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LoRaはなぜ“届かない”ときがある? RSSIの誤解と電波の気まぐれを解説!

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こんにちは

今回は、LoRa(Long Range)の RSSI/SNR について話をしたいと思います。

LoRaは、IoTや環境センサなどで活用される「遠くまで届く」無線技術です。
しかし実際に使ってみると、

  • 「昨日は届いたのに、今日はダメ…」
  • 「RSSIは足りてるのに受信に失敗する」
  • 「-138dBmを下回るとダメって本当?」

といった疑問やトラブルに直面することがあります。

この記事では、そうした「LoRaの不安定さ」に対する誤解を解きほぐし、
RSSIやSNRの実際の意味・LoRaの通信成功の条件について、やさしく解説していきます。


「RSSIしきい値」は絶対じゃない

たまに、次のような質問をもらうことがあります:

❓「RSSIが -138dBm を下回ると、通信できなくなるのですが、これは仕様ですか?」

答えは NO
この値はSX1276などのLoRaチップが持つ “理論上の受信感度限界の目安” です。
実際には、-137dBmでも失敗することもあれば、-139dBmで成功することもあります。

つまり、これは確率的に通信が難しくなる境界であって、仕様上の“カットオフ”ではありません。


LoRa通信は確率で成立している

無線通信は本質的に「確率で成立する」ものです。
Wi-Fiや携帯電波でも、「バーが立ってるのに途切れる」経験はありますよね。

LoRaも同様で、

  • RSSI(信号強度)
  • SNR(信号対雑音比)
  • SF(Spreading Factor)
  • BW(Bandwidth)
  • CR(Coding Rate)

などのパラメータと環境条件が合わさって、
成功率が上がったり下がったりする仕組みになっています。


RSSIだけじゃ足りない、SNRがカギ

LoRaは「微弱な信号でも受信できる」ことが特徴ですが、
実際の受信成功を左右するのは、RSSIだけではなくSNRも重要です。

意味 傾向
RSSI 信号の“強さ” 強いほど受信しやすいが、ノイズ次第では失敗も
SNR 信号とノイズの“差” 高いほど読み取りやすく、LoRaでは-20dBも許容可

たとえば──

  • RSSI = -138dBm/SNR = +10dB → 成功する可能性は高い
  • RSSI = -130dBm/SNR = -15dB → 成功率はむしろ低い

🔍 LoRaではSNRが -20dB に近づくと、いかに信号が強くても失敗しやすくなります

ただ、大抵はRSSIが低下するとSNRも低下する傾向なのは変わりません。


実は地下でもLoRaは届く!?でも…

筆者は自宅でLoRaWAN環境を実験的に運用しており、
RCの地下室に設置したLoRa端末でも問題なく定常的に通信がきています。

このとき、RSSIやSNRが周囲の環境に影響されて、
時間とともに大きく変動する現象が観察されました。
いずれ別の記事で、実測データとあわせて詳しく紹介する予定です。


-138dBmってどれくらい弱い?

この数字、実際には驚くほど微小な電力です。

  • 電力:1.58 × 10⁻¹⁷ W(ワット)
  • 電圧(50Ω換算):約 0.126μV

つまり、LoRaは「針が落ちる音どころか、電子のため息レベルの信号」を聞き取っているイメージです。

一般的なLoRaデバイスの出力は 20mW です。
$20\mathrm{mW} \div (1.58 \times 10^{-17}\mathrm{W}) = 1.26 \times 10^{15}$

なんと、受信器では 1260兆分の1のパワーになっていますが、聞き分けられるってことです。
ちょっと凄いと思いませんか?


結論:LoRaは不確実。でも設計しがいがある!

LoRa通信は、こうした不確実性を前提に

  • パラメータを調整して成功率を高める
  • リトライや冗長性を加えて信頼性を確保する
  • 「届かなかったとき」も織り込んだ設計をする

といった工夫が必要です。

この“ちょっと不確実なものをどう扱うか”がLoRaの面白さであり、
プロトコル設計者の腕の見せどころでもあります。


観測と工夫がLoRaを制する

LoRaは“確率で届く通信”です。
成功するか失敗するかは、ちょっとした環境変化に左右されます。

でもそれは、単なる弱点ではありません。
観察して工夫すれば、むしろ“設計の楽しさ”を味わえるポイントになります。

📡「ギリギリ届いた!」
そんなときの感動こそ、LoRaの魅力かもしれません。

🎀「“RSSIだけ見てたらハマった!”って人、意外と多いかも…?
LoRaともっと仲良くなれるヒントになったらうれしいなっ📶」


🔗 関連リンク


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