自己紹介
Linux Foundation Japan Evangelistを務めております、藤本です。
LF Japan EvangelistはLF傘下プロジェクト間のコラボも推進する役割をになっていまして、今回は同じくEvangelistを務める渡邊さん、遠藤さんからお誘いを受けて当Advent Calendarに参加させてもらいました。
トピックとしては、OpenChainプロジェクトから見て姉妹プロジェクトの「LF Decentralized Trust(通称LFDT)」の活動紹介をします。
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コンプライアンスとガバナンス
OpenChain Projectの活動目的に「OSSコンプライアンスの確立」がありますが、LFDTはブロックチェーンに関連のOSSを開発する"Hyperledger Foundation"を前身としており、コーポレートガバナンスの強化に役立つOSSを開発しています。
「コンプライアンス(compliance)とは、企業活動における「法令順守」を指すビジネス用語です。
コンプライアンスが順守するのは「法令」だけでなく、業務規定や社内ルールである「社内規範」、社会常識や良識による「社会規範」、企業理念や社会的責任(CSR)といった「企業倫理」なども含まれます。このコンプライアンスを維持・改善するための「管理体制」がガバナンスです。
ガバナンスを強化していくことがコンプライアンスを強化することにもつながります。
引用元:『【3分でわかる】ガバナンスとは?コンプライアンスとの違いと企業がすべきこと』
LFDTが実際にやっているのは、ブロックチェーンと分散ID管理に関するOSSの開発です。
ブロックチェーンというとBitcoinのような暗号資産のイメージが強いと思いますが、企業でのブロックチェーンの利用法としては、ステークスホルダーの多いサプライチェーン管理での利用が増えているのです。
ガバナンスとブロックチェーンの関係
ブロックチェーンは、記録するデータを時系列に沿って連鎖させて共有する技術です。
この連鎖では、暗号ハッシュにより、直前の記録データを参照して追記されるデータが電子署名されるため、時間の経過とともに署名の重ね掛けがなされることで、一度記録されたデータの改ざん耐性を向上させています。
このブロックチェーンの改ざん耐性はログの保全などでガバナンスの強化に貢献しますが、ガバナンス強化の観点で特筆すべきブロックチェーンの特徴は、複数の管理者によって共同運用される「非中央集権型(英語だとDecentralized)」のデータストアであることです。管理者が複数居ることで、人為的ミスや内部不正を引き起こしがちな管理者のふるまいは、他の管理者による検証(check)や監視(monitoring)でミスや不正を撲滅し、データの透明性、セキュリティ、信頼性が高まります。
データベースを使っても同じことができる、といった意見もありますし、分野によってその通りなケースも結構あります。
しかし、コーポレートガバナンスの徹底で問題となっている今、ルール違反や内部不正の防止にぜひブロックチェーンの技術を使っていただきたいのです。
Decentralized Trustの発足
LF Decentralized Trustの紹介をする度に「そんな組織あったっけ?」と言われることが多いのですが(汗)、新興プロジェクトではなく2024年10月にHyperledger Foundationの参加メンバーに、新たなOSS開発プロジェクト、コミュニティを加えてLF Decentralized Trustが発足しました。
図1:LF Decentraliized Trustの参加メンバー(2024年12月1日現在)
Hyperledger時代には、企業向けブロックチェーン(コンソーシアム型ブロックチェーン)のOSS開発に偏っていた部分もありましたが、LFDTの発足後二か月の間に、パブリック型ブロックチェーン関連のOSS(Hiero,Hyperledger Web3J)や、分散ID管理用ライブラリ(Hyperledger Identus,Lockness)など非中央集権型トラストシステムのキーテクノジーを開発するプロジェクトが次々と正式プロジェクトの仲間入りを果たしており、組織が大きくなったことと活動スコープが拡がったことによる、開発者コミュニティの勢いをひしひしと感じています。
今後について
今年5月にLF Japan Evangelistを拝命してから、他のEvangelistさんたちと交流するようになってOpenChain含む他のLF傘下プロジェクトの活動について俯瞰的な見方ができるようになりました(なったつもりだけかもしれませんが…汗)。
OSSの開発はそれだけでも大変で、開発コアメンバーの方々は周りを見る余裕がないのが実情だと思います。
しかし、コーポレートガバナンスの徹底などの大きな目標を成し遂げるためには、ひとつの技術で問題を解決できることは少なく、別のOSSを活用する必要があります。
また、自身が関わるOSSの良さを広め、ユーザーベースを拡げていかないと後から出てきた類似プロジェクトに全て持っていかれることもありますから、開発者コミュニティの外に居るユーザへの発信も必要です。
LFDTに参加する日本人開発者コミュニティ「LFDT Japan Chapter」では不定期にイベントを開催してメンバー間の交流と発信を行っています。直近ですと、12月17日(火)の夜にWeWork品川をお借りして、LFDT Tokyo Meetup #2が開催されます。おいしい生ビールを飲みながら、講演と参加者同士のネットワーキングを楽しむイベントです。ぜひ参加をご検討ください。
われわれLF Japan Evangelistは、それぞれの専門性を活かして開発者コミュニティのハブとなり、プロジェクト間連携のお手伝いをしていきたいと思っています。
明日はSecurityのEvanglist 池田宗広さんが登場します。お楽しみに!