http://themacro.com/articles/2016/01/how-to-raise-a-seed-round/ の個人的な翻訳です。
Introduction
スタートアップ企業はものを買ったり、オフィスを借りたり、スタッフを雇ったりする必要がありますが、もっと重要なのは、成長する必要がある、ということです。ほとんどの場合、それらのことをするには外部資本が必要です。
会社によって最初に調達された資本は"seed" capitalと呼ばれることが多いです。この短いガイドは、スタートアップのファウンダーが会社を軌道に乗せるためにクリティカルな資金調達のために必要なことを集めたものです。
資金調達のための完全ガイドというわけではなく、ほとんどのファウンダーにとって必要な基本的な知識をまとめたものです。ここで扱う情報は、私の、スタートアップで働いた経験、スタートアップに投資した経験、そしてY CombinatorとImagine K12でスタートアップのアドバイザーとしての経験から成るものです。YCのパートナーは沢山の資金調達を経験していて、YCファウンダーのPaul Graham(PG)は広範囲に渡って(下記Sourcesの)1, 2, 3, 4を書きました。彼のエッセイはこのガイドに書かれていることを非常に詳細に掘り起こすような内容なので是非ご一読されることをオススメします。
Why Raise Money?
恐らく資金調達をしない大部分のスタートアップは死んでゆくでしょう。スタートアップがプロフィッタブルになるのに必要なお金は、通常、起業家およびその友達や家族が集められるものよりもはるかに高額なはずです。ここで言うスタートアップとは、早く成長するために立ち上げた(下記Sourcesの)12.のようなことを指します。急成長する会社にはほとんど全ての場合、プロフィッタブルに成長するためには資本を燃やし続ける必要があります。ごく少数のスタートアップ企業においては、自分自身でbootstrap(self-fund)することに成功しますが、それらは例外です。もちろん、スタートアップではない沢山の素晴らしい会社はあります。そのような会社に対する資本管理のニーズに関してはこの記事では取り扱いません。
現金はスタートアップの生存と成長を可能にするだけでなく、活動資金はほとんどの場合、以下のように競争力のあるアドバンテージになります: キーとなるスタッフを雇う、広報、マーケティング、そしてセールス。なので、ほとんどのスタートアップは確実にお金を工面したがります。バッドニュースとしては、"資金調達は残忍である"ことで、(下記Sourcesの)1. では、資金調達はしばしば、長期間かかり、苦しく、複雑で、そして自尊心がしぼんでしまうようなもの、とされています。にも関わらず、その道は全ての会社と起業家にとって避けては通れない道であるわけですが、ではどのタイミングで資金調達をすべきなのでしょうか?
When to Raise Money
投資家は、以下のような時に小切手を切ります: アイデアに競争力があると思った時、ファウンダーがそのビジョンを成し遂げることができると説得させられた時、そしてオポチュニティがリアルで十分に巨大であると思われる時。ファウンダーがストーリーをキチンと話す準備を出来ていれば資金調達できるでしょう。そして、資金調達できるのであれば、その時にすべきです。
何人かのファウンダーは十分なストーリーと良い評判を持っています。しかし、ほとんどは、アイデア、プロダクト、そして何人かユーザーが付いていること(別の言い方をすれば、牽引力があること)、が必要です。幸運にも、今日のソフトウエア開発のエコシステムは洗練されたWebやモバイルのプロダクトを低コスト・短期間でデリバーすることを可能にしています。ハードウエアでさえ、非常に素早くプロトタイプが作られ、そしてテストされます。
しかし、投資家には説得が必要です。一般的には、プロダクトが見える、使える、もしくは触れる、だけでは不十分です。投資家たちはプロダクトがマーケットにフィットするか、そして、実際にグロースしているか知りたいと思っています。
従って、ファウンダーは資金調達する際は、どこがマーケットのオポチュニティであるか、誰がカスタマーであるか、そして、デリバーしたプロダクトが、いつ彼らのニーズに合って、興味深いほど早いレートで採用されるかを示さなければならなりません。どの程度の急成長が興味深いかって?それは状況にもよるけれど、数週間に渡って毎週10%成長しているというのは印象的と言えるでしょう。そして資金調達をするファウンダーは印象付けをする必要があります。これらのこと無しに投資家を確信させることができるファウンダーの皆さん、おめでとうございます。そうでない他の皆さんは、プロダクトを開発し、ユーザーに語りかけましょう。
How Much to Raise?
