こんにちは!HANOWAの新井です。
歯科医療人材のシェアリングプラットフォームやってます。
12月末で3期目を終え、ローンチ2年目の2021年度は年初来GMV(流通人件費)6.8倍、580%の成長で終えることが出来ました。
(年が明けてもグイグイ伸びてます)
スタートアップの成長率は、ローンチ初月からの比較でたまに「1,200%成長!」とか見かけるのですが、上の図のようにローンチ1年目は無視した数字です。
ここでは特に、マーケットプレイス型のプロダクトで起業しようとするエンジニアさんの参考になればと思い、書いていきます。
前提
プロダクトや開発環境について
[フロントエンド]
・言語:Nuxt.js/Vue.js
・OS:Linux
・DB:FirebaseのFireStore
・デプロイ先:Firebase
[バックエンド]
・言語:Ruby on Rails,AWS
・OS:Linux
・DB:PostgreSQL(AWSのRDS)
・デプロイ先:AWSのELB
[その他]
タスク管理:JIRA
コード・バージョン管理:Github
環境構築:Docker
その他ツール:Slack
市場について
歯科医療業界
ユーザーについて
サプライ:歯科医療従事者(主に歯科衛生士。2022年2月以降は複数職種展開)
デマンド:歯科医院経営者
(例えると、歯科業界版タ◯ミー)
外部資金調達について
初回:ガゼルキャピタル lead
2回目:ANOBAKA lead
(ぁぁ...テッククランチ、行かないで...)
ローンチ1~6ヶ月目
そもそもこの記事は、一度noteで書いたこちらの
エンジニアさんに向けた焼き直し版です。
なんでリメイクしようと思ったかというと、うちを今手伝ってくれてるISSUEの寒河江さんとランチで話していた時、 「初期の顧客ってどうやって集めたんですか?」 とやたらと聞かれました。
経営において作ることと、売ることは両輪ですよね。
それにしてもやたら聞くのでエンジニアさん的には初期のプロダクトのトラクションを生む活動や、GoToMarket的な話はそんなに興味深いものなんだなと思った次第です。
そこ行くと僕の場合は答えの一つは、スタートアップを始める前に結構ちゃんと受託やコンサルをやってたことが大きいと思います。歯科医院の採用コンサルとして、求人広告の作成代行をしこしことやってました。本当に初期の歯科医院さんはかつての僕の支援先や、無料で使えるプレスリリースツールでLPにリンクを貼って、事前予約を募っていました。
受託やコンサルをしっかりやってたのも、スタートアップを始めるに際して大きいのですが、もう一つはしっかりペインを捉えることだと思います。
20件の歯医者が、まだ新卒の何の訓練もされていない新卒歯科衛生士1人を奪い合う為に、血みどろの戦いを繰り広げるのです。猛烈な痛みです。なんとなくフワッとプロダクト作る前に、強烈な痛みを先に探すのがいいと思います。
↑とか、なんだか言ってますが、最初の半年はパッとしませんでした。
とにかく...
プロダクトのバケツの穴がデカ過ぎ
ました。
(初期のUI。この頃はUIUXなんて言葉も知らず、馴染みのwebデザイナーさんに自分で下書き送ってワイヤー書いてもらって作った。)
後に明確にターニングポイントになった施策を先に書くと、
『ユーザーの半径15km圏内でカレンダー更新があったら、一斉通知メールを送る』
という機能でした。
2020年を通して、上がったり下がったり、 再現性を維持することが出来なかったのは、 物理的距離の概念を舐め過ぎてたのが大きな理由です。
上記の 『半径15km圏内でカレンダー更新があったら、一斉通知メールを送る』 施策は、マッチングした人同士のやり取りや、メッセを送り合った人同士のやり取りではなく、まだ接点を持たない人同士のやり取りの増加に寄与しました。
