1.想定読者
- Azure AI Searchがどういったものか知らない。
- Microsoftサービス(Azure)によるLLM・RAG導入を検討している。
- そもそもクラウドをAzureにすることを検討している。
本記事は「Azureの中にこんな機能があるんだ」と知っていただくための記事です。Azureを導入した担当者などはすでに検討できている方が多いと思うので、想定していません。
2.Azure AI Searchの基本概念
Azure AI Searchは、Microsoftが提供するクラウドベースの検索サービスです。
AIを活用し、自然言語でのクエリ処理やカスタム検索を可能にし、構造化・非構造化データから迅速かつ的確に情報を引き出すことができます。
- 抽出・検索・要約の"言語分野"が得意なAI機能
- "Microsoft製品・Azureサービスと親和性"が高い。ゆえに技術ハードルは低い
- "Azure"の使用が大前提
ざっくり大枠を掴むとすれば、上記のようなことかと思います。
Azure AI SearchのトップページにもまずAzureを!というメッセージが強めです。(というのもおそらくこのページに到達するのはAzure非ユーザーが多いからでしょうね)
3.導入検討が想定される場面
Azure AI Searchは以下のように思ったときに使う機能になります。
「カスタマーサポートの効率を上げたい」
- FAQやマニュアルが充実しているのに、顧客からの問い合わせが増えてスタッフが答えを見つけるのに時間がかかる
「社内資料やマニュアルの管理・運用を簡単にしたい」
- 過去の会議資料や契約書を探したいけど、どこに保存されているか分からない。
- 顧客から『前回の提案内容をもとにした新しい提案をすぐ欲しい』と言われたけど、いつどのファイルに保存したか分からない
「今あるシステムに便利なサービスに追加したい」
- ECサイトでユーザーが探している商品を一瞬で見つけられる検索機能が欲しいけど、どう作ればいいのか分からない
4.導入検討の想定が難しい場面
逆にAzure AI Searchが向いていない場面や企業の特徴をいくつか挙げます。
以下の場合が当てはまる組織はAzure AI Searchの導入は向いていないと言えるかもしれません。
「検索対象となるデータがほとんどない場合」
- 例えば、小規模な会社でドキュメントやデータが少なく、ファイル管理がシンプルな場合。
- ファイル名で検索すれば十分なら、Azure AI Searchを使うメリットは薄い。
「リアルタイムのデータ更新が頻繁な場合」
- 在庫管理や株価情報など、ミリ秒単位でデータが変わるシステムには向いていない。
- Azure AI Searchはインデックスを作成して検索を高速化するため、リアルタイム更新が求められる場面では遅延が発生する可能性がある。
「厳密な構造化データのクエリが必要な場合」
- 例えば、会計データや金融取引データなど、SQLデータベースで厳密にフィルタリング・計算が必要な場合。
- Azure AI Searchは全文検索や自然言語処理に強いが、複雑な集計や分析はSQLデータベースのほうが適している。
「検索の精度よりも業務フローが重要な場合」
- 例えば、製造業の生産管理システムなどでは、検索よりもワークフローの最適化が重要。
- Azure AI Searchは検索に特化しているため、プロセス管理には向かない。
「データがクラウドに置けない場合」
- 極秘情報や規制の厳しいデータ(政府機関や防衛産業など)を扱っていて、データをクラウドに置けない場合。
- Azure AI Searchはクラウドベースのサービスなので、完全にオンプレミスで運用したい企業には向かない。
5. 実例いくつか
ネオス株式会社「AIチャットボット」
ネオス株式会社は、AIチャットボット「OfficeBot」のインフラをMicrosoft Azureに完全移行し、「Azure AI Search」との連携を強化。
これによりチャットボットのRAG性能が向上し、検索・回答の精度が改善。
独自のプロンプト調整で回答到達率も向上し、リーズナブルな料金で企業のDXや業務効率化を支援している。
株式会社パーソルキャリア「社内版ChatGPT」
パーソルキャリアは業務でのChatGPT利用禁止のため、
