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Wyse 5070 に ThinOS を導入する

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概要

DELL 製シンクライアントを個人で使用するための OS のセットアップなどを扱います。
基本的には新品を個人で入手するというよりは、リースアップなどの中古を個人で入手して遊ぶ人向けです。

今回は DELL Wyse 5070 という機種を入手したので、ThinOS という専用 OS の導入方法をまとめました。

Wyse 5070 とは

DELL Wyse 5070 は小型のデスクトップ型シンクライアントです。
出荷時の構成にも寄りますが Celeron J4105 にメモリ 4GB、eMMC 16GB など、軽量 OS の動作に特化した比較的低スペックの機器になります。
USB も前面 3 ポート (2.0 ×2、3.0 ×1)、背面 4 ポート (3.0 ×4)、HDMI はありませんが Display Port ×2 など、そこそこ充実しています。

注目すべき点としては HDD (2.5インチ SATA) の搭載は出来ませんが、DDR4 SODIMM 2 スロット、M.2 SATA (2280) の搭載が可能である点。
このポートを使うことで、公式サポートはされません (そもそも中古なのでサポートも期待できませんが) が Windows や任意の Ubuntu のインストールが可能になります。

なお、インストールに使用する OS や各種ドライバ類のダウンロードはこちらから行えます。
https://www.dell.com/support/product-details/ja-jp/product/wyse-5070-thin-client/drivers

Wyse 5070 をシンクライアントとして使う手順

セットアップは、一般的な OS インストールと同じく以下の手順になります。
ただし、OS イメージは ISO ではなく、専用ツールで書き込むためのイメージのみ提供されているため、そちらを使用する必要があります。

  1. ThinOS のダウンロード
  2. USB インストーラーの作成
  3. セットアップ

USB インストーラーの作成

USB インストール用として以下のファイルをダウンロードします。

USB Imaging Tool の実行には .NET Framework 3.5 が必要です。追加でインストールしましょう。

試行錯誤の結果、以下が分かりました。

  • USB Imaging Tool は単純なイメージ作成ツールではなく、イメージ操作環境を作るツール
  • USB Imaging Tool を起動するための EFI? アプリと、指定されたイメージを USB メモリに書き込む
  • USB メモリから起動した USB Imaging Tool を使用して、イメージを eMMC に記録する (push)、実機でカスタマイズした環境をイメージに保存 (pull) といったことが出来る
  • USB Imaging Tool でイメージを作成するためには、Merlin と書かれたイメージの使用が必要

Rufus のような ISO から USB メモリを作成するソフト、というよりも TrueImage などのように PE 環境を作成するツールという理解の方が正しそうです。

USB Imaging Tool の注意点

(1) Dell Wyse USB Imaging Tool が EOL になり、ダウンロードも出来なくなっている。

Dell Wyse USB Imaging Toolは使用できなくなりました

タイトルの通りですが、ダウンロードできなくなりました。
手元にあったインストーラーを共有するので自己責任でどうぞ。

(2) ストレージが 2 つ以上接続されていると USB メモリが認識されない

原因は分かりませんが、SSD + HDD のような構成のマシンで、Wyse USB Imaging Tool を起動すると USB メモリが認識されません (誤認識?)。
ドライブ 1 つの PC で試しましょう (修正されるかなと思ったら廃止されました)。

Dell Wyse USB Imaging Tool でのイメージの作成と起動

USB Imaging Tool の基本的な使い方は以下の通りです。
Dell Wyse USB Imaging Tool Version 3.5.0 User’s Guide

ここでは Dell Wyse 5070シン クライアント用ThinOS 2402 (9.5.1079) Merlinイメージ ファイル (OS_Merlin_2402_9.5.1079_5070.zip) をインストールする場合の例を紹介します。

  1. FAT32 でフォーマットされた USB メモリを用意します。
    容量はインストールする OS のサイズに依存 (4~16GB)、USB 3.0 対応だと早いので良いでしょう。
    NTFS などでフォーマットしていると警告が表示されます
    wyse01.jpg

