エンジニア歴が2~3年目になると自分のキャリアに閉塞感を感じる人が多いように思います。
振られた仕事は大抵できるようになった一方で、「シニア」「中堅」と呼ばれるエンジニアとの埋まらない溝に絶望し、成長の鈍化に直面し、後輩の成長に焦り、いったいいつまで「新米」の枠組みにいるのだろうと悩んでいる。
そんな、私と同じような境遇の方々の一助になれば幸いです。
この記事の目的
「新米エンジニア」という枠組みから抜け出し、「中堅エンジニア」と呼ばれる層に入っていくための戦略を紹介します。
こんな人におすすめ
- 漠然と今のキャリアに不安を抱いている人
- 新米扱いされる状況をいち早く脱したい人
- 他者から評価されていないと感じている人
- もっとスキルアップしたい人
キャリア的閉塞感の正体
OpenWork社の調査によると、入社3年目までの社員の退職理由でもっとも多いのは「キャリア成長が望めない」と言う理由です。一般的にも入社2~3年目でキャリア成長に不安を感じる人は多いようです。
出典:OpenWork「平成生まれの退職理由ランキング」
私たちが抱える「なんかこのままじゃ不安だなぁ」と言うキャリア的閉塞感は、いったいどうして生まれるのでしょうか。
dodaの調査によるとITエンジニアの転職理由では「ほかにやりたい仕事がある」「給与に不満がある」「専門知識・技術を習得したい」などが上位に並びます。
これらのデータや自分自身の経験を元に、ITエンジニア2~3年目のキャリア的閉塞感を三つの「ない」に分解してみました。
1.ワクワクしない!
仕事がこなせるようになったことの副作用として生まれる。1年目は無我夢中でやっていた仕事もただのルーティンと化し、日々の仕事に胸がときめかなくなる。
2.認められてない!
着実に仕事はできるようになっているのに、相変わらずの「新米扱い」に不満が溜まる。給料や待遇などの形で自分の正当性を認めて欲しくなる。
3.スキルアップできない!
ずっと同じことの繰り返しだと感じる。自分の手の届く範囲の仕事しか任されないので、技術的な成長への飢餓感を持つようになる。
キャリア的閉塞感の正体はこの三つの「ない」と言う感情に起因するところが大きいのではないでしょうか。
キャリア戦略
「キャリア戦略」という切り口で、キャリア的閉塞感を生み出す三つの感情を克服し、「脱-新米エンジニア」の道筋を描きたいと思います。
今回は、**「冷静編」と「情熱編」**に大別し、論理とパッションの両面から私たちの明るい未来を描いてみましょう。
🖋冷静編🖋
どちらかと言うと理屈っぽく、キャリア戦略を考えてみましょう
ワクワクすることを明確にする(VS ワクワクしない!)
「ワクワクしない」と思った時に、「本当はこれがやりたい」が明確にあればいいのですが、やりたいことは特にない場合も多いです。(自分もどちらかと言うとそう)
漠然と今の仕事にこれじゃない感を感じているというケースはあるあるなのではないでしょうか。
ワクワクしないなー、という負の感情が抜け出すためには、まず自分が何にワクワクするのかを明確化することから初めるのがいいのではないでしょうか。
個人的におすすめなのは、**「MUSTとCANからWILLを探す」**という方法です。
MUSTとは、やらなければならないこと(会社からやってほしいと言われている仕事)
CANとは、できること(自分の能力的に実現可能なこと)
WILLとは、やりたいこと(ワクワクすること)
いきなりWILL(やりたいこと)を決めても必ずしも現状を解決できるとは思えません。
WILLから入って、「俺は世界を変えるプロダクトを開発したいんす!ちまちまコードとか書いてらんないっすよ!」と言っても、「うん、でもまずはまともに開発できるようになろうね」となりそうですよね。
今の自分に折り合いをつけつつワクワクする感情を手にするためには、MUSTとCANが大事です。
- MUSTは、新規機能のバックエンドの開発
- CANは、設計書通りに実装すること、テストコードを書くこと
という人がいるとします
この人が、設計書を書くことができるようになると、MUSTにも応えられるし、CANも広がります。
また、設計書を書けるようになることは世界を変えるプロダクトを作ることの必要条件にもなりそうです。
なので、手が届く範囲のWILLとして「設計書を書けるようになる」を定義するのです。
このように、未来への第一歩として、「設計書を書く」ということをワクワクすることにできれば、負の感情を抜け出すきっかけになります。
定量的な成果を提示する(VS 認められてない!)