こうやってマッチングやメッセ交換の手前のやり取りをする母集団が増加することで、メッセージの件数増加、マッチングの件数増加に繋がっていきました。
あと、2021年の結構なタイミングまで、僕自身もシェアリングプラットフォームにおける「プロダクト」とは、エンジニアが書いたコードの集合体を表すものだと思っていました。
プロダクトとユーザーは別の概念のものだと思っていました。
これはシェアリングプラットフォームでは間違いで、ユーザーがプロダクトの中に包含されるのが、シェアリングプラットフォームの実態です。

ユーザーさえもプロダクトの一部です。
それに気づいた時、これまで展開しているエリアは「東京都23区と大阪市内」と言っていたことを大きく反省します。
絞ってるようでいて何も絞っていませんでした。
なんなら、名古屋とか、札幌とか、一部の噂を聞きつけた、イノベーターやアーリーアダプター院長の為に、リソースを割いて人材の集客もやってたんですよね。
今振り返ると、プロダクトのバケツの穴が塞がらなかった理由は
①matchable(match+able)な地理関係でユーザーを集め切れていない
②仮に集まってても、近隣のフレッシュな情報が主体的にログインしなければ分からない
こんな状態で、
「なんでGMV(流通人件費)増えていかないんだろうねー?」
と毎週ボードメンバーで集まって
うんうんうんうん言う日々でしたね。
(アホです)
ローンチ7~12ヶ月目
Biz:2名
エンジニア:業務委託1名+正社員1名(2ヶ月で戦線離脱)
クリエイター:業務委託2名
そうとは知らずに、GMVを増やす本質的なメトリクスが見えず、とりあえず一番分かりやすい 「登録者数」 を増加させるしかねぇ。
と言うことでよく分からんことをやり始めます。
ボードの2人で、東京と大阪の歯科系メーカーとディーラーに飛び込み訪問をして、チラシを配って、ルートセールスに行く際に
「配ってください!オネシャス!」
って結構本気でやってました。
ジョイントベンチャーですね。
それやって貰えるとHANOWAはありがたいけど、向こうにやるインセンティブもない。
レベニューシェアと言っても、1マッチングあたり日当の33%の手数料なので、せいぜい3,000円程度しか儲かりません。
仮に 「1件新規登録してくれたら5万円謝礼金をお支払いします」 なんて言ったところで、端た金過ぎて動く動機にもならない。
また僕とかはクソ暑い夏の中、マスクしながらチャリンコで夜中にポスティングをこのタイミングでやるという暴挙に出ます。なんかやってる自分に酔ってましたね。
何にもなりませんでした。
また英会話マッチングのフラミンゴと言うサービスを見てて
「うちに足りないのは、シズル感かも知れない!」
と思い、サインアップ&ログインして初めて中が覗ける仕組みだったUX(閉鎖系)を、サインアップしてなくてもこんな人たちがいることをオープンに(開放系)解放してみようと夏頃開発しました。
エンジニアは頑張ってくれたけど、そんなに大した成果には繋がりませんでした。
値付けも迷走してて、一番初めは初期登録料5万円を徴収していました。でもコロナがヤバくなってきた2020年4月から初期登録料を10万円に値上げして、早々に夏前には5万円にしれっと戻しました。
コロナもあるけど、露骨に登録件数が落ちましたね。
(そもそもやろうとした動機が、ちょっとでも売上が欲しかったし、みんな勢いよくポンポン5万円を払うからもっとイケんじゃね?と思った)
10月から初期登録料5万円を廃止して、なんとかして月額課金モデルに転換したかったので掲載料月額5,000円のスタンダードプランと、月額30,000円のプレミアムプランを作りました。
で、アホほど当たり前のことですが、登録しても近隣にユーザーがいなければ秒速で退会します。
何しにわざわざエンジニア工数稼働して貰って作ったんでしょうね?