理想的には、プロフィッタブルになるために必要なお金をできる限り調達すべきです、そうすれば更に追加で資金調達を行う必要はなくなりますよね。もし、そのことに成功したら、将来の資金調達が容易になるだけでなく、もし今後、調達市場が厳しいものになったとしても、調達なしでサバイブすることができます。そうは言うものの、ハードウエアを創っているような、特定の種別のスタートアップにおいてはfollow-on(後に続く)ラウンドが必要になるでしょう。ここでのゴールは、次の"fundable"なマイルストーンまでに必要な金額を調達する、ということです。大体は12ヶ月から18ヶ月後ということになります。
調達額をいくらにするかはいくつかの事項とのトレードオフになりますが、その中には、どれだけの進展をその資金によって獲得できるか、投資家のクレディビリティ、そして議決権比率の希薄化といったものが含まれます。もし、シードラウンドであなたの会社の10%に与える割合をおさえられたとしたら、それはとても良いことですが、ほとんどのラウンドは20%の希薄化を要求します。そしてあなたはそれが25%以上になるのを避けるべきです。いかなるイベントにおいても、あなたが求める資金量は、信用できるプランに繋がっていなければなりません。そのプランこそが、資金が成長するチャンスがあるのだと、投資家を確信させるのに必要な信用力をあなたにもたらします。様々な額で調達すると仮定した上で、複数の計画を作成しておき、満額調達できるにしても、多少それには満たない額にとどまるにしても、注意深くあなたの信念を明確化しておくことは一般的には良いアイデアです。調達額の違いはどれだけ早く成長できるか?といったところにあらわれるだけでしょう。
はじめての調達ラウンドで最適な額の調達する上での一つの考え方として、そのお金で何ヶ月オペレーションをおこなうか?といったことが挙げられます。大まかなやり方としては、エンジニア(シリコンバレーのスタートアップにおける初期メンバー)は全て込みで月間約15K USD(2016年1月現在だと日本円で180万円くらいですかね)になります。ということで、もし18ヶ月間のオペレーションを5人のエンジニアで行うとしたら、15K x 5 x 18 = $1.35mm(日本円で1.6億円くらい)のお金が必要ということになります。もし他のポジションの人も雇うとしたら?心配しなくても大丈夫です!これは単なる見積もりであり、人を雇うごとに正確になっていきます。そして、質問に対する答えを持つことができます: "あなたはいくら調達しますか?" シンプルな答えとしては、Nヶ月(通常12〜18ヶ月)分なのでXドルです、というもの。そしてそのXは大体 500K USD(6千万円)から1.5million USD(1.8億円)の間になります。上記に書いたように複数のバージョンのNヶ月とXドルの組み合わせを出して、調達に成功した際の成長シナリオがそれによってどう変わるかを示すべきです。
会社からの資金調達額に関しては様々なバリエーションがあります。ここではアーリーな調達として、数百K USDから2ミリオンUSDのレンジの調達に主眼を置いています。ほとんどのファーストラウンドの調達額は600K USDくらいです。しかし、ここ数年は、シード投資におけるリターンが増えていることもあり、調達額は増加傾向にあります。
Financing Options
スタートアップのファウンダーはベンチャー投資のベーシックなコンセプトについて理解しなければなりません。それを一つの段落の中でシンプルに説明できればよいのですが、ほとんどがリーガルな事であるため残念ながらそれは不可能です。これはとてもハイレベルなサマリになりますが、あなたにとって価値のある時間であり、より詳細を読んで、ファイナンシングのタイプによるprosとconsや、大切なことは、気付かなければならないキーとなる言葉、優先権(preferences)からオプションプール(option pools)まで、を理解することです。以下の文書を読めば幸先の良いスタートをすることができるでしょう。
- Venture Hacks / Babk Nivi: Should I Raise Debt or Equity
- Fred Wilson: Financing Options
- Mark Suster on Convertible Debt, Announcing the Safe
ベンチャーファイナンスは通常は"ラウンド"の中で行われます。それは、伝統的に名付けられた特別なものです。最初にシードラウンドがあり、シリーズA、シリーズB、シリーズC、そしてアクイジションやIPOというものです。これらのラウンドは必須というわけではなく、例えば、シリーズAのファイナンシングからはじめる場合があります(ほとんどの場合"equity round"と下で定義されたもの)。思い返していただきたいのは、私たちがこの記事の中でフォーカスしているものは、シードのとにかく最初のベンチャーラウンドです。
少なくともシリコンバレーにおける、ほとんどのシードラウンドでは、転換社債もしくは将来の株式のためのシンプルなアグリーメント(頭文字とってsafes)のどちらかになります。 (下記Sourcesの)17.によると、アーリーなラウンドは株で行うところもあるようですが、現在のシリコンバレーでは例外的です。
