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Code for Japan の柴田です。
この記事は、Civic Tech (シビックテック)をテーマにした、「Civic Tech Advent Calendar」企画の2日目のための原稿です。他の記事は
http://qiita.com/advent-calendar/2013/civictech
の一覧から見れるようになっており、日ごとに記事が増えていく予定です。なお予定していたDeclaration of Local Open Government Principles(地方都市におけるオープンガバメント基本原則の宣言)の翻訳については既に三浦 雅孝さんが行われておりました。素晴らしい翻訳ありがとうございました。
https://www.facebook.com/download/651797584872565/local-open-government-principlestxt_ja_JP.txt

# Beyond Transparency 書籍紹介#
そこで、急遽予定を変更いたしましてCode for Americaから発刊されたBeyond Transparency(透明性を超えて)のご紹介に変えさせていただきます。危なく車輪を二度発明するところだった( ̄Д ̄;;

2013年10月16日、ちょうどCode for America Summitにあわせて発刊された本書はCode for Americaが過去数年にわたって実践してきたオープンデータによる運動を現場の人からの22編の事例レポートというかたちでまとめ上げたものです。本書自体もオープンデータであり、画面上で直接読んだり、PDFデータについては誰でもサイトから無料でダウンロードが可能となっています。
http://beyondtransparency.org/
ペーパーバック版については現時点でamazon.comからだと送料別で約12ドル、amazon.co.jpからだと1548円で購入可能です。
内容はロンドン市長ボリス・ジョンソンによれば「オープンデータが成し遂げる市民生活の変革を望む人にとっては必読の書!」とのこと。”透明性を超えて:オープンデータと市民によるイノベーションの未来”というタイトルがつけられていますが、本書のもっとも大きな価値はその未来志向にあるわけではなく、過去数年にわたって米国の各都市でオープンデータの開放を試みている人たちが何を学んできたかというところにあります。成功ポイントだけではなく失敗したことや困難についても正直に書かれているのです。また、市民がデータにアクセスできるというレベルから、実際に市民がそのデータを使えるようになるまでにはさらに困難が待ち受けていることも示しています。実際に物事を行うときはコンセプトややり方を知るだけではなく、どのような失敗があるのかという事を事前に知っておくことが大きな助けになります。その意味で本書は日本でオープンデータを進める人にとって(海外との事情の違いはあるにせよ)とても価値があるものだと言えるでしょう。

本書は大きく五つのパートに分かれています。第一部ではオープンデータを使った市民改革の具体例がボストン、シカゴの例から二つ、海外の大都市代表としてロンドン、米国の小さな町代表としてアシュビルの事例が紹介されます。これまでまったくオープンデータ運動に関わったことがない人にとって実感を得るためには具体的な話がとても参考になります。第二部ではそもそもオープンデータをどうやって準備するのか、オープンデータの標準形式といったことを理解したい方への紹介です。さぁ、オープンデータをはじめよう、で、最初に何をするんだったけ?という方にはおすすめ。Googleとの協業で乗り換え案内用データ標準を策定するなんて話が出てきます。第三部ではオープンデータがそろった後に、それをどう活用していけば良いのかというテーマになります。12章のオープンデータに最適なUser Experienceや13章の経済的価値の創出なんかに目が向く人も多いことでしょう。第四部ではオープンデータを使った行政での意思決定にフォーカスして話が進みます。オープンデータはあれば便利なものというわけではなく、これからの行政を運営していくには内部的にもなくてはならないものになっていることが理解できます。データ駆動型都市なんて言葉を聞くとエンジニアとしてはしびれますね。第五部ではこれまでのカテゴリーにはあてはまらないようなオープンデータを進める注意点や障害、将来の概念が語られます。最終章でティムオライリーが語るオープンデータとアルゴリズム規制なんかは実現までには時間がかかりそうですけど、実現できればやはり画期的なことです。
一冊をとおしてオープンデータ運動のすべてがわかるといって過言ではないと思います。

#Beyond Transparency 日本語化プロジェクト#
さて、Beyond Transparencyがすごいのはわかった。だけど、中身は英語じゃ読めないじゃんとお嘆きの皆様!
このようなオープンデータ運動にたずさわる人、必携といっても良い本が日本語になってないのはよろしくないということで、すでにCode for Japanでは日本語化プロジェクトが開始されました。
https://www.facebook.com/groups/beyondtransparency/
興味がある方は是非、ご参加ください。お待ちしております。

#本書目次#

はじめに 元シカゴCDO、本書編集者 ブレット・ゴールドスタイン

第一部 開かれる行政データ
1.ボストン公立校でのオープンデータとオープン対話 ジョエル・マホニー
2.シカゴのオープンデータ ブレット・ゴールドスタイン
3.スマートシカゴを作る ダニエル・オニール
4.ロンドンデータストアでの学び エマー・コールマン
5.アシュビルでのオープンデータ進展:実践、ポリシー、参加 ジョナサン・フェルドマン

第二部 オープンデータを作る
6.起業家から市民起業家へ リャン・アルフレッド マイク・アルフレッド
7.情報公開法ハック:情報公開請求を使った行政改革 ジェフリー・D・ルベンスタイン
8.ジャーナリストがオープンデータに注目する エリオット・ラモス
9.オークランド:開かれた街をめざして スティーブ・スパイカー
10.オープンデータ標準のさきがけとして:GTFS物語 ビビアナ・マクヒュー

第三部 オープンデータを理解する
11.前例を超え新しいやり方を作る:オープンデータの文化はいかに市民生活を変えるか? エリック・ゴードン ジェシカ・ボールドウィンフィリッピ
12.すばらしい関係の始まり:革新的な市民体験におけるデータとデザイン シド・ハレル
13.オープンデータをつうじての経済価値の創出 マイケル・チューイ ダイアナ・ファレル スティーブ・ヴァンクイケン
14.地元目線と地元のデータ アリサ・ブラック レイチェル・バーンスタイン

第四部 データに基づく意思決定
15.オープンデータを超えて:データ駆動都市 マイケル・フラワー(CAO ニューヨーク)
16.なぜデータが行政での意思決定に使われなければならないのか ベス・ブラウワー(メリーランド)
17.透明性を超えて:ルイビルにおける継続的改善に向けたデータの戦術的利用 テレサ・レノーウェバー ベス・ニブロック
18.業績情報の評価基準 ケン・ウルフ ジョン・フライ

第五部 将来をみすえて
19.公共財としてのコミュニティデータ グレッグ・ブルーム(ワシントン)
20.より大きな全体像:オープンガヴァメントをすすめるための教訓 ジョン・ブラッケン(ナイト財団)
21.行政サービス提供の新しい考え方 マーク・ヘッド(CIO フィラデルフィア)
22.オープンデータとアルゴリズム規制 ティム・オライリー
おわりに:これからどうする? アビ・ネマニ
付録1 参考リンク、参考文献

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