となります。
では、どこが問題となるのか。ここでYmについて考えると、Ymはガス分率として定義しているため、全成分のYmは足すと1になります。この制約条件(方程式)が新たに加わってしまうために、方程式の数が未知数の数に対して+1されてしまい、残念ながら数学的に整合しません。

補足)ρの計算式
混合ガスの密度ρですが、単位体積あたりのガス成分の重量です。これは、気体の状態方程式PV=nRTより、温度・圧力ならびに、混合気体の平均分子量から計算されます。混合気体の平均分子量は、各気体の分子量とそれぞれのガス分率が分かれば計算できます。気体の状態方程式は、あくまでもモデルなので適用できなくなる場合もありますが、我々の考える通常の現象程度であれば気体の状態方程式を問題なく使用できるハズです。

いったんここまで

第1回目では問題提起だけしておいて、回答は第2回目の記事に任せます。
もしくは、いい感じの解説記事やウェブページなどあればご紹介ください。第2回目は別の内容を書いていきますので。。

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