Convertible Debt
転換社債は投資家が会社に対して"convertible note"(事前に定められた転換価格によって株式に交換できる権利が付された社債を指す)と呼ばれるものを使って貸付を行うローンのことです。そのローンは元本(出資額)、利子(通常は2%程度)、そして満期日(元本と利子が返済されなければならない日)を持ちます。この社債の意図としては会社がエクイティファイナンス(自己資本の増加を伴う資金調達)を行った際は株式に交換できるということです(なので"convertible")。これらの社債は一般的には、"Cap"もしくは"Target Valuation"、且つ/もしくは"割引"を持ちます。Capとはmaximum effective valuationのことで社債のオーナーが支払います(社債が交換されたラウンドのバリュエーションだとしても)。エクイティラウンドにおけるCapの効果としては、通常は転換社債投資を行う投資家が1株あたりに払う価格が他の投資家よりもが低くなることが挙げられます。一方で、割引は、ラウンドバリュエーションのpercentage offによるlower effective valuationです。投資家はそれらをシード"プレミアム"とみなします。それぞれの条件は交渉可能です。転換社債が満期になると(利子とともに返済しなければならないタイミングですが)、しばしば社債の満期を積極的に引き伸ばします。
Safe
転換社債はYCおよびImagine K12においては、ほぼ完全にSAFE(上記のSimple Agreement for Future Equity)に置換えられました。SAFEは転換社債のように振る舞いますが、そこには利子、満期日、そして返済の義務がありません。条件は交渉可能で、ほとんどの場合はシンプルに額、Cap、そして割引、です(その他なにかあれば)。少しだけ他の交換可能な証券よりも複雑で、それは交換が行われる際に発生します。私は強く(下記Sourcesの)18.を先に読んでおくことを強くオススメします。こちらはYCのサイトで閲覧可能です。いくつかの事例をもとにSAFEを交換する際に起こることや、転換社債とSAFEをどのように実務で活用するかについて大いに役立つものです。
Equity
エクイティラウンドの意味はあなたの会社のバリュエーションをセットして(一般的には、会社の概念的なバリュエーションとしてのSAFEもしくは社債のCapです。が、SAFEも社債もuncappedにすることは可能です)、そのようにして1株あたりの株価を決めます。そして、新しく株を発行して、その株を投資家に売却します。この手続は常に複雑でSAFEや転換社債そしてアーリーラウンド用の彼らの認知度を説明するよりも、手間がかかり、そして時間がかかります。これが株を発行する計画をする際にあなたが弁護士を雇いたくなる理由です。
新しく株が発行される際に何が起こるか理解するために、一つシンプルな例を示しましょう。あなたが $1,000,000 (100万ドル)の調達を、$5,000,000 のpre-money valuation(調達する前のあなたの会社の価値)に対して行うとします。もし、10,000,000(一千万)株を持っていたとして、以下のように株を売ったとすると:
-
$5,000,000 / 10,000,000 = 1株あたり50セント*
あなたは以下のように売るでしょう… -
2,000,000(2百万)株
新しい株式はトータルで… -
10,000,000 + 2,000,000 = 12,000,000(1200万)株
そしてpost-money valuation(調達後の会社の価値)は… -
$0.50 * 12,000,000 = $6,000,000(600万ドル)
そして希釈化は… -
2,000,000 / 12,000,000 = 16.7%
20%ではありません!
エクイティラウンドにおいて、以下のような場合に備えて知っておかなければならいことがあります。priced round(シリーズA以降)、equity incentive plans (option pools)、liquidation preferences(優先権)、protective provisions(優先株主保護)、その他諸々。これらは全て交渉可能ですが、一旦バリュエーションについて投資家(次のセクションで詳しく)と合意したのであれば、そこと掛け離れていない限りそのディールは行われるものとして考えてください。シードラウンドに関係ないことが多くなってしまうのでエクイティラウンドにこれ以上のことを言うのは控えますね。
One final note: ファイナンスを行う際はどんな時でもYCのSAFEのようにwell-knownなドキュメントを使うのが良いと思います。これらは投資家コミュニティでよく理解されているものですし、草案はフェアに作られており、そしてファウンダーフレンドリーです。
Valuation: What is my company worth?
