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biblatex の標準スタイルの解説

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この記事は、biblatex に付属する標準的なスタイル(引用スタイル、参考文献スタイル)について説明したものです。

はじめに

biblatex を利用する際には、「引用部分のスタイル(citation style、引用スタイル)」「参考文献部分のスタイル(bibliography style、参考文献スタイル)」の二つを指定することになっています。

  • 引用スタイルは拡張子が cbx のファイル、参考文献スタイルは bbx というファイルで設定されます。ですので、スタイルを指定するというのは読み込むファイルを指定することと同じです。

biblatex にはいくつかの標準的なスタイルが含まれています。以下では、これらの標準的なスタイルについて簡単に紹介したいと思います。標準的なスタイルについては 「biblatexのマニュアル」 でも詳しく説明されていますし、スタイルの利用例を示すファイル が 「この場所」 に置いてありますので、詳しいことはそちらを見てください。

スタイルについての注

引用スタイルと参考文献スタイル

スタイルを指定するときに、例えば、authoryear-comp スタイルを指定すると、引用スタイル、参考文献スタイルにともに authoryear-comp スタイルが設定されます。このように引用スタイルと参考文献スタイルには同じ名前のものを利用することが普通だと思います。

しかし、引用スタイルと参考文献スタイルに異なるスタイルを指定することもできます。例えば、引用スタイルには authoryear を使い、参考文献スタイルには authortitle を使うなどです。ただし、引用スタイルと参考文献スタイルを完全に独立に選択できるわけではないです。例えば、numeric という引用スタイルは番号で引用することに対応した参考文献スタイルとでなければ使えないです。

以下では引用スタイルと参考文献スタイルを同じ名前のものを選択するという前提で説明をします。

本文中(in-text)で引用するスタイル と 脚注(footnote)で引用スタイル

引用のスタイルは「本文中(in-text)で引用するスタイル」「脚注(footnote)で引用するスタイル」の二つに分けることができます。

本文中での引用とは、本文の中にそのまま引用が入るような形式です。例えば、以下のような形式です。

The option subentry affects the handling of citations referring to members of a reference set. If this option is enabled, such citations get an extra letter which identifies the member (it is also printed in the bibliography): [4a, 7c, 4c, 7b, 5]. This option is disabled by default, but it has been enabled in this example. If disabled, citations referring to a set member will point to the entire set, i.e., the above citations would come out as [4, 7, 4, 7, 5].

[4a, 7c, 4c, 7b, 5]、[4, 7, 4, 7, 5]の部分が引用部分です(ここでは番号による引用の形式を用いています)。

一方、脚注での引用とは、本文中に直接文献を表示せず、、脚注に文献を表示する形式です。この場合、本文には

This is just filler text.1 This is just filler text.2 This is just filler text.3 This is just filler text.4

のように脚注番号が表示され、文献は脚注に

1 Aristotle, Rhetoric.
2 Aristotle, Rhetoric, p. 59.
3 See Aristotle, Rhetoric.
4 See Aristotle, Rhetoric, pp. 59–63.

のように表示されることになります(この例では引用形式に authortitle を利用し、引用の命令には \footcite を使っています)。

本文中での引用であっても、脚注での引用であっても、どちらの場合も参考文献部分には完全な文献の情報が表示されます。

[注]verbose スタイルを利用する場合には、引用部分の脚注に文献の全部の情報が表示されるので、参考文献部分を表示することは不要かもしれませんが。

以下のスタイルの紹介を読めばわかるのですが、標準的なスタイルはそれなりに多くありますが、バリエーションが多いのはどちらかというと脚注で引用するスタイルの方です。古くからある BibTeX では脚注での引用という形式はむしろ使いにくかったのですが、このように biblatex では脚注での引用が様々な面で改善されており、その方法・形式が充実しています。

本文中ではではなく、脚注で引用するという形式は主に人文科学と一部の社会科学(法学など?)で利用されるものだと思います。ですので、biblatex は BibTeX よりも人文科学、社会科学の研究者にとって便利になっていると言っていいのかなと思います(実際のところ、どれだけ使われているかはわかりませんが)。

