出力イメージ
Databricksには 簡単なSQLだけで時系列予測ができるai_forecast()
関数 があります。
この関数を使用して、以下を予測してみます。
- 対象:東京都中央区(地域コード13102)の人口
- 学習期間:2021年1月~2025年1月
- 予測期間:2025年2月~2025年7月(2025年5月まで実測値もあり)
このテーブルを元に、
- X軸:年月
- Y軸:人口
- 実線:実測値(2025年5月まで)
- 点線:予測(
population_forecast
) - 青枠:予測上方(
population_upper
)と下方(population_lower
)
例えば2025年5月はこの結果。
幅が5000人以上あって少しせこいですが、しっかりと予測範囲に入っています。
予測値とは2000人くらいの誤差。
1. ai_forecast 関数とは
Databricksの ai_forecast()
は、時系列データに対して将来の値を予測してくれるAI組込関数です。
予測モデルの選定・パラメータ調整などが不要で、SQLだけで完結します。
できること:
- 指定期間までの未来予測
- 地域やカテゴリごとの個別予測
- 予測範囲(上限・下限)の出力
何のモデルを使ってるんや?と思い調べたのですが、見つけることができませんでした。
公式ドキュメントにも、モデルについては明示されていませんが、
以下のような記載がありました。
The function returns forecasted values by applying a machine learning model based on historical trends in the data.
(この関数は、過去のトレンドに基づく機械学習モデルを使って予測を行います)
過去の時系列パターンから予測を行う、何かしらの汎用的なMLモデルが使われているようですね。
2. 使用したデータ
今回使ったのは、東京都の市区別・月次人口データ です。
東京都のオープンデータから取得しました。
今回データの読み込みや詳しい操作方法は割愛します。
3. Deltaテーブルの作成
ai_forecast()
を使って未来6ヶ月分の人口予測を生成し、Deltaテーブルとして保存します。
(2.で作成した月毎の人口テーブルを仮にカタログ名.スキーマ名
としています。)
ai_forecastの実行コード
DROP TABLE IF EXISTS カタログ名.スキーマ名.population_forecast_202502_to_202507;
# CTAS
CREATE TABLE カタログ名.スキーマ名.population_forecast_202502_to_202507 AS
# ai_forecast
SELECT * FROM ai_forecast(
TABLE (
SELECT
`地域コード` AS area_code,
CAST(`年月` AS DATE) AS ds,
`人口` AS population
FROM カタログ名.スキーマ名
),
horizon => '2025-08-01',
time_col => 'ds',
value_col => 'population',
group_col => 'area_code',
frequency => 'MS',
parameters => '{"global_floor": 0}'
);
- 補足
パラメータ | 説明 |
---|---|
TABLE (...) |
時系列予測の元データ。地域コード・年月・人口の3列を使うように整形。 |
horizon |
いつまで予測するか(例:2025年8月1日まで)。 |
time_col |
時系列の「日時列」の名前。ここでは ds (年月列) |
value_col |
予測対象の値(人口)。ここでは population
|
group_col |
グループ単位の予測をするための列(地域コードなど) |
frequency |
時系列データの間隔。'MS' は "Month Start" の意味=月初単位。 |
parameters |
追加の制約や設定。ここでは "global_floor": 0 により「人口は0未満にならない」よう制限。 |
このあとに2025年2~6月の実測値も追加しているのですが、
色々整えてできたテーブルはこんな感じ。
(この色々整えてが一番時間かかってる)
4. ダッシュボードで可視化
3.で作成したテーブルを使い、ダッシュボードで予測棒グラフを作成します。
可視化の設定項目はこんな感じ。
これだけでこのグラフが完成です。
まとめ:ai_forecast() を使った感想
活用の可能性
以下のようなメリットから様々な分野・場面での活用が想像できました。
-
モデル構築が不要、SQLだけで時系列予測を試せる
やはり最大の魅力はSQL数行だけで予測ができることです。学習コストが低くエンジニアでなくても実行可能という価値はかなり大きいと思います。
-
ワークフローとして簡単に組み込める
予測結果をDeltaテーブルとして保存すれば、ダッシュボードにそのまま可視化も可能です。共有や共同編集も簡単です。 -
「年月」「数値データ」さえあれば予測可能
この2つのデータさえあれば、ほぼすべての時系列データに予測が可能です。小売業や製造業、モニタリング業務など、分析基盤の1つとして幅広く活用が見込めそうです。
もう一歩欲しいところ
とはいえ、現時点では以下のような点が制約として存在します。
-
使用モデルが非公開
どのアルゴリズムが使われているのか明示されておらず、精度やロジックの検証ができないのはやや不安です。学習データ量によって差が出ることはわかったのですが、どれくらいあれば十分かもあまり検証できませんでした。 -
特徴量を自分で加えられない
長所の裏返しですが、ざっくり解析のため、祝日・天気・キャンペーン情報など現実の影響を加味した予測には対応できません。複雑な予測にはMLflowやAutoMLとの併用が前提になりそうです。 -
細かい粒度には非対応
現時点では月単位('MS')の粒度が前提となっており、より細かい予測には対応していません。今後の機能拡張に期待。
結論
ai_forecast()
は、まずAI予測の感覚を掴みたい方にとって最適なファーストステップ です。
完璧な精度や柔軟性を求めるには限界がある一方で、
“とりあえずサクッと予測をしてみたい”という幅広いニーズ に対しては、
これ以上なく優しい関数だと感じました。