E資格2022#2 に合格しました。
今後受験される方々のために、記憶の新しいうちに所感を残しておきます。
受験した理由
まずはじめにお断りですが、私は高校の教師をしています。E資格を受験したのはAIエンジニアになろうとか、エンジニアに転職しようとかいうことではありません。あくまでも目的は教育の質の向上です。
ご存じの方も多いかもしれませんが、現在の高校1年生が大学受験をする年から、教科「情報」が大学入試共通試験の科目に加えられます。高校で「情報」教育が始まって20余年ですが、その内容がいよいよ大きく変わりそうです。この機会に「情報」を真剣に学ぶ生徒が一気に増えると、質の高い情報教育ができる教師が求められます。そこでこのような需要に見合う人材を目指し、人工知能を勉強しています。E資格受験はその一環です。
以上のような理由で、私は自分が理解し使いこなすことを目的としているというよりは、自分が理解したことを生徒に明確に伝えるということを目指しています。そのため、エンジニアを目指している方々とは観点が異なることがあることをご理解ください。
E資格とは
日本ディープラーニング協会(JDLA)が提供する民間資格で、「ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有しているかを認定する」ものです。
受験するには、「JDLA認定プログラムを試験日の過去2年以内に修了していること」が条件となります。私は認定プログラムのうち「ラビットチャレンジ」を受講しました。
参照 https://www.jdla.org/certificate/engineer/
試験は年に2回(2月ごろと8月ごろ)行われ、私は2022年の8月(2022#2と記します)に受験しました。
2022#2試験は2022年8月26日(金)〜28日(日)にCBT形式で行われました。私は大阪のなんばテストセンターで受験したのですが、大阪だけでも数カ所の試験会場が用意されており、日時もかなり自由に選択することが可能でした。
テスト会場では本人確認書類が2種類以上求められ、その場での写真撮影やボケットの中を空にしたかなど、結構厳重に不正防止が求められます。G検定とは全く違います。
CBT
全部で106問でした。
紙ベースと違って、解く前に全体を見渡すということができないことが不安でした。
計算用紙に代えて、ラミネートされたA4大の白紙と水性ペンが渡されました。(統計検定のCBTと同じパターン)
ですが、計算する問題がほとんどなく、ラミネート用紙はほとんど使いませんでした。
(旧シラバスだと特異値分解とかがあって、結構計算したかも)
実際の試験の画面は左上あたりに電卓アプリが、右上あたりに残り時間を表示した時計が配置されていました。
テクニカルなこと
「次の問題」ボタンを押してもすぐには移動しないといことが起こりました。
各小問において、縦に長い場合は一度スクロールしてその小問をすべて見ないと「次の問題」ボタンを押せない構造になっています。また、問題番号をスキップする機能もなく、1から順に解いていくしかありません。
ただし、一度最後の問題まで通過すると、問題番号の一覧のページが表示できるようになり、任意の問題に飛ぶことが可能となります。その一覧のページには、未回答問題については「未回答」と表示されるので、どの問題が未回答なのかは簡単に把握できます。また、各問題には「後で見直す」というマークをつける機能が付いていて、一覧ページでは「後で見直す」マークも確認することができます。
以下、試験本番の時系列
受験まで
ラビットチャレンジの動画で「全体を見渡せば簡単な問題もあるので、全体を一度見て、点が取れそうなところは先に押さえておくべきだ」という趣旨のアドバイスがありました。
それで、未回答で問題をスキップしても「戻ることができる」ということを知りました。
本番 最初の70分
とにかく、見てすぐにわかる問題だけを回答し、計算が必要だったり長めの文やコードを読む必要がある問題はスキップして一巡しました。この時点で70分ほど経過していました。感覚的には7割ほどの問題に回答したと思います。
残り50分
2巡目。1巡目で意外と時間を使ったので、何らかの回答をした問いはスキップし、1巡目にスキップした計算問題やコードの穴埋め問題に挑みました。2巡目終了時点で残り5分〜10分くらいだったと思います。
残り10分
「後で見直す」マークの問題を見直したと思います(記憶があやふや)。
ラビットチャレンジ
なんだかんだで、一番苦労したのは、ラビットチャレンジの修了認定試験でした。95%の正解率が求められるのですが、どうしてもあと数点足りずかなり悩みました。どの問題が間違っているのかは教えてもらえないので、全90問ほどの問題を表にして、絶対合っているもの、自信がないものに振り分け、自信がないものについて何度も見直し、検索し、最終的に何とか合格に辿りつけました。これがかなり勉強になったと思います。
ちなみに「どの問題が間違っているのか」は多少の条件付きですが、有料で開示してもらえます。私は有料オプションは使いませんでした。
また、コース終了(解約)は解約したい月の前月末までに所定のフォームに入力することで可能となります。例えば9月末で解約したいなら、8月末までに手続きを済ませる、といった具合です。
修了の要件を満たした方は、解約しても受験に必要な修了番号はメールで通知されます。
ラビットチャレンジの良かったところ
- 料金が安い(他の認定講座と比べると破格の安さ)
- (学習システムに関する)質問には丁寧に答えていただけた
- テキスト資料はかなりよい。よくできている。
ダウンロードできないのがもったいない。
ラビットチャレンジの使いにくかったところ
- 資料がダウンロードできない
- 一部テストは正解が開示されない
ラビットチャレンジのその他所感
- 動画での学習がメインとなるが、動画の質はまちまち
使った教材
ラビットチャレンジの他に用いた教材は
- ゼロつくシリーズ(ゼロから作るDeep Learning ①、②、④)
- 黒本(徹底攻略ディープラーニングE資格エンジニア問題集)
- Pythonによるディープラーニング(F.Chollet)
- AIcia さんのYouTube(Deep Learning の世界)
ゼロつくシリーズ ①も②もいいけど④(強化学習)は特に良かった。
④が2022年4月に出版されて助かった
黒本は定番中の定番。やらないという選択肢はない
「Pythonによるディープラーニング」(F.Chollet)は、2022#2から範囲に入ったフレームワーク対策として読んだ。
かなりいい本
AIcia さんのDeep Learning の世界は動画教材としては最高!
