出典
http://www.clausewitz.com/readings/mcdp1.pdf
ここのCommander's intent の章を翻訳します
なぜ翻訳したし
アメリカ海兵隊はベトナム戦争後の改革が求められた時期に、上位者が下位者に大きな裁量を許すことで、より「素早い」戦争をできるように人事改革をしました。
このあたりは野中先生の著書、アメリカ海兵隊に詳しいです。
これを翻訳することで、上位者が下位者に大きな裁量を許す、アジャイルっぽいマネジメントを考えるときに役に立てばいいなと思ったからです
翻訳者の感想(小並感)
アジャイルサムライで超かんたんに触れられていた司令官の意図の細かい部分
上級者はすごいふわっとしたことを言って逃げることを許さず、「完全に明確なレベルで目的をはっきりさせねばならない」とする一方で、「下級者の行動を制約してはならない」としている。
本文
Commander's intent
「司令官の意図」を通して我々は大規模な状況における協調的な主導を達成した。
司令官の意図とは下級者が行動を取り巻く周囲のコンテクストを彼らが理解することを助けるように設計された仕組みである。
意図を明確に伝える目的は、不測の事態が発生し、当初の計画から状況が外れ始めた時に、下級者に(より上位の司令官の意図と矛盾のない方針で)自己判断や決断をすることを可能にすることにある。
どんなMissionにも二つの部分がある。
完遂されるべきタスクと、そのタスクの背後にある目的や意図だ。
司令官の意図とは、いかなるmissionにおいてもその一部として存在する。
司令官の意図(intent)は説明する行動の目的を説明する一方で、タスクはなされるべき行動について説明する、
タスクは何がなされるべきかについて説明する。ときには、いつ、どこで、という部分も含まれる。
一方で意図は「なぜ」を説明する。
このふたつのうち、意図の方が優先される。
状況は変化すればタスクは前提が変わって意味がなくなる。一方で、意図は変わらずありつづけ、我々が何をなすべきかを示し続ける。
司令官の意図を理解することは我々に司令官が望むことを、隷下の部隊が協調して主導的に行動することを可能にする。
司令官が(常にではないが、軍隊ではこの仕事は大抵副司令がやる)unitに作戦目標(mission)を割り当てたときに部隊が達成すべき司令官の意図は確立する
司令官は普通は作戦目標(mission)を割り当てられた下級者に、作戦説明の一部として意図を説明する。
もし、下級者に発令された作戦の意図が不明瞭であるなら、それをたずねはっきりさせねばならない。
発令された作戦目標(mission)にもとづき、司令官は作戦行動(operation)の指針を立案する。指針とは部隊がどのようにして作戦を完遂するかを説明する。そして司令官はそれを下級者達に命令する。
それぞれの下級者への作戦説明は下級者一人ごとに単一の意図を含む
下級者それぞれに与えられた意図は、司令官の意図を完成することに貢献する。また司令官の意図は、さらに上級者から与えられた意図に基づいたものである。
意図のTop-Downフローは、我々の行動に一貫性と継続性を与える。またこのフローは自己判断による適切なBottom-Upの行動に必須のコンテクストを確立する。
与えられたタスクの前に置く「〜するために」というフレーズは、簡単に狙いを捉えることを可能にする
敵(enemy)に対する集中を維持することで、我々は敵に関する狙いを表現する
例えば、"敵が河を渡って撤退することを妨げるために、橋を押さえろ"みたいな感じで。
「〜するために」文に加えて拡大した指導(guidance)を与えることもしばしば必要である
どんな出来事であっても、司令官の狙いを示す一文は簡潔かつ有無を言わせぬもの(compelling)でなくてはならない。簡潔であればあるほど良い。
上級者の意図を下級者は常に意識するべきである、なぜならそれはすべての決定を影響を与えるからである。
複雑で難解な司令官の意図は目的の完遂を失敗させるだろう。
明快な表現と意図の理解は、各員の努力が一方向にまとまって用いられるために必要不可欠である。
理解することの負荷は、上級者と下級者に同様にふりかかる。
上級者は完全に明確なレベルで目的をはっきりさせねばならない。しかしそれは(下級者の)自己判断を過度に縛るものであってはならない。
司令官が期待するものを、下級者は明快に理解せねばならない。
さらに押し進めるならば、下級者は最低でも二段階上のレベルの上級者の意図を理解せねばならない。
allow: 可能にする
initiative: 自己判断