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データサイエンティストの先行きは多分そんなに明るくないよという話

Last updated at Posted at 2022-12-03

データサイエンティスト市場の需給バランスは悪い方に崩れていく

第3次AIブームの隆盛と連動してデータサイエンスがバズワード化してはや幾年月、巷では「日本国内で今後AIとかデータサイエンティストが○万人不足するのでデータサイエンティストがマジアツい」とか言われているけど、
国内に限ってみればそんなにバラ色の市場環境でもないよという話。

あくまでデータ業界で働く筆者の浅い私見なので、一つの可能性だと思ってほーんそれで?位のスタンスで読んでくれればと思います。
(海外市場は詳しくないので触れません)

あんただれ

  • データ分析コンサルティング企業に勤務
  • 3年間ほどデータ分析関連業務に従事

要点

  • 今後は英才教育を受けた優秀なデータサイエンティストが十分な人数継続的に供給され続ける
  • 産業規模は変わらないので国内需要が今より大幅に拡大することはない
  • そもそも統計をバシバシ使うデータサイエンティストはSIのような人海戦術が必要な業務ではない
  • 需要に対して供給が過大になり国内市場のロースキル人材は職にあぶれるor低賃金での労働を余儀なくされる
  • 混同されがちな分析コンサルタント・アーキテクトの需要は一定数あると見られるが、他者と差別化できる能力のアップデートは絶えず行う必要はある

供給の現状と今後

2017年滋賀大学が全国で初めてデータサイエンス学部を創設、以降全国の大学でデータサイエンス学部ブームが起こり多くの関連学部が創設されている。
また、文科省が令和3年度用に認定した67の大学において、データサイエンスプログラムが組まれ、2025年には文理問わず50万人の高専・大学の全学生がデータサイエンスを履修する目標が立てられている。
専用学部の増加および全学生のデータサイエンス必修化により今後より多くの学生がデータサイエンス業界を志望することが予想される。

実際データ分析関連プロジェクトに携わる労働者の人口は増加の一途を辿っている。
分析コンサルタント、データサイエンティスト、分析アーキテクト、プロジェクトマネージャの合計人口は、2019年度は6万3400人を見込んでおり、2022年度には11万6000人に達すると予測している(矢野経済研究所)

需要の現状と今後

経産省によると、AI需要が平均程度の伸びを示す場合(年率16.1%)2030年には12.4万人のAI人材が不足するとしている

なお、経産省はAI人材の定義を以下のように記載している。
「AIを実現する数理モデルについての研究者(ただし、学術・研究機関を除く)やAI 機能を搭載したソフトウェアやシステムの開発者、AIを活用した製品・サービスの企画・販売者としている。

データサイエンティストに希望を見出している人々はこうした好意的な情報を根拠としていると推測できる。

ここから私見

改めて立場を明確にしておく

私はデータサイエンティストは今後より厳しい競争にさらされると考えている。
まず、ここではデータサイエンティストの定義を「統計学やAIを駆使して企業の問題解決に役立つ示唆の提案を行う人材」とする。外資系企業で高給取りとされるData Analytics Specialistだとかの職種は多くがこれに当たる。
そのため、データアナリストやデータエンジニア(データアーキテクトと呼ばれたりもする認識)とは切り分けて考える。(問題の根幹はデータサイエンティストという定義が日本においては人によって未だに定まっていないことにある気はするが。)

データサイエンスという職種の性質上、システム開発のような人海戦術は必要としない。

統計学を正しく扱うことができ、それをコードに落とし込んで分析まで行うできる技術者が1人いれば一応アウトプットは出てくる。1人が企業の全領域のデータを担当するのは現実的には難しいが、とはいえ領域ごとに数人ずつのデータサイエンティストがいれば良いだろう。

業界構造について

データサイエンティストを抱える企業は大別すると以下2つである。
企業群a: 自社製品やサービスを抱える企業(例:ユニクロ、楽天)
企業群b: aに対してコンサルティングをする企業(例:アクセンチュア、ALBERT)

データサイエンスは活用するビジネスが存在しなければ需要がない

散々叫ばれている通り日本の経済成長は停滞しており、データサイエンティスト需要が高いaに当たる大企業の顔ぶれは将来10年単位で大きく変化することは考えにくい。
そのため巨大企業であっても優秀なデータサイエンティストを数人雇うことができれば問題なく、業界をこれから目指そうという人が思うほど国内市場での需要は大きくない
一方で日本のIT業界の構造上、企業郡aのIT人材人口よりbの人口の方が大きい。解雇規制の強い日本のおいて、企業群aは必要性が生じた際に外注することで、人材を自社で過剰に抱え人件費が利益を圧迫する事態を避けることができるため企業群bの需要は依然として大きい。

データサイエンスに従事する人材も企業群bの方が相対的に多いのは事実である。しかし、企業群bにとっての顧客である企業群aの需要が変化しなければ企業群bで必要となるデータサイエンティストの数に大きな変化はない。また、データサイエンティスト自体の必要数は既に述べた通り多くないため、企業群bでデータサイエンティスト職に付く場合、企業やポジションによっては単なる集計屋など想定していた業務と異なる業務に付くこととなる恐れもある。データサイエンティストと謳って求人を出しているものの、求人企業側はアナリスト的な役割を想定している場合もあり採用市場は混沌としている。

需要の問題でデータサイエンティストの供給過多が深刻になるが、他のデータ関連職種も今後供給が増え続けることは明らかであるため、競争は激化すると考えられる。
先日OpenAIからリリースされたChatGPTのような衝撃的なサービスが今後も登場することで依頼されたデータを抽出するような集計屋に近い仕事に甘んじているアナリスト職などは減少・消滅する可能性も否定できない。

具体的な話をすると企業群bが受ける案件の傾向として、2020年頃は物珍しさからか、そこそこのデータ分析やAI活用提案のPOC需要があったが、2022年現在は単純な分析依頼の数自体が減少し、システム開発に近い分析基盤構築の需要の方が大きい。
私見だがAIバブルが落ち着いた結果、長期に渡ってデータ分析を事業改善に導入する流れを築いている企業と期待していたデータ活用やAI活用が行えなかったため、戦略を練り直している企業に分かれている印象。

実際の話、求人を一通り見たり業界人と会話をする限り、現状国内でデータサイエンティストと言われる職業の多くがそもそも統計やAIを使わなかったり(※1)、パワポ職人のアナリストやコンサルタントであったりエンジニアに近い働きをしている印象がある。統計学・AI・その他関連IT技術をマスターして、日々アップデートされる技術情報を追い続けてビジネスで活用できる人材などそう多くはないのだから当然と言えば当然ではある。

改めてまとめ

  • 今後データ関連人材はデータサイエンティストを筆頭に供給過多になると推測される。経産省がアナウンスした人材予測の内容ほど楽観はできない。
  • データを扱う仕事なら何でもいいや位の認識でデータ業界に入ると巷で言われるほど(○千万~)の待遇はまず得られないし、今後待遇が改善することはない
  • データサイエンティストとして高給を得たいなら将来に渡ってあらゆる分野をいっぱい勉強しないと難しいゾ。頑張ろう

※1: 提案を受ける側もある程度の統計学やディープラーニングの基礎の素養が必要とされるという問題も包含している

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