はじめに
LoRaWANゲートウェイを使うにあたって、
「技適がついてるから登録しなくても大丈夫」と思っていませんか?
実はそれ、ちょっとだけ誤解かもしれません。
この記事では、実際に Dragino LPS-8S を使うために
総務省に登録申請を行い、登録状を受け取ってきた実体験をベースに、
- どんな機器が登録対象になるのか?
- どこに、何を申請するのか?
- 書類はどう書けばいいのか?
- 登録すると何が変わるのか?
といった内容を、なるべくやさしく整理してみました。
機器の種類による違い(登録が必要なケース)
LoRa対応機器は、電波法の用途区分によって登録の要・不要が異なります。
区分 | 該当例 | 登録の要否 |
---|---|---|
第2条第8号 | センサーデバイス、エンドノードなど | 登録不要(技適のみでOK) |
第2条第4号の七 | LoRaWANゲートウェイなど | 登録必須(登録局として申請) |
→ 同じLoRa機器でも、“どちら側の機器か”で全く扱いが異なるので注意しましょう!
基本的に、基地局として機能するゲートウェイなどの無線機は、「第2条第4号の七」になると思うので、その場合は無線局登と開設届出が必須です。
技適取得済かつ登録必須のLoRaWANゲートウェイの例
- Dragino LPS-8S
- Tektelic Kona Micro / Mini
- RAKwireless WisGate Edge RAK7268(国内仕様版)
- Multitech Conduit MTCDT-L4G1(日本仕様)
🧩 技適認証されたエンドデバイス(センサーノードなど)は、登録不要でそのまま使用できます。
端末側は「登録局」ではなく、特定無線設備として技適で完結する運用が可能です。
📎 自分の使っている機器が「登録が必要なもの」かどうか迷ったときは、
総務省の「技術基準適合証明等を受けた機器の検索ページ」で確認してみましょう。
→ 型番や技適番号を入力することで、用途区分(端末・基地局など)や認証範囲が分かります。
実際の登録手順(筆者の体験ベース)
私が行ったのは Dragino LPS-8S の登録です。
以下のような流れで電子申請しました。
1. 登録対象を確認
- 対象:LoRaWANゲートウェイ
- 機器例:Dragino LPS-8S(技適取得済み)
2. 事前準備
- 「電波利用 電子申請・届出システム」に登録しておきます。
アカウント登録されるのに日数ががかかる場合があります。 - 技適番号、シリアル番号
- 電波の形式や、周波数、出力、帯域などを事前に調べておきます。
- 技適認証されているので、添付書類は不要でした
※ 技適機だったため、アンテナに関する個別記載は不要でした。
ただし、技適認証されたアンテナを使用することが条件です。
3. 提出方法(オンライン)
私は 「電波利用 電子申請・届出システム」 を使って、
オンラインで申請書類を作成・提出しました(Lite版ではなく、登録局向けの本システムです)。
🖥️ サイト: https://www.denpa.soumu.go.jp/public/
※ 電子申請にはマイナンバーカードによる電子署名が必要でした。
私はICカードリーダーを使って申請しました。
マイナンバーカード以外の手段もありましたが、未確認です。
※私が申請した後に「電波利用電子申請」のシステムが変更されていますので、この記事の内容が現状と異なっている場合があります。
4. 無線局登録には「個別」と「包括」がある
無線局の登録には、以下の2つの方式があります。
-
個別登録
→ 1台ごとに登録する方式。
→ 一般的にはこちらが多く、機器の型番・設置場所などを明記して申請します。 -
包括登録
→ 複数の同種機器を一括して登録できる制度。
→ 通信事業者などが大量展開する際に使うケースが多いです。
実は私も当初、将来的に複数のゲートウェイを使うつもりで、包括登録を選びました。
が、実際の運用は今のところ1台のみ。
登録が通った後にも 「開設届出」は台数ごとに必要 なので、
結果的にはちょっとオーバースペックだったかもしれません…。
