本記事の想定読者
-
個人開発に興味がある非エンジニア
-
プログラミング学習を始めるか迷っている人
-
デジタルサービスの立ち上げを検討している非技術系起業家副業家
背景
「ノーコード vs AI駆動開発」論争
2025年3月、一部のX技術者界隈で 「ノーコードとAI駆動開発どっちがいい論争」 という話題が挙がりました。
AIの発達による「開発の民主化」とそれに伴う新しい課題
みなさんご存知の通り、昨今のAIの進化により、プログラミング知識がなくてもサービスを開発できる時代になりました。特に2023年末から2024年にかけてのAIコーディングアシスタントの向上は目覚ましく、非エンジニアでもコードを生成できるようになりました。
しかし、これには新たな課題も生じています。
-
「動くけど理解できないコード」が生まれ、バグ修正が困難
-
「可読性の低いコード」が量産され、保守・運用が困難
-
APIキーの流出など、セキュリティリスクが増大
このAI駆動開発のメリデメが注目される流れの中で、
「ノーコードは淘汰される!」 という意見もあれば、
「逆にだからこそノーコードの利便性が実感できる!」 といった見方もあります。
こうした社会背景を元に、本記事では、AI駆動開発とノーコード開発の違いを整理し、それぞれの適した活用方法を解説します。
実際のサービス例比較
1. AI駆動開発「Cursor」
Cursorは自然言語でコードを生成できるAI搭載コードエディタです。今、最も熱いAI駆動開発サービスの1つかと思います。
大まかな特徴
- 「ログイン機能付きのTodoアプリを作って」といった自然言語指示からコード生成
- エラーが発生した場合、「このエラーを直して」と指示するだけで解決策を提案
- コード解説を要求すると、初心者にもわかる言葉で説明してくれる
- 生成AIモデルの進化により、2025年現在ではより洗練されたコードを生成
実際の開発事例
- Googleカレンダー分析ツール
- iOSアプリ カクテルマイスター
2.ノーコード開発ツール「Bubble」
公式サイト
Bubbleはビジュアルインターフェースでアプリケーションを構築できるプラットフォームです。今月(2025年3月)には、強力なAIアシスタント機能がさらに追加され、よりノーコードに磨きがかかっている印象を受けます。
大まかな特徴
- エレメントをドラッグ&ドロップするだけでUI構築可能(ボタン、入力フォーム、画像など)
- 「ボタンをクリックしたら→データを保存して→メール送信」といった論理的なワークフローを視覚的に設定
- Stripe、Google Maps、Twilioなど600以上の外部サービスと簡単に連携可能
- レスポンシブデザイン機能で自動的にモバイル対応レイアウトを生成
実際の開発事例
- AIプロンプト提供サービス
- お店選びアプリ
上記2サービスの比較
項目 | AI駆動開発(Cursor) | ノーコード開発(Bubble) |
---|---|---|
初期コスト | 無料〜$20/月(Cursorプロ版) | 無料〜$529/月(ビジネスプラン) |
小規模アプリの開発期間目安 | 3週間〜2ヶ月(コード理解度による) | 2週間〜1ヶ月(チュートリアル含む) |
必要な前提知識 | HTML/CSS基礎、基本的なプログラミング概念の理解 | 特になし(論理的思考のみ) |
拡張性 | ほぼ無制限(技術スタック変更も可能) | プラットフォームの機能に依存(プラグイン購入で拡張可) |
サーバー管理 | 知識必要(Vercel、Netlifyなどの利用が一般的) | 不要(Bubbleが提供) |
デバッグ難易度 | 高(エラーメッセージの理解が必要) | 低(視覚的にテスト可能) |
コミュニティサポート | GitHub、Stack Overflowなど多数 | Bubble公式フォーラム中心 |
どちらを選ぶべきか?
