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【Swift】型を使うという意味を考える (カリー化の活用)

Last updated at Posted at 2019-04-27

プログラミングの手法で「カリー化」と呼ばれるものがあります。

カリー化とは?

関数の引数の一部分にだけ実引数を適用し
残りの引数を後から適用することを部分適用と呼びます。

その中でも
複数の引数を取る関数を
引数1つの関数に変換することを
カリー化と呼びます。

今回は
カリー化をすることでどういうことができるのか
具体例から学んでみました。

具体例

1つの値を固定して様々な値を適用する

まず簡単な例から考えていきたいと思います。


func add(_ a: Int, _ b: Int) -> Int {
    return a + b
}
add(5, 2) // 7

これは単純な足し算で2つの引数を取ります。

では、ある範囲の値全てに2を足してみます。


let xs = 1...5
xs.map { add($0, 5)} // [6, 7, 8, 9, 10]

addの引数の一つを2に固定して
範囲内の値を一つ一つもう一つの引数に適用していきます。

では、
これをカリー化してみます。


func addFive(_ a: Int) -> Int {
    return add(a, 5)
}

let xs = 1...5
xs.map(addFive) // [6, 7, 8, 9, 10]

同じ結果が得られました。

変わった点としては

  • 引数を指定する必要がなくなった
  • {}が必要なくなった

これは非常に単純な例ですが
より複雑な関数になった場合などはちょっと見づらかったり
冗長になってきます。

また、カリー化することで名前をつけることができるので
より意図を伝えやすくなります。

では少し一般化してみます


func add(_ a: Int) -> (Int) -> Int {
    return { b in a + b }
}

let addSix = add(6)
addSix(1) // 7

これで色々なIntに対して適用できるようになりました。

既存の関数をカリー化する

既存の関数に関して新しい条件を適用したりしたい場合にも
カリー化が役に立つことがあります。

例えば、下記の関数をIntが持っていたとします。


extension Int {
    static func add(_ a: Int, _ b: Int) -> Int {
        return a + b
    }
}

これは
(Int, Int) -> Int型
の関数になります。

これをカリー化するためにはこの型を
Int -> ((Int) -> Int)型
にする必要があります。

この変換のための関数を定義します。


func curry(_ f: @escaping (Int, Int) -> Int) -> ((Int) -> ((Int) -> Int)) {
    return { a in return { b in f(a, b) } }
}

let xs = 1...5
let curried = curry(Int.add)
let addSeven = curried(7)

xs.map(addSeven) // [8, 9, 10, 11, 12]

だいぶ複雑になりました。

何をしているのかというと

fがカリー化したい関数で(今回の場合はadd)

戻り値は(Int) -> ((Int) -> Int)で

Int(←fの引数の1つ)を引数に取った
((Int(←fの引数の1つ)) -> Int(←fの戻り値)の関数

になります。

具体例の中のaddSevenについて考えると
7はすでに決まっているので


func addSeven(_ b: Int) -> (Int) -> Int {
    return { b in
        Int.add(7, b)
    }
}

になります。

上記の足し算の例で示したaddFiveと同じ形になっていますね。

上記はIntだけの例ですが
ここからさらに一般化してみます。


func curry<A, B, C>(_ f: @escaping (A, B) -> C) -> (A) -> (B) -> C {
    return { a in { b in return f(a, b) } }
}

let curried = curryInt(Int.add)
let addSeven = curried(7)

xs.map(addSeven) // [8, 9, 10, 11, 12]

同じ結果になりました。

※今回の例では引数が2つの関数を扱っていますが、
それ以上の引数を持つ関数を使う場合は
それ用の定義が毎回必要になります。

このような感じで↓
https://github.com/thoughtbot/Curry/blob/master/Source/Curry.swift

Swift5の時点ではGenericsでは可変長引数を使うことができないためです。
将来的には導入を検討しているようです。
https://github.com/apple/swift/blob/master/docs/GenericsManifesto.md#variadic-generics

UserDefaultsでの例

次に上記で一般化した関数を使ってみたいと思います。

UserDefaultlsは値の保存を行う際にsetという関数が提供されています。

例えばuserNameというキーで値を保存する場合は


UserDefaults.standard.set("Tom", forKey: "userName")

のように書きます。

これでも十分わかりやすいのかもしれませんが
カリー化を使うことでより可読性を上げることができます。


extension UserDefaults {
    func setT<T>(key: String, value: T?) {
        return self.set(value, forKey: key)
    }

    func curried<T>(_ key: String) -> (T?) -> Void {
        return curry(self.setT)(key)
    }
}

このような拡張をすることで


extension UserDefaults {
    var getUserName: String? {
        return self.string(forKey: "userName")
    }

    var setUserName: (String?) -> Void {
        return self.curried("userName")
    }
}

let standard = UserDefaults.standard
standard.setUserName(nil)
standard.getUserName // nil

standard.setUserName("hoge") // hoge
standard.getUserName

といったようなプロパティを宣言することができます。
※getUserNameは確認用に使用しているだけです。

こちらの方が何をしているのかが相手に伝わりやすいのではないかと思います。

DIとして使用する

例えば
ネットワーク通信を行って
ユーザ情報を取得したいとします。


struct User {
    let id: String
    let name: String
}

typealias Completion<T> = (Result<T, Error>) -> Void

protocol UserFetchable {
    func fetch(id: String, completion: @escaping Completion<User>)
}

この通信Protocolを呼び出すサービスを定義します。


enum UserService {

    static func getUserBy(fetcher: UserFetchable, id: String, completion: @escaping Completion<User>) {
        fetcher.fetch(id: id, completion: completion)
    }
}

ここではfetcherを引数に設定していますが
状況によってはfetcherの決定を遅らせたいこともあります。

そんな時にカリー化を活用します。


enum UserService {
    static func getUserBy(id: String, completion: @escaping Completion<User>) -> (UserFetchable) -> Void {
        return { fetcher in
            curry(fetcher.fetch)(id)(completion)
        }
    }
}

下記のように使用します。


extension URLSession: UserFetchable {
    func fetch(id: String, completion: @escaping Completion<User>) {
        completion(.success(User(id: "1", name: "Tom")))
    }
}

let getUser = UserService.getUserBy(id: "1") { result in
    print(result)
}
getUser(URLSession.shared) // success(User(id: "1", name: "Tom"))

こうすることでgetが呼び出されるまでUserFetchableの
実装の決定を遅らせることができます。

※ これはカリー化を活用した例で他にもReader Monadのように型を活用する方法もあります。

詳細は↓などをご参照ください。
https://qiita.com/suin/items/0255f0637921dcdfe83b
https://github.com/orakaro/Swift-monad-Maybe-Reader-and-Try

まとめ

カリー化を使った例を見てみました。

カリー化は一般的な関数であり
もっと色々な箇所で活用できると思います。

特に関数型プログラミングの世界では
関数を繋げて使うことが基本であり
引数を1つにすることで
関数を繋げて使いやすくなります。(関数の合成と言うそうです。)

正直今まであまり使用することもなくこの機会に学んでみました。

まだまだ知らないことが多々あると思いますので
もしもっと良い例がございましたらぜひ教えてください:smiley:

間違いなどございましたらご指摘いただけましたら幸いです:bow_tone1:

補足

SwiftではSwift3の時に一部記法が削除されています。
過去の記事で現在はコンパイルできないものがあるかもしれないのでご注意ください。
https://github.com/apple/swift-evolution/blob/master/proposals/0002-remove-currying.md

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