評価されていない、と感じる時に考えるべきは<評価者はなぜ高評価をつけられないのか>と言うことです。
「あえて低く評価して不満を抱かせて苦しめてやろう」と思っている評価者は(おそらく)いません。できることであれば、自分の部下には高い評価をつけたいはずです(それが評価者の評価にもつながります)。評価者が自分一人で評価決定できればそうすることもできますが、実際は複数人の合議によって決まる場合が多いです。
そうなると、他部門・他部署との比較・企業の業績など様々な事柄によって「こいつを高く評価してください!」と言えない場合もあることが想像できます。
私たちができることは、自分の評価者が自分を推しやすくなる材料を作ってあげることです。
一番わかりやすいのは数字など客観性のある定量成果でしょう。後輩が前に記事に書いていたQCDモデルを使うとやりやすいです。
私の場合は、以下のような定量的な成果を提示して、上司が私を推しやすくなる工夫をしたりしました。
- コードのリファクタを行い、バグ発生率が80%低下しました(Quality)
- インフラを最適化して年間で300万円のコスト削減しました(Cost)
- 見積もりでは3人月かかるところを2.5人月でリリースできました(Delivery)
さらに、ビジネス上の重点KPIと紐付けられるとさらに推しやすい状況を作ることができます。
組み合わせで専門性を高める(VS スキルアップできない!)
そもそも専門性が高くなる、とは何でしょうか。
ポイントは希少性にあると思います。
保有しているスキルの希少性が高くなれば、専門性が高いと言え、市場価値も向上すると考えられます。
この時に重要な考え方は、仮にある一つの分野では凡庸だったとしても、別の分野との掛け合わせによってスキルの希少性を高めることができると言うことです。
ある分野で高度な技術に触れられるかどうかは、事業の状態にも応じますし、自分でコントロールするのが難しいです。しかし、それ一つではそこまででもないスキルでも複数の領域のスキルを持つことで、唯一無二の価値になることもあるのです。
私の場合は、バックエンドの設計力・実装力だけだと突き抜けられないと感じていたので次のような取り組みをしました。
- インフラやアーキテクチャの設計・構築・技術選定のスキルを身に着ける
- フロントエンドの実装スキルを身に着ける
また、技術領域だけでなく
- ビジネス観点を身に着けるために顧客とのアポイントに入る
- 後輩育成に注力する
など、ビジネスサイド的な感覚やマネジメント的な感覚と組み合わせることも、戦略的には有効なものだと感じます。
🔥情熱編🔥
理屈とか抜きにして、自分で自分のキャリアにワクワクできることもキャリア戦略においては重要です。ここでは情緒的にキャリアを考えてみましょう。
ときめく物語を創ろう!(VS ワクワクしない!)
仕事にワクワクしないのは、今の仕事に意味を見いだせていないことが原因です。
私の場合は、こんなのやっても意味ねー、自分のやりたいこじゃねー、と思うと仕事に対する熱量やパフォーマンスが落ちることを自覚していました。
そう言う時は、自分自身の物語を作っちゃいましょう。
人間は物語を通じて世界を認識しています(河合隼雄さんの本とか読んでみてください)。
例えば大昔の人は、「なぜ私たちはここにいるのか」と言うモヤモヤを解消するために、神話と言う物語でこの世界の成り立ちや人類の存在を解釈していました。
これを仕事に適応すれば、意味がねーと思っていることも、実はこれこれこういう物語の一部なのだ、と解釈づけてあげることができます。胸がときめくような自分自身の物語を作ることで、今の仕事に対する情熱を自家発電できるのです。
例えば、5年後どうなっているかを定めます。例えば、新規プロダクトを立ち上げているとか、起業しているとか、なんでもいいです。ワクワクすれば。そしてそこまでの道のりを大雑把に物語にします。
私はバックエンドのメンバーとして実装を任されている
ただ与えられる仕事をこなす日々で、優秀な後輩にも追いつかれ、飲み会で「先輩みたいにはなりたくないっす」とまで言われてしまう
「このままではダメだ!」と一念発起。ただ技術を追求するだけでなく、仕様の提案などを積極的にするようになった
最初は見当違いの発言をして笑われたりしたが、プロダクト価値を追求する姿勢に徐々に周囲の評価をえられるようになった
1年がたったある日私は、新規プロダクトの開発責任者に抜擢され、顧客の課題抽出から技術者として参画した
様々な苦難を乗り超えてリリースしたプロダクトは事業的に大きく成功し、私は全社表彰をされるに至った
仲間に背中を押されるように満を持して起業し、莫大な富を手にした
みたいな。このような物語があると、今が物語のどこなのかが見えてきます。
すると、与えられた仕事をするだけではなく、自らの物語を前に進めるために新しい行動を取れるようになります。
与えられた仕事に不平不満をもらす人から、自ら行動しワクワクする仕事を作れる人に変化をすることができるんです。
応援してもらおう!(VS 認められてない!)