あなたに2人のハッカーとアイデアがあり、数ヶ月でハックして価値のあるソフトウエアを開発して、そして数千人のユーザーを獲得しました。あなたの会社の価値は?これを算出するのに明らかな公式のようなものはありません。正当性のようなものを示す概念的なものしか存在しません。ではどのようにポテンシャルな投資家に対してバリューに関する話を持ちかければ良いのでしょうか?なぜ$20mmの価値だったり$4mmの価値だったりといった会社がでてくるのでしょうか?それは、投資家がその時点での価値を確信したからです(あるいは近い将来の価値かもしれません)。とてもシンプルです。したがって、価値の算出はマーケットにまかせながら価格やCapを定めるために投資家を見つければ良いのです。沢山の投資家があなたの会社に興味を示せばバリューは上昇傾向と言えるでしょう。
とは言え、あなたの価値を導き出す投資家を見つけるには難しい状況もあります。そのような場合は、あなた自身でバリュエーションを導き出しましょう。大体の場合、競合会社のバリュエーションを見てみることです。覚えておいていただきたいのは、バリュエーションの算出は何も必要以上に大きく見せようとするためのものではありません。この目的は、あなたにとって受け入れられるものであって、あなたのゴールを達成する上で(受け入れられる希釈率で)必要な金額を調達するためであり、投資家が十分リーズナブルで且つ魅力的だと納得した上であなたに小切手を切る、ということに繋がります。シードバリュエーションのレンジは$2mm-$10mmになりがちですが、忘れてはいけないのは、ここでのゴールは、ベストなバリュエーションを達成することでもなければ、高いバリュエーションがあなたの成功の可能性を引き上げるものでもない、ということです。
Investors: Angels & Venture Capitalists
エンジェルとVCの違いは、VCはその道のプロフェッショナルであることに対して、エンジェルはそうではない、ということです。VCの投資は他の人々から集めたお金で成されるのに対して、エンジェルの投資は彼ら自身のお金で成されます。エンジェルの中には、とても厳格でその道のプロと同じように振る舞う人もいますが、道楽者のような人も多いです。彼らの意思決定プロセスは通常とても早く-彼ら自身のお金をcallするのもあって-そして、大抵の場合は意思決定において情熱が大きな割合をしめます。
VCは通常、時間をかけて、多くのミーティングを行い、そして最終的な決断を下すのに複数のパートナーが参画します。そして覚えておくべきなのは、VCは"多く"のディールを扱って、その中のごく少数にしか投資をしない、ということです。つまりあなたは群を抜く存在でなければなりません。
シード(初期)ファイナンシングのエコシステムは非常に複雑で、5年前と比較しても更にややこしくなりました。沢山の新しいVCが出現し、時には"super-angels"または"micro-VC's"と呼ばれる本当に初期ステージな会社だけをターゲットにするところも出てきました。もちろんシードラウンドをターゲットにした伝統的なVCもいます。そして相当数のインディペンデントなエンジェルがいて、彼らはいろんな会社に$25Kから$100Kもしくはそれ以上の投資を行います。新しい資金調達オプションが毎年出現していて、例えば、AngelList Syndicatesではエンジェルを束ねてお金をプールして1人のリードエンジェルに従うというような事を行っています。
では、どにょうにして投資家に会って興味を持ってもらったら良いのでしょうか?もしあなたがdemo dayイベントでプレゼンテーションをしようとしているところであれば、沢山の投資家と会うことができるでしょう。シードの投資に集中そして情熱を注いでいる投資家グループに会える機会はそんなに多くありません。demo day以外にベンチャーキャピタリストやエンジェルと会うのに最も良い方法は"紹介してもらう"ことかと思います。エンジェルはしばしば興味をもった会社を自分のネットワークの中の人に紹介したりします。もしくは、あなたのネットワークの中にもエンジェルやVCを紹介してくれる人がいるかもしれません。もし、他に選択肢がなければ、VCとエンジェルを丹念に調べて、出来るだけ多くの人に、簡単な形で、あなたのビジネスの競争力のサマリを送ってみましょう。(下記 Documents を参照)
Crowdfunding
AngelList, Kickstarter, FundersClub, Wefunderといった新しい資金調達用のサービスが出現してきています。これらのクラウドファンディングのサイトは、プロダクトのローンチ、売出前のキャンペーン、もしくはベンチャーファンディングを探す、といったことに使われます。例外的に、ファウンダーはこれらのサイトを、優位に資金調達をできるソースもしくはディマンドの明確なエビデンスという使い方をする場合があったりもします。大規模なラウンドが完了するまでの場繋ぎとして使われたり、時には実現が難しいラウンドを復活させるために使われたりもします。こういったエコシステムは非常に早く変化をしていますが、いつどのようにこれらの新しい方法を使うかは、大抵あなたが伝統的な手段で調達に成功した場合に決定されるでしょう。