スタイルの紹介

参考文献スタイルについての注

以下でスタイルを紹介しますが、参考文献スタイルについては実はあまりバリエーションは多くなく、同じモノを共有していることが多いです。

  • 例えば、numeric-xxx という名前のスタイルは参考文献部分は全て numeric スタイルと同じです。

バリエーションが多いのは引用部分のスタイルです。

▢ numeric(番号で引用)

引用部分の例

[5]、[5, p. 59]、 [see 5]、 [see 5, pp. 59–63]、 [5, 1, 2, 3, 6, 9, 8]

参考文献部分

  • 参考文献部分では、各文献の最初に引用で利用する番号が表示されます。

[1] Robert L. Augustine. Heterogeneous catalysis for the synthetic chemist. New York: Marcel Dekker, 1995.
[2] Aaron Bertram and Richard Wentworth. “Gromov invariants for holomorphic maps on Riemann surfaces.” In: J. Amer. Math. Soc. 9.2 (1996), pp. 529–571.

▢ numeric-comp

  • Example: numeric-comp
  • 基本的に numeric スタイルと同じで、番号での引用です。
    • 参考文献部分は numeric と全く同じ。
  • ただし、「一つの cite 命令で複数の文献を引用した場合(つまり、\cite{key1,key2,key2} などのようにした場合)」に、一つ一つ表示するのではなく、範囲として表示してくれます。
    • 「comp」は「compressed(圧縮された、要約された)」の略のようです。
  • 具体的には、引用部分が

[8, 3, 1, 7, 2]

という形式ではなく、

[1–3, 7, 8]

のような形式になります。

引用部分の例

[1, 2]、 [1–3, 5, 8]、 [1–3, 6–9]、 [1–9]、 [4b, 7c]

▢ numeric-verb

  • Example: numeric-verb
  • これも基本的には numeric と同じです。
    • 参考文献部分は numeric と全く同じ。
  • ただし、一つの cite 命令で複数個の文献を引用した場合でも、[1,6,9] ではなく [1], [6], [9] となります。
    • 「verb」は「verbose(言葉数が多い、冗長な)」の略のようです。

引用部分の例

[6], [9], [1], [3], [7], [8], [2], [4], [7c], [4c]

▢ alphabetic(短縮された著者名 + 年によるラベルによる引用)

  • Example: alphabetic
  • これは BibTeX の alpha.bst と同様の形式です。
    • author 名と出版年から作成される短いラベルによって引用されます。
    • 例えば、以下のような文献の場合、引用のラベルは [GMS94] となります。

Michel Goossens, Frank Mittelbach, and Alexander Samarin. The LaTeX Companion. 1st ed. Reading, Mass.: Addison-Wesley, 1994. 528 pp.

引用部分の例

[GMS94]、 [GMS94, p. 59]、 [see GMS94]、 [see GMS94, pp. 59–63]、 [GMS94; Aug95; BW96; Cot+99; Ham97; Mas04; Hos+98]

参考文献部分

  • 参考文献部分では、各文献の最初に引用で利用するラベルが表示されます。
  • 「ラベルが番号から変わる + 順番が変わる」以外は、numeric とほぼ同じだと思います。

[Alm+98] José L. Almendro et al. “Elektromagnetisches Signalhorn.” EU29702195U (FR, GB, DE). 1998.
[Ang02] Arnold Angenendt. “In Honore Salvatoris – Vom Sinn und Unsinn der Patrozinienkunde.” In: Revue d’Histoire Ecclésiastique 97 (2002), pp. 431–456, 791–823.
[Ari07] Aristotle. De Anima. Ed. by Robert Drew Hicks. Cambridge: Cambridge University Press, 1907.

▢ alphabetic-verb

  • Example: alphabetic-verb
  • これも alphabetic と基本的には同じです。
    • 参考文献部分は alphabetic と全く同じ。
  • ただし、一つの cite 命令で複数個の文献を引用した場合の表示方法だけ異なります。
  • 具体的には、引用部分が

[Doe92; Doe95; Jon98]

ではなく、

[Doe92]; [Doe95]; [Jon98]

という表示になります。

▢ authoryear(著者名 + 年の形式)

  • Example: authoryear
  • いわゆる「author-year」形式での引用スタイルです。
    • 引用部分が「著者名 + 公表年」という形式になります。
    • 引用部分における括弧の有無、括弧の位置は引用のコマンドによって変更可能です。

