Open Practice Libraryについて
Practice1:狩野モデル
Open Practice Libraryは、Red HatのサービスであるOpen Innovation Labsの顧客との関わりの中で誕生したプラクティスを、文書化して集めたものです。
デジタルプロダクトを迅速に開発するための反復的プロセスモデル:Mobius Loopに基づき、各フェーズで活用できるプラクティスを検索できます。アジャイルの取り組みで活用する選択肢に活用できるため、特に日本では馴染みのないプラクティスを日本語で紹介しようと思います。
第一回目として、狩野モデルを取り上げます。いきなり馴染みのないものではなく、有名なものですが、完全な日本語訳の公開許可を確認中なので、自分の言葉で書けそうなものを第一弾として取り上げます。また、デジタルプロダクトに限ったプラクティスでもないです。
狩野モデルとは?
狩野モデルは、狩野紀昭教授により開発された顧客満足度のモデル。プロダクトのユーザーニーズをどれくらい満たせているかを測る尺度として品質を分類したもので以下の5つの品質領域がある。
- 当たり前品質(基本品質)
- 備わっていて当たり前、ないとユーザの不満はとても大きくなる。ただし、ここをある一定以上のことを実装してもユーザの満足にはつながらず、過剰実装となる。
- 一元的品質(性能品質)
- あるなしではなく、良いか悪いかで感じる品質。
- 魅力品質
- 差別化要因となりうる品質。なくても本来はいいが、実装があるととても満足してもらえる品質。
- 逆品質
- シンプルさを求める人にとって、機能の実装が不満足につながる
- ニュートラル
- 満足度に影響しない、良くも悪くもない製品/機能の期待
必ずしも外向けのお金を取るプロダクトだけに当てはめるモデルではなく、例えば社内のシステムで例で挙げるとすると、以下のようになる(実際に必要かは別として)
- 勤怠システム
- 当たり前品質: 勤務実績が入力機能。時間が計算機能。上長の承認機能。
- 一元的品質: ユーザ入力後のレスポンスを早くする。一度に多くのデータを処理できる。
- 魅力的品質: 連続した有給申請に対して福利厚生の活用提案。入退館システムとの連携。
どこで使うか?
これから作ろうとしている機能、もしくは作業について、このモデルのどこにプロットされるかを可視化して、優先度付けなど議論に使用する。特にスクラムであれば、プロダクトオーナーがプロダクトバックログの並び替えを考える時や、ステークホルダーあるいはユーザと認識合わせなどに活用する。
また、DXの文脈において、魅力的品質にプロットされる機能は、自社/自部門のプロダクトもしくはサービスが、差別化要因になる。ただ、魅力的品質は何が満足してもらえるか不確実な状況が通常であるため、仮説検証とフィードバックを繰り返して探っていくアプローチが必要となる。