Meeting Investors
investor dayで投資家と会うのであれば、あなたのゴールはそんなに近くない、ということを覚えておくべきです-つまり、次のミーティングの機会を探るためである、ということ。投資家はどんなにそれが素晴らしかったとしても、ピッチを聞いたその日にコミットするこを決めることは滅多にありません。なので投資家との沢山のミーティングを調整しましょう。覚えておくべきなのは、会社にとっては最初の資金調達が一番難しい、ということです。言い換えれば、出来るだけたくさんの投資家と会うべきだけれども、最もクローズできそうなところにフォーカスしましょう、ということです。つねに最短でお金を獲得するために行動しましょう(別の言葉では be greedy。下記Sourcesの) 2. を参照してください。
投資家と会う際に用意しておくべき数少ないルールがあります。第一に、あなたはあなたの聞き手の事を知っていること-つまり彼らがどんなものに投資したがっているのがを事前に調べて、それが何故なのか答えをさがしておきましょう。第二に、ピッチは完結にまとめましょう-なぜコレが素晴らしいプロダクトで(最近ではデモは必須になってきました)、なぜあなた達がそれを作るのに適したチームで、なぜ次のgiganticな会社を作り上げることを夢みたのか。そして、注意深く投資家が言っている事に耳を傾けましょう。もし、その投資家があなたよりも沢山しゃべるのだとしたら、あなたへの投資の可能性は高いと見てよいでしょう。同じようなやり方であなたは投資家と繋がりを持てるようになります。これはリサーチを行う主な理由です。会社への投資は長期のコミットメントであり、ほとんどの投資家は多くのディールを担当しています。つまりあなたのことを気に入って、あなたのプロダクトのことを良いと思っても、ほとんどの場合は小切手を切らないということです。
あなたが誰で、どれだけあなたのストーリーを上手く伝えられるかが、投資家に小切手を切らせるために最も大切なことです。投資家は、競争力のある、信用に値する夢を持った、そして、その夢を実現することが出来るエビデンスとなるようなドキュメントを持っている、ファウンダーを探しています。あなたに合ったやり方を探しましょう、そして、ピッチをパーフェクトなものにするためにできるだけの努力をしましょう。ファウンダーにとって、ピッチは難しくしばしば不自然になりがちです。特にテクニカルなファウンダーは聴衆の前よりもコンピュータースクリーンの前にいることを好みます。demo dayもしくは投資家ミーティングにおける準備に関して、誰でも練習によってその質を向上させることができます。そして膨大な練習量に取って代わるものはございません。
ミーティングの間は、自信と謙虚さのバランスをとるように心がけてください。放漫であったり、消極的過ぎだったり、だまされやすかったり、、となることがないように。インテリジェントなカウンターポイント(意見や提案など)にはオープンでいましょう、しかし、投資家を説得するといった状況か否かに関わらず、自分の信念はまげないようにしましょう。そうすれば良い印象を与えることができ、更にチャンスを獲得することができるかもしれません。
最後に、投資家とのミーティングにおいては、必ずクロージング、つまり次のステップについて明確にすること、をせずに会議を終わらせてはなりません。物事を曖昧にしたまま会議室を出ないように。
Negotiating and Closing the Deal
シードの投資は通常素早くクローズされます。上記に記載したように、YCのSAFEのように一貫性のある条件で記載されたスタンダートなドキュメントを使うアドバンテージがあります。交渉、通常は特にありませんが、では1つか2つの条件、例えばvaluation/Capや割引といったもの、に繋がる可能性もあります。
ディールにはモメンタムがあり、あなたが語る素晴らしいストーリー、持続性、そして各所に足を運ぶこと以外に、そのモメンタムを作りだすレシピのようなものはありません。あなたは調達をする前に多くの投資家と会う必要があると思いますが、その中の1人を確信させるだけで良いのです(下記Sourcesの5.を参照ください)。最初の投資を行ったら、それ以降のラウンドではより早く簡単に調達を行うことができるでしょう(下記Sourcesの6.を参照)
投資家が"それに乗った!"と言ったら、ほとんど完了です。一刻も早く(下記Sourcesの)19.のhandshake protocolを使ってクロージングしましょう。その先の交渉で失敗するとしたら、恐らくそれはあなたの失敗です。
Negotiations