秋には本当にお金ないぞとなって、結構本気で歯科医院向けのBPOサービスを立ち上げる準備もしたけど、やっぱなんとかしてエクイティ調達するべ!と、ペンディングになりました。
もっとくだらないこと一杯やった気がするのですが、人の脳は黒歴史を忘れたがる性質があるんだと思います。
あとこの年はずっと「SaaSはいいよな〜」と思い続けてた記憶があります。
バリュエーション付きやすそうに見えていたし、追いかけるべきメトリクスが明確で羨ましかったなぁ。
ローンチ13~18ヶ月目
Biz:3名
エンジニア:業務委託3名
クリエイター:業務委託2名
UXデザイナー:業務委託1名
1月。 ここで何を思ったか、軽い気持ちで
「お互い、近隣のユーザーがカレンダー登録したら知りたいよね?」
「更新あった時、通知メール送った方が良くない?」
ぐらいの感じで実装したのが、先述の 『ユーザーの半径15km圏内でカレンダー更新があったら、一斉通知メールを送る』 です。
これを機に、見る見る双方のメッセージのやりとりが増え、それに伴い時間差でマッチング件数にも反映されて来ました。
「なんかこれ当たってんじゃね?」
って感じです。
カレコレもう4,000文字くらい1年前の自分がどれだけアホなんかを書いてますが、初回起業家と、シリアル起業家が歴然として違うのはこーゆーことかと思ったりもします。
芽が出始めたタイミングで、なんとか死ぬ気で投資家を集めて、春にはなんとか調達を完了できました。
あとこの時期の最後の6月頃に、1人業務委託のUXデザイナーに入ってもらい、さらに細々としたプロダクトのバケツの穴を塞いで行って貰ったのも良かったです。
僕がPMをやりながらファイナンスとマーケと、あと投資契約を10何人分自力でやるというなんの修行か分からん時期の終わりが見えたタイミングでした。
ローンチ19月目~
Biz:3名
エンジニア:業務委託3名+ISSUE
クリエイター:業務委託2名
UXUIデザイナー:業務委託2名
財務担当:1名
調達後またゆるく広告費をかけはじめて、6月から7月にかけて単月で24%成長したのは、もう少し自信を持っていいのかなと思い、将来のCFO候補を採用します。
このタイミングで入って貰ったのが僕のコンサル時代からの友人である、財務コンサルタントKです。
Kと共に今年を「n-4」と見立てて、ゆるく上場準備を始めていければと思っていたものの、彼が放った
「今の売上を”区”単位で因数分解しよう」
と言う一言はHANOWAにさらなる加速をもたらします。
“区”単位で過去のマッチング傾向を分析し、都内東部の足立区、葛飾区、江東区に偏りを見つけ、東部の6区を戦略的な優先順位第一位と定め、そこにFAXDMと郵送DMのリソースの集中を8月から始めました。
そこからこんな感じ↑で、全国の6万8,000件の地域ごとの歯科医院の母数を、 厚労省の資料から見つけ出し、優先順位をエリア毎に4位まで定め、上場後の「n+1」までのカバレッジシートを作成しました。
今後も微調整はするでしょうが、これに従ってドミナントで一時期にLTVやCPAはある程度無視して広告予算をぶっ込み、一定レベルでアクティベートすれば、また次の地域に… これを繰り返すのが自分たちの必勝パターンだと見えて来ました。
これによって2021年の12月はなんと単月で40%以上の成長を。
2022年2月も現在単月で25%以上の成長を続けています。
タイトルの580%成長とは、2021年1月から2021年12月までのこと伸び率です。
2021年1月から直近の2022年2月なら、もう1,000%くらいには伸びてます。
結び
エンジニアさんが自分でプロダクトを作って、スタートアップを始めたいと思った時、
1番の注意点は安易に作れてしまうことだと思います。
作れることはもちろん武器なのですが、ついついユーザーの痛みや欲求を通り越して
「無かったから作った」
「面白そうだったから作った」
という方によくご相談を頂きます。
それよりも、市場の痛みが明確で強ければ、多少使い勝手は悪くてもユーザーは我慢してくださるものかと思います。
また、
『ユーザーの半径15km圏内でカレンダー更新があったら、一斉通知メールを送る』
なんて、技術的には多分そこまで困難なものでは無いと思います。
ただ、そこに至るまでの紆余曲折や、思考と実行の軌跡から、
何か開発者さんがプロダクトを立ち上げる上で学べるものがあればと思い、
今回の記事をシェアさせてもらいました。
ご笑覧頂けましたら幸いです。
HANOWA あらい
追伸:人材募集中!!
そんなHANOWAでは、現在事業の急激な成長に伴い、エンジニアを大募集しています。
#フルリモート #出社無し #信託型SO
プロダクトや開発環境について
[フロントエンド]
・言語:Nuxt.js/Vue.js
・OS:Linux
・DB:FirebaseのFireStore
・デプロイ先:Firebase
[バックエンド]
・言語:Ruby on Rails,AWS
・OS:Linux
・DB:PostgreSQL(AWSのRDS)
・デプロイ先:AWSのELB
[その他]
タスク管理:JIRA
コード・バージョン管理:Github
環境構築:Docker
その他ツール:Slack
ご興味お持ち頂けましたらDMお待ちしておりますm(_ _ )m
ご覧頂き有難うございました!