1.AI駆動開発(Cursor)
向いている人
- Webデザインの基礎知識があり、HTMLとCSSを少し触ったことがある
- 「プログラミングを学びながらサービスを作りたい」という長期的視点がある
- 特定の技術(例:機械学習、ブロックチェーン)を活用したいが、専門的なコードが必要
- 月額費用を抑えたい(サーバー代のみで運用可能)
向いている用途
- オリジナルのアルゴリズムを使った分析ツール
- 特殊なUIインタラクションが必要なウェブアプリ
- 既存のAPIを組み合わせた独自サービス(例:複数のSNSデータを統合した分析ツール)
- 将来的に機能拡張を予定している長期プロジェクト
学習ステップ例
- HTML/CSS/JavaScriptの基礎を学ぶ(2週間、Udemyなどのオンラインコース)
- Cursorの基本操作を習得(2日)
- シンプルなウェブアプリのテンプレートを生成してもらう(1日)
- コードの説明を求めながら理解を深める(1週間)
- 少しずつ自分で修正・追加できるようになる(2週間〜)
2.ノーコード開発(Bubble)
向いている人
- プログラミングに全く興味がなく、「ツールとして使いたい」という考え
- 3ヶ月以内にMVP(最小限の機能を持つ製品)をローンチしたい
- ユーザー管理、決済機能など標準的な機能が中心のサービス
- 技術的な詳細よりもビジネスロジックやUXに集中したい
向いている用途
- 会員制Webサイト(サブスクリプションモデル)
- 予約・管理システム
- 簡易的なマーケットプレイス
- フォーム中心のデータ収集アプリ(アンケート、顧客管理など)
実際の学習ステップ例
- Bubble公式チュートリアル(7日間)
- 簡易アプリのクローン作成(7日間)
- 外部APIとの連携方法の学習(3日間)
- 自分のプロジェクト設計(3日間)
- 実装作業(2週間〜1ヶ月)
「ハイブリッドアプローチ」という選択肢もある
2025年の最新トレンドとして、両方のアプローチを組み合わせる手法も効果的です。
-
フロントエンドはBubble、特殊機能はCursor
- 例:会員制サイトの基本機能はBubbleで構築し、独自の分析機能だけをCursorでAPI化して連携
-
プロトタイプはBubble、本番はCursor
- 例:ビジネスアイデア検証のためのMVPをBubbleで素早く構築し、ユーザーの反応を見てから、Cursorを使って本格的な開発に移行
-
段階的な学習アプローチ
- Bubbleで開発しながらUIデザインとユーザーフロー設計を学び、並行してHTMLとCSSを勉強
- 半年後にCursorを導入して、徐々にコード開発にシフト
私の感想・意見
以下は一般的な意見に加え、特に私個人の主観に基づいた意見です。
AI駆動開発に必要な"エンジニアリングスキル"
AI駆動開発ツールは直感的な操作が可能な一方で、「動くコード」の裏側にある複雑なロジック、エラーハンドリング、セキュリティ対策など、理解や修正が必要な要素が多く含まれています。
そのため、一定レベルのエンジニアリングスキルが求められます。
具体的な必要レベルを以下考えてみました。
1. プログラミングの基礎知識
-
必要な理由
コードをコピペするだけではなく、HTML、CSS、JavaScriptなどの基本言語に精通し、自ら修正やカスタマイズができることが求められます。 -
求めるレベル
中級エンジニア並みの感覚。 -
指標例
- UdemyやProgateなどのオンライン講座の中級コースを修了している。
- 小規模なWebアプリケーションを自力で構築・運用した経験がある。
2. デバッグと問題解決能力
-
必要な理由
AIが生成したコードは一見「動く」ものの、エラーや非効率な箇所が潜む可能性が高いです。
エラーメッセージを正しく読み解き、自ら修正できる能力が不可欠です。 -
注意点
エラーメッセージを無視して作業を進めると、後々大きな問題に発展することが多々あります。 -
指標例
- GitHubでオープンソースプロジェクトに参加し、Issue対応やコードレビューの経験がある。
3. システム設計とAPI連携の理解
-
必要な理由
単一のツールだけでは解決できない複数システムの連携や、外部APIとの統合には、システム全体のアーキテクチャ設計の知識が求められます。 -
求めるレベル
APIの仕組みを理解し、適切に管理できる基礎知識。 -
指標例
- 小規模なAPI連携プロジェクトの実績がある。
- 基本情報技術者試験や情報処理技術者試験レベルの知識を持っている。
AI駆動開発を使いこなすためには、単なる「ツールの使い手」ではなく、中級エンジニア並みの知識と実践経験が求められるといえます。
逆にノーコードツールを"積極的に"使うべき人
ノーコードツールは、プログラミングの深い知識がなくても直感的にサービスを構築できる大きな魅力があります。以下のような人は、ノーコードツールの活用を特にお勧めします。
1. プログラミングの壁に挫折している人
-
理由
コードを見ても「何がどうなっているのか全く分からない」と感じる場合、AI駆動開発に挑戦すると、トラブル発生時に途方に暮れてしまうリスクが高いです。 -
ノーコードの利点
視覚的な操作でエラーが解決できるため、ストレスなく開発が進められます。
プログラミングができなくても、ノーコードツールでハードスキルを補い、市場価値を高めるチャンスにもなります。
2. ビジネスアイデアの迅速な検証を求める起業家・副業者
-
理由
MVP(最小限の機能を持つ製品)を短期間で構築し、市場の反応を迅速に確認したい場合、ノーコードは低コストかつ迅速に成果を上げやすいです。
3. 技術的な学習や開発プロセスに時間を割きたくない人
-
理由
自身の強みがビジネスロジックやマーケティングである場合、技術面に深入りするより、プロダクトの企画や運用に専念する方が合理的です。
市場・キャリアの観点から見た場合、技術の習得に過度に時間を割かない選択が賢明な方も多いと思っています。やりたいことがあるとか、趣味で楽しんでやっているとかなら話は違いますが、ビジネスパーソン全員が全員上記のようなエンジニアリングスキルを目指すべきだとは決して思いません。
まとめ
AI駆動開発は「進化する武器」を手に入れるようなものですが、
その武器を自在に操れるのは、戦闘訓練(中級以上のエンジニアリングスキル)を受けた兵士だけです。
一方、ノーコードツールは、戦略を描くだけで即時に戦場に飛び込めるような専門的な訓練が不要な即戦力 です。
ビジネスの現場では、リソースが限られている中で迅速に結果を出すために、後者のアプローチが非常に有効と言えるでしょう。
この視点で、自分自身のスキルやリソース、そしてビジネスの優先順位に合わせた開発手法を選択することが、2025年のデジタルサービス開発成功への鍵だと考えます。