E資格対策の動画ではないが、このシリーズに勝るものを見たことがないくらい、深い。
有料のものを含めた中で、最高の教材。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLhDAH9aTfnxKXf__soUoAEOrbLAOnVHCP
その他
論文は余裕があるなら読んだ方がいいに決まっています。
私もいくつかは読みました。
背景の具体例は以下の通りです。
この2022#2からは新シラバスということで黒本には載っていない分野が新たに試験範囲に加わりました。
この新しい分野の情報として、ラビットチャレンジに「E資格公式例題2」という教材があり、こちらはJDLAからラビットチャレンジを含む認定プログラムに提供されたサンプル問題と思われます。
ただし、問題は受講者に公開されていますが、模範解答は公開されていません。
ラビットチャレンジの中では、回答すれば採点はしてくれます。ただし、どの問題が正解/不正解ということはわからないようになっています。
このようなことがあるので、こちらとしては出題の原典の論文を検索し、答えを読み解くということが必要になります。その意味でも論文は読み慣れておいた方がいいです。
これはこれで非常に勉強になります。
ちなみにラビットチャレンジにはこのようなハードルがいくつもあります。
ラビットチャレンジは、それらに対して否定的な感情を持たず「勉強になった」と開き直ることができる人向けの講座と思います。
「いやいや、そんなのサービス悪すぎでしょ」という人は、高額を覚悟の上で他の講座を受講した方がいいかもしれません。
twitterでE資格取得した人、取得を目指す人たちと繋がることができました。
私のような環境では、周囲にE資格取得を目指す人がいるわけもなく、twitter民が唯一の仲間であり、情報源でした。
その意味でかなり励まされました。
E資格について
正直、E資格を取ったからといってそれが自分の生活を大きく変えるとは思いません。
twitterを見ていても、E資格合格がすぐに転職に結びつくということもなさそうです。
ただ、認定講座を設けて勉強すべき内容とその具体的な方法をJDLAが提示することにより、私のような門外漢にとっては「この方向に進めばいい」という道筋を示してもらったことはありがたかったと思っています。
今後受験される方々へ
シラバス変更により内容は大きく変わっている印象です。
つまり、新たにシラバスに入った内容が出ます。
とはいえ、黒本など旧来の教材と同じような問題も中にはあり、テスト中「あ、これ見たことある!」と思ったものも少なからずありました。
E資格に限らずですが、回答した後はわからなかった所の印象がより濃く残り、できなかったという感想を抱きがちになります。
私も1巡目はかなりやられた感が強かったです。
しかし、2巡目に自分の回答したところを見直しながら進めると、意外とまともに回答しているなぁと実感できました。それにより落ち着いて対応できたと思います。
あと、個人的にはim2colやcol2imの実装をちゃんと理解しておいた方がいいと思います。
im2col/col2im が理解できるレベルに達したら結構受かる確率高いんじゃないかなと思います(あくまでも独断)。
フレームワークについては、上記F.Cholletが読めたら十分なレベルに達していると思います。
(とはいえ、F.Cholletはそれなりに高レベルです)
フレームワークのTensorFlowはKerasと思っておいてよいと思います。
(PyTorchは選んでないので全くわかりません)
以上、自分が対策をしていた時期に疑問に思ったことに答える形で書いてみました。
以上のコメントが1人でも多くの人の役に立てれば、と思います。
今回(2022#2)は受験者が少なかったようですが、新シラバスにしっかり対応した上で、みなさん、頑張ってください。