引用部分の例

Goossens, Mittelbach, and Samarin 1994
Goossens, Mittelbach, and Samarin 1994, p. 59
(Goossens, Mittelbach, and Samarin 1994).
Goossens, Mittelbach, and Samarin (1994)

参考文献部分

  • 他の参考文献スタイルと異なり「year は author のすぐ後ろに表示」されます。

Almendro, José L. et al. (1998). “Elektromagnetisches Signalhorn.” EU-29702195U (FR, GB, DE).
Angenendt, Arnold (2002). “In Honore Salvatoris – Vom Sinn und Unsinn der Patrozinienkunde.” In: Revue d’Histoire Ecclésiastique 97, pp. 431–456, 791–823.
Aristotle (1877). The Rhetoric of Aristotle with a commentary by the late Edward Meredith Cope. Ed. and comm. by Edward Meredith Cope. 3 vols. Cambridge University Press

▢ authoryear-comp

  • Example: authoryear-comp
  • これも author-year 形式です。
    • 参考文献部分は authoryear と全く同じです。
  • ただし、「一つの cite 命令で同じ著者の論文を複数引用した場合」に、引用部分を簡素化して表示します。

具体的には、普通の authoryear スタイルでは

Doe 1995b; Doe 1992; Jones 1998; Doe 1995a

となる表示を

Doe 1992, 1995a,b; Jones 1998

のように省略してくれます。

▢ authoryear-ibid

  • Example: authoryear-ibid
  • これも基本的に author-year 形式です。
    • 参考文献部分は authoryear と全く同じです。
  • 「同じ文献を同じページで連続して引用する場合に、2回目以降の部分では ibid. で省略される」という形式です。
  • これは本文中(in-text)での引用ではなく 脚注(footnote)での引用を想定した形式です。

従って、

This is just filler text.1 This is just filler text.2

のように本文中で同じ文献を2回連続して引用すると、脚注で以下のような表示になります。

1 Worman 2002, p. 12
2 ibid., p. 13

▢ authoryear-icomp

▢ authortitle(著者名 + タイトルの形式)

  • Example: authortitle
  • これは author-title 形式の引用になります。
    • つまり、引用部分の表示が「著者名 + タイトル」という形式になります。
    • これは footnote での引用を意図したスタイルです。

引用部分

This is just filler text.1 This is just filler text.2 This is just filler text.3 This is just filler text.4

のように本文で引用すると、脚注では以下のように表示されます。

1 Aristotle, Rhetoric.
2 Aristotle, Rhetoric, p. 59.
3 See Aristotle, Rhetoric.
4 See Aristotle, Rhetoric, pp. 59–63.

参考文献部分

  • 「ラベルがなくなる + 順番がアルファベット順に変わる」以外は、numeric とほぼ同じだと思います。

Almendro, José L. et al. “Elektromagnetisches Signalhorn.” EU-29702195U (FR, GB, DE). 1998.
Angenendt, Arnold. “In Honore Salvatoris – Vom Sinn und Unsinn der Patrozinienkunde.” In: Revue d’Histoire Ecclésiastique 97 (2002), pp. 431–456, 791–823.
Aristotle. De Anima. Ed. by Robert Drew Hicks. Cambridge: Cambridge University Press, 1907.

▢ authortitle-comp

  • Example: authortitle-comp
  • 基本的に authortitle と同じです。
    • 参考文献部分は authortitle と全く同じです。
    • これは footnote での引用を意図したスタイルです。
  • ただし、一つの cite 命令で同じ著者の文献を複数引用したときに、表示を簡素化して表示します。

例えば、

Doe, First title; Doe, Second title

のように同じ著者による複数の文献である場合

Doe, First title, Second title

のように著者名が省略されます。

▢ authortitle-ibid

  • Example: authortitle-ibid
  • 基本的に authortitle と同じです。
    • 参考文献部分は authortitle と全く同じです。
    • これは footnote での引用を意図したスタイルです。
  • 同じ文献を同じページで連続して引用する場合に、2回目以降の部分では ibid. で省略されます。

