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ギークの精神と対人コミュニケーションとトレードオフスライダー

Last updated at Posted at 2014-06-22

リーダー論に対する違和感

最近、開発のプロジェクトマネージメントをしている。その仕事を通して、リーダー論や開発手法の書物を読むことが多くなった。

特に、リーダー論を読むことが多くなった。しかし、リーダー論に関する本を読んでいると、とても違和感を感じることが多かった。その違和感の正体をぼんやり考えていたのだが、アジャイル開発のインセプションデッキに関する話(アジャイルサムライという本に出てくる)で、トレードオフスライダーについて知ったところ、違和感の正体に思い至ったので書いておく。

トレードオフスライダーとは

アジャイル開発の本(アジャイルサムライ)に、トレードオフスライダーというものが紹介されている。図示すると、次のようなものだ。

tos2.png

プロジェクトの重要項目に、優先順位をつけて、どれを犠牲にして、どれを守るか図示したものだ。例えば、ソフトウェアプロジェクトの四大要素(予算、時間、品質、スコープ)の内、どれを優先するかを、maxからminの間で、調整して図示するものになっている。いわば、プロジェクトにおいて、何を守り、何を捨てるかの見える化である。この仕組では、すべての項目をmaxにすることは許されない(それだと意味が無い)。何かが得たければ何かを捨てるしか無い。

このトレードオフスライダーでは、予算と品質を守るために、時間とスコープを犠牲にしている。この表によって、予算を守るために、時間を伸ばしたり、当初入れるべき機能を削ると言った判断を行えるようになる。

人間にだってトレードオフスライダーはある。

この考え方は人間や人生にだって応用できる。お金の項目の優先度を上げる人もいれば、余暇の項目の優先度を上げる人もいる。普通の人はスーパーマンではないだから、何かを得ようと思えば何かを捨てなければならない。

ギークのトレードオフスライダー

私は長いこと、プログラマーをしてきたし、オープンソースとかを横目で見てきたら、ギーク(プログラミングやシステム開発がものすごく得意な人)の知り合いが何人かいる。彼らを観察した結果を、トレードオフスライダーにまとめたら次のようになる。

TOS.png

見てわかるようにプログラミングスキルに高い優先度を割り振る一方、対人スキルはあまり優先されない。私はドワンゴでプログラマーとして働いた経験があるが、エンジニアとして高いプログラミングを持つが、対人スキルが不得手な人を何人も見てきた。彼らは、プログラミングが本当に好きで、平日会社で仕事のプログラミングを書いたあと、休日も趣味のプログラミング開発に没頭する。プログラミングを愛していると言って良い。一方、対人スキルが高いかいえばそんなことは全然なく、よく分からないことに拘ったり、へそを曲げたりする(一応補足しておくが、そんなに変な人だけでなく一応まともな人も居た)。

ドワンゴのエンジニアはインターネット上で有名人も多いので、何人か思い浮かべればなんとなく納得できるのではないだろうか?

優れたエンジニアスキルやプログラミングスキルに向上に熱心なあまり、対人スキルが上手く行かないということはなんとなく専門家と言われる人たちを思い浮かべれば納得行くかもしれない。

しかし、彼らにも転機が訪れる。いわゆるリーダー問題である。

リーダーにおけるトレードオフスライダー

リーダーの資質におけるトレードーオフスライダーはどのようになるだろうか?私はリーダー論の本を読む限り、次のようになる。

leader.png

何はなくとも対人スキルなのだ。少なくとも対人スキルを軽視せよと書いたリーダー論の本は無い。しかも、腹立たしいことに、リーダー論の著者たちは、高度な対人スキルを事も無げに実行する。

今まで、対人スキルを磨かずに、プログラミングスキルを磨いてきたギークにはこれは辛い。真似しようにもどこから真似したら良いかも分からない。

トレードオフを変更するとき

もともと、 対人スキルを捨てる ことで、 高いプログラミングスキル を身につけて来た。それを今日から、対人スキルも身につけましょうというメッセージは、それは今までプログラミングスキルを優先し、その代わり対人スキルを捨ててきた人生の優先度そのものの変更を意味する。その喪失感をどのように埋め合わせるのか、そのような気持ちにフォーカスしたリーダー論の本は無いように思う(あったら教えてほしい)。

ギークの為のリーダー論があれば良いのに。

私が、リーダー論の本を読んで違和感を感じるのは、彼らは対人スキルを優先させることがあたりまえだと思っている所だ。日本の場合、現場で優秀であったプレイヤーが、管理職になることが多い。しかし、彼らは現場では、実際は対人スキルより、プログラミングスキルや設計スキルといった対人スキル以外のスキルに注力している。そのような専門家向けのリーダー論の本というものを見つけることができなかった。現場においてプログラミングや設計と言ったモノに情熱を傾けた人ほど、それらから離れてしまうことに心理的な抵抗感や喪失感を感じる。そのような感情をケアする本があれば良いのに思った。

ちなみに、プログラミングスキルも対人スキルも高い人達は?

ちなみに、プログラミングスキルも高くて、対人スキルも高いナイスガイが世の中にいないかというと居るところには居る。Googleで会った人とかDeNAで会った人とかの中には、プログラミングも出来るし、ナイスガイな人が何人か居た。でも、彼らは、あまりに希少なので、ついでにお給料も、高めだった。トレードオフスライダーで図示するとこんな感じ。

tarented.png

まあ、そんな優秀な人間がおいそれと居るわけもなく、大抵の場合は、極端なトレードオフスライダーをリーダーとして騙し騙し使っていくしか無いわけである。

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