  2. USB Imaging Tool は Image の取得、書き込み、複製などができる多機能ツールです。
    ・OS のインストールに使用するのは "Image Push" タブを選択
    ・"Select OS arcitecture" から OS の bit 数を選択 (ほとんど 64bit)
    ・"Add a new image" でローカルに展開済の OS イメージ (rsp ファイル) を選択します
    [Configure USB Drive] ボタンを押すと、指定した OS イメージのインストーラーの準備が開始されます。
    wyse02.jpg

  3. インストーラーの準備中は、Rufas 等でのイメージ書き込みと同様にファイルのコピーが行われるので特にやることはありません。待ってたら終わります。
    wyse03.jpg

  4. USB メモリの準備が出来たら取り外すことが出来ます。
    wyse04.jpg

作成された USB メモリの内容

USB Imaging Tool で作成された USB メモリのツリーは以下のようになります。
構成をよく見ると分かりますが、EFI で eMMC に書き込む Linux 環境を立ち上げて、rsp ファイルで指定された OS イメージをパーティションに作成していく…という流れになっています。

フォルダー パスの一覧:  ボリューム DELLWYSEIMG
ボリューム シリアル番号は 6E69-ABA9 です
F:\
│  OS_PLATFORM
│  
├─initrd
│      initrd.pxe
│      initrdx.pxe
│      
├─kernel
│      vmlinuz
│      
├─EFI
│  ├─Boot
│  │      blank
│  │      BootX64.efi
│  │      elilo.conf
│  │      grub.cfg
│  │      grubx64.efi
│  │      initrd64.pxe
│  │      nativeLoader_TOS.efi
│  │      vmlinuz64.pxe
│  │      
│  └─DELL
│          bootSettings.json
│          bootSettings.json.p7
│          TOS_ImageLoader.efi
│          TOS_OsVerifier.efi
│          
├─template
│      OSType.txt
│      rsp.txt
│      arch.txt
│      
├─xmlfiles
│      xpe_pushpull.xml
│      wince_pushpull.xml
│      wtos_pushpull.xml
│      linux_pushpull.xml
│      linux_ubuntu16_recovery_pushpull.xml
│      linux_ubuntu16_OS_pushpull.xml
│      wes_pushpull.xml
│      wes7_pushpull.xml
│      wes7p_pushpull.xml
│      we8sx_pushpull.xml
│      we8s_pushpull.xml
│      xenith_pushpull.xml
│      Janus_ubuntu_pushpull.xml
│      Janus_wtos_pushpull.xml
│      ubuntu_pushpull.xml
│      
└─WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0
    │  WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0.rsp
    │  
    └─WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0
        └─WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0
                part1Image1.img
                part1Image2.img
                part1Image3.img
                part1Image4.img
                commandsXml.xml
                

手動での展開?

さらによく見ると、各ファイルは USB Firmware Tool に含まれたものがコピーされていることが分かります。
以下に対応表を作りますが、ほとんどが、USB Firmware Tool かインストールしようとしている OS イメージのコピーです。