例えば

This is just filler text.1 This is just filler text.2

のように本文中で同じ文献を2回連続して引用すると、脚注で以下のような表示になります。

1 Worman, The Cast of Character, p. 12
2 ibid., p. 13

▢ authortitle-icomp

▢ authortitle-terse

  • Example: authortitle-terse
  • authortitle 形式です。
    • 参考文献部分は authortitle と全く同じです。
    • 本文中での引用、脚注での引用のどちらでも使えます。
  • ただし、「一つしか文献が引用されていない著者については、引用部分で著者名しか表示されない一方、複数の文献が引用されている著者は引用部分に著作名が表示される」という形式です。

例えば、Averroes という著者の文献は一つだけなのに対し、Aristotle という著者の文献は複数(PhysicsRhetoric) 引用されているとき、引用部分の表示は次のようになります。

Averroes
Aristotle, Physics
Aristotle, Rhetoric

Averroes の方だけタイトルは省略されます。

▢ authortitle-tcomp

▢ authortitle-ticomp

▢ verbose(引用部分に多くの情報を掲載する形式)

  • Example: verbose
  • これは以下のような形式です。
    • 最初の引用部分では、参考文献部分と同様に全ての情報(完全形)を表示する
    • 2回目の引用以降では「著者 + タイトル」という短縮形だけを表示する
  • footnote での引用を意図した形式です。
  • 参考文献部分は authortitle と全く同じです。

引用部分(脚注)の例

1 Aristotle. De Anima. Ed. by Robert Drew Hicks. Cambridge: Cambridge University Press, 1907.
2 Aristotle. Physics. Trans. by P. H. Wicksteed and F. M. Cornford. New York: G. P. Putnam, 1929.
3 Aristotle, De Anima.
4 Aristotle, Physics.

▢ verbose-ibid

  • Example: verbose-ibid
  • 基本的に verbose と同じですが、同じページ内で同じ文献の引用が連続する場合は Ibid. で省略する形式です。
    • 参考文献部分は verbose と全く同じ。

引用部分(脚注)の例

1 Aristotle. De Anima. Ed. by Robert Drew Hicks. Cambridge: Cambridge University Press, 1907.
2 Aristotle. Physics. Trans. by P. H. Wicksteed and F. M. Cornford. New York: G. P. Putnam, 1929.
3 Aristotle, De Anima.
4 Aristotle, Physics.
5 Ibid.

▢ verbose-note

  • Example: verbose-note
  • 基本的には verbose と同じです。
    • 参考文献部分は verbose と全く同じ。
  • しかし、2回目以降の引用では、「著者名 + タイトル」の短縮形に加え、最初の引用部分の脚注番号も表示する形式です。

1 Aristotle. De Anima. Ed. by Robert Drew Hicks. Cambridge: Cambridge University Press, 1907.
2 Aristotle. Physics. Trans. by P. H. Wicksteed and F. M. Cornford. New York: G. P. Putnam, 1929.
3 Averroes. The Epistle on the Possibility of Conjunction with the Active Intellect by Ibn Rushd with the Commentary of Moses Narboni. Ed. and trans. by Kalman P. Bland. Moreshet: Studies in Jewish History, Literature and Thought 7. New York: Jewish Theological Seminary of America, 1982.
4 Aristotle, De Anima, see n. 1.
5 Aristotle, Physics, see n. 2.
6 Averroes, see n. 3.

同じ文献の2回目以降の引用では「see n. 1.」のような最初に引用された脚注への参照も加わります。

▢ verbose-inote

  • Example: verbose-inote
  • 基本的に verbose-note と同じです。
  • さらに、ibid. での省略もプラスされます。

7 Aristotle, De Anima, see n. 1.
8 Ibid.
9 Aristotle, Physics, see n. 2.
10 Ibid.

▢ verbose-trad1, verbose-trad2, verbose-trad3

▢ reading(リーディングリスト用)

  • Example: reading
  • これは reading list 用のスタイルです。
  • 引用スタイルとしては authortitle と全く同じ(中で authortitle を読み込んでいるだけ)です。

▢ draft(草稿段階用)

  • Example: draft
  • これはドラフト用のスタイルです。
  • 引用部分が引用用のエントリー・キー(entry key)の表示になります。

▢ debug(デバッグ用)

標準以外のスタイル

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