ラーメンハゲという名言製造機
みなさんは、「ラーメンハゲ」のことをご存知でしょうか?
「ラーメンハゲ」は、『ビッグコミックスペリオール』で現在連載中の『らーめん再遊記』という料理漫画の主人公です。
本名は芹沢達也で、もともと、前シリーズの『ラーメン発見伝』では主人公の敵役だったのですが、そのあまりに濃いキャラクター性が「ラーメンハゲ」としてネット民に愛され、ついに最新作では主役まで上り詰めています。
このラーメンハゲが登場する一連のシリーズは、グルメ漫画というよりはラーメンという飲食ビジネス自体を描いています。さらに言えば、この漫画ではラーメンというものを、「自らの魂をこめたモノづくりと、顧客に価値を届けるビジネスという両面の性格を持ったもの」として捉えており、そこに登場人物たちがどう折り合いをつけていくかが物語のテーマとなっています。
その困難にもっとも真摯に立ち向かった男が芹沢達也ことラーメンハゲで、その戦いから培った哲学から、彼は物語のなかで数々の名言を放ちます。とくに、ITのサービスをつくっている私のような人間にとって、このラーメンハゲの本質をついたは発言はいずれもめちゃくちゃ心に刺さり、自分がビジネスやプロダクトづくりをしていくうえでも肝に銘じておきたいと感じたものが数多くあります。
したがって、今回はエンジニア/デザイナー/PdMなどプロダクトづくりに関わるすべての人に刺さる芹沢達也ことラーメンハゲの金言の数々を紹介していきたいと思います。
いいものなら売れるというナイーブな考え方は捨てろ
『ラーメン才遊記』9巻、第88話「濃口ラーメン・解!!」より
ラーメンハゲの経営するラーメン店が、他店にメニューをパクられたうえに安い価格で提供されたことで、顧客が奪われはじめ窮地に立たされます。そのときに、「味はうちのほうが上だから勝てる」と言う社員に対して、その危機感のなさを指摘する発言です。
この発言の前に「あらゆる商品の価値は、品質、サービス、コストパフォマンス、ブランド・・・といった多様な要素の総和で決まる。」という補足があり、まさしくソフトウェアの顧客の購買理由と同様です。単に自分たちが便利と思う機能をつくるのではなく、自分たちのライバルと比較したうえでの強みを正確に捉え、顧客にとってその強みをより享受できるような機能を開発していく必要があります。
お客様は神様などではありません
『ラーメン才遊記』10巻、第82話「ダメ店主更生プラン」より
クレーマー気質の客ばかりが常連になって困っているラーメン店の店主に対して、ラーメンハゲが一発で解決方法を示した発言です。
また、このあと彼がアドバイスしたことは「店の価値観を貫かない限り、顧客を選ぶことはできない」というものです。プロダクトづくりにおいても、プロダクトで提供する価値観を明確にしておくことがもっとも大事で、それがぶれてしまうとプロダクトとユーザーの関係性が対等にならず、ただただ顧客のクレームに応え続ける開発をつづけることになります。
情報を食ってるんだ!
「ラーメンハゲといったこれ」というくらい有名な発言です。
純粋な味のみのクオリティアップを追求するラーメンマニアの主人公に対し、ラーメンビジネスのプロとしてこうフィードバックしました。ラーメン店に行くとメニューの案内に「○○産の最高級な素材を使用した〜」的なうんちくが書いてありますが、ほとんどの客は味についてわからなくても、そのうんちくを見ることで「おいしいラーメンだ」と錯覚して満足するという話です。
プロダクトづくりにおいても、便利な機能をつくること以上に、「便利だ」とユーザーに錯覚させることが非常に大事です。便利さを感じやすくするUIUXの提供はもちろん、例えば「こう便利になりました」といったリリースノートも、実はユーザーの満足度を高めるうえで大事だったりします。
ラーメン(プロダクト)を提供する際には、ラーメン(機能)をつくって食べてもらう(使ってもらう)だけでなく、ユーザーとラーメン(プロダクト)を通じてコミュニケーションするという視点で設計することがとても大事です。
おわりに
他にもラーメンハゲから学べることは数多くあるので、ぜひ『ラーメン発見伝』全26巻、『ラーメン才遊記』全11巻、『らーめん再遊記』4巻(2021年末時点)を読んでください!
とくに『ラーメン才遊記』の最終話では、ラーメンハゲが「自らの魂をこめたモノづくりと、顧客に価値を届けるビジネスという両面の性格を持ったもの」であるラーメンとは何かに1つの解を示していて、その内容はプロダクトづくりに関わってる人は涙を禁じえないものになっています。