VCやエンジェルと交渉事に入る際は、彼らはあなたよりも経験を積んでいて、その場でリアルタイムな交渉は避けるべきだということを覚えておきましょう。要求はあなたから離して、YC、Imagine K12パートナーズ、アドバイザー、弁護士といった人たちの力を借りましょう。但し、一方で、正当な要求はとんでもないものにすることもできますが、信用できるVCやエンジェルがしてくる要求は大抵は妥当なものです。大事なのは、なぜそのような要求をするのか正確に説明してもらうことをためらってはいけないということです。もしバリュエーション(もしくはCap)に関する交渉があるとしたら、当然、様々なことが考えられます(例えば、他にすでにディールをクローズしてしまった等)。しかし、ここで大事なことは、このアーリーなラウンドであなたが選択したバリュエーションは会社が成功するか失敗するか、ということにおいては滅多に問題になりません。Getできるベストなディールを取るべきですが、まずはとにかくディールをクローズしましょう!最後に、あなたが"Yes"を引き出したら、のんびり待ってはいけません。出来るだけ早く投資家のサインとキャッシュを手に入れましょう。SAFEがポピュラーになった理由の一つとして、サインをして資金を振り込む、というとてもシンプルなメカニズムでクロージングする、ということが挙げられます。投資家が投資をすると決めたら、オンライン上で数分間の間にドキュメントにサインできますし(例えばClerkyやIronclad)、あとは送金もしくは小切手を送るだけです。
Documents You Need
シードラウンドにおいてはドキュメントの作成に心血を注ぐことはやめましょう。もし投資家が過剰にデューデリジェンスや財務に関する質問への回答を求めるとしたら、大概はその投資家は避けた方が良いでしょう。恐らくあなたに必要なものは、エグゼクティブサマリと、投資家に一通りのことを説明するためのスライドで、VCが他のパートナーに見せることができるleave-behindなものです。
エグゼクティブ・サマリーは1ページもしくは2ページ(1ページの方がベター)にすべきで、ビジョン, プロダクト, チーム(ロケーションやコンタクト情報), 牽引力, マーケットサイズ, そして最小限の財務状況(売上, もしあれば過去と現在の資金調達も)といったものが記載されます。
一般的にはスライドはよくまとまっているleave-behind(覚えてもらうためのもの)なものである必要があります。グラフィック, チャート, スクリーンショットは沢山の言葉よりもパワフルです。あなたのストーリーのより詳細なバージョンを立て掛けるための枠組みのように捉えましょう。これといって決まったフォーマット等はありませんが、大体以下のようなものになります。あなたに合っていて、あなた自身を表現し、あなたの会社をレペゼンするようなピッチを作りましょう。またエグゼクティブサマリのように沢山のテンプレートがオンライン上にありますのでもしコレが気に入らないな、と思ったら。。
- あなたの会社 / ロゴ / Tag Line(キャッチコピー)
- あなたのビジョン - なぜあなたの新しい会社が存在しているのかを最も幅広く
- Problem - 何を解決しようとしているのか-なにがカスタマーにとってのペインなのか?
- Customer - カスタマーは誰で、どのようにカスタマーにリーチするのか?
- Solution - 何を創って、なぜ今なのか?
- 参入する(巨大な)マーケットの規模 - もし可能であれば、市場規模(TAM) >$1B(1200億円)。そして、それがリアルであるという最も説得力のあるエビデンス
- 市場の展望 - 競合、マクロなトレンド等を含む。他がやらない理由(あなたの洞察)
- 現状の牽引力 - キーとなるstats / 将来的にスケールするカスタマーアクイジションのプラン
- ビジネスモデル - どのようにレベニューをだしていくか。現状, 計画, 希望
- Team - あなたが誰で, どこから来て, なぜ成功すると言えるのか?写真や経歴などがあると良い。役割を明記しよう
- サマリ - 3-5の重要なポイント(市場規模, キーとなるプロダクトの洞察, 牽引力)
- 資金調達 - 今までの資金調達の経緯とこれから予定している調達について。財務的にあ情報はココで。オプションで投資を受けて何に使うかを示した(Maxで6四半期先までの)プロダクトのロードマップを付けてもよい。
Next
スタートアップの投資は急激に進化を遂げているので、上記で扱ってきたいくつかの事象が廃れてしまうかもしれないことを理解しておいた方が良いと思います。なのでこのポストの更新もしくは将来的なポストをチェックしてくださいね。今日ベンチャーがお金を調達することにおいては膨大な量の情報が手に入るようになりました。このポストの中で参照したソースおよび読んでおくべき資料は下記にまとめておきました。
資金調達は必要なことで、時に辛いタスクではありますが、ほとんどのスタートアップにとっては定期的にそれに耐えなければなりません。ファウンダーのゴールとしては、いつでも出来るだけ早く調達すべき、ということで、このガイドがファウンダーにとって、最初の資金調達の成功の助けになることを切に願っています。ほとんど不可能なのではないかと思われるようなタスクをやりきった時、断崖絶壁な山を登り切ったような気分になるのではないかと思います。しかし、あなたが振り回されたこの残忍な資金調達は、将来後から振り返ると、実は大きくそびえ立つ山のふもとでしかなかったことに気づく日がきます。さぁ、あなたの会社を作り上げる仕事に戻りましょう!
