この記事は、筑波NSミライラボ Advent Calendar 2023、3日目の記事です。
自己紹介
はじめまして。筑波大学 博士前期課程の@sh_moc_workです。
今回は、自分が所属するサークル(出自はゲームクラン、年齢、大学などはバラバラ)で運用しているWestern Digital Data102について紹介します。
(天板を開いた状態のData102)
Data102を導入するに至った経緯
このサークルではコンピュータを使ってお遊びを楽しむ伝統が立ち上げ当初くらい(2013年くらい?)からあります。
今までは仮想通貨のマイニング(2014〜2022の間でやる気があった瞬間)、プロキシレンタルなどで機材代を賄ってきました。
すると当然のように、この流れからさらに収益を上げられるのでは…?という風潮が出てきました。
そこで、今回のData102導入プロジェクトが立ち上がります。
具体的には、約1.6PBの容量を持つData102で仮想通貨Chiaのマイニングを行うという代物です。
このアドベントカレンダーでは、ChiaマイニングをData102で実施するところまで記述します。
余談ですが、このプロジェクトの目的は「収益を上げる」と、「高い機材で映えを狙う」の2つが大きなウェイトを占めていました。
前半分については(略)という感じ(後述)ですが、後半についてはこの記事を書くことで目的に少なからずアプローチできているのでは、と考えています。
Data102の説明
最大で102台のHDDを収容できる、JBODストレージです。大きさは19インチラックにおける4Uです。奥行きはHPやDELLなどのサーバよりも長いです。
中に入れるHDDも抱き合わせで購入するのですが、18TBか16TBが主流のようでした。今回は16TBで購入したので総容量は、16TB x 102 = 1632TB ≒ 1.6PBとなります。
詳しくはWestern Digitalの公式サイトをご覧ください。
https://www.westerndigital.com/ja-jp/products/data-center-platforms/ultrastar-data102-platform?sku=data102-two-point-six-five-pb
海外サイトから購入する流れ
Data102に決定するまで
最初からData102を指名買いしようと決めていたわけではありませんでした。
とりあえず大きいストレージでChiaマイニングするということしか決まっていなかったのです。
他の候補としては、Seagate EXOS E 4U106や、Cisco UCS C3260などが上がっていました。
Data102に決定したのは、予算とコスパ(値段が安い割にたくさんHDDが入る)の部分が大きいです。
また、購入方法として最終的には海外代理店を選択したのですが、こちらも値段と納期で決定しました。
海外(アメリカ)の代理店だと納期が1ヶ月くらい、日本の代理店だと納期が4ヶ月で価格が3割増と言った形です。
ストレージを海外代理店で!?
海外代理店の問題は、英語と輸入に関する手続きです。英語の方は足りない英語力とAIを総動員です。
輸入手続きですが、結局のところは普通に国内のamazonからものを買うのと大差はありません。
違うのは送金が国際送金になるところ、運送業者がグローバルな感じになるところです。今回はFedexでした。
国際送金は自分が使っている銀行から窓口で送るだけです。
面倒なのは輸出入関係の手続きです。
Data102は米国の輸出許可が得られないと出荷できないので、何やら色々な番号を代理店から教えてもらってFedexのオンラインフォームに入力する必要があります。
(Fedexのオンラインフォーム、最終的にはFedexの担当者の方に助けていただいた)
時差と自分の崩壊した生活リズムのせいで代理店とのメールが1日1通になっていたので、ここで1,2週間くらいは時間を使っていた記憶があります。
参考 : https://www.jetro.go.jp/world/n_america/us/trade_05.html
さて輸出許可もいい感じになると、今度は日本のFedex担当者の方と輸入、誤家庭への配達について話をします。
これについては、担当者が気の利く方だったためにすんなりと進みました。
実物の到着〜ストレージとして認識させる工程
ストレージの到着は、唐突に。。。
そしてとある日の朝、見知らぬトラックが敷地内にバックで侵入してきました。
インターホンが鳴り外に出ると、そこには黒いビニールでぐるぐる巻きにされた、大きな段ボールが1つと小さな段ボールが6つ並んでいました。
海外から機材を輸入したことがある皆さんなら想像に難くない、想像通りの姿を私は初めて目の当たりにしたのです。
(この画像は海外代理店の倉庫にて撮影されたもの、誤家庭にはこの状態で届けられる。)
