概要
Cognos TM1 & Planning Analyticsのスコアカードに関して、初めて真面目に読み解きましたので、自分の備忘録の意味も込めて投稿しておきます。
はじめに
まずは、サンプルで提供されているGO_Scorecardsを起動しましょう。
TM1Webで接続して、GO_ScorecardsキューブのAllビューを開くと、こんな感じにStatusとTrendの列がスコアカードっぽく見えています。
これがどうしてこういう表示になるのか、というところを以降で説明します。
ちなみにArchitectで接続しても、スコアカードっぽくは見えません。
Performance Modeler
スコアカードの開発は、Performance Modelerで行います。
Performance Modelerの初期画面はこちらですが、通常のディメンションやキューブではなく、スコアカード用のディメンションやキューブを作成する必要があり、こちらの「スコアカードの作成」から行います。
こんな画面になります。※赤の数字は私の方で入れたものです。
スコアカードのビューの「評価指標ディメンションの作成」→「評価指標キューブの作成」→「図の操作」→「戦略の作成」の順番に、赤数字で示した箇所の文字をクリックしてそれぞれのオブジェクトを作成していきますが、左側のモデル設計ビューに同じ赤数字で表示したオブジェクトが、GO_Scorecardsでサンプルとして提供されているオブジェクトです。
よって、①から⑦までサンプルのオブジェクトを見ていけば、スコアカードの作り方・扱い方が自ずとわかってくる構造になっています。
それぞれのオブジェクトの説明に入る前に、覚えておいて欲しい事は、スコアカードを使用するためには、赤枠で囲ったActual、Target、Toleranceのメンバーは必須です。
ご使用のTM1環境のデータで、
Actual:実績値
Target:目標値
Tolerance:目標値と実績値の乖離がどの範囲で許容できるか
の、3つの値を持つ必要がありますので、まずはこの前提をご認識下さい。
①評価指標ディメンション(gometric)を見る
前述のViewで、行に配置されているディメンションです。
下のプロパティで、ディメンション・タイプが「評価指標」というタイプになっています。
Gross profitを見てみると、許容範囲タイプは「割合」と「絶対値」の選択肢があり、「割合」が選択されています。これは前述のViewのToleranceで指定される値が5%のようにパーセント表示の様に割合として扱う場合は「割合」、数値で指定される絶対値で扱う場合は「絶対値」を指定します。
次に、業績パターンですが、「目標を上回る場合適切」「目標どおりである場合適切」「目標を下回る場合適切」の選択肢があり、「目標を上回る場合適切」が選択されています。これは前述のViewで考えると、TargetとActualを比較した時に、Actualが上回っている場合をポジティブな結果としてとらえ、スコアカードの色もそのように緑か黄色で表示する、という意味です。
例えば「Training cost」の場合は、ActualがTargetより下回った方がうれしいので、「目標を下回る場合適切」という選択になっています。
②評価指標インジケーター・ディメンション(Metric Indicators)を見る
前述のViewで、列に配置されているディメンションです。
下のプロパティで、ディメンション・タイプが「評価指標インジケーター」というタイプになっています。
評価指標インジケーター・ディメンションを作成すると、StatusからStatus_Incomplete_Countまでの14個のメンバーが自動的に作成された状態で提供されます。もちろんメンバーを追加する事も可能です。
まず見るべきところは、Scoreのリーフレベル式と集約レベル式を見ます。
=SCORE('Actual','Target','Tolerance')と記載されていますが、SCOREはTM1で提供されている関数で、ActualとTargetをToleranceの範囲で比較して、評価を-10~10の範囲で表示する関数です。
前述のViewのScore列を見るとわかりますが、ActualとTargetを比較して、ポジティブな結果には正の大きな値、ネガティブな結果には負の大きな値が入っています。
※何がポジティブでネガティブかは、前述の通り評価指標ディメンションの中でメンバー毎に決めている
次にStatusのリーフレベル式と集約レベル式、レンダラーを見ます。
=SCORESTATUS('Score')でレンダラーがtrafficLightとなっているのは、Scoreで算出された値(-10~10)が、信号機表示すると緑・黄・赤のどれになるのか、ここで判断しています。
Trendで使用されているSCORETREND関数は、前の期のScore値と比較して、表示を決めています。
前述のViewではTimeディメンションで「2013」を指定しているので、「2012」のScore値と比較して、上昇・現状維持・下降の判定をしているようです。
③追加ディメンション
Timeみたいな通常のディメンションです。
④評価指標キューブの作成
行・列・コンテキストにディメンションを配置して、キューブを作成します。
ここまでで冒頭に紹介したViewの表示はできます。
⑤影響図を編集
「影響図」を開きます。
まずは「アウトライン」タブの内容を確認します。
ソース・キューブの評価指標にgometricディメンションを配置して、メンバーのエイリアスが表示されています。
その中から「影響を与える評価指標」に「Gross profit(総利益)」を配置し、「注目対象の評価指標」に「Bonus(ボーナス)」を配置し、それ以外のメンバーは「定義済みの指標」においてます。
それを「プレビュー」タブで見ます。
「注目対象の評価指標」に「Bonus(ボーナス)」を配置し、「影響を与える評価指標」に「Gross profit(総利益)」を配置したと思いますが、「ボーナス」に対して「総利益」から伸びているのは実線ですので「正の影響」、つまり「総利益」が上がると「ボーナス」も上がる、という関係になっている事がわかります。
その「総利益」に対して、実線でつながっている「利益」や「純売上利益」は正の影響を及ぼし、点線でつながっている「人件費」は負の影響を及ぼしている事がわかります。
この様に、全メンバーが目的とするメンバーに、正の影響を与えているのか負の影響を与えているのか、というのが一目でわかるのが影響図です。
⑥ユーザー指定の図の作成
ユーザー指定の図である「GO Process」を開いてみます。
背景画像、1次ディメンション、2次ディメンション、2次ディメンションのコンテキストで指定したものが、キャンパスに表示されています。
背景画像は、world_map.pngやorgchart.pngなども提供されていて、自分で用意した画像を使用する事もできます。
world_map.pngを指定した「GO Region」はこんなイメージとなります。
⑦戦略マップの作成
戦略マップである「GO Strategy Map」を開きます。
先に「プレビュー」のタブでイメージを確認します。
「Financial」「Customer」「Internal Processes」「Learning & Innovation」の4層に分かれていて、Financialの層には「Reduce Expenses」「Improve margin」「Grow revenue」が存在し、それぞれ緑・黄・赤の評価の数が表示され、またそれぞれ関係が矢印で表示されている事がわかります。
これらの表示は、どのような設定で実現されているかが、「アウトライン」と「接続」のタブになります。
アウトラインタブは、以下のイメージです。
戦略マップのウィンドウで、例の4層と各アイテムがマッピングしている事がわかります。
また、Improve marginを選択すると、「選択された目標の評価指標」で「Gross profit」「Gross margin」「Bonus」がメンバーとして配置されている事がわかります。
先のプレビューでImprove marginに見えた、緑の信号1個、黄色の信号2個は、これらのメンバーの評価である事がわかります。
次に「接続」のタブです。
接続ウィンドウの中に、元と先のアイテムのマッピングがあります。
これがプレビューでの矢印になります。
以上となります。
使った事が無いので、何となく気になっているものの無視している方も多いのではないかと思う「スコアカード」の機能ですが、一度理解しておいて損はないと思いますので、ご参考にして頂ければ幸いです。