📌 個人利用なら、「個別登録」で1台から始めるのが、運用や申請負担の面でもおすすめです。
なお、開設届出の申請料は無料ですが、開設した台数分の電波使用料の納付が必要です。
5. 申請後
申請すると、すぐに「受付完了」メールが来ますが、書類が到着したことの通知です。
5日後に、「審査するので、申請費用を払うように」とメールが来ました。
私は、Pay-easyで支払いました。
おっ!早いなあって思ったのはぬか喜び。
申請から50日後、やっと「審査完了」のメール。
待ちくたびれました。
6. 受け取り
審査が完了すると、「登録状」は郵送または窓口受取で交付されます。
どちらにするのか、選択するようになっています。
私は直接、関東総合通信局(九段下)まで受け取りに行きました。
「事前に連絡してもらえれば・・」って言われたんだけど、
総務省のサイトには「窓口で受け取れます」としか書いてないので、
連絡が必要だとは思わなかったです。
10分ほど待たされて、「無線局登録状」を受け取りました。
7. 開設届出
「個別」なら不要な手続ですが、「包括」で申請したので、
無線局を開設したら15日以内に届け出が必要です。
私は、登録状をもらった日に、「開設届出」をしました。
これで、手続き完了です。
後日、「電波利用料」の振込用紙が来ました。
注意点とTips
-
登録しないで運用すると、電波法違反になります(刑事罰対象)
→「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」の可能性あり
→ 条文を読むと分かりますが、電波法って思ったより厳しいんです…。
→ 刑事罰だから、悪質な場合は懲役+前科が付く可能性があります -
技適があっても、“誰が運用するか”に関する登録が必要
-
登録後は「開局届出」も忘れずに!(包括の場合)
-
技適機であればアンテナの個別記載は不要ですが、
技適外のアンテナに交換した瞬間、“技適が無効”になります。
→ この場合、技適に代わる根拠として電波暗室でのEIRP測定結果などが必要になり、
個人での登録申請はほぼ絶望的です。
📌 技適は「本体+指定アンテナ」で構成された状態での認証。
うっかりアンテナを交換するだけでも別の機器として扱われることに注意しましょう。
中国通販やAmazonで技適認証されてないデバイスを入手した場合、その機器を個人レベルで登録するのは基本的にムリゲーです。
また、これらの機器を使ってトラブった時に言い訳できません。
よくある疑問
Q. 技適機器なのに、なんで申請が必要なんですか?
A. 技適は「機器の適合証明」、登録は「運用主体(あなた)」の手続きです。
Q. 個人でも申請できますか?
A. できます。私も個人で提出して、無事に登録状を受け取りました。
Q. 難しそう…行政ってややこしい?
A. 書類はテンプレート通りでOK。
通信局の担当の方も親切に対応してくれます。
おわりに
LoRaWANをきちんと活用するには、技術的な知識だけでなく制度の理解も必要です。
最近は企業や大学でもコンプライアンスが厳しくなり、
LoRaWANゲートウェイを無登録で使うことがリスクとして認識されるようになってきました。
「いままで大丈夫だった」では済まされない時代です。
ちょっと面倒に感じるかもしれませんが、
登録してしまえば、堂々と運用できる安心感はとても大きいです。
📌 私自身は、LoRaWAN関連の記事を自分のブログ(しゃちらぼ)で紹介していくため、
合法的な運用を前提に、きちんと登録申請を行って使用しています。
LoRaWANゲートウェイは「登録が前提」の機器です。
販売業者でも登録をしていないケースが見受けられますが、それは電波法違反になるリスクがあります。
たぶん、分かってて「技適取得済」って売ってるんだろうなあ。嘘じゃないけど・・・・
🎀「登録せずに使っちゃうと…前科がついちゃうかも?!💦
LoRaWANは楽しいけど、ちゃんとルールを守って使おうね〜っ📄✨」
※この記事は、しゃちらぼブログ Vol.013 をベースに、Qiita向けに再構成・補足したものです。