背景
弊社では農業IoTに取り組んでいるのですが、その中でラストワンマイルが問題になることが多いです。その解決策の一つとして、さくらのモノプラットフォームを使用してみたところ「小規模なシステムと相性が良いのではないか」ということがわかってきました。
現在一般的なIoTシステムでは、インターネット回線を圃場まで引いて、Wi-Fiでデバイスと接続するものが多く、少量のセンシングを行なうには少々大袈裟なものもあります。LTE回線を使用するものにしても、セキュリティの知識が必要であったり、システムが難解であったりと手が出しやすいとは言い難い状況です。
さくらのモノプラットフォームを使用すると、モノプラットフォームの中で、デバイスからクラウドへの送信。アプリケーションサーバーへのデータの取り込みまで面倒を見てもらえます。そのため少量のセンシングをしたい場合や、実験的にセンシングを行いたい場合には、手軽に利用できるさくらのモノプラットフォームを利用するのが良いと考えました。
そこにインターフェースとして、LINEを利用するのが良いと思います。なぜなら開発まで含めたユーザーフレンドリーなUXが提供されているLINEを使用することにより、ユーザー自らによる改善まで含めた新しい価値を提供できるはずだからです。
実際に開発するもの
農業用の自動潅水システムとpFセンサーを組み合わせたスマート栽培管理システム。
pFセンサーとは
土壌にどの程度の力で水が保持されているか示す指標である、マトリクスポテンシャルの指標を測定することができます。
素焼きのカップとパイプを接着して、中を水で満たして密閉したものです。素焼きカップには水は通すが空気を通さないという性質があるため、容器内の圧力(負圧)を圧力センサーで測定することでマトリクスポテンシャルを測定することができます。このマトリクスポテンシャルを水柱の高さで表し、常用対数をとったものをpFと言います。
マトリックスポテンシャルとは
スポンジのように、土壌中にはたくさんの隙間があります。スポンジが水を吸う力(毛管力)に相当する力がマトリックポテンシャルです。作物根はこの力に負けない力で土壌から水を吸収するため、マトリックポテンシャルを測定することで灌水のタイミングを知ることができます。
現状のpFセンサーの測定原理と問題点
現状市販されているpFセンサーにはアナログ(機械式)の圧力計が使用されていることが多く、デジタル化がやりづらいです。アナログメータの針を画像認識で読んでデジタルデータに変換する方法も考えられますが、システムが無駄に大きくなってしまいます。
それに対する私たちの解決法
圧力を電気信号に変化するデジタル圧力センサ―を用いることにより、pF値をデジタル値として取得することができます。デジタルデータとして取得することによりそのままデジタル通信にのせることができます。
デジタル通信にのせることで何が嬉しいのか
遠隔のモニタリングや遠隔の制御が可能になります。さらにいうと、弊社で作成している自動潅水システムと連携させることで、pFセンサーと連動した自動潅水制御が可能になります。最適なタイミングで灌水を行なうことにより、収量の増加、収穫のタイミングをずらすことが可能になると考えられます。収穫のタイミングをずらすことよって、収益の増加を狙うことなどが可能になります。
DXを意識したシステム
DXとはデジタルデータを作り出して集め、それを価値のあるものに変えて、新しいビジネスやモノづくりの仕組みを作り上げることです。ここで大事なことは行動の変革を促すことです。
今回の例では測定したpFセンサーの値(アナログ値)をデジタル値に変換して、モノプラットフォームの仕組みでクラウドに送信します。クラウド上でデータを分析して、必要があれば、LINEを使用して、ユーザーに行動を促します。
現在の開発状況
自動潅水システムの開発を行い、実証実験を行っています。現在順調に動作していますので、pFセンサーが完成した暁には、自動潅水システムと組み合わせることで農業の自動化への一歩を踏み出すことができるようになります。
さらに今回、pFセンサーを作成するために圧力センサーとマイコンを接続する回路を開発しました。
理論通りに動いているかどうか検証を行っています。
今後の展開
pFセンサーの動作検証を行い、LINE通知も含めてIoTシステムとして動かしてみます。pFセンサーは状況によっては水を追加する必要があります。水の追加をする必要があるタイミングでの通知、遠隔でのセンサーの校正までできるようにしたいと考えています。なお、現在動作している自動潅水システムと組み合わせることで、高付加価値な農業と農業の自動化を目指していきます。
今後の野望
最終的には様々なセンサーや市場情報のデータまで組み合わせたデータ駆動農業で農業DXを起こすことを目指します。
将来的にはワークショップを行うことによって、必要な人が必要な機能を自分たちで作ることができる状態にしていきたいと考えています。さらにユーザーが広がることによって、ユーザー自身による改善、改良を繰り返してもらうことによりDXの波を広げていきたいと考えています。