リーンスタートアップでもなんでもいいんだけど、ああいう本の最初の方に「新サービスが同分野の既存サービスを陳腐化するにはxx倍の優位性が必要」ってかいてある。
何倍かについては諸説あって3倍だったり5倍だったり10倍だったりする。
とにかく「たくさん」だ。1、2、たくさん。
要するに「すでにチャンピオンがいるゲームで、チャレンジャーがチャンピオンと同じリング同じルール同じゲームで真正面から殴り合ったら勝負にならない」って言っている。
チャンピオンがすでにいる場合、同じルールで殴り合ったらだめ、は正義なんだろう。
10年くらい前のITバブルの時に「頭抜けたトップが出たら後から追いつくことはできない。例外はGoogleだけ」って言われていた。
最近だとCommもLINEに追いつけなかったし。
「ITの世界ではWinner take All. 1位が利益を独占し、2位はトントン、3位以下は赤字垂れ流し」という話だから「2位じゃだめなんですか」は通じないし。
リーンスタートアップとかだと、「同じゲームで戦っても勝てないから新しいリングを作ってそこで新しいゲームをやれ」って言っている。新しいゲームの作り方をくどくどと書いているわけだけど詳しくはここでは割愛する。
最近雨後の筍みたいにサービスが生まれては消えている。多産多死は宿命、仕方ない。
彼らは新しいゲームを作りたい。
新しいゲーム。
うまくいったベンチャーとそれ以外を見てみると、サービスは「今までと全く違うxxを作ったんです」ってだいたい主張する。
成功したサービスのイノベーターはだいたいインタビューでろくろを回しながらそう言っている。
「今までと全く違うxx」
しかしサービスの登場当初はユーザーはそう言った受け取り方をしない。絶対に。
ニコニコ動画は当初「youtubeもどき」だと思われていた。youtubeにコメントを出せるだけでしょ、って感じ。
twitterは当初ブログもどきだと思われていた。新聞なんか最近までミニブログサービスだと言っていたし。
要するに既存サービスと比較して「xxもどき」「埼玉で作ったxx」という受け取り方をする。ローンチ当初は機能がそろっていないから仕方がない。
ここで爆死したサービスと成功したサービスをみると、違いがある
「最初から破壊的な新ルールを提案したサービスは爆死する」
「成功したサービスは最初はルール内で新アクションを提案している」
例を出す。
たとえばケミカル系のベンチャーが「プロスポーツでドーピングを解禁しましょう」と言っても絶対に受け入れられない。ポジショントークが見え見えだし、それを受け入れた時のメリットとデメリットが釣り合わない。
ある独立野球リーグがいう。
「野球で無走者なら3塁から1塁方向に回ってもいいことにしよう。1塁側にボールが転がったときに内野安打が出やすくなる」
これも論外だ。内野安打を増やすというメリットは正直利益が薄いし、受け入れた時の混乱を考えると自分がOKしても他人が付き合ってくれるとは思えない。
既存のルールやセオリーに逆らったものを提案してもそれは無理筋。
弱者が世界の片隅で「僕の考えた最強のルール」を言ったところで世界も既存ルールも変えられない。
ではなにならいい?
既存のルールやセオリーに逆らわない、新しい行動と習慣の提案。
たとえば「運動の後にプロテインを飲もう」なら通る。プロテインの摂取は規制されていないから。サラダチキンを食べるのと大して変わらない。
「部活動の後にプロテインを飲むと筋肉がつきやすくなります、監督コーチの方、ぜひ!部員1人あたり一ヶ月3千円!」
これだと通りやすい。低コストで効果はわかりやすい。
ユーザーがつく。
「部活後にシェイカーにタンパク質の粉末と牛乳を注いでかき混ぜた後飲み込む行為」が「プロテインを飲む」と名前がつく。
ここでユーザーを集めた後に次の行動を起こせる。
最初のユーザーをつくまでの「埼玉で作ったxx」状態で既存のセオリーやルールに反することを提案してもユーザーは受け入れない。
既存ルールの範囲内で新しいアクションを提案し、そこでユーザーをつけて、「埼玉で作ったxx」ではなく自分のサービス名が新しいジャンルを確立した後でないとルールは提案できない。
最近ならライザップか。
そもそもなぜ新しいルールを提案したがる?
新しいルールは差別化の容易さとマネタイズのしやすさがある。
早い段階でどかんと稼ぎたい、パッと見いい感じの企画書を書きたい、そう思っている人間にとってはあたらしいルールを1行書き加えることは耐え難い誘惑なのだろう。
しかし、私はサービスを当てるにはもう少しステップを踏みたい。階段を何段も同時に飛ばすと危ない。
当たるサービスを作るには最初はルール内であるがゆえに金を稼ぎづらい、新しい行動の提案から始める。
もし受ければユーザーがつく。
ユーザーは「xxもどき」と呼ばず、サービス名で呼ぶようになる。動詞になった「google」や「twitter」のように。
もうこれでサービスは「xx」から新しいゲームを「独立」させられたことになる。
そこでようやくマネタイズに向けた新ルールの提案をする。
これがこの記事の主旨。
習慣の提案、次に独立。そして新ルール。
マネタイズのための新ルール提唱は人を集めるフェーズのあとのフェーズで行う行為であるように私は思う。
これを焦って最初にやっても人はついてこない。