msys2 には fish shell のパッケージが用意されています。
bash からプロンプトで fish --login
するだけなら簡単ですが、起動時のログインシェルとして使用するためにはいろいろ注意点がありましたのでまとめます。
1. fish のインストール
何はともあれ、pacman を利用して fish
をインストールします。
fishは内部で暗黙的にman(nroff)
と bc
を利用するので、これもあわせてインストールしておきます。
pacman -S fish man bc
2. /usr/etc/fish/config.fish
の編集
fish をログインシェルとして利用する場合を考えると、bash であれば /etc/profile
で設定されているはずの /usr/bin
等のパスが設定されていないため、msys2_shell.bat 等で単純に bash の部分を fish に書き換えて起動しようとすると大量のエラーを見るはめになります。
まずは、 /etc/profile
での指定に相当する設定を /usr/etc/fish/config.fish
に記述します。
同ファイルの、 if status --is-login
(ログインシェルとして起動)の条件内に以下のコードを追加します。
Windows の既存のパスを引き継ぎたくない場合は、1行目末尾の $PATH
は抜いておいてもよいです(そのほうがパスが混じらなくてよいような気もする)。
set PATH /usr/local/bin /usr/bin /bin $PATH
set MANPATH /usr/local/man /usr/share/fish/man /usr/share/man /usr/man /share/man $MANPATH
set -gx INFOPATH /usr/local/info /usr/share/info /usr/info /share/info $INFOPATH
if test -n $MSYSTEM
switch $MSYSTEM
case MINGW32
set MINGW_MOUNT_POINT /mingw32
set -gx PATH $MINGW_MOUNT_POINT/bin $MSYS2_PATH $PATH
set -gx PKG_CONFIG_PATH $MINGW_MOUNT_POINT/lib/pkgconfig $MINGW_MOUNT_POINT/share/pkgconfig
set ACLOCAL_PATH $MINGW_MOUNT_POINT/share/aclocal /usr/share/aclocal
set -gx MANPATH $MINGW_MOUNT_POINT/share/man $MANPATH
case MINGW64
set MINGW_MOUNT_POINT /mingw64
set -gx PATH $MINGW_MOUNT_POINT/bin $MSYS2_PATH $PATH
set -gx PKG_CONFIG_PATH $MINGW_MOUNT_POINT/lib/pkgconfig $MINGW_MOUNT_POINT/share/pkgconfig
set ACLOCAL_PATH $MINGW_MOUNT_POINT/share/aclocal /usr/share/aclocal
set -gx MANPATH $MINGW_MOUNT_POINT/share/man $MANPATH
case MSYS
set -gx PATH $MSYS2_PATH /opt/bin:$PATH
set -gx PKG_CONFIG_PATH /usr/lib/pkgconfig /usr/share/pkgconfig /lib/pkgconfig
set -gx MANPATH $MANPATH
case '*'
set -gx PATH $MSYS2_PATH $PATH
set -gx MANPATH $MANPATH
end
end
set -gx SYSCONFDIR /etc
set ORIGINAL_TMP $TMP
set ORIGINAL_TEMP $TEMP
set -e TMP
set -e TEMP
set -gx tmp (cygpath -w $ORIGINAL_TMP 2> /dev/null)
set -gx temp (cygpath -w $ORIGINAL_TEMP 2> /dev/null)
set -gx TMP /tmp
set -gx TEMP /tmp
set p "/proc/registry/HKEY_CURRENT_USER/Software/Microsoft/Windows NT/CurrentVersion/Windows/Device"
if test -e $p
read PRINTER < $p
set -gx PRINTER (echo $PRINTER | sed -e 's/,.*$//g')
end
set -e p
if test -n $ACLOCAL_PATH
set -gx ACLOCAL_PATH $ACLOCAL_PATH
end
set -gx LC_COLLATE C
for postinst in /etc/post-install/*.post
if test -e $postinst
sh -c $postinst
end
end
2-2 パスに (x86)
が含まれているとき、<TAB>
補完に失敗する件への対応
complete.cpp does not parse PATH directories with parenthesis correctly. #952 fish-shell/fish-shell
64bit Windows の場合、$PATH
に(x86)
が含まれています。
この環境で msys2 上の fish のプロンプトで<TAB>
キーでコマンドの補完をした時、 fishは$PATH
中の (x86)
をコマンド実行の置換のための (...)
の構文と解釈して、x86
というコマンドを実行しようとしてしまい、結果 <TAB>
補完中にエラーが出力される、という現象が発生します。。
そこで、上記 /usr/etc/fish/config.fish
に、以下の function を定義します。
function x86
echo '(x86)'
end
function X86
echo '(X86)'
end
(x86) がコマンドとして解釈された場合に "(x86)" を返すという、たいへんバカバカしい Workaround ですが、ちゃんと動きます。
3. c:/msys64/msys2_shell.bat
を編集
ここまでやったら、スタートメニューのMSYS2 shell.bat
から fish が起動するように変更します。
start %WD%mintty -i /msys2.ico /usr/bin/bash --login %*
のところを
SET XDG_RUNTIME_DIR=/tmp/fish.%USERNAME%
start %WD%mintty -i /msys2.ico /usr/bin/fish --login %*
に変更します。
XDG_RUNTIME_DIR
を変更しているのは、msys2 や cygwin ではこの変数がシェル起動時に自動的に設定できないようで、手動で指定しない場合に、エラーとなってしまうためです。
(https://github.com/fish-shell/fish-shell/issues/1887#issuecomment-70234859)
4. ConEmu からの起動
さらにおまけで、ConEmu でも利用したい場合は、以下のような Task を追加して、以下のようなコマンドを指定します。
C:\msys64\usr\bin\sh.exe -c 'LANG=C.UTF-8 MSYSTEM=MSYS XDG_RUNTIME_DIR=/tmp/fish.$USERNAME exec /usr/bin/fish --login' -new_console:C:"\msys64\msys2.ico" -new_console:d:"%USERPROFILE%"
$LANG
が Windows の指定と異なる場合もあるので、その場合は指定しておきます。
特に、Windowsでの環境変数 $LANG
に文字コードを含めないロケールを指定している場合、コマンドプロンプト等に記号を出すような場合(oh-my-fishとか入れたいですよね?)にエラーが表示されることがあります。
ただ、ConEmu上でのfishの挙動はちょっと怪しい感じで、fish自体が突然落ちたり、右プロンプトを指定していると文字入力の度に改行されてしまったりするため、あまりオススメしないです。素直にmintty上で使うのがよさげ。