Rust では *_（アンダースコア）には「無視する（不要な値）」という意味があります。

通常、関数の引数やタプルの一部を使わない場合、Rust では警告が出ることがあります。その時に let _ を使うことで未使用変数の警告を回避できます。

ふつうに変数を無視すると・・・

fn main() {
    let x = 10;
}

このように実行すると・・・

warning: unused variable: `x`
 --> src/main.rs:2:9
  |
2 |     let x = 10;
  |         ^ help: if this is intentional, prefix it with an underscore: `_x`

警告が出る

_ を使うことで意図的に使わないことをアピール

fn main() {
    let _x = 10; // _x は使わなくても警告が出ない
}

_x という変数名にすることで、「この変数は意図的に使わない」と Rust に伝えられる。

fn main() {
let _ = 10; // 何もしない（変数を一切作らない）
}
_ = 10; は「値 10 を使わずに捨てる」ことを意味する。

使用例

タプルの一部を無視する

fn main() {
    let tup = (1, 2, 3);

    let (a, _, c) = tup; // 2 を無視
    println!("a: {}, c: {}", a, c);
}

output

a: 1, c: 3

enumerate() のインデックスを無視

fn main() {
    let arr = [10, 20, 30];

    for (_, value) in arr.iter().enumerate() {
        println!("{}", value);
    }
}

output

10
20
30

関数の引数を無視する

fn unused_param(_x: i32) {
    // `_x` を使わないが警告は出ない
}

_ を型のプレースホルダーとして使う

型推論を Rust に任せる

fn main() {
    let num: _ = 10; // Rust が型 `i32` を推測
    println!("{}", num);
}

Vec の型を _ で省略

fn main() {
    let v: Vec<_> = vec![1, 2, 3]; // Rust が `Vec<i32>` だと推測
}

match 式で _ をワイルドカードとして使う

fn main() {
    let number = 5;

    match number {
        1 => println!("1です"),
        2 => println!("2です"),
        _ => println!("その他の数字です"),
    }
}

output

その他の数字です

_ を関数の戻り値で使う

Ok(_) で成功時の値を無視

fn main() {
    let result: Result<i32, &str> = Ok(42);

    match result {
        Ok(_) => println!("成功"),
        Err(err) => println!("エラー: {}", err),
    }
}

output

成功

_ をジェネリック型のプレースホルダーとして使う

ジェネリック型 T などを _ で省略できる。
::<_> を使うことで、Rust に型推論を任せる。

fn add<T: std::ops::Add<Output = T>> (a: T, b: T) -> T {
    a + b
}

fn main() {
    let result = add::<_>(10, 20); // Rust が型を自動推測
    println!("{}", result);
}