このドキュメントの作成に貢献してくれた方に感謝の意を表します。もちろん何か間違いがあれば全て私の責任です。コメントや質問があったら geoff@yahoo.com まで送ってください(日本語でコメントくだされば私 @shinodogg が翻訳して送ることもあるかも、、しれません。。ベストエフォートで。。)
Appendix
Fundraising Rules to Follow
- 資金調達は出来るだけ早めに行いましょう、そして、あなたのブロダクトおよび組織を作ることに戻りましょう、ただし…
- 直ぐに調達をストップするのはやめましょう。もし資金調達が難しければ戦い続けて、生存し続けましょう。
- 調達する時は"greedy(貪欲)"であれ: (下記Sources)2.を読んだ上で幅優先探索をしましょう。出来るだけ多くの人と会って、誰とディールをクローズしたいか優先順位付けしましょう、ということです。もし、その中の誰かがyesと言ったら直ぐに行いましょう。一刻も早くサインされたドキュメントと銀行への入金をGETしましょう
- Always hustle for leads。もしあなたがthe hottest deal of the hourであれば素晴らしいですが、他の誰もが血眼になってエンジェルやベンチャー投資家を探しています
- Never screw anyone over(誰かに嫌な思いをさせてはいけない)。あなた自身そしてあなたのチームに最高の倫理基準(ethical standards)を持ちましょう。シリコンバレーはとても小さい場所で、悪い噂をリカバーするのは難しい場所です。決して後悔しないストレートなやり方で進んでいきましょう。きっとそれはあなたにとっても心地よいもののはずです
- 投資家はNOというための様々な方法を持っています。起業家において最も難しいことはいつ投資家が却下をして、いつOKするかを理解することです。ポール・グレアムは言います、"もしソーダが空なら、ストローを使ってヒドイ音を立ててススるのをヤメろ"。しかし覚えておいた方がイイのは、別の機会に"YES"と言うかもしれないということです。
- あなたとあなたの会社にフィットするスタイルを開発しましょう
- 組織として戦いましょう。共同創業者とは、可能であればタスクを分割しましょう。必要であればAsanaのようなソフトウエアを使ってディールの状況をトラックしましょう
- 鈍感力重要。ただし自信と謙虚さのバランスを取りましょう。傲慢であってはなりません
What Not to Do While Communicating with Investors
DON’T…
- どんな時でも不誠実であってはならない
- 傲慢だったりフレンドリーでない態度はダメ
- アグレッシブル過ぎるのも考えモノ
- 優柔不断なのは良くない - 但し、まだ知らない、ということを口にするのはOK
- 他の人が口を挟めないほど話しすぎるのはNG
- フォローアップしたり、ディールをクローズするのに遅すぎるのはダメ
- 口頭にしろ書面にしろ、アグリーメントを破るのはダメ
- 詳細過ぎる財務に関するドキュメントを作るのは時間が勿体無い
- クリアに正当化されていること無しにバカバカしい/滑稽なマーケットサイズを口にしてはいけない
- あなたでさえ知らないことを要求したり、"知らない"ということを恐れたりしてはいけない
- 誰の目からみても明らかな事柄に時間を使い過ぎてはいけない
- 重要でない些細なことがらに囚われ過ぎてはいけない - ミーティングをあなたから遠ざけてもいけない
- NDAを要求するのは良くない
- 資金調達NINJAでもないのに投資家と不必要にやりあうのは良くない
- real-timeにネゴシエーションしようとするのは良くない
- バリュエーションに関して最適化しようとし過ぎたり、希釈化に関して心配し過ぎるのはよくない
- 個人的にとるのはダメ(気にし過ぎちゃダメとか、そういうニュアンスかな)
A Brief Glossary of Key Terms
お探しの用語がここにありませんか?言葉の意味に同意できませんか?そのような場合は Investropedia 行けば、より権威のあるソースにたどり着くことができます。
- Angel Investor - (一般的には)スタートアップ企業における裕福な個人投資家
- Cap / Target Valuation - 投資家の転換社債におけるmaximum effective valuation
- Convertible Note - 債権ツールで株式に交換できるもの; 一般的には優先株だが一般株の場合もある
- Common Stock - 株式資本のことでファウンダーと従業員に発行される。権利、特典、優先権が最も少ない、もしくは無い
- Dilution - 新しく株を発行することで下がる株主が保持する株の割合
- Discount - Pre-money valuationからの割引比率。SAFEもしくは債権保持者に提供するeffectively lower price
- Equity Round - 投資家が会社の株を買うファイナンシャルラウンド