正当な評価は一人で作るものではなく、他人との関係性の中で紡いでいった方が効率的です。
上司や先輩と、「これくらいまでできるようになればお前も中堅エンジニアだな!頑張れよ!」と言うコミュニケーションが取れるようになるとメリットが大きいです。
- 合意した期待に応えられれば「脱-新米エンジニア」をしたと言う評価・認識を持ってもらえる
- 応援してもらう構図ができると、周囲からのサポートやFBが受けやすくなる
「新米エンジニア」から「中堅エンジニア」になるためには、究極的には「あなたはもう中堅エンジニアだね」と周囲の人たちから評価してもらえることが条件です。あらかじめその基準を合意形成できていると、組織の中でのブランド構築もしやすくできるので、とても効果的だと思います。
私は、上述した自分の物語を周囲の方々にも共有することで「お前はこう言うエンジニアになりたいんだね!いいじゃん!応援するよ!」と言ってもらえるようにしたりしました。
周囲の人からしても、何を目指している人かがわかるとFBもしやすくなるので、自然と応援してもらえる構図ができます。
事業の発展にコミットしよう!(VS スキルアップできない!)
「自社で使っている技術領域だと新しいことにチャレンジできない!」
↓
「自社で使っている技術領域を増やせばいいじゃないか!」
という頭の悪そうな発想からキャリアを考えます。
どんな技術を使うかは、結局のところ事業計画に依存するので、個人の力では中々コントロールできない部分があるのは事実です。
しかし、逆に考えれば、事業が発展すれば新しい技術に挑戦できる可能性が上がると言うこともできます。
事業が伸びてプロダクトが進化したり、新しいプロダクトを作ろう、と言う話になれば、当然機会も増えるからです。
目先の技術を追求すること以上に「事業の発展」を目的に据えることが、実のところ技術力向上への近道だと思っています。
もちろん、事業発展へのコミットと言っても人それぞの環境や立場によって限界はあります。
しかし、水準の高い目的意識を持つことは、様々な面でプラスに働くように思えます。
**「振られた仕事を納期通り終わらせる」ことを目的にしている人と、「顧客使ってもらえるサービスを作る」**ことを目的にしている人だと、行動も明確に変わります(前者はとにかくコーディングすることに注力するでしょうし、後者は時には機能の価値や技術選定に対して提言をするイメージが湧きます)。この違いは、そのまま「新米エンジニア」と「中堅エンジニア」と言う違いだと置き換えられるかも知れません。
終わりに
成長に行き詰まりを感じた時は、時には理性的に、時には情緒的にキャリア戦略を立てることも重要だなー、と感じています。
書きながら思ったのですが、新米エンジニアを脱する鍵は、純粋な技術力とか経験とかではなくて、「仕事をもらう」か「仕事を作るか」という点にある気がします。
人それぞれ環境は違うので、うちの場合はこれは難しい、とかあるかも知れませんが、少しでもキャリアについてモヤモヤしている方の参考になっていたら嬉しいです。
私はこうやって成長戦略を描いた!と言うアイデアがあれば、是非コメントしてください!