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サンダーガードLTEの開発  ~その2 調査編~

Last updated at Posted at 2024-03-13

この記事はIoT雷警報システム サンダーガードLTEの開発についての連続記事の2回目です。

背景

ゴルフを安全にプレイしたいという個人的な欲求から、雷警報システムの開発に着手しました。

着手までの流れはこちらの記事とスライドを参考にして下さい。

この中で提案しているシステムの構成と、雷の危険性は以下の通りです。

システム構成

センサで取得した雷のデータをLTEを利用してクラウドへ送信、データの分析を行い、雷による危険が迫ったときにはユーザーにLINEで通知するというようなシステムです。
image.png

落雷の危険性

落雷による人体の死傷事故については、国の内外に報告があります。落雷した時に人体内で発生したエネルギーが一定値を超えると死亡の危険があり、雷が直撃した際の死亡率は74%と非常に高いです。

文献調査の目的

上記のシステムを開発するために、私たちはIoT技術を利用しています。このシステムでは「AS3935」という市販されているセンサを使用しています。このセンサの利用例については多くは知られていません。実際に使ってみることで、センサの可能性とクラウドコンピューティングとの接続の可能性を探っています。このアプローチが適切であるか確認することを目的として文献調査に臨みました。

調査方法

  • 図書館にて、雷に関する書籍を調べました
  • google scholarで関連する論文を検索しました
  • 参考書籍の著者の関連研究を調べました
  • インターネットで著者、雷、関連情報について検索しました

調べた結果

文献調査を行い、判ったことを以下に示します。

雷形成のメカニズム

  1. 太陽により地面が暖められると、湿った空気が上昇します(上昇気流)。この暖かい空気が上空に行くと冷えて、水滴ができて雲になります
  2. 上空では空気が冷えて氷点下になります。上昇気流に含まれていた水分が氷の粒になります。氷の粒は上昇とともに大きくなり、重くなり下に落ちてきます
  3. 大きな氷の粒同士がぶつかり合うと、電気がたまります。小さな粒にはプラスの電気が、大きな粒にはマイナスの電気がたまります。雲の上の方にはプラス、下の方にはマイナスの電気がたまります。これを「雷雲」と呼びます。地面もこの電気に引っ張られて、プラスの電気がたまります
  4. 雲の中の電気がとても強くなると、空気がそれを止められなくなります。その時に放電し、雷が発生します。これが空の中で起こるとを「雷放電」といい、雲から地面に起こるとを「落雷」と言います
    image.png
    音波電機工業株式会社のwebページより

雷を検知するための具体的なアプローチ

雷を検知するための具体的なアプローチには、以下のものがあります。

  • 電波による方法
  • 光学的な方法
  • 宇宙空間からの観測

今回は電波による観測を行うセンサを使用しますので、電波による観測について説明します。

稲妻ができるときには大気中に電気が走り、電流の流れを囲むように磁界の輪が発生します。さらに磁界の輪に直角につながるように電界の輪が誘導されて、空気中を電界と磁界の輪でつながった波があらゆる方向に繋がっていきます。この電磁波を捕まえて分析することで、雷のことを細かく知ることができます。

現存する観測システムの例

気象庁のホームページによると、雷による発生する電波を受信し、その位置、発生時刻等の情報を作成する雷監視システムがあり、LIDEN(LIghtning DEtection Network system)と呼んでいます。

LIDENは雷に伴って発生する電磁波を受信する検知局が全国30か所に設置されており、中央処理局で検知局からのデータを集めて雷の発生位置等を決定します。
検知局では雷から放射された電磁波をアンテナで受信して、中央処理局にその情報を転送しています。
image.png
気象庁のwebページより

ライトニングジャンプについて

「雷嵐の電波観測と気象観測の融合が拓く、極端気象、雷災害の監視と短期予測」という科研費の研究報告書によると、ダウンバースト、竜巻の半数以上で、発生前にライトニングジャンプという現象が確認できている。ライトニングジャンプとは、雷活動が急激に活発になる現象のことです。

また、雷嵐に伴う集中豪雨とトータル雷活動の間には高い相関関係があることが分かりました。
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雷嵐の電波観測と気象観測の融合が拓く、極端気象、雷災害の監視と短期予測 図3:雷頻度(TL)と雨量(PV)との関係

考察

現在も雷の検知ネットワークは構成されていますが数は多くありません。、IoTの技術の使用により密にネットワークを構築することにより、特定の地域で落雷を検出することで、極端気象災害の予想に役立てることができると考えられます。

センサで雷の検出に用いられている方法は、電波による雷の検知で学術的な裏付けもあり、妥当であると考えられます。

以上のことより、現在取っているアプローチは妥当であると考えることができます。

感想

今回の文献調査で専門書を多数参照したのですが、電荷、電界、雨粒の帯電等、物理学の基礎知識などが必要なことが分かりました。学生時代に物理の授業はあったのですが、適当にやり過ごしていたので基礎学力の足りなさを痛感しました。
こちらの本で、物理の基礎から復習していく予定にしています。

参考文献、参考情報

雷と雷雲の科学 -雷から身を守るにはー 北川信一郎著 森北出版株式会社
カミナリはここに落ちる 岡野大祐著 オーム社
雷嵐の電波観測と気象観測の融合が拓く、極端事象、雷災害の監視と短期予測の研究
音羽電機工業株式会社 雷の知識
気象庁 雷監視システム

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