ファイル ソース
/EFI/Boot/blank USB Firmware Tool
/EFI/Boot/BootX64.efi USB Firmware Tool
/EFI/Boot/elilo.conf USB Firmware Tool
/EFI/Boot/grub.cfg USB Firmware Tool
/EFI/Boot/grubx64.efi USB Firmware Tool
/EFI/Boot/initrd64.pxe USB Firmware Tool
/EFI/Boot/nativeLoader_TOS.efi USB Firmware Tool
/EFI/Boot/vmlinuz64.pxe USB Firmware Tool
/EFI/DELL/bootSettings.json USB Firmware Tool
/EFI/DELL/bootSettings.json.p7 USB Firmware Tool
/EFI/DELL/TOS_ImageLoader.efi USB Firmware Tool
/EFI/DELL/TOS_OsVerifier.efi USB Firmware Tool
/initrd/initrd.pxe USB Firmware Tool
/initrd/initrdx.pxe USB Firmware Tool
/kernel/vmlinuz USB Firmware Tool
/OS_PLATFORM USB Firmware Tool
/template/OSType.txt USB Firmware Tool
/template/rsp.txt USB Firmware Tool
/xmlfiles/Janus_ubuntu_pushpull.xml USB Firmware Tool のリネーム
/xmlfiles/Janus_wtos_pushpull.xml USB Firmware Tool のリネーム
/xmlfiles/linux_pushpull.xml USB Firmware Tool のリネーム
/xmlfiles/linux_ubuntu16_OS_pushpull.xml USB Firmware Tool のリネーム
/xmlfiles/linux_ubuntu16_recovery_pushpull.xml USB Firmware Tool のリネーム
/xmlfiles/ubuntu_pushpull.xml USB Firmware Tool のリネーム
/xmlfiles/we8sx_pushpull.xml USB Firmware Tool のリネーム
/xmlfiles/we8s_pushpull.xml USB Firmware Tool のリネーム
/xmlfiles/wes7p_pushpull.xml USB Firmware Tool のリネーム
/xmlfiles/wes7_pushpull.xml USB Firmware Tool のリネーム
/xmlfiles/wes_pushpull.xml USB Firmware Tool のリネーム
/xmlfiles/wince_pushpull.xml USB Firmware Tool のリネーム
/xmlfiles/wtos_pushpull.xml USB Firmware Tool のリネーム
/xmlfiles/xenith_pushpull.xml USB Firmware Tool のリネーム
/xmlfiles/xpe_pushpull.xml USB Firmware Tool のリネーム
- -
/template/arch.txt 作成される
/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/commandsXml.xml インストールするOSイメージ
/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/part1Image1.img インストールするOSイメージ
/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/part1Image2.img インストールするOSイメージ
/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/part1Image3.img インストールするOSイメージ
/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/part1Image4.img インストールするOSイメージ
/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0.rsp インストールするOSイメージ

補足

  • /xmlfiles/*_pushpull.xml ファイル
    USB Firmware Tool のインストールディレクトリに "xmlfiles/Janus_ubuntu.xml", "xmlfiles/wtos.xml" のように "_pushpull" が付かないファイルがあり、内容的にも同じです。
  • /template/arch.txt
    このファイルだけ新規で作成されます。内容は "x86_64" と書いてあるだけです。
  • /WTOSPcoIP_Wyse_5070_Thin_Client_16GB_0/*
    指定した OS イメージが含まれています。どうも rsp ファイルや commandsXm1.xml ファイルなどにパーティションの情報などが記録されているので、本気を出せば dd などで書き込める可能性もあります (今のところ上手く行ってませんが)。

Thin Client への OS のインストール

Wyse 5070 へのシンクライアント OS のインストールを開始します。

OS イメージの展開

  1. 作成した USB メモリを刺して Wyse 5070 を起動します。grub や Load 画面が出ますがしばらく待ちます。
    USB 空の起動に失敗する場合、Boot order で Thin OS が指定されていない可能性があります。BIOS の設定を確認しましょう。

  2. DELL Wyse USB Imaging Tool が起動します。
    "Choose image to Push to this device" でインストールする OS (準備時に指定) を選択します。
    wyse05.jpg

  3. 書き込み準備が表示されるので、右下の [OK] ボタンを押します。
    wyse06.jpg

  4. OS の書き込み作業が開始されます。
    しばらく時間がかかるので待ちます。
    wyse07.jpg

  5. 書き込みが完了すると、緑色のチェックマークが表示されます。USB メモリを抜いて [Restart] ボタンを押して再起動します。
    wyse08.jpg

ThinOS の初期設定

  1. 初回起動時にはインストーラーが起動し、初回設定が行われます。
    wyse09.jpg

  2. Welcome 画面が表示され、しばらく待つと ">" マークが出てくるのでクリックします
    wyse11.jpg

  3. ライセンス許諾
    wyse12.jpg

  4. 言語の選択
    wyse13.jpg

  5. キーボードの選択
    wyse14.jpg

  6. タイムゾーンの選択
    日本時間は UTC+9, Asia/Tokyo になります。
    wyse15.jpg

  7. ネットワークの選択
    wyse16.jpg

  8. 設定をインポート
    ThinOS 設定のインポート。既存環境がないのでインポートしないで進めます。
    wyse17.jpg

  9. VDI ブローカーの設定
    シンクライアント、ThinOS を接続する仮想デスクトップ環境を選択します。クライアントが古いことで接続できない場合もあるようです。
    wyse18.jpg

  10. 設定が完了
    設定が完了し、デスクトップが表示されます。
    wyse19.jpg

メニューは画面左端にあります。とはいえ、シンクライアントなので使えるアプリは、ターミナルやブラウザを含めてほぼ入ってません。
色々見ても仮想デスクトップへの接続以外は、設定やトラブルシューティングのための診断系のツールしかありません。
wyse20.jpg