ストレージの搬入は、重労働
今回は逸般の誤家庭に設置するため、データセンターと違い搬入経路の確保が難しいです。
このData102本体は想像しているより長く、大きな段ボールでは小回りが利かないため螺旋階段を上がるだけでも一苦労でした。
大きな段ボールを搬入し終えれば、残りは小さな段ボールだけだと当然みんな安心するでしょう。
しかしData102の規模になると安心はできません。なぜなら小さな段ボールには1つあたり20枚のHDDが梱包されているからです。想像に難くなく、実質ダンベルです。
(1箱20台のHDD、1箱で320TB)
ストレージの開封は、ゴミがたくさん
さて、搬入まで完了したら次は使えるようにするため、箱から取り出さなければなりません。
サーバー用品といっても梱包はいたってシンプル、よく目にする緩衝材が使われているので可燃ごみとして捨てられます。
ですがHDDは1つ1つ静電気対策を目的として梱包されています。取り出すたびにゴミが出てくる仕様だったので想像以上のゴミが発生してしまいました。
ストレージの起動は、さながら飛行場
ここまででストレージは電源ケーブルを挿せば動く状態になりました。
(画面中央のスチールラック最下段の機材がData102)
その前に、サーバーと通信するためにminiSASケーブルを冗長化構成で2本接続しておきます。
これで準備は万全です。
早速電源を入れていきます。
サーバーあるあるとして、起動中はファンの回転数が100%まで回転し、その後すぐに回転数が落ちる仕様が一般的です。
Data102は一筋縄で行きません。最初のうちは静寂そのもので安心ですが、調子が出てきたのか100%の回転数へ瞬時に吹きあがるのです。この時の音量はジェットエンジンとほぼ同じであったと記憶しています。
もちろん、常に100%というわけではなく室温に合わせて徐々に低下してく仕様なので、数時間後には静かな部屋を取り戻せました。
ストレージの認識は、箱出しでOK
Data102はJBODストレージなのでminiSASポートとHDDの関連付け設定が必要になりますが、今回の用途では全HDDを1本のminiSASで認識させればよいので、Data102側の設定は入れません。
ストレージを利用するサーバー側では、Linux上でPCIeのHDDとしてData102が認識されているので、mountコマンドでマウントするだけで利用できます。もちろんフォーマットや自動マウントなどは必要ですが、ここでは説明を省きます。
Data102によるChiaマイニング(Plot工程は省く)
HDDが認識されたら、いよいよ本機を買った主題のChiaマイニングに向けて進めていきます。
Chiaマイニングの基本的な概念を手短に説明すると、事前に大量の文字列を生成したファイル(Plot)を保存しておき、マイニング時に該当する文字列がヒットした人がコインを得る仕組みです。
Chiaのウォレットを作成する
ChiaのLinux版をインストールすればこの手順は簡単に完了します。
ChiaのソフトでPlotファイルを作成する
詳細な作成方法は本記事の対象外なので省略しますが、100GB/1PlotのPlotファイルを1.2万程作成しData102のHDDをすべて埋めつくします。ちなみにこの埋める作業だけで、時間としておおよそ2ヶ月間が消滅します。
(Plotファイルを作成するために自作したPC、CPU:AMD Ryzen9 5950X、MEM:32GB、SSD:2TB NVMe)
Chiaを起動させマイニングさせる
ChiaのソフトにPoltファイルが保存されているパスを指定するだけで、自動的にPlotファイルを読み込んでくれるお手軽仕様になっています。
これでマイニングの準備は完了したので、あとは放置するだけでマイニングできます。
終わりに
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。お楽しみいただけたでしょうか?
読者の皆様におかれましては、実際どれほど儲かったのかという点に注目されておられるかと存じます。
悲しいことに、場末の居酒屋より盛り上がらないChia相場などの要因で、大きな収益を上げるには至りませんでした。
一方で高価な機材で遊んでみるというのは、貴重で楽しい経験ができたと感じています。もしコンピュータに明るくない友人に「俺のiPhoneメモリ1TBだよ?」と煽られても、こちらには1.6PBストレージがあるので全くのノーダメージで済みます。
最後になりますが、このプロジェクトには続きがあります。
それはグラボが高騰を続けていた2022年にRTX3090を30台ほど購入し、エアコン完備の専用マイニング/DC小屋を設営してマイニングへ邁進するという案件です。
なおEthereumのPoS移行に伴い、本案件が文字通り炎上案件と化すのは本アドベントカレンダーの内容より、もうちょっと後のお話となります…