- Fully Diluted Shares - 会社における全ての発行済み株式数のこと。発行済のワラントや、ストックオプション等、他の交換可能な証券も含む
- IPO - Initial Public Offering - 会社が上場する際にはじめて株を売り始めること
- Lead Investor - 一般的には、ラウンドの中で最初で且つ最大の額を投資する投資家のこと
- Liquidation Preference - exitなどの際に優先株を持った株主が、一般株主よりも優先してお金を得ることを法律で認めたもの
- Maturity Date - 手形に記載された返済期限(転換社債などのように自動的に株に交換されるものもある)
- Equity Incentive Plan / Option Pool - 従業員やコンサルタントに付与するために割り当てられた株のこと
- Preferred Stock - 一般株と比較して特別な権利、特典、優先がある株のこと。自動的に一般株に交換される場合(IPOなど)や、優先株主オプション(買収など)などがある
- Pre-money Valuation - 投資家のお金が入る前の会社の価値。
- Pro-rata rights (aka pre-emptive rights) - 後に続くファイナンスラウンドにおける、オーナーシップの割合を維持する契約上の権利
- Protective Provisions - 会社から優先株ホルダーに与えられる排他的な投票権。例えば、アクイジションの際などに、これらの株主の投票は他の株主の投票とは異なる扱いを受ける
- Safe - Simple Agreement for Future Equity - Y Combinatorによって作られた転換社債に変わるもの
- TAM - Total Available Market. ピッチにおいて、あなたが売ろうとしているプロダクトがどれだけ売り上げられるのか?という概算になる
- Venture Capitalist - Limited Partnersファンドに投資を行う、会社に所属するプロの投資家
Sources
-
A Fundraising Survival Guide, Paul Graham
資金調達における生存および成功に関するテクニック集 -
How To Raise Money, Paul Graham
Detailed thoughts on fundraising. A must read.
資金調達に関する詳細な考え方。A must read -
The Equity Equation, Paul Graham
投資家からのオファーを受けれるか否かの決断の方法 -
The Future of Startup Funding, Paul Graham
どれだけスタートアップのファンディングは進化しているか -
How to Convince Investors, Paul Graham
あなたへの投資を投資家に納得させる方法 -
Investor Herd Dynamics, Paul Graham
投資家がアーリーステージの会社への投資をどのように考えているか -
“Venture Deals”, Feld and Mendelson
Essential elements of a venture deal (本) -
Raising Money for a Startup, Sal Khan
スタートアップの資金調達 from Sal Khan -
Venture Hacks: Debt or Equity, Babak Nivi
負債 vs 資本の議論 -
Venture Hacks: First Time, Babak Nivi
Advice for first time fundraisers.
初めて資金調達をする人へのアドバイス -
How Much Money To Raise, Fred Wilson
いくら調達するか?に関するアドバイス -
“Startup = Growth”, Paul Graham
スタートアップの説明 -
Venture Hacks / Babk Nivi: Should I Raise Debt or Equity
負債を増やすか or 資本を増やすか、の議論のベストアンサー -
Fred Wilson: Financing Options
負債と資本のもう一つの議論 -
Mark Suster on Convertible Debt
転換社債の問題に関する考察 -
Clerky Guide
Clerkyのドキュメントとガイド。スタート地点に最適 -
Announcing the Safe, Paul Graham
将来の株式のためのシンプルな同意。転換社債に変わるもの -
The Safe Primer, Carolynn Levy
安全にことを運ぶための様々なケースにおける沢山の詳細な情報 -
The Handshake Deal Protocol, Paul Graham
口頭でのコミットメントをトランザクションに確実に変えるための標準的なプロトコル