OS のアップデート

ThinOS をアップデートしてみます。

  1. zip ファイルの中にある pkg ファイル (ThinOS_2502_9.6.1080.pkg) を USB メモリにコピーして、シンクライアントに接続します。

  2. 左側のメニューの [設定] > [管理ポリシーツール] を起動します。
    システム情報で確認できますが、現時点のバージョンは "ThinOS 2402 (9.5.1079)" です。
    wyse21.jpg

  3. [詳細設定] > [ファームウェア] > [OSファームウェア アップデート] を選択し、"展開するThinkOSファームウェアの選択" の [参照] ボタンをクリックします。
    wyse22.jpg

  4. "Open Files" というウィンドウが開くので、左の [alias] > [dp0p1] > (アップデートに使用するパッケージ名).pkg を選択し、[Open] ボタンをクリックします。
    USB メモリから本体にパッケージファイルが読み取られるためしばらく無反応になります。
    wyse23.jpg
    wyse24.jpg

  5. 読取りが完了したら EULA の確認が行われます。使用許諾を承認にする場合は [Accept] ボタンをクリックします。
    これで、本体にアップデートが登録された状態になります。
    wyse25.jpg

  6. "展開するThinkOSファームウェアの選択" から、先ほどアップロードしたパッケージを選択し、右上の [保存して公開] をクリックします。
    wyse26.jpg

  7. アラートウィンドウが表示され、アップデートが開始されます。これには数分時間を要します。
    wyse27.jpg

  8. アップデート完了後、再起動が行われ、"ThinOS 2502 (9.6.1080)" に変更されました。
    wyse28.jpg

BIOS、アプリのアップデート

上の「OS のアップデート」と同様です。
[管理ポリシーツール] で、[詳細設定] > [ファームウェア] > [BIOSファームウェア アップデート] または、[アプリケーションパッケージのアップデート] を開き、インストールする pkg ファイルを選択してください。

その他

Chrome ブラウザは使用できない

Chrome ブラウザはインストールされていますが、各ブローカー (仮想デスクトップ環境にアクセスするための認証) への Web ログインのためにインストールされており、標準では使用できません。
通常の Web ブラウザとしての使用は、クライアント側の管理ポリシーツールでは操作ができず、Wyse Management Suite を通じた操作が必要です。

Dell ThinOS 9.x 2502, 2505, and 2508 Administrator’s Guide

The Chrome Browser Privilege page is only accessible through WMS policy. It is not available in the client Admin Policy Tool, allowing admins to apply additional security controls to the device's Chrome browser.

そもそもが仮想デスクトップ環境にアクセスするための最小限の機能しか持たない踏み台なのでそんなものです。

Windows 10 IoT Enterprise って動かないの?

Windows 10 IoT Enterprise をサポートしている機種であれば動作します。
具体的には、eMMC などの本体に搭載されたストレージが 32 GB 以上であればインストール可能で、eMMC 容量が 16 GB の Wyse 5070 の場合は M.2 で SSD を追加してもインストールできませんでした。

Wyse 5470 のように、eMMC がなく、M.2 SSD を差替えられる場合はインストールが出来ます。
ただし、Windows 10 IoT Enterprise 自体がシンクライアントやキオスク端末向けであり、SSD への書き込みも制限していることからデータの永続化が困難です。
また、アップデートの提供はありますが、LTSC 2019, 2021 の様に数年でサポートライフサイクルが終わるようになっており個人ではライセンス購入もできません。
そのため、Windows 10 (Home, Professional) のように、ずっと最新の状態に更新するということも出来ません。

結果として、Windows 10 IoT Enterprise を導入したとしても、本来のシンクライアントとして以外の用途ではほぼ使用できません。

まとめ

Amazon Workspace を使用するために買ってみましたが、ThinOS 10 でもクライアントがサポートしてないためか上手く使えない悔しい思いをしました。
メモリマシマシにして、仮想マシンでも動かそうと思います。

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