データのプライバシー確保、カスタマイズ性、コンプライアンス対応、スケーラビリティ確保を目的に社内版ChatGPT「ChatPCA」を構築。
Azure App Service上にNext.jsでフロントを作成し、LangChain JSを介してLLMと連携。
社内調整やコンプライアンス部門との協議に時間を要したが、リリース後は業務での活用が進み、特にRAG関連の機能拡張が求められている。今後も生成AI技術の活用を拡大予定。
Elastic「開発者支援アプリ」
Elasticsearchは、開発者がAI検索アプリを構築できる新ツールElasticsearch Relevance Engine」を発表。
これにより、生成AIや大規模言語モデル、ベクトル検索を活用した高度な検索体験の提供が可能に。
AI検索の実現には、自然言語処理・ベクトルデータベース・ベクトル検索・LLM統合などが重要だが、Elasticsearchはこれらの要素を組み合わせ、コスト管理、スケール対応、プライバシー・セキュリティの確保を考慮した柔軟なデータストアを提供。
Elasticは、生成AIを活用した次世代の検索技術を推進し、開発者が革新的な検索体験を構築できるよう支援している。
6.ほかのAzureサービスとの連携
ご存じの方はそらそうだって内容ですが、Azure AI Searchは基本的に他のAzureサービスと組み合わせて使用します。Azure AI Search自体は強力な検索機能を提供しますが、他のサービスと連携することによってその効果を最大化できます。連携必須のサービスからいくつか基本的な例と機能を挙げます。
1. Azure Cognitive Services
画像認識やテキスト解析など、AIの高度な機能を活用して、検索精度を向上させることができます。例えば、画像内のテキストをOCRで抽出して検索対象に加えることができ、検索結果がより豊富で正確になります。
2. Azure Blob Storag
非構造化データ(例えば、PDFやWord文書)を保存するために利用され、Azure AI Searchと連携することで、そのデータ内の情報を検索可能にします。
3. Azure Machine Learning
機械学習モデルを組み合わせることで、検索結果のカスタマイズや精度向上が可能です。例えば、ユーザーの検索履歴を学習し、よりパーソナライズされた結果を提供することができます。
- Azure Functions
イベントドリブンでAzure AI Searchをトリガーするなど、他のAzureサービスとの自動連携が可能です。これにより、例えば新しいデータが追加されたときに自動で検索インデックスを更新する、といった処理を効率化できます。
このように、Azure AI Searchは単独で使うだけでなく、他のAzureサービスと組み合わせることで、その機能をより強力にし、企業のニーズに合わせた柔軟なシステム構築が可能になります。
まとめ
Azure AI Searchは、企業が情報検索を効率化し、業務の生産性を向上させるための強力なツールです。特に、自然言語処理やベクトル検索を活用した検索体験の提供が可能であり、Microsoft Azureとの親和性の高さから、既存のAzureインフラとの統合もスムーズに行えます。
しかし、導入に際しては、検索対象データの規模や更新頻度、システム要件など、適用シーンをしっかりと見極めることが重要です。
具体的な構成方法については、各組織のニーズや技術スタックに応じてカスタマイズされるべきですが、基本的な方向性として、AIによる情報抽出や自動要約の機能が有効に活用される場面が多いです。
また、既存の業務システムやクラウドインフラとの親和性が高いため、Azureを中心としたインフラを利用する企業にとっては、特に有力な選択肢となります。
公式参照
補足・注意
- このブログで参照されている、Microsoft、Azure、Azure OpenAI、PowerAppsその他のマイクロソフト製品およびサービスは、米国およびその他の国におけるマイクロソフトの商標または登録商標です。
- その他の会社名、製品名は各社の登録商標または商標です。
- 私は、Microsoftとは直接関係のない個人として本ブログを記載しています。
- この記事の情報は公開時点のものであり、サービスは随時アップデートされています。Azureのサービスは進化が早いため、最新情報は公式HPをご覧ください。