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MASM Version 5、及び6におけるセグメント

Last updated at Posted at 2020-07-20

Microsoft Macro Assembler(以降、MASMと略)Version 6以降でアプリケーションを開発する際のメモ書きです。
この記事では、セグメントの指定方法について記します。

セグメント定義(MASM Version 5までの方法)

SEGMENT ~ ENDS

書式

name    SEGMENT (align) (READONLY) (combine) (use) ('class')

        (statements)

name    ENDS

説明

セグメントの名前、区間、属性等を設定する。

パラメータ

name

セグメントの名前

align

このセグメントのアライメントを指定する。

align 開始アドレス
BYTE 1 Byte単位で配置する。
WORD 2 Byte単位で配置する(偶数アドレスに配置)。
DWORD 4 Byte単位で配置する。
PARA 16 Byte単位で配置する(16進数で末尾1桁が0のアドレスに配置)。省略時のデフォルト
PAGE 256 Byte単位で配置する(16進数で末尾2桁が00のアドレスに配置)。
ALIGN(n) (n) Byte単位で配置する(nは1~8192の範囲の2のべき乗を指定する)。

READONLY

これを指定した場合、当該セグメントは読み込み専用とする。
当該セグメントに書き込みを行う命令を記述した場合は、アセンブラーはエラーを出力する。

combine

*.objファイルのリンク時の動作を指定する。
※16bit, 32bitのみ(64bit版MASMでは非対応)

combine リンカーの動作
PRIVATE 他の *.obj ファイルから、このセグメントのアクセスを許可しない。
PUBLIC 他の *.obj ファイルから、このセグメントのアクセスを許可する。
STACK スタック用のセグメント。この属性のセグメントは全て連結し、OSはSS:0000を下位アドレスに、SS:SPを上位アドレスに設定する。初期化済データの配置は不可。
COMMON この属性のセグメントは結合する。初期化済データの配置は不可。
MEMORY PUBLICと同義
AT (address) セグメントアドレスを直接指定する。このセグメントには、コード及び、初期化済データを配置できない。当該セグメントにVRAM等の構造体を定義する事で、直接アクセスするコードを書くことが出来る。(16bitコード)

use

オフセットアドレスの扱い
※32bitのみ(16bit、及び64bitでは非対応)

use オフセットアドレスの扱い
USE16 オフセットアドレスを16bitとして扱う。
USE32 オフセットアドレスを32bitとして扱う。Visual C++で書かれた32bitコードとリンクする場合、だいたいこれを指定する。
FLAT

'class'

クラス名を指定する。
リンカはメモリ内で自動的に同じクラスの区分を分類する。

class
'CODE' コード領域である事を示す。
'FAR_DATA' 初期化データ領域である事を示す。
'FAR_BSS' 未初期化データ領域である事を示す。
'DATA' 初期化データ領域である事を示す。
'CONST' 初期化データ領域である事を示す(書込み禁止)。
'BSS' 未初期化データ領域である事を示す。
'STACK' スタック領域領域である事を示す。

GROUP

書式

group_name     GROUP   [name]...

説明

指定したセグメントを、同一のセグメントにまとめる。

パラメータ

group_name

セグメントグループの名前。

name

セグメント名。

ASSUME

書式

ASSUME  [segregister:name]...
ASSUME  [dataregister:type]...
ASSUME  [register:ERROR]...

説明

セグメントレジスタの値、レジスタの型を仮定する。

パラメータ

segregister

セグメントレジスタ(CS, DS, ES, SS)。

name

セグメント名、若しくは、セグメントグループ名。

dataregister

レジスタ

type

BYTE, WORD, DWORD, PTR, 等の他、PTR STRUCといった構造体のポインタも仮定可能

ASSUMEディレクティブにてDSレジスタをnameに仮定する事で省略することができる。

ex1.asm
        ASSUME  DS:DGROUP               ;DSレジスタには DGROUP が設定されているものと仮定する。
        MOV     EAX, label              ;上記仮定の元、アセンブルする(labelの実体はセグメントDGROUPに存在する)。

ASSUMEディレクティブにて、レジスタの型を構造体に仮定する事で、構造体名を省略することができる。

ex2.asm
        ASSUME  EDI:PTR STRUCT          ;EDIレジスタは、構造体STRUCTのポインタが設定されているものと仮定する。
        MOV     EAX, [EDI].member       ;上記仮定の元、アセンブルする。

簡略化セグメント(MASM Version 6以降の方法)

MASM Version 6から導入された簡易的なセグメントの指定方法。
上記のディレクティブを用いずに、セグメントの指定が行える(ASSUME DS:DGROUPも必要ない)。
Visual C++で書かれたコードとリンクする場合、これらのディレクティブを用いてコードを記述すれば、開発しやすい。

.dosseg

書式

.dosseg

説明

セグメントの並び方を、MS-DOSの仕様にする。
MS-DOS仕様のC言語等でコンパイルした*.objファイルとリンクする場合等に記述する。
(32bit、64bitのコードでは、不要)

Segment 配置順番
heap ヒープ領域(残りメモリ)
STACK スタックエリア
BSS 未初期化データ
CONST 初期化済みデータ(書き換え禁止)
DATA 初期化済みデータ
FAR_BSS far 領域の未初期化データ
FAR_DATA far 領域の初期化済みデータ
_TEXT コード領域

.code

書式

.code   (name)

説明

次の行以降を、コード用のセグメントに設定する。

パラメータ

name

セグメントの名前を指定する。
省略した場合、メモリモデルTINY, SMALL, COMPACT, FLATの時は_TEXT
メモリモデルMEDIUM, LARGE, HUGEの時は、module_TEXTと設定される。

.const

書式

.const

説明

セグメント名は、CONSTが設定され、
次の行以降を、書き換え不可のデータ用のセグメントに設定する。
多くのC言語における、nearがつく変数領域と同一のセグメント。

.data

書式

.data

説明

セグメント名は、DATAが設定され、
次の行以降を、書き換え可の、初期化済みデータセグメントに設定する。
多くのC言語における、nearがつく変数領域と同一のセグメント。

.data?

書式

.data?

説明

セグメント名は、BSSが設定され、
次の行以降を、書き換え可の、未初期化データセグメントに設定する。
多くのC言語における、nearがつく変数領域と同一のセグメント。

.fardata

書式

.fardata (name)

説明

次の行以降を、書き換え可の、初期化済みデータセグメントに設定する。

パラメータ

name

セグメントの名前を指定する。
省略した場合、セグメント名はFAR_DATAと設定される。

.fardata?

書式

.fardata? (name)

説明

次の行以降を、書き換え可の、未初期化データセグメントに設定する。

パラメータ

name

セグメントの名前を指定する。
省略した場合、セグメント名はFAR_BSSと設定される。

.stack

書式

.stack (size)

説明

セグメント名をSTACKで、スタック領域を確保する。
メモリモデルTINYの場合は、確保されないので注意。

Visual C++で書かれたコードとリンクする時は、指定の必要はない。
(おそらく、ランタイムの方で確保されている。)

パラメータ

size

スタック領域のサイズ[byte]を設定する。
省略した場合は、1024[byte]となる。

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